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四章
朝食の時間
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その後、エレナを起こしてから貧乳とソフィーちゃんとも合流し、朝食をとる為、皆で下の階へと向かっていた。
「大丈夫だったエレナ? こいつに変な事されなかった?」
「おいおい、止めてくれ。いくら俺だって寝込みを襲うような真似は・・・・・・ 」
貧乳がエレナにそんな事を聞いたので、俺は何もしていないと先に証言しようとしたその時、
「じ~~~~~~・・・・・・・・・・・・・・・・」
「しない、さ・・・・・・」
ヴェルが横から俺に対してジトッ、とした視線を向けてきた事により、俺は少し口ごもってしまった。
「何、最後の。あんたまさか・・・・・・」
そんな俺を見逃さなかった貧乳が即行疑いの眼差しを向けてくる。
「いやいやマジだって! 何もしてない何もしてないっ!」
ま、まあ、正直ちょぉっと何かしようとは思ったけど、結局何もして無いしっ? 未遂だからセーフだしっ?
「う~ん、何も無かった、と思うけど?」
必死に貧乳に対し俺が無罪を主張していると、エレナもはっきりと俺の無罪を証言してくれた。
「そ、そう? なら良いんだけど」
あぁありがとうエレナっ! いや、エレナ様!!
「さ、さあっ、それよりも早く飯食いに行こうぜ! あー、腹減ったーっ。な、エレナ!」
「うんっ」
「・・・・・・」
そして、俺は未だ貧乳からの疑惑に満ちた視線を受けながらではあったが、何とかやり過ごし、下の階にあった大き目のテーブル席にそそくさと座った。
「「「きゅるるる・・・・・・」」」
すると、他の宿泊客達も朝食をとっていた為か、別のテーブルに並ぶ美味そうな料理を見てエレナと貧乳、そしてソフィーちゃんのお腹が鳴るのが聞こえてきた。
「・・・・・・そういえば、昨日何も食べずに寝ちゃってたわね」
「・・・・・・は、い」
「・・・・・・ぐーぐーへりんこファ○ヤー」
あれ? 何か今エレナから聞き覚えのあるちょっと危ない言葉が飛び出したような・・・・・・。偶然かな? 偶然だよな? だってエレナが知ってる訳ねぇもんな、うん、偶然って事にしておこう。
そうして、全員が同じテーブルに着席した後、ヴェルが俺に話しかけてきた。
「む、レイジよ。我には後ほど魔力を頼んでも良いか?」
「ん、ああ、わかった」
「それと、ついでにファフニールにも頼みたいのだが、良いだろうか?」
「ふふ、それはありがたいのだけれど、ヴェルガルドだけじゃなく私にまで渡しちゃったら、いくら何でもレイジが死んじゃうわよ」
ヴェルのその申し出に、ファフニールが笑いながら口を挟んでくる。
「む、それについては問題は無かろうて」
「? どういう事?」
「あー、それはね?」
きょとんとするファフニールに対し、俺の事情を知る奴の一人である貧乳が口を開いた。
「この最低クズロリコン野郎には我等が主様のご好意で授かった特別な能力があるのよ。その中に『無限の魔力』なんていうものがあってね。ほんと自分でも何言ってんのかって思うんだけど、このクズに限っては魔力切れなんていう言葉は存在しないって訳」
「・・・・・・え? 無限? え?」
貧乳によるその説明に多少混乱気味になるファフニール。
「む、落ち着けファフニール。おそらくミーナが申しておる事は事実であろう。『無限の魔力』、などというものは我も今初めて知ったが、レイジの底無しの魔力量については既に我もその身を持って体感しておるのでな」
「へ、へえ・・・・・・。ていうか、あなた達って天界の聖騎士よね? じゃあその主っていうのは」
ファフニールがあの馬鹿の事を言いかけた途端、貧乳が無い胸をふんっと張りながらそれを遮った。
「ふふ、そう! 何を隠そう我等が主様はあの崇高な「シン・A・マルティ、ネウス様、です」って、ちょっとぉ!?」
しかし、貧乳が熱弁する途中で見事ソフィーちゃんに言葉を被せられ、それは強制終了させられた。
ドンマイ貧乳。そしてグッジョブソフィーちゃん。
「あぁんもう! 何でそこで被せてくるのよソフィー!」
「い、え、すみま、せん。めんど・・・・・・長くなりそう、だった、ので、つい」
「え、今面倒くさいって言いかけなかった? ねぇソフィーっ!?」
「・・・・・・・・・・」
本当に面倒くさいのか、完全に貧乳をフル無視するソフィーちゃん。
ダークソフィーちゃん、もうその辺にしておいてやれよ。貧乳、もう既に涙目だぜ・・・・・・?
