32 / 77
三章
ここでようやく正ヒロイン!?
しおりを挟む
俺が平和的? 解決をし、ヴェル達が居る所へ戻ろうとファフニールを連れて歩いていると、
「あ、帰って、きま、したね」
「おーい、最低クズロリコン野郎ーっ」
「ねえ、あの子何か叫んでいるけれど、最低クズって、あれってもしかしてレイジの事?」
「ん? さあな、あのド貧乳には他の誰かが見えてるんじゃないか?」
「それにしてはあの子、レイジの方に向けて手を振っているように見えるのだけれど・・・・・・」
「ははは、気の所為だろ。さ、冗談はこのくらいにしてさっさとヴェルの解毒を頼むぜー」
「・・・・・・」
何か哀れみの視線をファフニールから送られた。何故だろう、うーん何故だろう。
そうして、三人の下へと着いた俺とファフニールは、早速それぞれするべき事に取り掛かった。
ファフニールはヴェルの解毒。
「うへっ、うへっヴェルガルドぉ、さあさあこれを飲んでぇ」
「む、あ、ああ・・・・・・」
あー、『愛』ってやっぱそういう・・・・・・。
そして俺は・・・・・・。
「さあ二人共、何か弁解があるのなら聞こうじゃないか」
「「・・・・・・・・・・」」
一度とならず二度も俺を見捨てた二人に対し、お説教タイムを絶賛開催していた。
「あー、いや、ほらだって、相手『竜種』だし、怖いっていうか何と言うか・・・・・・・・・・」
おい、そんなんで大丈夫なのか、アルカディア聖騎士。
「えと、あの、その・・・・・・、にこっ」
はい、その笑顔にはもう騙されませんっ。
そんな二人を見て説教をする気が失せた俺は、
「よし、晩飯は野菜炒め、と・・・・・・」
「「――――っっ!?」」
それだけ言い残してヴェルの所へ向かおうと、くるっと踵を返す。すると、
「ちょっ、それどういう事よ! 晩御飯はお肉の予定だったじゃない!!」
「あ・・・・・・、あ・・・・・・、お肉・・・・・・・・・・」
二人して俺の服の裾を破れるんじゃないかというくらいにガシィッ、と掴み、必死に抗議をし始めた。
「だあもうっ! そんなに肉が食いてぇなら自分で何かしら狩ってきて食えば良いだろうが!!」
「嫌よ! 何で私達がそんな野蛮な事をしないといけないのよ! バカなの!?」
「バカはてめぇだよこのクソ貧乳が!! 何で最初から自分で動く気ゼロなんだよ!!」
「あ、あの、私には、何かを、狩れるよう、な、力は・・・・・・」
「はいダウト! 俺天界でバッチリ見てたからね!? 君が大剣ブンブン振り回してるとこ!!」
そんな感じにしばらくぎゃーぎゃー言い争っていると、解毒が済んだヴェルとファフニールが俺の所へと歩いてきた。
「・・・・・・これどういう状況?」
ファフニールが問う。
「む、我にもわからん・・・・・・」
ヴェルが答える。
「わかった、もう肉で良いから、離してくれ・・・・・・」
俺、折れる。
「いやったぁ!!」
「どん。どん、ぱふ、ぱふっ」
二人、肉勝ち取る。
「すまんなヴェル・・・・・・。面倒だとは思うが、また後で肉の調達頼んでも良いか・・・・・・? 俺はもう疲れたよ・・・・・・」
「む、気にするなレイジ。今回の一件では大分と世話になってしまったからな、ゆっくりと休むが良い」
ヴェルのその言葉に甘えてその場に座り込む俺。
すると、唐突にヴェルがファフニールに向かってある事を尋ねだした。
「む、さて、我が何故お主を探しておったのか、その理由はわかっておるか?」
