うん、異世界!

ダラックマ

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三章

ここでようやく正ヒロイン!?

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 俺が平和的? 解決をし、ヴェル達が居る所へ戻ろうとファフニールを連れて歩いていると、

「あ、帰って、きま、したね」
 
「おーい、最低クズロリコン野郎ーっ」

「ねえ、あの子何か叫んでいるけれど、最低クズって、あれってもしかしてレイジの事?」

「ん? さあな、あのド貧乳には他の誰かが見えてるんじゃないか?」 

「それにしてはあの子、レイジの方に向けて手を振っているように見えるのだけれど・・・・・・」

「ははは、気の所為だろ。さ、冗談はこのくらいにしてさっさとヴェルの解毒を頼むぜー」

「・・・・・・」

 何か哀れみの視線をファフニールから送られた。何故だろう、うーん何故だろう。

 そうして、三人の下へと着いた俺とファフニールは、早速それぞれするべき事に取り掛かった。

 ファフニールはヴェルの解毒。

「うへっ、うへっヴェルガルドぉ、さあさあこれを飲んでぇ」

「む、あ、ああ・・・・・・」

 あー、『愛』ってやっぱそういう・・・・・・。

 そして俺は・・・・・・。

「さあ二人共、何か弁解があるのなら聞こうじゃないか」

「「・・・・・・・・・・」」

 一度とならず二度も俺を見捨てた二人に対し、お説教タイムを絶賛開催していた。

「あー、いや、ほらだって、相手『竜種』だし、怖いっていうか何と言うか・・・・・・・・・・」

 おい、そんなんで大丈夫なのか、アルカディア聖騎士。

「えと、あの、その・・・・・・、にこっ」

 はい、その笑顔にはもう騙されませんっ。

 そんな二人を見て説教をする気が失せた俺は、

「よし、晩飯は野菜炒め、と・・・・・・」

「「――――っっ!?」」

 それだけ言い残してヴェルの所へ向かおうと、くるっと踵を返す。すると、

「ちょっ、それどういう事よ! 晩御飯はお肉の予定だったじゃない!!」

「あ・・・・・・、あ・・・・・・、お肉・・・・・・・・・・」

 二人して俺の服の裾を破れるんじゃないかというくらいにガシィッ、と掴み、必死に抗議をし始めた。

「だあもうっ! そんなに肉が食いてぇなら自分で何かしら狩ってきて食えば良いだろうが!!」

「嫌よ! 何で私達がそんな野蛮な事をしないといけないのよ! バカなの!?」

「バカはてめぇだよこのクソ貧乳が!! 何で最初から自分で動く気ゼロなんだよ!!」

「あ、あの、私には、何かを、狩れるよう、な、力は・・・・・・」

「はいダウト! 俺天界でバッチリ見てたからね!? 君が大剣ブンブン振り回してるとこ!!」

 そんな感じにしばらくぎゃーぎゃー言い争っていると、解毒が済んだヴェルとファフニールが俺の所へと歩いてきた。

「・・・・・・これどういう状況?」

 ファフニールが問う。

「む、我にもわからん・・・・・・」

 ヴェルが答える。

「わかった、もう肉で良いから、離してくれ・・・・・・」

 俺、折れる。

「いやったぁ!!」

「どん。どん、ぱふ、ぱふっ」

 二人、肉勝ち取る。

「すまんなヴェル・・・・・・。面倒だとは思うが、また後で肉の調達頼んでも良いか・・・・・・? 俺はもう疲れたよ・・・・・・」

「む、気にするなレイジ。今回の一件では大分と世話になってしまったからな、ゆっくりと休むが良い」

 ヴェルのその言葉に甘えてその場に座り込む俺。

 すると、唐突にヴェルがファフニールに向かってある事を尋ねだした。

「む、さて、我が何故お主を探しておったのか、その理由はわかっておるか?」

「ええ、ヴェルガルド。ま、ここで色々と話をするのもなんだし、とりあえず場所を変えましょうか」

 

 そうして、ファフニールに連れて来られたのは、町外れにあった倉庫らしき建造物の前だった。

「ここは?」

 俺がそう尋ねるが、

「さあ、入って」

 ファフニールはギギギギッ、と古くなった扉を開けながら、そう答えるだけだった。

「・・・・・・」

 ここで立ち往生していても仕方無い、そう思った俺は後ろに居た三人と共に倉庫内へと足を踏み入れる。

 すると真っ先に俺達の視界に飛び込んで来たのは、

「な・・・・・・っ」

「む、やはり・・・・・・っ」

「ひ・・・・・・っ」

「・・・・・・っ」

 少なくとも十人、二十人と言った数の死体が床に転がっている惨状で、しかもその全ての死体が恐怖で表情を歪ませたままの状態であった。

「ああ、ごめんなさい。片すのを忘れていたわ」

 そう言い、ファフニールは風魔法でそこらに散らばっている死体を建物の隅の方へと吹き飛ばした。

「これは一体・・・・・・」

「む、どういう事なのか、しかと説明をしてもらうぞ。ファフニールよ」

「ええ、勿論よ。その為にわざわざここまで来てもらったのだから」

 そして、ファフニールは語り始めた。

「そうね。あれは、私がヴェルガルドを誘惑する為に、(ピーッ)を買いに『人種』の国へ出向こうとしている時だったわ」

 おい、今何か規制音入らなかったか? 何買いに行ってんだよこいつ。

「・・・・・・む、そ、それで?」

 ・・・・・・ヴェルよ、必死に平静を装っているつもりだろうが、汗がダラッダラ噴き出してるぜ? 

