うん、異世界!

ダラックマ

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五章

〈マジアガるわ~。マジ卍祭り〉その11

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「うわ、マジで結構参加者居るじゃん・・・・・・」

 受付へと向かっていると、俺の視界に飛び込んで来たのは、受付の場所から伸びる参加者と思われる者達の長蛇の列だった。

 しかも俺達がその列に近づくにつれ、並んでいるほぼ全員が鋭い目つきと共に威圧を放ってくる。

「・・・・・・」

 超帰りてぇ・・・・・・。

 正直この光景を見て、今すぐにでも回れ右したい、というのが本音だったが、ソフィーちゃんとエレナからのキッスの話があるが故に、俺の性欲と煩悩がその行為を許さなかった。

「とりあえず、俺達も並ぶか・・・・・・」

 そう言い、俺達は刺々しい視線を浴びながら列の最後尾に並んだ。



 ・・・・・・そうして数十分後、ようやく俺達の番が回ってきた。

「む、すまぬ、少し良いだろうか。ここに来れば指示を仰げると聞いて来たのだが」

 ヴェルが代表して受付に居た女性にそう話しかけた。

「はい、ではまずご記入頂いたお名前をお教え頂けますか?」

「む、ヴェルガルドだ」

「ミーナです」

「零時っす」

「ありがとうございます。では少しお待ち下さいね」

 その女性は慣れた手つきで参加者の名前が書かれた用紙をペラペラと捲っていく。

 そして、一枚の用紙のところで手を止め、

「ヴェルガルドさん、ミーナさん、レイジさん・・・・・・。はい、確認致しました。ではあちらに居る兵士さんの指示に従って奥へお進み下さい」

 と、少し離れた所に立つ一人の若い兵士を手で指し示し、俺達にそう促した。

「む、了解した」

 そしてその指示に従い、俺達は兵士さんの方へと向かう。

「・・・・・・ん?」

 すると、俺はある事に気が付いた。

「なあ、あの兵士ってもしかして・・・・・・」

 俺がヴェルにそう言いかけると、

「あ、出場者の皆様ですねっ」

 自分の下へと向かう俺達の存在に気が付いた兵士さんがそれを遮り、声を掛けてきた。

 のだが・・・・・・、

「では僕について来て下・・・・・・、げっ」

 その若き兵士さんは俺達の顔を見るや、凄く嫌そうな声を漏らし、表情は一気に青ざめていく。

 そう、その兵士というのは、俺達がここ〈エスタニア王国〉に到着した際、門前で入国許可書の有無を確認していたあの若き新米兵士だったのだ。

「・・・・・・っ。・・・・・・っ」

 その直後、兵士さんは何やらキョロキョロと俺達の周りを見渡す。

「・・・・・・あー、大丈夫大丈夫。あのおっさんは居ねぇから安心してくれ」

「えっ、いや、僕は別にっ」

 いやいや、今思いっきりあのおっさんが居るかどうか確認してたよね?

 誤魔化さずとも、あんな強面のおっさんにあんなやかられ方されたんじゃ、その反応は当然だろうと思うよ?

 俺でも同じ行動をとるだろうし。

「まあ、何だ。とにかく案内頼むよ。後もつっかえてるしな」

 ごちゃごちゃしている間に、俺達の後ろには受付とは別に、ちょっとした列が出来ていた。

「は、はいっ」

 その光景を見た兵士さんはそう返事をし、早急に動き出そうとするが、

「あ、ちょっとそこの兵士さん?」

 受付に居た女性に呼び止められてしまった。

「は、はい。何でしょうか?」

「いえ、あのですね・・・・・・」

 その女性は周りに聞こえないよう手で口元を隠し、こちらをちらちらと見ながら兵士さんの耳元で何やら伝え始めた。

「・・・・・・え? あ、はい、はい。わかり、ました」

「では、お願いしますね」

 伝え終わったのか、女性は受付へと戻っていく。

 ・・・・・・? 何だったんだ?

 俺がそう疑問に思っていると、とうとう我慢の限界に達した他の出場者から、

「おぉい! 早くしろよっ!」

 と、ついに野次を飛ばされしまい、

「――っ! す、すみません! ではこちらにっ」

 かなり焦った様子で兵士さんは改めて俺達を奥へと誘導し始めたのであった。



 そうして、少し進んだ先にあった扉の前まで俺達を案内すると、

「こちらで少しばかりお待ち下さい。あと、こちらは各ブロックの詳細ですので確認しておいて下さい」

 そう言い、俺達に一枚ずつ用紙を渡す兵士さん。

「以降は場内にアナウンスが流れますので、それに従って下さい。それではっ」

 それだけ言い残すと、兵士さんは走って自分の持ち場へと戻って行った。

 仕事大変そうだなー。それとも単に俺達から一刻も早く離れたかっただけなのか・・・・・・?

 走り去る兵士さんのその姿を後ろから眺めながら、そんな事を考える俺。

「む、入らぬのか?」

 そんな俺を見て、ヴェルが声をかけてくる。

「え、ああ、そうだな。とりあえず入るか」

 ヴェルにそう言われ、俺は中へ入ろうとその扉を開けた。



「・・・・・・む、我は5ブロックか」

「私は・・・・・・、6ブロックね」

 部屋に入った俺達がまずしたのは、自分達がどのブロックか確認する事だった。

「・・・・・・俺は2ブロックだな」

 確認した結果、初戦であるバトロワは三人共誰一人として被る事は無かった。

 まあ、初戦は一人しか勝ち上がれない訳だし、俺達の誰かが優勝すれば良い、という目線だけで見ると、俺達にとってこのブロックの配置は幸運そのもの・・・・・・。

 だぁがしかぁしっっ!! それはあ、く、ま、でっ、私情を抜けばの話よっ!!

 この戦い! 二人からのキッスの為、俺はどうしても勝たなければならない!! そうっ、この俺が!!

 故にヴェル、貧乳よ。同じブロックになれば、戦の騒ぎに乗じてまず真っ先にお前達を俺の手で屠るつもりだったが、こうなってしまっては致し方無い・・・・・・。

 良いだろう、上がって来るのなら上がって来い。だがその時は・・・・・・。

 ミーナ(貧乳)視点――――

 ちっ・・・・・・。ロリコンのくせに、運だけは良いのね。

 同じブロックになれば、一番初めに二人の純潔を奪おうとしているこいつの血で場内を染めて、その混乱に乗じて残りを一気に一掃するつもりだったけれど・・・・・・、ふっ、まあ良いわ。

 こいつが初戦で敗退する可能性が完全に消えた訳では無いしね。

 でももし、このロリコンが勝ち上がって来るというのならその時は・・・・・・。

 戻って零時視点――――



「「(俺、(私)の手で確実に仕留めてやる・・・・・・・・・・っ)」」



「む・・・・・・、はあ、全く・・・・・・」
 
 殺意にも似た闘志を俺と貧乳が互いにぶつけ合う姿を見て、呆れ果てるヴェル。

 ・・・・・・すると、コンコンとこの部屋の扉がノックされる音が聞こえてきた。

「? 誰だ?」

 後の事はアナウンスで指示がくるんじゃなかったっけ? と疑問に思いながらも、はいはーいと扉を開けると・・・・・・、

「失礼致します。調子はどうですかな? レイジ様」

「えっ、アルドさん!?」

 そこに居たのは、前に俺がリニスの馬車を助けた際に知り合った、アルドという渋カッコ良いおじ様だった。
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