「ええ、ヴェルガルド。ま、ここで色々と話をするのもなんだし、とりあえず場所を変えましょうか」
そうして、ファフニールに連れて来られたのは、町外れにあった倉庫らしき建造物の前だった。
「ここは?」
俺がそう尋ねるが、
「さあ、入って」
ファフニールはギギギギッ、と古くなった扉を開けながら、そう答えるだけだった。
「・・・・・・」
ここで立ち往生していても仕方無い、そう思った俺は後ろに居た三人と共に倉庫内へと足を踏み入れる。
すると真っ先に俺達の視界に飛び込んで来たのは、
「な・・・・・・っ」
「む、やはり・・・・・・っ」
「ひ・・・・・・っ」
「・・・・・・っ」
少なくとも十人、二十人と言った数の死体が床に転がっている惨状で、しかもその全ての死体が恐怖で表情を歪ませたままの状態であった。
「ああ、ごめんなさい。片すのを忘れていたわ」
そう言い、ファフニールは風魔法でそこらに散らばっている死体を建物の隅の方へと吹き飛ばした。
「これは一体・・・・・・」
「む、どういう事なのか、しかと説明をしてもらうぞ。ファフニールよ」
「ええ、勿論よ。その為にわざわざここまで来てもらったのだから」
そして、ファフニールは語り始めた。
「そうね。あれは、私がヴェルガルドを誘惑する為に、(ピーッ)を買いに『人種』の国へ出向こうとしている時だったわ」
おい、今何か規制音入らなかったか? 何買いに行ってんだよこいつ。
「・・・・・・む、そ、それで?」
・・・・・・ヴェルよ、必死に平静を装っているつもりだろうが、汗がダラッダラ噴き出してるぜ?
まあヴェルとしちゃあ、知りたくなかった事を知ってしまった、っていう感じなんだろうなー。
「その道中、私は『人種』のある少女が今にも倒れそうなくらいにフラフラと歩いているのを見かけたのよ」
「ある、少女?」
俺のその問いにファフニールは、
「あの子よ」
と、建物の奥に目をやりながらそう答えた。
「・・・・・・っ」
その目線の先には、白銀の長い髪の少女が椅子に座って静かに眠っていた。
「・・・・・・」
遠目からでもわかる綺麗な顔立ち、雪のような真っ白な肌、それはまるで人形ではないかと思わせる程でもあった。
「初めてあの子と会った時は今よりもずっと酷い姿でね。髪はボサボサ、服もボロボロ、おまけに体中傷だらけだったわ。そんな状態だったあの子を私は放っておけなくて、丁度近くにあったこの町のこの場所まで運んで介抱してあげたのよ。・・・・・・そうしてしばらく経ったある日」
「・・・・・・」
「どこから嗅ぎつけたのか、異端狩りの連中がここに押し寄せて来たのよ」
「む・・・・・・、異端狩り、だと?」
「ええ」
その異端狩りって言うのが何のこっちゃわからない俺は、その事をヴェルに尋ねた。
「ヴェル、その異端狩りってのは何だ?」
その問いに対し、ヴェルは真剣な表情で答えた。
「む、異端狩りというのは、普通とは異なる特殊な者。言うなれば、レイジみたく固有スキルを持つ者や、外見が周りとは異なる者を捕らえては、コレクターと言う下種な連中に売り払う集団の事だ」
なるほどね。やっぱりどの世界にも程度の低い連中ってのは居るんだな。
「む、だが、一つ解せぬ事がある。何故、異端狩りがここに? ファフニール、もしやお主が狙われたのであるまいな?」
「いいえ、狙われたのは私じゃなく、あの子よ」
「何・・・・・・?」