「そう、あの属性神様が関わっていたなんて、ねぇ・・・・・・」
未だ騒いでいる二人(貧乳オンリー)の事は気にせずに、ファフニールは口元に手を当てて小さくそう言葉を漏らした。
・・・・・・えーと、さ。まず二人を止めない? 周りの人達に迷惑がかか・・・・・・
「む、我も初めて聞かされた時は流石に驚いたぞ」
あ、ヴェル。お前もでやがりますか。こんな近くで騒がれている中でよく冷静に話が出来ますねぇあなた達。
周りの視線とかでハラハラとかしない? しないのかな? 俺はすっげぇしてるよ? なぁう。
「まあでも、そういう事なら色々と納得ね」
そしてこいつはシンの名前を出した途端に一体何を納得したのだろうか。その色々とってやつが超気になるんですけど。
「じゃあ、私の分も後でお願いしようかしら?」
「はあ、わかったよ。でもその代わり、今はちゃんと皆と同じ飯を食えよ? いくら必要が無いからって言っても今はこうして皆で朝食をとりに来てるんだからな」
「む、了解した」
「はーい。わかってるわよそんな事」
全く、まあ納得の理由はまた今度聞かせてもらうとして、後は・・・・・・。
「いつまでやってんだお前等はっ」
「――ぷぎゅっ」
「――ふにゃっ」
いい加減そろそろマジでやかましく(貧乳が)なってきたので、俺は二人に軽くチョップをいれる。
「にゃ、にゃにするのよっ!」
「い、痛い、です・・・・・・」
「お前等なー、周りの人様の迷惑もちったぁ考えろよ。ここに居るのは俺達だけじゃないんだぞ?」
「あ、う・・・・・・。ご、ごめんなさい・・・・・・」
周りを見て頭が冷えたのであろう貧乳は、言い訳せずにすぐ俺達と周りの方々に謝罪をした。
「素直でよろしい。で、ソフィーちゃんは?」
そして、次に俺はソフィーちゃんの方へと向き、聞いた。
「わ、私は、何も・・・・・・」
「・・・・・・んん?」
おそらく、自分は騒いでないからセーフ、とでも思っているのだろうが、それは間違ってるぜソフィーちゃん。
「・・・・・・よく聞こえなかったなぁ? ワンモアプリーズ?」
俺はもう一度手をチョップの形に変えてそうソフィーちゃんに聞き返す。
「――ひぅっ、む、無視、して、すみません、でし、た・・・・・・」
「うんうん、よろしい。じゃ、皆仲良くご飯といこうか」
ちゃんと謝罪したソフィーちゃんの頭をぽんぽんと軽く撫でてから俺は自分の席へと戻る。
「・・・・・・っ」
ん? ソフィーちゃん、頭を押さえながら俯いて一体どうしたんだろう? ぽんぽん、強かったのかな?
