うん、異世界!

ダラックマ

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四章

狩るぜぇ~、超狩るぜぇ~

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 ゲイム、亡者の町を後にした俺達は、今晩の食料調達をしながら〈エスタニア王国〉へと向かっていた。

「肉ぅ・・・・・・、肉を置いてけぇえええええええ!!」

「あら~、そぉんなにまるまる太ってぇ・・・・・・。ごちそうさまっ!」

「・・・・・・ふっ。ニヤニヤ」

 俺、貧乳、ソフィーちゃん、の三人は見てのとおり肉担当。

「お・・・・・・? ははっ、逃がすかよぉ! おらぁ!!」

 圧倒的な力の差を感じ、本能的に逃げ出そうとするモンスターを後ろから鉄パイプで強打する俺。

「お肉っ、お肉っ、お肉っ、お肉っ、おに、くぅううううう!!」

 『肉』と言いながら一体ずつ確実に仕留めていく貧乳。

「――――フッ、ザシュッ! ブォンッ、ズドンッ!! ・・・・・・ニヤ」

 目にも止まらぬ速度で移動しながら自信の背丈と同じくらいはある大剣をニヤニヤと不気味な笑みを浮かべて無言で振り続けるソフィーちゃん。

 その光景はまさに弱肉強食で、美味そうなモンスターを次から次へと凄まじい勢いで狩りまくる俺達。

「・・・・・・む、あやつら、完全に肉の欲望に取り憑かれておるな」

「・・・・・・そう、ね。さっきからポスティノスやウッシーやら、見るからに肉厚が凄そうなモンスターばかりを狙って狩っているものね」

 〔補足しておこう!〕 

 『ポスティノスは見た目猪にそっくりだが、その身体は皆が知っている猪よりかは少しばかり大きい!』

 『そしてウッシー、こいつは見た目も大きさもただの牛だ!』

「あ、レイリー! あの木に美味しそうな果物が!」

「あら、本当ね。『風刃』!」

 お得意の毒は纏わせずに風魔法のみで木に生っていた果物を落とす。

「いっぱい採れたね、レイリー」

「ふふ、そうね」

 そんな感じにファフニールとエレナは山菜や果物を平和に集めていた。

「くっ、もう日が! お前等っ、タイムリミットがもうすぐそこまで迫っている! その前に少しでも多くの肉を集め、我等が調理長に献上し、晩飯をより豪華な物にするのだ!!」

「「――――当、然!!」」

「む、え? 少し待て。主等、一体何体狩るつもりなのだ? というより、一体どれだけ食すつもりなのだ・・・・・・?」

 ヴェルがそう尋ねるのも無理は無い。何故なら、ヴェル達の目の前には既に、俺達肉担当が狩りまくったモンスターでちょっとしたタワーが出来上がっていたのだから。

「大丈夫、心配ねぇから安心しな。食い切れなかった分は、これからの為の非常食にすりゃ良い!」

「いやいやいや! 非常食にするのは別に良い! だが一体どこにこのような数の肉塊共をしまっておくというのだ!?」



「「「・・・・・・。・・・・・・・・・・はっ!」」」



 ヴェルの言葉に俺達三人は顔を見合わせ、同時にやべぇっ、みたいな顔をする。

「――うそぉ!? まさかの誰一人としてそれを考えていなかったというのであるか!?」

 しまった・・・・・・っ。この俺とした事が、そこまではマジで考えていなかったぜ!!

 どうしよう、三人で軽く20体は狩っちまった・・・・・・っ。

「ちょっと待ってくれ。今良い方法を考えるから・・・・・・」

 ヴェルにそう言い、俺は頭をフル回転させる。

 考えた末、導き出された選択肢は二つ。一、その場に放置。二、頑張って食う。

 フル回転させてこれだぜ? 流石だろ?

「・・・・・・よし、全部食うか」

 俺は二を選択した。まあ、狩ってしまったもんはしょうがないし、それにお母さんからいつも、食べ物は粗末にしちゃいけまてーん! って言われてたしな。

「皆で協力して、この儚く散っていった奴等を俺達の胃袋に頑張って収納しようぜ!」 

「え・・・・・・。これ、全部食べるの? 本気?」

「何言ってんだよファフニール! 何も一人でだなんて言ってねぇだろ? 考えても見ろ、俺達は全員合わせて六人も居るんだぜ? 食えるさ!!」

「あなたが何言ってるの!? これ全部調理したら何十人前あると思ってるの!?」

「大丈夫! 食える!!」

「その自信は一体どこから!?」

 うーん、爽やかな笑顔までサービスしたのに、おかしいなぁ。しかもこの中には巨大なドラゴンが二匹も居るんだぜ? そう考えたら余裕だと思うんだが・・・・・・。

「ちなみに私もヴェルガルドも〈竜化〉にはならないわよ?」

 ・・・・・・な、に!?