ファフニールのその言葉にヴェルはすぐに何かおかしな点は無いかと少女の方へと目を凝らす。
「むぅ、一見何の変哲も無いただの少女にしか見えぬのだが・・・・・・。何故、あの少女が?」
「それは・・・・・・。いや、これは実際に見てもらった方が早いわね」
そう言うと、ファフニールは寝ている少女へと近づき、優しく揺すり始めた。
「ほら、起きて」
「・・・・・・むにゃむにゃ。レイリー?」
ファフニールの名を呼びながらゆっくりと目蓋を開く少女。
「よく見ておいて。これが、この子が異端狩りに狙われる理由よ」
すると、ファフニールが少女から二、三歩離れた次の瞬間、
「む、お主何を言――――っ!?」
ゴォオオオオッ! という音を立て、突如として少女に纏わり着くように出現した炎によってヴェルの言葉は遮られてしまった。
「な・・・・・・に・・・・・・っ!?」
「な、何だっ! 突然火が・・・・・・っ」
「な、何なのよ一体っ」
「・・・・・・っ」
突然の事に困惑する俺達。だが、ヴェルだけは俺達のそれとはどこか違った様子で、真っ直ぐに少女を凝視していた。
「ヴェル? どうし――」
顔が青ざめ、驚愕を隠せないで居るヴェルの肩に触れようと手を伸ばすと、
「黒い、炎・・・・・・だと?」
触れる寸前、そう一言呟いた。
「・・・・・・?」
確かに炎は黒いが、それが何だって言うんだ?
「ねぇ、ソフィー・・・・・・。あれって、まさか・・・・・・っ」
「は、い。黒、炎・・・・・・」
すると、後の二人もヴェルが感じる異常に気が付いた様子だった。
俺だけが未だに理解出来ないで居ると、この状況を今まで黙って見ているだけだったファフニールが口を開いた。
「そう、これが、この黒炎こそが、奴等がこの子を狙う理由よ」
「むっ、だが、これは・・・・・・っ!」
「な、なあ、誰でも良いからまず俺に説明してくれないか?」
こんなシリアスな場面に理由も知らずに参加するなんて、俺には堪えられない。
故に、誰か! 俺に説明という名の救済を!!
すると、そんな俺の心の叫びに対し、ファフニールが答えてくれた。
「レイジ、あなたは知らないようね。黒炎を操るという事が一体どういう事なのかを」
「黒炎を、操る・・・・・・?」
黒い炎というのはそれ程に珍しいものなのか、ファフニールは真剣な表情で俺にそう言った。そして、
「レイ、リー・・・・・・」
少女が言葉を発した直後、魔力が尽きたのか、黒い炎は燃え尽きるように消えていき、それと同時に少女もフッ、と気を失った。
「あらあら」
これが初めてでは無いと言ったような感じで、気絶し、椅子からずり落ちそうな少女を綺麗に座り直させてあげるファフニール。
「大丈夫なのか、その子」
「ええ、魔力が尽きて眠っているだけよ」
「そうか」
「それで、話の続きなのだけれど・・・・・・」
「む、ファフニールよ。ここからは我がレイジに説明するとしよう」
俺に情報を提供するという約束からなのか、自分も同じ黒炎を操れるからかはわからないが、ファフニールの言葉を遮り、ヴェルが黒炎についての説明をし始めた。
*************************************
ここに来てやっと正ヒロインを出せました!
え? あ、はい。一応正ヒロインのつもりです。正ヒロインなんです。正ヒロインでお願いします!!
まあそれは置いておいて、次回から四章に入ります!
これからも「うん、異世界!」とレイジ達を宜しくお願いします!!