そんな事を思っていると、俺達の前を男性のスタッフさんっぽい人が通りかかったので、俺は注文をする為呼び止める事に。
「スタッフゥー! スタッフゥー!」
すると、俺の呼びかけに反応したその人は俺達のテーブルの前まで再度近づき、口を開いた。
「フィッシュ、オア、ビーフ?」
「・・・・・・は?」
え、あーうん、ちょっと待って? ここって確か宿屋、だよね? どっかの旅客機の中じゃあないよね? そもそもここ異世界だよ、ねっ?
フィッシュ、オア、ビーフ? ・・・・・・なんでやねん!!
魚と肉の他にメニューはねぇのかよ!!
「あっ、私ビーフで!」
「私、も、ビーフ、でお願い、しま、す」
――うぅおい! まさかの違和感無し!? マジで? この世界の宿屋はこれが普通なの!?
ってか、そんな事よりお前等、よく朝一からそんな重いもん食えるなっ! ぶれねぇお前等に乾杯!!
「じゃあ私はフィッシュにしようかしら。エレナはどうする?」
「私もそれでっ」
「む、そうだな。では我もビーフを頂くとしようか。あ、量は少なめで頼む」
「わかりました。ビーフが三つ、一つは少なめで、フィッシュが二つですね? あなたはどうなさいますか?」
俺以外の全員の注文をとり終えた男性が、まだ注文をしていない俺にそう尋ねてくる。
それに対し、俺は・・・・・・、
「すみません、サラダ、ありますか・・・・・・?」
と、ヘルシーな注文を出しました。
「「「「「・・・・・・えっ?」」」」」
俺のその意外な注文に全員が一斉に俺に向けて、こいつ大丈夫? 的な視線を飛ばしてくる。
いやいやいや、理由としたら昨晩飲み過ぎたってのもあるけどさ、でもほら、周り見てみ?
ビーフはマジで論外として、フィッシュよ。ほらあそこで出されてる料理なんて煮付けだぜ? 考えてもみろよ、朝から煮付け・・・・・・。ごめんっ、本っ当にマジでそれは重いっ!!
いや、嫌いじゃないのよ!? むしろ煮付けは好きな方なんだけどさ!!
なぁんで朝に出すかなぁ!? 晩飯で食いたかったぜ畜生!!
「ええ、ございますよ? ではサラダがお一つでよろしかったですか?」
「はい、それでお願いします・・・・・・」
「わかりました。では少々お待ち下さいね」
そう言い、男性スタッフはカウンターの奥へと消えていった。
「ね、ねぇ・・・・・・」
すると、貧乳が俺に声を掛けてくる。
「あんた、どっか調子でも悪いの? 頭、は大丈夫じゃないか。風邪?」
「おい、それ心配してんのか喧嘩売ってんのかどっちだ?」
「だって、あんたなら迷わずビーフを選ぶと思ってたのに、まさかのサラダだなんて、元からおかしい頭が余計におかしくなったとしか・・・・・・」
「よーし後者の方だな? お前、飯食った後覚えてろよ」
全く、こいつ等は俺を一体何だと思ってるんだ。そもそも何で俺が肉を選ばないだけでこんな反応をされなくちゃならんのだ。
今までに俺が肉に対して固執するような場面が一度でも・・・・・・、
~~そして蘇る狩りの場面~~
『肉ぅ・・・・・・、肉を置いてけぇえええええええ!!』
・・・・・・・・・・あー、そういやあったね、こんな事が。
だからなのかな? 全員が未だに心配そうな視線を向けてきているのは。
「はあ、大丈夫だって。単に朝から肉やらは重いかなって思ってサラダにしただけで、体調が悪いとか、そんなのは全然無いから」
「そうなの? それならそうと早く言いなさいよ。ちょっと心配しちゃったじゃない」
ほう、君はあれを心配したと言うのか。面白い子だな。
「良かった、です・・・・・・。でも、お肉は、別に重く、ない、ですよ?」
うん、君はそうでも普通は違うんだよ? あ、それとももしかして、重量の事を言っているのかな?
「もしレイジが病気になっても私が看病してあげるからね!」
今すぐ看病して下さいっ! ・・・・・・色んな意味でっ!!
