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六章
全種族対抗試合その5
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私はそう言葉を漏らした後、「私は・・・・・・」と若干俯きながら視線をキース様から逸らす。
そんな私を見たキース様は・・・・・・、
「ああ、それにな。一緒になるという事は、互いが互いを深く想っていなければ後々にどちらかが辛い想いをする。そのような想い、我が息子にも、勿論リニス王女にもしてほしくはないんだ」
おそらく、私の事を案じてこのような言葉を掛けてくれているのだろう。なんてお優しい御方なのでしょう・・・・・・。
「王族である以上、今でも政略結婚などというのは珍しくも無い話ではあるが・・・・・・。まあ、正直? 私としてはそのような老いぼれ共が勝手に作った古臭い風習はどうでも良くてな。だから、嫌なら嫌ときっぱり断ってくれても構わないぞ! はっはっはっ」
うわぁ・・・・・・、なんて事をこのような所ではっきりと仰る御方なのでしょう・・・・・・。
真面目そうなイメージだったキース様からそのような言葉が飛び出し、内心驚いてしまった。
「・・・・・・?」
それとほぼ同時に、私はある疑問が浮かび上がり、
「では、何故キース様は今回このようなお話を?」
そうキース様に尋ねてみた。すると、
「ん? ああ・・・・・・、実は我が愚そ・・・・・・。いや、スレイにどうしてもと頼み込まれてしまってな」
「・・・・・・ぐそ?」
「ああいやいや、気にしないでくれ。こっちの話なのでな」
・・・・・・これは追求しないほうが良いですね。何故かはわかりませんが、とっても嫌な予感しかしてきませんし・・・・・・。
そうですね、聞かなかった事にしておきましょう・・・・・・、
「はい、わかりまし」
「・・・・・・いや、やはり聞いてもらおう。隠していてもいずれはわかる事だしな」
「・・・・・・・・・・はい」
私は諦めました。
「実は、我が愚息、スレイに弱みを握られていてな」
「弱み、というのは?」
「人質を・・・・・・、取られているんだ・・・・・・」
「・・・・・・っ! 人、質・・・・・・?」
私は一瞬その言葉を疑った。
まさか、一国の王子ともあろうお方がそのような卑劣な行為を・・・・・・?
「それで、その人質となったお方は無事なのでしょうか?」
「・・・・・・わからぬ。しかし、私が此度の件での正式な場を設けるまでは人質には手は出さんだろう。仮にそんな事をすれば、自らの手札を自らで溝に放り捨てるようなものだからな。我が愚息とてそこまで阿呆ではあるまい」
「そう、ですね・・・・・・」
「そのようなお顔をなされるなリニス王女。折角の美人が台無しだぞ? それにこれは我が国、いや、我等親子の問題だ」
「・・・・・・っ。そうは申されましても、私の返答次第ではその人質の方に危害が及ぶ危険があるという事ですよね? でしたら、私の問題でもあります・・・・・・っ」
「まあ、あまり深く考えなくとも良い。勿論先に私が申したとおり、この縁談を受けるか否かはこの事とは関係無くリニス王女の自由だ」
「ですが・・・・・・っ」
私を安心させるかのように笑顔を浮かべるキース様。
「それに私があやつから要求されたのは『縁談の話を付ける』事と『それに対する場を設ける』事の二つのみでな。何、心配せずともその二つの要求さえ果たしてしまえばリニス王女の返答がどうであれ、その前に人質は帰ってくる手筈になっているそうだしな」
「もし、帰ってこなければ・・・・・・?」
「ん? ああ、そうだな。その時は・・・・・・、あやつにとって最も辛く、苦しむであろう重い罰を与える事にするとしようか」
「ふふふふ・・・・・・」と不気味に笑いながらそう言うキース様に、私は少し顔を引き攣らせる。
「だから安心しなさいリニス王女。・・・・・・おっと、この話はここまでにするとしようか。アルバート殿の毎年恒例『ありがた~いお話』が終わったようだ」
「え、あ、あの・・・・・・」
場内全体から聞こえてきた拍手の音に気が付いたキース様はそう言って話を打ち切り、
「結局、リニス王女の正直な気持ちとやらは聞き損ねてしまったが、もう一度だけ言っておくとしよう。リニス王女、どのような決断をしようとそれは王女の自由だ。自分の気持ちを一番に考えてくれ」
何度目かわからないその言葉をキース様は優しく、そして真剣に再び私に向かってそう言った。
『――、――――。ではっ、お次はリニス王女殿下による全種族対抗試合の開会宣言ですっ!!』
「ふふ、次はリニス王女の番か。今年も期待しているよ、頑張りなさい」
そうしてキース様もその拍手の輪の中へと交ざった。
・・・・・・・・・・。
自分の気持ちを、一番に・・・・・・。
「・・・・・・はいっ、それでは失礼致しますキース様」