「あ、帰って、きま、したね」
「おーい、最低クズロリコン野郎ーっ」
「ねえ、あの子何か叫んでいるけれど、最低クズって、あれってもしかしてレイジの事?」
「ん? さあな、あのド貧乳には他の誰かが見えてるんじゃないか?」
「それにしてはあの子、レイジの方に向けて手を振っているように見えるのだけれど・・・・・・」
「ははは、気の所為だろ。さ、冗談はこのくらいにしてさっさとヴェルの解毒を頼むぜー」
「・・・・・・」
何か哀れみの視線をファフニールから送られた。何故だろう、うーん何故だろう。
そうして、三人の下へと着いた俺とファフニールは、早速それぞれするべき事に取り掛かった。
ファフニールはヴェルの解毒。
「うへっ、うへっヴェルガルドぉ、さあさあこれを飲んでぇ」
「む、あ、ああ・・・・・・」
あー、『愛』ってやっぱそういう・・・・・・。
そして俺は・・・・・・。
「さあ二人共、何か弁解があるのなら聞こうじゃないか」
「「・・・・・・・・・・」」
一度とならず二度も俺を見捨てた二人に対し、お説教タイムを絶賛開催していた。
「あー、いや、ほらだって、相手『竜種』だし、怖いっていうか何と言うか・・・・・・・・・・」
おい、そんなんで大丈夫なのか、アルカディア聖騎士。
「えと、あの、その・・・・・・、にこっ」
はい、その笑顔にはもう騙されませんっ。
そんな二人を見て説教をする気が失せた俺は、
「よし、晩飯は野菜炒め、と・・・・・・」
「「――――っっ!?」」
それだけ言い残してヴェルの所へ向かおうと、くるっと踵を返す。すると、
「ちょっ、それどういう事よ! 晩御飯はお肉の予定だったじゃない!!」
「あ・・・・・・、あ・・・・・・、お肉・・・・・・・・・・」
二人して俺の服の裾を破れるんじゃないかというくらいにガシィッ、と掴み、必死に抗議をし始めた。
「だあもうっ! そんなに肉が食いてぇなら自分で何かしら狩ってきて食えば良いだろうが!!」
「嫌よ! 何で私達がそんな野蛮な事をしないといけないのよ! バカなの!?」
「バカはてめぇだよこのクソ貧乳が!! 何で最初から自分で動く気ゼロなんだよ!!」
「あ、あの、私には、何かを、狩れるよう、な、力は・・・・・・」
「はいダウト! 俺天界でバッチリ見てたからね!? 君が大剣ブンブン振り回してるとこ!!」
そんな感じにしばらくぎゃーぎゃー言い争っていると、解毒が済んだヴェルとファフニールが俺の所へと歩いてきた。
「・・・・・・これどういう状況?」
ファフニールが問う。
「む、我にもわからん・・・・・・」
ヴェルが答える。
「わかった、もう肉で良いから、離してくれ・・・・・・」
俺、折れる。
「いやったぁ!!」
「どん。どん、ぱふ、ぱふっ」
二人、肉勝ち取る。
「すまんなヴェル・・・・・・。面倒だとは思うが、また後で肉の調達頼んでも良いか・・・・・・? 俺はもう疲れたよ・・・・・・」
「む、気にするなレイジ。今回の一件では大分と世話になってしまったからな、ゆっくりと休むが良い」
ヴェルのその言葉に甘えてその場に座り込む俺。
すると、唐突にヴェルがファフニールに向かってある事を尋ねだした。
「む、さて、我が何故お主を探しておったのか、その理由はわかっておるか?」
「ええ、ヴェルガルド。ま、ここで色々と話をするのもなんだし、とりあえず場所を変えましょうか」
そうして、ファフニールに連れて来られたのは、町外れにあった倉庫らしき建造物の前だった。
「ここは?」
俺がそう尋ねるが、
「さあ、入って」
ファフニールはギギギギッ、と古くなった扉を開けながら、そう答えるだけだった。
「・・・・・・」
ここで立ち往生していても仕方無い、そう思った俺は後ろに居た三人と共に倉庫内へと足を踏み入れる。
すると真っ先に俺達の視界に飛び込んで来たのは、
「な・・・・・・っ」
「む、やはり・・・・・・っ」
「ひ・・・・・・っ」
「・・・・・・っ」
少なくとも十人、二十人と言った数の死体が床に転がっている惨状で、しかもその全ての死体が恐怖で表情を歪ませたままの状態であった。
「ああ、ごめんなさい。片すのを忘れていたわ」
そう言い、ファフニールは風魔法でそこらに散らばっている死体を建物の隅の方へと吹き飛ばした。
「これは一体・・・・・・」
「む、どういう事なのか、しかと説明をしてもらうぞ。ファフニールよ」
「ええ、勿論よ。その為にわざわざここまで来てもらったのだから」
そして、ファフニールは語り始めた。
「そうね。あれは、私がヴェルガルドを誘惑する為に、(ピーッ)を買いに『人種』の国へ出向こうとしている時だったわ」
おい、今何か規制音入らなかったか? 何買いに行ってんだよこいつ。
「・・・・・・む、そ、それで?」
・・・・・・ヴェルよ、必死に平静を装っているつもりだろうが、汗がダラッダラ噴き出してるぜ?
