うん、異世界!

ダラックマ

文字の大きさ
上 下
57 / 77
五章

〈マジアガるわ~。マジ卍祭り〉その12

しおりを挟む
「お久しぶりですレイジ様。その節は真にありがとうございました」

 そう言い、深々と頭を下げるアルド。

「いえいえそんなっ。それにしても、よく俺がここに居るって事がわかりましたね?」

「実は昨晩、私がこの大会の参加者リストを確認していると、レイジ様のお名前がありましたので、もしかしたらと思い、受付より少し離れた所から本人なのか否かを確認していたのです」

「そうだったんですか。でもそれなら、今じゃなくてもその場ですぐ声をかけてくれれば・・・・・・」

「そう致しますと、他の出場者の方々にあらぬ誤解を生ませてしまうやもしれませんでしたので」

 誤解? 何の誤解だ・・・・・・?

 アルドのその言葉に俺が頭を悩ませていると、ヴェルが俺にこう尋ねてきた。

「む、してレイジよ。一体その御仁は何者であるか?」

「ん? ああ、そういやヴェル達は初対面だったな」

 そして、俺は二人の方へ向き直り、アルドについて話し始めた。

「かくかく、しかじか、かくぅー」

「・・・・・・ふむ、そうであったのか」

 いつもと同じく完璧でわかり易さを重視した俺の説明を聞き、ヴェルはすぐに理解した様子でうんうんと頷いた。

 しかし、貧乳はというと・・・・・・、

「・・・・・・・・・・」

「貧乳? どうしかしたか? 珍しくやけに大人しいじゃねぇか」

 そう、いつもの貧乳ならあーだこ-だと何かしら突っかかって来そうなものなのに、何かを諦めた様子でただ静かにその場に座っているだけだったのだ。

 すると、そんな俺に対し貧乳は、はあ、と軽く溜め息を一つ漏らして言った。

「・・・・・・どうせいつも通り竜神様が説明口調で話し出すだろうしって思ってね。無駄な体力は使わないようにしてるだけよ・・・・・・」

「な・・・・・・っ」

 何だとっ!? まさか、あの貧乳が学んだというのか!?

「む、つまりはこういう事であるな? 我とレイジが相まみえる少し前に、こちらの御仁が引く馬車が運悪く賊に襲われていた窮地をたまたま通りがかったレイジが救い、その時知り合った、と・・・・・・」

「・・・・・・ほらね?」

「ぐ・・・・・・っ」

 生意気にも、貧乳が予測した通りになり、俺は自分でもよくわからない悔しさから下唇を噛み締める。

「む、どうかしたのか? レイジ」

「・・・・・・いや、何でも、ないっ」

 そう言うヴェルに俺は声を震わせながら答えた。すると、

「おや、ではあの時の竜というのは、まさか・・・・・・」

 ヴェルが改めて話した説明で悟ったのか、アルドが少し真剣な表情になりながらそう尋ねてきた。

「はい、お察しのとおり、この老いぼれがそうです」

「む、レイジよ、聞き捨てならぬな。確かに昔よりは老いたが、見た目だけで言えば我はまだ老いぼれと言う程では無いと思うぞ?」

 え、どこからどう見ても70越えのじじいにしか見えないんですが。

「ああ、でも危険は無いので安心して下さい。今は俺と契約してますので」

「わかりました。レイジ様のお言葉を信じましょう」

 俺が付け足した補足を聞き、アルドは表情を緩め、警戒を解いた。

「む、アルドとやら、その節は色々とこの国に迷惑をかけたようですまなかったな。我はヴェルガルド・バハムート、宜しく頼む」

「・・・・・・っ! バハムート・・・・・・。では、あなた様はあの・・・・・・」

「む、フフ。何、昔の事だ。それに、今は英雄ではなくここに居るレイジを主とするただの従者、そう畏まらずとも良い」

 そんな事言ってるくせに満更でもない顔してんのがすげぇむかつくんだが。

「お気遣い感謝致します。してレイジ様、そちらの可憐な女性は?」

「か、可憐だなんて・・・・・・。そんなぁ~、うふふ」

 誰がどう見てもわかる社交辞令的なお世辞をアルドに言われ、嬉しさでくねくねと気持ち悪く身をよじらせる貧乳。 

 ・・・・・・何だろう、素直にきもい・・・・・・。

 その姿を見て全身に鳥肌が立った俺は、さっさとこいつの紹介を済ませてしまおうと思い、

「ああ、こいつは貧乳・・・・・・」

 と、言いかけた次の瞬間、



「――――でぇっっ!!」



 ・・・・・・思いっきり横腹に蹴りを食らいました。

「――――な、何すんだこの野郎!!」

「初めましてアルドさん。私はアルカディア聖騎士所属のミーナと申します」

 って、無視かよ・・・・・・。

「よろしくお願い致します。それと、お会いして早々申し訳ないのですが、私はそろそろ戻らねばなりませんので失礼致します」

「え、もうですか?」

「はい、直に国王陛下とリニスお嬢様による開会の宣言が始まりますので。それに、こちらにはレイジ様に救って頂いたお礼を申し上げに来ただけでしたので、申し訳ありません」

「わかりました。リニスに会ったらよろしくお伝え下さい」

「畏まりました。それでは皆様、ご無理はなさらぬよう頑張って下さい。私も陰ながらではありますが、皆様を応援させて頂きますので。では、失礼致します」

 アルドはそう言い残し、この部屋を後にした。

「む、あのアルドとやら、礼儀正しく物わかりの良い男であったな」

「まあ、どっかの誰かさん達とは違って、アルドさんはこの世界で数少ない常識人の一人だからな」

「む、全くだ。ファフニールにも見習って欲しいものだな」

「本当ね。ソフィーもちょっとズレてるとこがあるし、見習って欲しいわ」

 一応お前らもその中に入ってるんですがねぇ。・・・・・・え? 俺も? あー、ちゃうちゃう。そんな訳あらへんがな~。・・・・・・、・・・・・・そう、だよね?

「ま、まあ何はともあれ、今は大会に集中だなっ。どうせやるからにはてっぺん取ってやろうぜ!」

 ・・・・・・俺がなっ!

 ミーナ(貧乳)視点――――

「ええ、そうね。ま、私は最初から優勝する以外は選択肢に無いけどっ!」

 例え私が負けちゃったとしても、こいつにだけは絶対に優勝は譲らないわ・・・・・・。

 どんな手を使ってでも!!

 ヴェル視点――――

「む、そうであるな。全力は出せぬが、我もクレアやあの御仁の期待に応えられるよう努力しよう」

 む・・・・・・、またこやつらはろくでもない事を考えておるな・・・・・・。

 はあ、よく飽きもせず・・・・・・。全く・・・・・・。

 戻って零時視点――――

「「ふふ、ふふふふふ・・・・・・」」

「むぅ・・・・・・、もう好きにしてくれ・・・・・・」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

処理中です...