 まあヴェルとしちゃあ、知りたくなかった事を知ってしまった、っていう感じなんだろうなー。

「その道中、私は『人種』のある少女が今にも倒れそうなくらいにフラフラと歩いているのを見かけたのよ」

「ある、少女?」

 俺のその問いにファフニールは、

「あの子よ」

 と、建物の奥に目をやりながらそう答えた。

「・・・・・・っ」

 その目線の先には、白銀の長い髪の少女が椅子に座って静かに眠っていた。

「・・・・・・」

 遠目からでもわかる綺麗な顔立ち、雪のような真っ白な肌、それはまるで人形ではないかと思わせる程でもあった。

「初めてあの子と会った時は今よりもずっと酷い姿でね。髪はボサボサ、服もボロボロ、おまけに体中傷だらけだったわ。そんな状態だったあの子を私は放っておけなくて、丁度近くにあったこの町のこの場所まで運んで介抱してあげたのよ。・・・・・・そうしてしばらく経ったある日」

「・・・・・・」

「どこから嗅ぎつけたのか、異端狩りの連中がここに押し寄せて来たのよ」

「む・・・・・・、異端狩り、だと?」

「ええ」

 その異端狩りって言うのが何のこっちゃわからない俺は、その事をヴェルに尋ねた。

「ヴェル、その異端狩りってのは何だ?」

 その問いに対し、ヴェルは真剣な表情で答えた。

「む、異端狩りというのは、普通とは異なる特殊な者。言うなれば、レイジみたく固有ユニークスキルを持つ者や、外見が周りとは異なる者を捕らえては、コレクターと言う下種な連中に売り払う集団の事だ」

 なるほどね。やっぱりどの世界にも程度の低い連中ってのは居るんだな。

「む、だが、一つ解せぬ事がある。何故、異端狩りがここに? ファフニール、もしやお主が狙われたのであるまいな?」

「いいえ、狙われたのは私じゃなく、あの子よ」

「何・・・・・・?」

 ファフニールのその言葉にヴェルはすぐに何かおかしな点は無いかと少女の方へと目を凝らす。

「むぅ、一見何の変哲も無いただの少女にしか見えぬのだが・・・・・・。何故、あの少女が?」

「それは・・・・・・。いや、これは実際に見てもらった方が早いわね」

 そう言うと、ファフニールは寝ている少女へと近づき、優しく揺すり始めた。

「ほら、起きて」

「・・・・・・むにゃむにゃ。レイリー?」

 ファフニールの名を呼びながらゆっくりと目蓋を開く少女。

「よく見ておいて。これが、この子が異端狩りに狙われる理由よ」

 すると、ファフニールが少女から二、三歩離れた次の瞬間、

「む、お主何を言――――っ!?」

 ゴォオオオオッ! という音を立て、突如として少女に纏わり着くように出現した炎によってヴェルの言葉は遮られてしまった。

「な・・・・・・に・・・・・・っ!?」

「な、何だっ! 突然火が・・・・・・っ」

「な、何なのよ一体っ」

「・・・・・・っ」

 突然の事に困惑する俺達。だが、ヴェルだけは俺達のそれとはどこか違った様子で、真っ直ぐに少女を凝視していた。

「ヴェル? どうし――」

 顔が青ざめ、驚愕を隠せないで居るヴェルの肩に触れようと手を伸ばすと、

「黒い、炎・・・・・・だと?」

 触れる寸前、そう一言呟いた。

「・・・・・・?」

 確かに炎は黒いが、それが何だって言うんだ?

「ねぇ、ソフィー・・・・・・。あれって、まさか・・・・・・っ」

「は、い。黒、炎・・・・・・」

 すると、後の二人もヴェルが感じる異常に気が付いた様子だった。

 俺だけが未だに理解出来ないで居ると、この状況を今まで黙って見ているだけだったファフニールが口を開いた。

「そう、これが、この黒炎こそが、奴等がこの子を狙う理由よ」

「むっ、だが、これは・・・・・・っ!」

「な、なあ、誰でも良いからまず俺に説明してくれないか?」

 こんなシリアスな場面に理由も知らずに参加するなんて、俺には堪えられない。

 故に、誰か! 俺に説明という名の救済を!!

 すると、そんな俺の心の叫びに対し、ファフニールが答えてくれた。

「レイジ、あなたは知らないようね。黒炎を操るという事が一体どういう事なのかを」

「黒炎を、操る・・・・・・?」
 
 黒い炎というのはそれ程に珍しいものなのか、ファフニールは真剣な表情で俺にそう言った。そして、

「レイ、リー・・・・・・」

 少女が言葉を発した直後、魔力が尽きたのか、黒い炎は燃え尽きるように消えていき、それと同時に少女もフッ、と気を失った。

「あらあら」

 これが初めてでは無いと言ったような感じで、気絶し、椅子からずり落ちそうな少女を綺麗に座り直させてあげるファフニール。

「大丈夫なのか、その子」

「ええ、魔力が尽きて眠っているだけよ」

「そうか」

「それで、話の続きなのだけれど・・・・・・」

「む、ファフニールよ。ここからは我がレイジに説明するとしよう」

 俺に情報を提供するという約束からなのか、自分も同じ黒炎を操れるからかはわからないが、ファフニールの言葉を遮り、ヴェルが黒炎についての説明をし始めた。

*************************************

 ここに来てやっと正ヒロインを出せました!

 え? あ、はい。一応正ヒロインのつもりです。正ヒロインなんです。正ヒロインでお願いします!!

 まあそれは置いておいて、次回から四章に入ります!

 これからも「うん、異世界!」とレイジ達を宜しくお願いします!!
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