まあヴェルとしちゃあ、知りたくなかった事を知ってしまった、っていう感じなんだろうなー。
「その道中、私は『人種』のある少女が今にも倒れそうなくらいにフラフラと歩いているのを見かけたのよ」
「ある、少女?」
俺のその問いにファフニールは、
「あの子よ」
と、建物の奥に目をやりながらそう答えた。
「・・・・・・っ」
その目線の先には、白銀の長い髪の少女が椅子に座って静かに眠っていた。
「・・・・・・」
遠目からでもわかる綺麗な顔立ち、雪のような真っ白な肌、それはまるで人形ではないかと思わせる程でもあった。
「初めてあの子と会った時は今よりもずっと酷い姿でね。髪はボサボサ、服もボロボロ、おまけに体中傷だらけだったわ。そんな状態だったあの子を私は放っておけなくて、丁度近くにあったこの町のこの場所まで運んで介抱してあげたのよ。・・・・・・そうしてしばらく経ったある日」
「・・・・・・」
「どこから嗅ぎつけたのか、異端狩りの連中がここに押し寄せて来たのよ」
「む・・・・・・、異端狩り、だと?」
「ええ」
その異端狩りって言うのが何のこっちゃわからない俺は、その事をヴェルに尋ねた。
「ヴェル、その異端狩りってのは何だ?」
その問いに対し、ヴェルは真剣な表情で答えた。
「む、異端狩りというのは、普通とは異なる特殊な者。言うなれば、レイジみたく固有スキルを持つ者や、外見が周りとは異なる者を捕らえては、コレクターと言う下種な連中に売り払う集団の事だ」
なるほどね。やっぱりどの世界にも程度の低い連中ってのは居るんだな。
「む、だが、一つ解せぬ事がある。何故、異端狩りがここに? ファフニール、もしやお主が狙われたのであるまいな?」
「いいえ、狙われたのは私じゃなく、あの子よ」
「何・・・・・・?」
ファフニールのその言葉にヴェルはすぐに何かおかしな点は無いかと少女の方へと目を凝らす。
「むぅ、一見何の変哲も無いただの少女にしか見えぬのだが・・・・・・。何故、あの少女が?」
「それは・・・・・・。いや、これは実際に見てもらった方が早いわね」
そう言うと、ファフニールは寝ている少女へと近づき、優しく揺すり始めた。
「ほら、起きて」
「・・・・・・むにゃむにゃ。レイリー?」
ファフニールの名を呼びながらゆっくりと目蓋を開く少女。
「よく見ておいて。これが、この子が異端狩りに狙われる理由よ」
すると、ファフニールが少女から二、三歩離れた次の瞬間、
「む、お主何を言――――っ!?」
ゴォオオオオッ! という音を立て、突如として少女に纏わり着くように出現した炎によってヴェルの言葉は遮られてしまった。
「な・・・・・・に・・・・・・っ!?」
「な、何だっ! 突然火が・・・・・・っ」
「な、何なのよ一体っ」
「・・・・・・っ」
突然の事に困惑する俺達。だが、ヴェルだけは俺達のそれとはどこか違った様子で、真っ直ぐに少女を凝視していた。
「ヴェル? どうし――」
顔が青ざめ、驚愕を隠せないで居るヴェルの肩に触れようと手を伸ばすと、
「黒い、炎・・・・・・だと?」
触れる寸前、そう一言呟いた。
「・・・・・・?」
確かに炎は黒いが、それが何だって言うんだ?
