うん、異世界!

ダラックマ

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五章

〈マジアガるわ~。マジ卍祭り〉その9

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「・・・・・・むぅ」
 
 祭り最終日、全種族対抗試合をするには絶好のお天気の朝を迎えた俺達が朝食をとる為、揃って下の階に向かっていると、ヴェルが何やらやつれたような雰囲気で小さく声を漏らした。

「おいおいヴェル、折角気持ちの良い朝だってのに一体どうしたんだよ」

 階段を下りながら俺がそう尋ねると、

「む・・・・・・、いや、昨晩あやつが我に襲い掛かって来てな・・・・・・」

 前に居るファフニールを指差しながら、溜め息混じりに答えるヴェル。

「んー? ああ、夜這いか」

「む・・・・・・、違う、間違っておるぞレイジ・・・・・・っ。あれは夜這いなどという生易しいものでは無い・・・・・・っ」

 俺が言った夜這いという言葉に対し、昨夜の事を思い出したのか、ヴェルはガタガタと全身を震わせながらそれを否定する。

 ・・・・・・ファフニール、君は一体ヴェルに何をしたんだい?

 ちょっとした私情によりファフニールに手を貸しはしたが、何せ俺はすぐに退散した為、その後何が起こったのかは知らなかったのだ。

「むぅ・・・・・・、唯一解せぬのが、どのようにして我があやつと我の寝床の間に張った黒炎の結界を、あやつが突破出来たのか・・・・・・」

 そう、まさに俺が手を貸したとこはそこだった。

 神滅級アルス・マグナの黒炎で張られた結界を破るには、この世界ではこれと同じレベルの魔法でしかありえない。(・・・・・・って、確か前にヴェルに聞いたような気がする)

 だがしかぁし! この世界にとって異例である力を持つ俺には、そんな事は関係無ねぇ!!

 あらゆる異能力を自由に付加し、使用出来る力。〈異能力無限付加〉。

 その力を使い、俺はある能力を新たに付加した。



 それは・・・・・・、『魔法無効化マジックキャンセル』!!



 魔法がある世界に放り込まれたのにも関わらず、何故こんな最強で定番の能力の存在を今まで忘れていたのかは自分でも不思議だったが・・・・・・、まあ、そんな事はこの際気にするまい。

 しかもこの能力さえあれば、大会の方も楽々突破出来るんじゃね? てか俺無敵じゃね?

 そんな事を考えながら、俺が顔をニヤつかせていると、

「む・・・・・・、まさかレイジ。お主が昨晩の件に一枚噛んでいるのではないだろうな・・・・・・?」

 ヴェルが疑いの眼差しを俺に向けながら超低い声で尋ねてきた。

「・・・・・・・・・・」

 それに対し、俺は少しの間黙秘権を行使。・・・・・・からの、



「――――この俺がっ、大切な仲間にそんな事をすると、お前は本気で思っているのか!?」


 
 全力でしらばっくれた。

 だってこいつの今の状態を見るに、そうそう俺俺~、なんて口が裂けても言えねぇんだもん。

 俺が結界を無力化したと知った途端、確実に俺に対して即時報復するだろうし、下手すりゃ暴れ狂ってこの宿屋を全焼させかねねぇしな。

 故に、俺は白を切る事にしたのさ!

「・・・・・・む、いやいや、思っておるに決まっておろう?」

 ――って、決まってるんだ!? 俺マジで信用無さ杉ワロタ!!

 まあ、何も言い返せねぇがな!! 今回は!!

「そもそも黒炎の結界を打ち消す芸当が出来る者など、この中では上手く制御が出来ぬエレナを除けば、お主だけであろうて」

 ですよねっ! やっぱそうなりますよね!

 ついさっき俺も自分でそう思ってて、あ、ここツッコまれたら逃げようねぇわ、って思っちゃったし!!

 しかもそれ、俺に教えてくれたのヴェルだもんねぇ!!