まだ色々と不安ではありましたが、それでも私はキース様のそのお言葉によりある事を決意し、父と入れ替わりで壇上の上にあるマイクを手に取った。
そんな私を見たキース様は・・・・・・、
「ああ、それにな。一緒になるという事は、互いが互いを深く想っていなければ後々にどちらかが辛い想いをする。そのような想い、我が息子にも、勿論リニス王女にもしてほしくはないんだ」
おそらく、私の事を案じてこのような言葉を掛けてくれているのだろう。なんてお優しい御方なのでしょう・・・・・・。
「王族である以上、今でも政略結婚などというのは珍しくも無い話ではあるが・・・・・・。まあ、正直? 私としてはそのような老いぼれ共が勝手に作った古臭い風習はどうでも良くてな。だから、嫌なら嫌ときっぱり断ってくれても構わないぞ! はっはっはっ」
うわぁ・・・・・・、なんて事をこのような所ではっきりと仰る御方なのでしょう・・・・・・。
真面目そうなイメージだったキース様からそのような言葉が飛び出し、内心驚いてしまった。
「・・・・・・?」
それとほぼ同時に、私はある疑問が浮かび上がり、
「では、何故キース様は今回このようなお話を?」
そうキース様に尋ねてみた。すると、
「ん? ああ・・・・・・、実は我が愚そ・・・・・・。いや、スレイにどうしてもと頼み込まれてしまってな」
「・・・・・・ぐそ?」
「ああいやいや、気にしないでくれ。こっちの話なのでな」
・・・・・・これは追求しないほうが良いですね。何故かはわかりませんが、とっても嫌な予感しかしてきませんし・・・・・・。
そうですね、聞かなかった事にしておきましょう・・・・・・、
「はい、わかりまし」
「・・・・・・いや、やはり聞いてもらおう。隠していてもいずれはわかる事だしな」
「・・・・・・・・・・はい」
私は諦めました。
「実は、我が愚息、スレイに弱みを握られていてな」
「弱み、というのは?」
「人質を・・・・・・、取られているんだ・・・・・・」
「・・・・・・っ! 人、質・・・・・・?」
私は一瞬その言葉を疑った。
まさか、一国の王子ともあろうお方がそのような卑劣な行為を・・・・・・?
「それで、その人質となったお方は無事なのでしょうか?」
「・・・・・・わからぬ。しかし、私が此度の件での正式な場を設けるまでは人質には手は出さんだろう。仮にそんな事をすれば、自らの手札を自らで溝に放り捨てるようなものだからな。我が愚息とてそこまで阿呆ではあるまい」
「そう、ですね・・・・・・」
「そのようなお顔をなされるなリニス王女。折角の美人が台無しだぞ? それにこれは我が国、いや、我等親子の問題だ」
「・・・・・・っ。そうは申されましても、私の返答次第ではその人質の方に危害が及ぶ危険があるという事ですよね? でしたら、私の問題でもあります・・・・・・っ」
「まあ、あまり深く考えなくとも良い。勿論先に私が申したとおり、この縁談を受けるか否かはこの事とは関係無くリニス王女の自由だ」
「ですが・・・・・・っ」
私を安心させるかのように笑顔を浮かべるキース様。
「それに私があやつから要求されたのは『縁談の話を付ける』事と『それに対する場を設ける』事の二つのみでな。何、心配せずともその二つの要求さえ果たしてしまえばリニス王女の返答がどうであれ、その前に人質は帰ってくる手筈になっているそうだしな」
「もし、帰ってこなければ・・・・・・?」
「ん? ああ、そうだな。その時は・・・・・・、あやつにとって最も辛く、苦しむであろう重い罰を与える事にするとしようか」
「ふふふふ・・・・・・」と不気味に笑いながらそう言うキース様に、私は少し顔を引き攣らせる。
「だから安心しなさいリニス王女。・・・・・・おっと、この話はここまでにするとしようか。アルバート殿の毎年恒例『ありがた~いお話』が終わったようだ」
「え、あ、あの・・・・・・」
場内全体から聞こえてきた拍手の音に気が付いたキース様はそう言って話を打ち切り、
「結局、リニス王女の正直な気持ちとやらは聞き損ねてしまったが、もう一度だけ言っておくとしよう。リニス王女、どのような決断をしようとそれは王女の自由だ。自分の気持ちを一番に考えてくれ」
何度目かわからないその言葉をキース様は優しく、そして真剣に再び私に向かってそう言った。
『――、――――。ではっ、お次はリニス王女殿下による全種族対抗試合の開会宣言ですっ!!』
「ふふ、次はリニス王女の番か。今年も期待しているよ、頑張りなさい」
そうしてキース様もその拍手の輪の中へと交ざった。
・・・・・・・・・・。
自分の気持ちを、一番に・・・・・・。
「・・・・・・はいっ、それでは失礼致しますキース様」
まだ色々と不安ではありましたが、それでも私はキース様のそのお言葉によりある事を決意し、父と入れ替わりで壇上の上にあるマイクを手に取った。
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