うん、異世界!

ダラックマ

文字の大きさ
上 下
31 / 77
三章

俺、生きて帰れたら以下略。

しおりを挟む
「ああああああああああっ!!」

「セイッ、セイッ、セェエエエイッ!!」

 何っだあのバーサーカーは!?

 もう魔力残ってないとか言ってなかったっけ!?

「コォォォォォ・・・・・・ッ」

 うわこっわ!! 完全に目がイッてやがるよあいつ!!

 てかあいつ、魔力の一部が『愛』の形をしてる理由って、まさか・・・・・・っ。

「グルル、ラァア!」

「しま・・・・・・っ」

 ファフニールの猛攻から逃げ続けていた俺であったが、不意を突かれ、とうとう捕らえられてしまった。

「ツカ、マエタ・・・・・・っ!」

 おふぁ! ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!

 『絶対防御能力バーリア』無しの生身の状態でドラゴンの姿のまま踏みつけられるのは非っ常にまずいんだが!?

 最悪のケースをふと想像してしまった俺は、

 『身体強化ブースト』! 『身体強化ブースト』! 『身体強化ブースト』ぉおおお!!

 踏み潰されないよう、『身体強化ブースト』を何度も重ねがけし、必死に堪える。

「ぐぬぬぬぬぬ・・・・・・っ」

「ツカマエタ、ツカマエタ、ツカマエタ、ツカマエタァアア・・・・・・ッ」

 てかどっから来てんだよこのパワーは! 何で『身体強化ブースト』を何回も使った俺が押し負けそうになってるんだよ!

 ああぁっ、やばい怖いやばい怖いやばいぃっ!! 

 相手恐竜じゃなくてドラゴンだけど気持ちはもうリアルジュラ○ックパークだよ! しかも言葉を話す分余計にこえぇよ!!

 何とかして抜け出そうともがいてはみるが、全く意味を成さない。

 くそっ、攻撃系の能力さえ使えれば一発なんだが、ヴェルが何故こいつを探していたのかがわからない以上、俺の馬鹿火力で攻撃する訳にもいかねぇし・・・・・・。

 一体、どうすれば・・・・・・っ。



 その時、レイジに電流走る。



 ・・・・・・いや待て、平和的に解決出来る方法があるじゃねぇか!

 そうだよ。俺とヴェルが契約する事になった理由を知るあの二人にしっかり説明してもらえば、きっとファフニールだって・・・・・・。

「ちらっ」

 そう考えた俺は期待の眼差しをまず貧乳に向けた、のだが・・・・・・、



「・・・・・・バッ」



 ・・・・・・はあ!? あい、あいつっ、目逸らしやがった!!

「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・サッ」

 ちらちらとこちらを見ては、目が合った瞬間に目を逸らす貧乳。

「おい、お前本当は気付いて」

「・・・・・・ぴーひゅるるる~、ぴーひゅる~」

 貧乳てめぇ! 後で覚えてろよ!!

 口笛を吹きながらあくまで気付いていないアピールをし続ける貧乳。

 だ、だが、万策尽きた訳じゃない! まだ希望は残されている!

 そう、例え貧乳がダメだったとしても、ソフィーちゃん、君なら!!



「・・・・・・ニヤ」



 ――――何でそこでそっちのソフィーちゃんが出てくるぅ!?

 え、何? マジで何なの君達はぁああああ!!

 仮にも行動を共にしている仲間に二度も裏切られ、ガチで心が折れそうになる俺。
 
 くっ、最早! 最後の手段!!

「お、おいヴェルっ! 返事はしなくて良い! だから首の動きだけで答えろ! こいつを攻撃」

 麻痺毒で地面にぶっ倒れているままのヴェルに俺は、大声でファフニールに対し、攻撃をしても良いのか否かを問おうとした。しかし、



「『ダ~メ』」



 皆まで言う前にそう書かれたスケッチブックを俺に見せてくる、『竜種』の頂点に君臨する黒竜様。

「おい待て。ヴェル、それお前が書いたの・・・・・・・・・・?」

 舌までもが麻痺していて話す事が出来ないヴェルは俺の問いに対し、

「・・・・・・・・・・フッ」

 と、何か悟りを開いたような顔で俺に笑いかけた。

 この感じ、あのスケッチブックはヴェルの意思ではない事だけは確かだ。だとすると・・・・・・。

「ソフィー出来たわよー」

「はい、次は、これ、です・・・・・・」

「やっぱり黒幕はてめぇらかあああああああああああ!!」

 そして、ヴェルは新たに何かを書き足されたスケッチブックを再び持たされ、俺の方へと向けた。

「『平和的解決、望む』」

 それにはヴェルもうんうん、とゆっくり頷き、同意した。

 ま、まあ要するにこいつには手出しはするなって事ね。 

 なら、今のこの状況をどう切り抜けろと・・・・・・?

 絶望にも近い気持ちでそんな事を思っていると、ソフィーちゃんがヴェルの持っているスケッチブックを一枚めくろうとしているではないか。

 ま、まさかっ。そのページに何かしらの解決策が・・・・・・っ!?

「『今日の晩御飯、お肉求む』」

「――まさかの晩飯リクエスト!!」

 まあこうなるであろう事は今までの流れからしてわかってはいたけども、よく今の俺の状況を見て肉が食いたいとか言えるな!
 