 詰んだーっ! と、俺が頭を抱えていると、

「ちょっと! 何グダグダやってんのよロリコン! 早くしないと朝食のお肉が無くなっちゃうじゃない!」

 階段を降りきった先で蹲る俺に向かって、貧乳がそう怒鳴ってきた。

「そう、ですよっ。今日、は、大切な日、なんです、から、たくさ、んお肉を食べ、て、元気を付け、ないとっ」

 次いで、ぐっ、と可愛らしくガッツポーズをしながらソフィーちゃんも貧乳に加勢。

 ・・・・・・何なんだこいつらは。肉を食べないと死ぬ呪いにでもかかってるのか?

 てかソフィーちゃん、君のそれはいつも通りだよね? 大切な日、とか関係無く。

 ・・・・・・とまあ、色々と思うところはある、がっ、ナイスタイミングだ二人共っ!

 最早俺とこの宿屋が助かるには、これに乗っかる他は無い!!

 そう考えた俺は、静かにすっと立ち上がり、片手で自身の髪をかき上げて、言った。



「ああ、そうだね。ごめんよルェディ達・・・・・・。さ、早く一緒にプァフェクツなミィートを食しに行こうじゃあないか・・・・・・」



 そして、大げさにポーズをとりながらゆっくりと二人に手を差し伸べる俺。

 これで話題は昨晩の件から朝食の件へと逸れるはず、かと思ったが・・・・・・、

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 話題が逸れるどころか、何故か皆そんな俺を凝視しながらその場で時間が止まったかのように固まっていた。

 ・・・・・・え、どして?

 確かに、柄にも無い事をした自覚はある、が・・・・・・そこまで?

 せめて誰か一人でも何かしゃべってくれよ。でないと、俺自身と宿屋を救う為にした頑張りが無駄になるじゃないか。

 未だ静まり返っている空間に、少しずつではあるが、俺は徐々にライフポインツを削られていく。(主に恥ずかしさで)

 そして、そろそろ俺のメンタルが限界を迎えそうになったその時、



「「「「「・・・・・・・・・・きも」」」」」



 と、メンバー全員がそう綺麗に口を揃え、俺にダイレクトアタックをかまして来ました。 
 
「――――ぐぅはぁあっ!!」

 俺はそのまま、五人分の冷たい視線を一挙に浴びながら冷たい床に大の字でぶっ倒れた。

「零時、様・・・・・・? あれ、は、流石にちょ、っと・・・・・・。色々とキツ、イの、で、これからは、その、止めて下、さいね・・・・・・?」

「――――ゴフゥッツ!!」

 そしてまさかのソフィーちゃんによるオーバーキィイルゥゥウ!!

 しかも多分素の状態だわこの子! それが余計に心をエグるぅう!!

「・・・・・・む、ソフィアの言うとおりであるぞレイジよ・・・・・・。あれは、我からしたら最早恐怖でしかなかったぞ? キモ過ぎてな」

「そう、ね・・・・・・。今後は控えてもらって良いかしら・・・・・・? 本当にキモかったから」

「キモイウザイキモイウザイキモイウザイ」

 ソフィーちゃんに続き、他三名も順番に転がっている俺に対して言葉の暴力という名のジャブを確実にキメてくる。

「あ・・・・・・、あ・・・・・・」

 我、既に爆死寸前!!

 ・・・・・・だが、そんな状態の俺を見て、こいつらが立ち止まるはずも無く・・・・・・・・・・。



「・・・・・・・・・・いっぺん、死ん○みる?」



「――――ィイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 最後に控えていたエレナによって放たれたその言葉の弾丸に、既にマイナス域に達していた俺のライフポインツに更にダメージが追加される。

 ・・・・・・こ、これ以上は、もうっ、止めてくれぇ! 俺のライフはもうゼロよ!!

 そして、すぐさまそう心の中で皆に切実に訴える俺であった・・・・・・。
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