「大丈夫よエレナ。本当に病気になっても私が作ったお薬さえ飲めば一瞬で治るから」
え、それ大丈夫なやつだよね? 一瞬で逝けるとか、そういうのじゃないよねぇ!?
「む、我は・・・・・・」
「あ、ヴェルは良いや。何となく、真面目で面白味の無い事を言いそうな雰囲気だったし」
「――――むぅっ、酷いっっ!!」
そんなこんなで楽しく皆で雑談をしていると、注文していた料理が次々に運ばれてきた。
「お待たせしましたー。こちらがビーフ少な目に、こちらの二つが通常のビーフですねー。それとフィッシュが二つで、こちらがサラダになりまーす」
そう言い、先程と違う若い女性のスタッフが、俺達の目の前にテキパキと慣れた手付きで料理が盛られたお皿を置いていく。
「ではでは、失礼しまーす」
全て置き終わると、その人はゆるーい感じでそれだけ言ってたったかたーっ、と俺達のテーブルから離れていった。
何か、個性的? な人だったなー・・・・・・。
「まあ良いか。それより、冷めない内に食べるとしますかね」
冷めるも何も、俺はサラダだから関係ねぇんだけどな。
そして、俺が食べ始めようとしたその時、
「レイジ、それだけだとお腹いっぱいにならないだろうからこれあげる」
そう言ってエレナが俺の皿に煮付け、ではなく、添えられていた野菜をすっ、とのせてきた。
サラダ食ってる奴に野菜を渡すって・・・・・・。しかし、これはエレナが好意でくれた物だし、その気持ちを無下にするって訳にもなぁ・・・・・・。
「あ、ああ。ありがとうエレナ」
そう考えた俺は、とりあえずお礼を言い、ぐっと気持ちを抑えてその好意を受け入れる事にした。
すると、その光景を見ていた貧乳とソフィーちゃんが、
「あ、私のこれもあげるわー。お腹空いてるでしょー?」
「これ、も、どうぞ・・・・・・っ」
もの凄い速度でパパッ、と俺の皿にニンジンらしきものやピーマンらしき野菜を放り込んでくる。
「・・・・・・・・・・」
その時、俺は確信した。
「お前等・・・・・・っ、単に苦手なもんを俺に押し付けてるだけじゃねぇか!!」
そう、こいつ等のこの行動は、好意などではない、と・・・・・・。
「くっ、戦略的撤退よ! ソフィー、エレナ!」
「「了解っ!」」
撤退と言っても、ただ皿を持って俺から離れた位置に座り直すという、何とも幼稚なものだった。
何の遊びだよ、ったく・・・・・・。
俺はその三人の楽しそうな姿を見て、はあ・・・・・・、と溜め息を漏らし、しぶしぶ放り込まれた野菜達を食べ始める。
「今回は食ってやるが、次からはちゃんと自分達で食えよ?」
いや、ていうか無理矢理にでも食わす。
「ありがとね、レイジっ」
こういう時しか俺の名前をしっかりと言えんのか貧乳は・・・・・・。
「ありが、とう、ござい、ます、零時、様。あ、あと、これから、も、よろしくお願い、します」
あれ、この子ちゃんと人の話聞いてた? 俺、今回だけって言ったよね?
「ありがとうっ、レイジ大好き!!」
あっふん・・・・・・っ! まあ、その、何だ。エレナの分は、これからも食べてやっても、良いかな。
「む、はあ、静かに食事も出来んのかこやつらは・・・・・・」
「若いって良いわねぇ」
「む、何を言っとるか。お主もまだまだ若いであろうが」
「えっ、やぁだヴェルガルド! それって遠回しの愛の告白? そうよね? そういう事よねぇ!?」
「だぁあ! 何がどうなって今のが愛の告白とやらになるのだ! 妄想も大概にせぃ!!」
そんな感じで、俺達の朝食タイムは奇跡的に周りからクレームも来ずに、平和に過ぎていった。
「大丈夫だったエレナ? こいつに変な事されなかった?」
「おいおい、止めてくれ。いくら俺だって寝込みを襲うような真似は・・・・・・ 」
貧乳がエレナにそんな事を聞いたので、俺は何もしていないと先に証言しようとしたその時、
「じ~~~~~~・・・・・・・・・・・・・・・・」
「しない、さ・・・・・・」
ヴェルが横から俺に対してジトッ、とした視線を向けてきた事により、俺は少し口ごもってしまった。
「何、最後の。あんたまさか・・・・・・」
そんな俺を見逃さなかった貧乳が即行疑いの眼差しを向けてくる。
「いやいやマジだって! 何もしてない何もしてないっ!」
ま、まあ、正直ちょぉっと何かしようとは思ったけど、結局何もして無いしっ? 未遂だからセーフだしっ?
「う~ん、何も無かった、と思うけど?」
必死に貧乳に対し俺が無罪を主張していると、エレナもはっきりと俺の無罪を証言してくれた。
「そ、そう? なら良いんだけど」
あぁありがとうエレナっ! いや、エレナ様!!
「さ、さあっ、それよりも早く飯食いに行こうぜ! あー、腹減ったーっ。な、エレナ!」
「うんっ」
「・・・・・・」
そして、俺は未だ貧乳からの疑惑に満ちた視線を受けながらではあったが、何とかやり過ごし、下の階にあった大き目のテーブル席にそそくさと座った。
「「「きゅるるる・・・・・・」」」
すると、他の宿泊客達も朝食をとっていた為か、別のテーブルに並ぶ美味そうな料理を見てエレナと貧乳、そしてソフィーちゃんのお腹が鳴るのが聞こえてきた。
「・・・・・・そういえば、昨日何も食べずに寝ちゃってたわね」
「・・・・・・は、い」
「・・・・・・ぐーぐーへりんこファ○ヤー」
あれ? 何か今エレナから聞き覚えのあるちょっと危ない言葉が飛び出したような・・・・・・。偶然かな? 偶然だよな? だってエレナが知ってる訳ねぇもんな、うん、偶然って事にしておこう。
そうして、全員が同じテーブルに着席した後、ヴェルが俺に話しかけてきた。
「む、レイジよ。我には後ほど魔力を頼んでも良いか?」
「ん、ああ、わかった」
「それと、ついでにファフニールにも頼みたいのだが、良いだろうか?」
「ふふ、それはありがたいのだけれど、ヴェルガルドだけじゃなく私にまで渡しちゃったら、いくら何でもレイジが死んじゃうわよ」
ヴェルのその申し出に、ファフニールが笑いながら口を挟んでくる。
「む、それについては問題は無かろうて」
「? どういう事?」
「あー、それはね?」
きょとんとするファフニールに対し、俺の事情を知る奴の一人である貧乳が口を開いた。
「この最低クズロリコン野郎には我等が主様のご好意で授かった特別な能力があるのよ。その中に『無限の魔力』なんていうものがあってね。ほんと自分でも何言ってんのかって思うんだけど、このクズに限っては魔力切れなんていう言葉は存在しないって訳」
「・・・・・・え? 無限? え?」
貧乳によるその説明に多少混乱気味になるファフニール。
「む、落ち着けファフニール。おそらくミーナが申しておる事は事実であろう。『無限の魔力』、などというものは我も今初めて知ったが、レイジの底無しの魔力量については既に我もその身を持って体感しておるのでな」
「へ、へえ・・・・・・。ていうか、あなた達って天界の聖騎士よね? じゃあその主っていうのは」
ファフニールがあの馬鹿の事を言いかけた途端、貧乳が無い胸をふんっと張りながらそれを遮った。
「ふふ、そう! 何を隠そう我等が主様はあの崇高な「シン・A・マルティ、ネウス様、です」って、ちょっとぉ!?」
しかし、貧乳が熱弁する途中で見事ソフィーちゃんに言葉を被せられ、それは強制終了させられた。
ドンマイ貧乳。そしてグッジョブソフィーちゃん。
「あぁんもう! 何でそこで被せてくるのよソフィー!」
「い、え、すみま、せん。めんど・・・・・・長くなりそう、だった、ので、つい」
「え、今面倒くさいって言いかけなかった? ねぇソフィーっ!?」
「・・・・・・・・・・」
本当に面倒くさいのか、完全に貧乳をフル無視するソフィーちゃん。
ダークソフィーちゃん、もうその辺にしておいてやれよ。貧乳、もう既に涙目だぜ・・・・・・?
「そう、あの属性神様が関わっていたなんて、ねぇ・・・・・・」
未だ騒いでいる二人(貧乳オンリー)の事は気にせずに、ファフニールは口元に手を当てて小さくそう言葉を漏らした。
・・・・・・えーと、さ。まず二人を止めない? 周りの人達に迷惑がかか・・・・・・
「む、我も初めて聞かされた時は流石に驚いたぞ」
あ、ヴェル。お前もでやがりますか。こんな近くで騒がれている中でよく冷静に話が出来ますねぇあなた達。
周りの視線とかでハラハラとかしない? しないのかな? 俺はすっげぇしてるよ? なぁう。
「まあでも、そういう事なら色々と納得ね」
そしてこいつはシンの名前を出した途端に一体何を納得したのだろうか。その色々とってやつが超気になるんですけど。
「じゃあ、私の分も後でお願いしようかしら?」
「はあ、わかったよ。でもその代わり、今はちゃんと皆と同じ飯を食えよ? いくら必要が無いからって言っても今はこうして皆で朝食をとりに来てるんだからな」
「む、了解した」
「はーい。わかってるわよそんな事」
全く、まあ納得の理由はまた今度聞かせてもらうとして、後は・・・・・・。
「いつまでやってんだお前等はっ」
「――ぷぎゅっ」
「――ふにゃっ」
いい加減そろそろマジでやかましく(貧乳が)なってきたので、俺は二人に軽くチョップをいれる。
「にゃ、にゃにするのよっ!」
「い、痛い、です・・・・・・」
「お前等なー、周りの人様の迷惑もちったぁ考えろよ。ここに居るのは俺達だけじゃないんだぞ?」
「あ、う・・・・・・。ご、ごめんなさい・・・・・・」
周りを見て頭が冷えたのであろう貧乳は、言い訳せずにすぐ俺達と周りの方々に謝罪をした。
「素直でよろしい。で、ソフィーちゃんは?」
そして、次に俺はソフィーちゃんの方へと向き、聞いた。
「わ、私は、何も・・・・・・」
「・・・・・・んん?」
おそらく、自分は騒いでないからセーフ、とでも思っているのだろうが、それは間違ってるぜソフィーちゃん。
「・・・・・・よく聞こえなかったなぁ? ワンモアプリーズ?」
俺はもう一度手をチョップの形に変えてそうソフィーちゃんに聞き返す。
「――ひぅっ、む、無視、して、すみません、でし、た・・・・・・」
「うんうん、よろしい。じゃ、皆仲良くご飯といこうか」
ちゃんと謝罪したソフィーちゃんの頭をぽんぽんと軽く撫でてから俺は自分の席へと戻る。
「・・・・・・っ」
ん? ソフィーちゃん、頭を押さえながら俯いて一体どうしたんだろう? ぽんぽん、強かったのかな?
そんな事を思っていると、俺達の前を男性のスタッフさんっぽい人が通りかかったので、俺は注文をする為呼び止める事に。
「スタッフゥー! スタッフゥー!」
すると、俺の呼びかけに反応したその人は俺達のテーブルの前まで再度近づき、口を開いた。
「フィッシュ、オア、ビーフ?」
「・・・・・・は?」
え、あーうん、ちょっと待って? ここって確か宿屋、だよね? どっかの旅客機の中じゃあないよね? そもそもここ異世界だよ、ねっ?
フィッシュ、オア、ビーフ? ・・・・・・なんでやねん!!
魚と肉の他にメニューはねぇのかよ!!
「あっ、私ビーフで!」
「私、も、ビーフ、でお願い、しま、す」
――うぅおい! まさかの違和感無し!? マジで? この世界の宿屋はこれが普通なの!?
ってか、そんな事よりお前等、よく朝一からそんな重いもん食えるなっ! ぶれねぇお前等に乾杯!!
「じゃあ私はフィッシュにしようかしら。エレナはどうする?」
「私もそれでっ」
「む、そうだな。では我もビーフを頂くとしようか。あ、量は少なめで頼む」
「わかりました。ビーフが三つ、一つは少なめで、フィッシュが二つですね? あなたはどうなさいますか?」
俺以外の全員の注文をとり終えた男性が、まだ注文をしていない俺にそう尋ねてくる。
それに対し、俺は・・・・・・、
「すみません、サラダ、ありますか・・・・・・?」
と、ヘルシーな注文を出しました。
「「「「「・・・・・・えっ?」」」」」
俺のその意外な注文に全員が一斉に俺に向けて、こいつ大丈夫? 的な視線を飛ばしてくる。
いやいやいや、理由としたら昨晩飲み過ぎたってのもあるけどさ、でもほら、周り見てみ?
ビーフはマジで論外として、フィッシュよ。ほらあそこで出されてる料理なんて煮付けだぜ? 考えてもみろよ、朝から煮付け・・・・・・。ごめんっ、本っ当にマジでそれは重いっ!!
いや、嫌いじゃないのよ!? むしろ煮付けは好きな方なんだけどさ!!
なぁんで朝に出すかなぁ!? 晩飯で食いたかったぜ畜生!!
「ええ、ございますよ? ではサラダがお一つでよろしかったですか?」
「はい、それでお願いします・・・・・・」
「わかりました。では少々お待ち下さいね」
そう言い、男性スタッフはカウンターの奥へと消えていった。
「ね、ねぇ・・・・・・」
すると、貧乳が俺に声を掛けてくる。
「あんた、どっか調子でも悪いの? 頭、は大丈夫じゃないか。風邪?」
「おい、それ心配してんのか喧嘩売ってんのかどっちだ?」
「だって、あんたなら迷わずビーフを選ぶと思ってたのに、まさかのサラダだなんて、元からおかしい頭が余計におかしくなったとしか・・・・・・」
「よーし後者の方だな? お前、飯食った後覚えてろよ」
全く、こいつ等は俺を一体何だと思ってるんだ。そもそも何で俺が肉を選ばないだけでこんな反応をされなくちゃならんのだ。
今までに俺が肉に対して固執するような場面が一度でも・・・・・・、
~~そして蘇る狩りの場面~~
『肉ぅ・・・・・・、肉を置いてけぇえええええええ!!』
・・・・・・・・・・あー、そういやあったね、こんな事が。
だからなのかな? 全員が未だに心配そうな視線を向けてきているのは。
「はあ、大丈夫だって。単に朝から肉やらは重いかなって思ってサラダにしただけで、体調が悪いとか、そんなのは全然無いから」
「そうなの? それならそうと早く言いなさいよ。ちょっと心配しちゃったじゃない」
ほう、君はあれを心配したと言うのか。面白い子だな。
「良かった、です・・・・・・。でも、お肉は、別に重く、ない、ですよ?」
うん、君はそうでも普通は違うんだよ? あ、それとももしかして、重量の事を言っているのかな?
「もしレイジが病気になっても私が看病してあげるからね!」
今すぐ看病して下さいっ! ・・・・・・色んな意味でっ!!
「大丈夫よエレナ。本当に病気になっても私が作ったお薬さえ飲めば一瞬で治るから」
え、それ大丈夫なやつだよね? 一瞬で逝けるとか、そういうのじゃないよねぇ!?
「む、我は・・・・・・」
「あ、ヴェルは良いや。何となく、真面目で面白味の無い事を言いそうな雰囲気だったし」
「――――むぅっ、酷いっっ!!」
そんなこんなで楽しく皆で雑談をしていると、注文していた料理が次々に運ばれてきた。
「お待たせしましたー。こちらがビーフ少な目に、こちらの二つが通常のビーフですねー。それとフィッシュが二つで、こちらがサラダになりまーす」
そう言い、先程と違う若い女性のスタッフが、俺達の目の前にテキパキと慣れた手付きで料理が盛られたお皿を置いていく。
「ではでは、失礼しまーす」
全て置き終わると、その人はゆるーい感じでそれだけ言ってたったかたーっ、と俺達のテーブルから離れていった。
何か、個性的? な人だったなー・・・・・・。
「まあ良いか。それより、冷めない内に食べるとしますかね」
冷めるも何も、俺はサラダだから関係ねぇんだけどな。
そして、俺が食べ始めようとしたその時、
「レイジ、それだけだとお腹いっぱいにならないだろうからこれあげる」
そう言ってエレナが俺の皿に煮付け、ではなく、添えられていた野菜をすっ、とのせてきた。
サラダ食ってる奴に野菜を渡すって・・・・・・。しかし、これはエレナが好意でくれた物だし、その気持ちを無下にするって訳にもなぁ・・・・・・。
「あ、ああ。ありがとうエレナ」
そう考えた俺は、とりあえずお礼を言い、ぐっと気持ちを抑えてその好意を受け入れる事にした。
すると、その光景を見ていた貧乳とソフィーちゃんが、
「あ、私のこれもあげるわー。お腹空いてるでしょー?」
「これ、も、どうぞ・・・・・・っ」
もの凄い速度でパパッ、と俺の皿にニンジンらしきものやピーマンらしき野菜を放り込んでくる。
「・・・・・・・・・・」
その時、俺は確信した。
「お前等・・・・・・っ、単に苦手なもんを俺に押し付けてるだけじゃねぇか!!」
そう、こいつ等のこの行動は、好意などではない、と・・・・・・。
「くっ、戦略的撤退よ! ソフィー、エレナ!」
「「了解っ!」」
撤退と言っても、ただ皿を持って俺から離れた位置に座り直すという、何とも幼稚なものだった。
何の遊びだよ、ったく・・・・・・。
俺はその三人の楽しそうな姿を見て、はあ・・・・・・、と溜め息を漏らし、しぶしぶ放り込まれた野菜達を食べ始める。
「今回は食ってやるが、次からはちゃんと自分達で食えよ?」
いや、ていうか無理矢理にでも食わす。
「ありがとね、レイジっ」
こういう時しか俺の名前をしっかりと言えんのか貧乳は・・・・・・。
「ありが、とう、ござい、ます、零時、様。あ、あと、これから、も、よろしくお願い、します」
あれ、この子ちゃんと人の話聞いてた? 俺、今回だけって言ったよね?
「ありがとうっ、レイジ大好き!!」
あっふん・・・・・・っ! まあ、その、何だ。エレナの分は、これからも食べてやっても、良いかな。
「む、はあ、静かに食事も出来んのかこやつらは・・・・・・」
「若いって良いわねぇ」
「む、何を言っとるか。お主もまだまだ若いであろうが」
「えっ、やぁだヴェルガルド! それって遠回しの愛の告白? そうよね? そういう事よねぇ!?」
「だぁあ! 何がどうなって今のが愛の告白とやらになるのだ! 妄想も大概にせぃ!!」
そんな感じで、俺達の朝食タイムは奇跡的に周りからクレームも来ずに、平和に過ぎていった。
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