 まさに俺が今ミンチになるかもしれないところなんだぞ!?

「この状況で余所見なんて、ヨユウジャナイノ・・・・・・ッ」

「――あ、がっ!」

 癇に障ったのか、フンッ、と俺を捕らえている足に更に力を加えるファフニール。

「コノママ、フミツブスノモイイワネ・・・・・・」

「え、ちょ、待っ。いやぁあああああ!! とりあえず話を」

「――――オマエノ血ハナニイロダァアアアアアアアア!!」



「あ、赤ですぅううううううううう!!」



 やばい! このままじゃ本気で殺られる!!

 命の危機を感じた俺は、

「すまんっ、ヴェル!」

 平和的解決には程遠い、強攻策という方法をとる事にした。

 そうさっ、自分の命がかかってるんだ、多少手荒な手段をとったとしてもこれは正当防衛!

 何も問題は無いはずだ!!

 まあ、多少で済ませれるかどうか、自信はねぇけどな。

「ハァアア・・・・・・」

「そこから、今すぐどけやおるぅらああああああ!!」

 そして俺は、鋭い牙を見せながらゆっくりと顔を近づけてくるファフニールに、発火能力パイロキネシスを発動させようと片手を突き出した、その時、

「・・・・・・ねぇ、あなたがヴェルガルドの主だという証拠、紋章を見せてくれないかしら?」

 と、踏みつける力を弱め、俺だけにしか聞こえない声で問いかけてくるファフニール。

「・・・・・・え?」

 先程までとは違うその雰囲気に俺は一瞬戸惑ってしまったが、

「あ、ああ、紋章。これの事か」

 ここは言うとおりにした方が良いと思い、手袋を外して契約時に浮かび上がった手の甲の紋章を見せた。

「この竜を象った紋章は・・・・・・。そう、本当だったのね」

「い、意外だな、てっきりこれを見せても疑われると思ったんだが・・・・・・」

「だって疑いようが無いもの。この竜を象った紋章は私達『竜種』と契約したという証。この契約紋章だけはどんな魔法でも偽造は出来ないもの」

「そういうもんなのか?」

 俺の元居た世界だと、こんな物タトゥーとかでどうとでも出来そうな感じだけどな。

「ええ、その証拠に紋章の竜の瞳の部分が輝いているでしょう?」

「瞳?」

 あ、本当だ。

 若干だが、瞳のところが黒い輝きを放っているのが見てとれた。

「それは契約し、従者となった者をその瞳に魔力を流し込む事によって、一瞬で主の下へと呼び寄せる事が出来る力を秘めているのよ」

 言うなれば、契約した奴を召喚する、というファンタジー系でよくある感じのあれか。

「どれだけ離れていてもか?」

「ええ、どれだけ離れていても、よ」

 便利な力だなぁ、おい。

「それと、この力に関してヴェルの方に拒否権はあるのか?」

「そうね、勿論それはあるわ。でも魔力を流す量を何倍にも増やせば、その従者の意思とは関係無く、強制的に呼び寄せる事は可能よ」

 うぅわ、プライバシーの欠片も無い力だな、これ。

「そこで、なんだけど」

 そう言い、ファフニールはドラゴンの姿のまま、俺の耳元にまでそのでかい顔を近づけ、

「――から、――で、――に、――――てほしいのよ」

 と、俺に一つ取引を持ち出してきた。

「・・・・・・・・・・それ、俺に何かメリットがあるのか?」

「そうね、これを受け入れてくれさえすれば、あなた達だけは私のヴェルガルドに話しかける事を許可するわ」
 
 話しかけるだけかよ・・・・・・。

 こんなこいつにしかメリットがない取引、一体誰がのむって言うん――

「ああ、ちなみに拒否すればこのままあなたが見るも無残な姿になるだけだけど・・・・・・・・・・」

「――謹んでお受け致します! はい!!」

 即答した。

 だって俺が今使用出来る能力の中で、こいつが俺を踏み潰すより先にどうにか出来る能力なんて付加して無いですもの!!

 こいつが俺の体に触れてる時点で、絶対防御能力バーリアを張ったところで意味がねぇしな!!

「あら、物分りの良い坊やね。あなたとは良い関係を築けそうだわ」

 ウフフ、と笑みを零すファフニール。

「・・・・・・良い関係って、これもう脅は」

「何か言った?」

「取引の件は任せな! しっかり役目は全うしてみせるからな!」

「ふふふ、お願いね?」

 そう言った後、ファフニールを中心にもの凄い風が吹き荒れ、少ししてその中から人型に戻ったファフニールが姿を見せた。

「助かったぁ・・・・・・」

「ほら、立てる?」

 ファフニールはそう言い、俺に手を差し伸べてくる。

「あ、ああ」

 俺はその手をとり、ゆっくりと立ち上がった。

 そして、ファフニールは俺の手を離さず、

「これから宜しくね? ・・・・・・レ、イ、ジ?」

 と、誰であっても逃げ出しそうな程の黒い笑みを向ける。

「アア、ヨロシクナー」

 この時、俺は切実に思った。

 どうして俺の周りには普通の奴が一人も居ないのか、と・・・・・・。

*************************************

 テロリン。

 『ファフニール が なかま? になった。』

 レ「あ、こういうの別にいらないっす」
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...