「何でだよ!? お前達が最後の希望だったのに!!」

「ちょ、勝手に最後の希望なんてものにしないでくれる!? それに私達『竜種』は基本的に小食なのよ! レイジ、あなたはヴェルガルドがバクバク何かを食べているところを一度でも見た事がある!?」

「あ、そういやねぇかも。あの時も『現状ではそういった食事は必要無い』とか何とか言ってたし・・・・・・」

「でしょ? まあわかりやすく言うと、私達が食事をするのは〈竜化〉の時だけ、それも『人種』の一般的な量だけね。〈人化〉している時でも必要が無いってだけで食べる事は出来るけど、基本的に〈人化〉の時は他のモンスターから奪った魔力だけで事足りるのよ」

 何そのうらやまコスパ・・・・・・。
 
「やべぇ、詰んだ・・・・・・」

 どうするんだよこれ・・・・・・。

「む、まあ過ぎてしまった事はもう仕方が無い。辺りも暗くなってきておるし、とりあえずは開けた道のすぐ近くまで移動するとしようではないか」

「そうするか」

 そうして、俺達はヴェルの指示通りに開けた道へと移動を開始した。

 ・・・・・・狩ったモンスターは『身体強化ブースト』を使って俺が一人で運びましたとさ。誰か手伝ってくれよ!!





 
 移動し終えた俺達はまたも各々担当に分かれて一夜を明かす為の準備に取り掛かっていた。

 まず俺は『空想具現化』でテントを二つ三つ用意し、それを組み立てる係り。

 ヴェルは先の宣言どおり、狩ったモンスターの調理。

 貧乳とソフィーちゃんは近くに綺麗な泉があったので、俺がまたまた『空想具現化』で出したバケツを持ってそこまで水汲みに。(ちなみに現在二週目)

 ファフニールとエレナは、何か、遊んでる・・・・・・。

 くそっ、ファフニールの奴。遊んでるならこっちを手伝えよ・・・・・・。エレナちゃんは、まあ可愛いから許すけど・・・・・・。

「はぁ、はぁ、汲んで、きたわよ・・・・・・」

「きま、した」

「おー、ご苦労、さん・・・・・・?」

 俺は帰って来た二人を見て少し言葉に詰まった。

 何故なら、貧乳は水がほぼ満タンに入ったバケツ一つを両手で重そうに運んでいるのに対し、ソフィーちゃんはそれを片手に二つずつ軽々持っているからだ。

 ・・・・・・あれ? 一週目は確かお互いに一つずつだったような・・・・・・。

「あ、あのあの、なる、べく、大量にと、言われて、ましたので、たくさん汲んで、きま、した」

「あー、うん。ありがとう・・・・・・」

 確かに大量に、とは言って適当にバケツを量産したけども、まさかの一人で四つ持ちとは・・・・・・。

「・・・・・・こういうのもギャップ萌えって言うのか? いやいや、これは萌えないしおそらく違うだろう。うん、これは違う。いや、だが単に俺が萌えないだけで、実際はそうなのか? ん~・・・・・・」

「む、何をぶつぶつと言っておるのだ。ほれ、もう出来上がる。人数分の皿を用意してくれ」

「お、おう」

 ギャップ萌えの件は一先ず置いておく事にし、ヴェルが持ち歩いていた袋の中から六枚の皿を出す。

 てか、皿を持ち歩くドラゴンなんて聞いた事ねぇよ。

 そう思いながら袋の中をもう一度よく覗くと、中には皿以外の他にも包丁やら複数枚の薄いまな板やらもあった。しかも、全て花柄ときた・・・・・・。

 よし、見なかった事にしよう。きゅっ、と袋の紐を締め、

「・・・・・・ほいよ」

 と、取り出した六枚の皿を何事も無かったかのようにヴェルに渡す俺。

「む、すまぬな。皆、夕飯の支度が整ったぞーっ」

 腹を空かせるメンバーに聞こえるように声を張り上げながら伝える。

「待ってましたぁ!」

「お肉、お肉・・・・・・っ」

「はーい! 行くわよ、エレナ」

「うんっ、お腹すいたー」

 その言葉を聞き、即座に駆け寄ってくる四人。

「はあぁっ! シチューに串焼き、それにニックキニクニクまであるわ! まさにお肉のパラダイスね!!」

「・・・・・・え、ごめん。最後の何?」

 おそらく、俺と同じ世界に居る奴は聞いた事が無いであろう肉料理の名前が貧乳の口から飛び出し、思わず聞き返してしまった。

「あなたまさかニックキニクニクを知らないの!? 嘘でしょっ!?」

「大マジだ」

 てかニックキニクニクって何だよ。まあ俺はそのネーミング嫌いじゃないけどさ。

「はあ、良い? ニックキニクニクっていうのは・・・・・・」

 ニックキニクニクについて熱の入った説明を受ける事、約10分―――― (無駄は省略!)

「・・・・・・それがこのニックキニクニクっていう料理なのよ!」

「へぇ~・・・・・・」

 つまり、簡単に纏めるとこうだ。ニックキニクニク、見た目はボンレスハム。中身はジューシィー。

「――――って、ただのボンレスハムじゃねぇか!!」

 何で俺はボンレスハムに10分くらいも長々とレクチャーされたんだよ! 納得いかねぇ!!

「ボン、レス・・・・・・? 何よそれ。訳わからない言葉言って知ったかぶりしようとしても無駄だからね?」

 俺にはニックキニクニクの方が相当訳わかんねぇよっ!

「さあ、ニックキニクニクも知らないバカな人は放っておいて、冷めない内に頂きましょうか。はい、エレナ。熱いから気をつけてね?」

 え、何!? まさかニックキニクニクって結構ポピュラーなの!? この世界、ほんと怖いっ!!

「さあ、零時様、も、どうぞ。きっ、と、気に入る、と思い、ますよ?」

 そう言い、ソフィーちゃんが俺の目の前に憎たらしいニックキニクニクが入った皿を差し出してくる。

「・・・・・・」

 皿ごと何処かへ放り投げてしまおうか、とも考えたが、流石にそれは勿体無いので仕方無く皿を受け取り、ニックキニクニクにかぶりついた。

「もぐも・・・・・・っ!!」

 すると、数回咀嚼した瞬間、俺のもぐもぐっていた口がピタッ、と止まる。

「な、なんふぁほれふぁ・・・・・・っ」

「おいしい、ですか? 零時、さ」

「――もぐもぐもぐもぐ、ごっきゅん!」

 感想を求めてきたソフィーちゃんの言葉を最後まで聞かず、再び口を動かし、勢い良くそれを飲み込んだ。

「う、美味過ぎる・・・・・・だと?」

 ニックキニクニクの予想外の美味さに、俺は驚愕した。

 な、何だよこれ。口に入れたらすぐ溶けるように消えていく肉達。急いで噛まなければ食感なんて、とてもじゃないが味わえない。

 俺が間違っていた。これは、ただのボンレスハムではない! 

 その事に気が付いた俺のそこからの行動は凄まじいものだった。

「うめぇ! 超うめぇ! びぁああうまいぃいいっっ!!」

 シチューや串焼き等には目もくれず、ニックキニクニクばかりを口に放り込む俺。

 やられたぜ、くそっ。まさかこんなに美味いなんて思いもしなかった。

 憎いっ、憎すぎるぜ! この美味さ!!

「ちょっと! ニックキニクニクだけ一人で食べ過ぎよ! 私達の分が無くなっちゃうじゃない!」

「ふっ、こういうのは早い者勝ちなんだ、よ!」

「ああっ! それ私のニックキニクニク! ちょ、返しなさいよ!」

「俺にこの美味さを教えたのが仇になったな」

「く・・・・・・っ。このっ」

 ニックキニクニクの取り合いを始めた俺達。すると、そんな俺達に向かって、ヴェルが言った。

「む、止めぬか、みっともない。まだまだ大量にあるのだから取り合いなどするでないわ」

「あ、すみません竜神様・・・・・・」

「やーい、怒られてやんのー」

「あなたもその対象なのわかってるわよね?」

「え、何が?」

 固有ユニークスキル、『すっとぼけ』発動!!

「うっざっっ!!」

「むぅ・・・・・・、主等は全く・・・・・・」

 そんなこんなで楽しく賑やかに俺達の夜は更けていき、夕食後、各々がテントに入って休息をとった。


 
 ちなみに俺は昨夜同様、ありったけの魔力を込めた『絶対防御能力バーリア』切り離しバージョンを俺達が居る周りに展開させた後、テントに入ったのだが・・・・・・、何だろうな。

 あの時はあんなに驚いていたヴェルがまだ一日しか経っていないのに、もう慣れた、と言わんばかりに何も聞かず、自分のテントへと真っ直ぐに入っていったのは、何かちょっと寂しかったな・・・・・・。


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 ニックキニクニク、個人的にすごく気に入ってます(笑)

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