「ねぇ、ソフィー・・・・・・。あれって、まさか・・・・・・っ」
「は、い。黒、炎・・・・・・」
すると、後の二人もヴェルが感じる異常に気が付いた様子だった。
俺だけが未だに理解出来ないで居ると、この状況を今まで黙って見ているだけだったファフニールが口を開いた。
「そう、これが、この黒炎こそが、奴等がこの子を狙う理由よ」
「むっ、だが、これは・・・・・・っ!」
「な、なあ、誰でも良いからまず俺に説明してくれないか?」
こんなシリアスな場面に理由も知らずに参加するなんて、俺には堪えられない。
故に、誰か! 俺に説明という名の救済を!!
すると、そんな俺の心の叫びに対し、ファフニールが答えてくれた。
「レイジ、あなたは知らないようね。黒炎を操るという事が一体どういう事なのかを」
「黒炎を、操る・・・・・・?」
黒い炎というのはそれ程に珍しいものなのか、ファフニールは真剣な表情で俺にそう言った。そして、
「レイ、リー・・・・・・」
少女が言葉を発した直後、魔力が尽きたのか、黒い炎は燃え尽きるように消えていき、それと同時に少女もフッ、と気を失った。
「あらあら」
これが初めてでは無いと言ったような感じで、気絶し、椅子からずり落ちそうな少女を綺麗に座り直させてあげるファフニール。
「大丈夫なのか、その子」
「ええ、魔力が尽きて眠っているだけよ」
「そうか」
「それで、話の続きなのだけれど・・・・・・」
「む、ファフニールよ。ここからは我がレイジに説明するとしよう」
俺に情報を提供するという約束からなのか、自分も同じ黒炎を操れるからかはわからないが、ファフニールの言葉を遮り、ヴェルが黒炎についての説明をし始めた。
*************************************
ここに来てやっと正ヒロインを出せました!
え? あ、はい。一応正ヒロインのつもりです。正ヒロインなんです。正ヒロインでお願いします!!
まあそれは置いておいて、次回から四章に入ります!
これからも「うん、異世界!」とレイジ達を宜しくお願いします!!
0
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい
みおな
恋愛
何度生まれ変わっても、私の未来には死しかない。
死んで異世界転生したら、旦那に虐げられる侯爵夫人だった。
死んだ後、再び転生を果たしたら、今度は親に虐げられる伯爵令嬢だった。
三度目は、婚約者に婚約破棄された挙句に国外追放され夜盗に殺される公爵令嬢。
四度目は、聖女だと偽ったと冤罪をかけられ処刑される平民。
さすがにもう許せないと神様に猛抗議しました。
こんな結末しかない転生なら、もう転生しなくていいとまで言いました。
こんな転生なら、いっそ亀の方が何倍もいいくらいです。
私の怒りに、神様は言いました。
次こそは誰にも虐げられない未来を、とー
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)
翡翠由
ファンタジー
ある公爵令嬢は処刑台にかけられていた。
悪役令嬢と、周囲から呼ばれていた彼女の死を悲しむものは誰もいなく、ついには愛していた殿下にも裏切られる。
そして目が覚めると、なぜか前世の私(赤ん坊)に戻ってしまっていた……。
「また、処刑台送りは嫌だ!」
自由な生活を手に入れたい私は、処刑されかけても逃げ延びれるように三歳から自主トレを始めるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる