うん、異世界!

ダラックマ

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三章

レイジVSファフニール

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「はっ! 『毒爪の舞』!」

 開戦すると同時にファフニールが小手調べといったような感じで、数本の猛毒の刃を俺に向かって放つ。

「ちょっと、いきなり過ぎない!?」

「・・・・・・っ!」

「せっかちだな、おいっ」

 俺は貧乳とソフィーちゃんをすぐ傍まで引き寄せ、猛毒の刃を『絶対防御能力バーリア』で難なく弾き返した。

「あー、びっくりしたぁ・・・・・・」

「零時、様、ありがとう、ござい、ます」

「ああ、気にしなくて良いから少し離れてろ。どうやらあいつのご指名は俺みたいだからな」

 俺がそう言うと、「わかったわ、後はよろしく!」だとか、「ご武、運を!」だとか即答してそそくさと俺から離れていく二人。

 ・・・・・・いやまあ、そうしろって言ったのは俺だから別に良いんだけどさ? 

 でも何だろうね、この悲しい気持ちは・・・・・・。

「あら? 見たことも無い魔法障壁ね。でも、これならどうかしらっ!?」

 そんな俺にはお構い無しに勢い良くその場から飛び上がったファフニールは、

「『ストームブレス』!!」

 俺の『絶対防御能力バーリア』目掛けてブレスを放った。・・・・・・だが、

「・・・・・・硬い、わねっ」

 それでも抜けないその防御力に少し厳しい表情を見せるファフニール。

「残念ながら、俺のはちょっとばかり特別製でね。そんな攻撃じゃ、こいつには傷一つ付けられやしないぜ?」

「く・・・・・・っ。ならっ!」

 このままでは守りを突破出来ないと考えたファフニールは、その攻撃を止めると同時にそのまま地面に急降下。そして、クルッと身を翻し、自らの尻尾を武器にして俺に攻撃を加える。

「――うおっ!!」

 ギャリリリッ、と『絶対防御能力バーリア』に奴の尻尾がもの凄い力で擦れていく。

「はああっ、はあっ!!」

「マジ・・・・・・かっ!」

 当然の事ながら『絶対防御能力バーリア』は破られなかったのだが、単なる力負けで『絶対防御能力バーリア』ごと俺は横にあった建物の中へと吹っ飛ばされてしまった。

「零時、様・・・・・・っ!!」

「レ、イジ・・・・・・」

「最低クズロリコン野郎!!」

 まさか俺がこうなるとは思っていなかった三人がその建物の方に向かって俺の名前を叫ぶ。

 あ、最後のは違うか。

「い、ってぇ・・・・・・。切り離しバージョンにしておくべきだったか・・・・・・」

そんな事をぼやいていると、

「――いっ!?」

 トドメと言わんばかりに、ヒュオッ、という音と共に再度ブレスが放たれ、『絶対防御能力バーリア』に直撃した。

「うへぇ、容赦ねぇ・・・・・・・・・・」

 ・・・・・・余裕があるように見えるだろう? 実はそうでもないんだなこれが。

 逃げようにも、『絶対防御能力バーリア』ごと押し潰されるんじゃないか、と思うぐらいにさっきのやつよりか遥かに威力が増していて、全く身動きが出来ない状態なんだわ。

 このパワー、流石は異世界系最強クラスのドラゴンっていったところか。

「(まさか、この火力でも抜けないなんて・・・・・・)」

 ファフニールがそう思うのも無理は無かった。

 何せ、今放っている高火力のブレスをここまで防いだ者は、過去誰一人として居なかったからだ。

「生、意気・・・・・・っ」

 それだけぼそりと呟くと、放っていたブレスを一時中断し、

「はああああっ!!」

 残っている力全てを一点集束し始めた。

「やっと収まったか。・・・・・・って、んん!?」

ブレスが収まり、ようやく身動きがとれる状態になったのは良いが、

「・・・・・・・・・・何だあの元○玉もどきは」

 オラに元気をー、とか言っちゃいそうな感じの馬鹿でかい球体が起き上がった俺の目に飛び込んできたのだ。

「これが限界ギリギリまで魔力を注ぎ込んだ私の最高火力! これでも防ぎ切れるというのなら、防ぎ切って見せなさいよ!」

 えー、んな無茶な・・・・・・・・・・。

 例えあれでも俺の『絶対防御能力バーリア』の防御は抜けはしないだろうが、それ以外は別なんだよなー・・・・・・。

 あんなもんが俺の『絶対防御能力バーリア』と衝突すれば、その衝撃でこのあたり一帯はおそらく吹き飛ぶだろうし、そうなれば他の三人も無事では済まない事は確実。

 そこら辺の事、こいつは考えてるのかねぇ。

「行くわよっ! レイジ!!」

 いや、来なくて良いんですが。

「はあっ! 『撃滅の暴風』(エアリアルディストラクション)!!」

 俺のそんな気持ちを無視するかの如く撃ち出される○気玉。

 防ぐのが駄目となると、俺がとる手段は・・・・・・。

「『身体強化ブースト』! プラス『絶対防御能力バーリア』!」

 まず『身体強化ブースト』で身体全体を強化した後、『絶対防御能力バーリア』を右足にのみ発動。そして、

「ボールはぁ! 友達ぃいいいいいいっっ!!」

 そう叫びながら躊躇無く襲ってくる元気○を町から離れた森の方へと力いっぱいに蹴り飛ばした。



「「「「えええええええええええっっ!?」」」」



俺のその行動に驚愕しまくる三人と一体。

「ふぅ、つまらぬ物を蹴ってしまった・・・・・・・・・・」

 そして、蹴り飛ばした先で爆発する元○玉をバックに静かに呟く俺に、ファフニールは、

「え、ちょ、まっ。蹴った? 蹴ったの!? 『人種』が!? 私の最高火力を!?」

「ん? ああ、だってこうでもしないと俺達が危なかったしな」

「いやいやいやっ、そうだったとしても私のあの一撃を生身の人間が蹴り飛ばすなんて、普通ありえないわよ!?」

「そんな事言われてもなぁ・・・・・・」

 この方法しか思いつかなかったし、それに今更ありえないとか言われても蹴れてしまったもんは仕方がないじゃないか。

「まあ、何だ。この現実を受け止めようぜ? な?」

「どう受け止めろと!?」

「そこはまあ、あれだ。気合?」

「何で疑問系!? それに気合はそこまで万能じゃないわよ!!」

 気合が万能じゃないだと? ははは、何を言っているんだこいつは。気合さんをあまりナメるんじゃねぇよ。

「で、どうすんだ? まだやるのか?」

 雑談はここまでにして俺はファフニールにそう問いかけた。

「・・・・・・・・・・」

 だがファフニールから返答は返ってこない。

「別に俺は続けても良いが、見たところお前はもう力を使い切ったみたいだし、それにこのままじゃヴェルが手遅れになる可能性が高いぞ?」

 そして、ファフニールの毒に侵され続けているヴェルの方へと視線を向ける。

「・・・・・・確かに、あなたみたいな化け物と戦えるだけの魔力は私にはもう残っていないわ」

「なら・・・・・・」

「でも! 私のヴェルガルドを傷つけようと、いえ、傷つけたあなたには私は負けたくない! 負けられないのよ!!」

 力の限り叫ぶファフニール。すると、

「む、わ、我は、お、お前のも、のでは・・・・・・」

「ふんっ」

「むっ、ああああぁぁぁ・・・・・・・・・・」

 ヴェルがファフニールの言葉に対し、何かを言おうとしていたのだが、ヴェルが言い終える前にファフニールは毒の風を追加し、強制的にヴェルを黙らせた。

「・・・・・・・・・・負けられないのよ!!」

「ちょっと待って!? え、今追加したよね? 追加で毒盛ったよね!? それで何、何事も無かったかのように話を進めようとしてんの!?」

「だってぇ、急にヴェルガルドが愛してるなんて言うからぁ・・・・・・」

 一言もそんな事言ってませんでしたけど!? てか、それが仮に本当だったとしても、照れ隠しで毒を盛るとかっていうのもどうかと思いますけどねぇ!?

「おいヴェル! しっかりしろっ、生きるのを諦めるな!!」

 俺は即座にヴェルに駆け寄り、声を掛ける。

「ああ、言うのを忘れていたけど、その毒は体の自由を奪うだけのただの麻痺毒。だから命の危険は無いから安心して良いわよ」

 いや、それを聞いて俺は安心は出来たけど、でもヴェル的には安心出来ねぇよ? こんな所ホモの楽園で体の自由を奪われるとか、ある意味命の危機だからな。

「ガクガクガクガク・・・・・・・・・・っ」

 ほら見てみ? ヴェルの奴、この世の終わりみたいな表情で怯え狂ってるぞ?

「でも、この後の事を考えると二回じゃちょっと心許無いわね。もう一回くらい盛っておこうかしら」

「や、止めてやってくれ! ヴェルのライフはもうゼロよ!!」

 ヴェルに対して更に追い討ちをかけようとするファフニールを俺は必死に止める。

 てかこの後の事って、動けないヴェルに何する気だよこいつ・・・・・・。

 まあ、こいつの言動から何となくは予想はつくけども。

「ていうか、いつまで私のヴェルガルドに気安く触れているつもりなの? あなた、一体ヴェルガルドの何なの?」

 えぇー、男の俺も嫉妬の対象に入るんですか。こいつの愛、重っ!

「え、いや、俺は・・・・・・・・・・」

 本当の事を言っても良いんだが、とてつもなく嫌な予感しかしないのは何故だろう。

 だってこの世界の奴だし、ヴェルに対しての愛が重すぎるし・・・・・・。

 だが本当の事を、俺がヴェルの主だという事を知れば、もしかしたら手を引いてくれるかもしれない。

 ・・・・・・悩んだ末、俺はこの可能性に賭けることにした。

「・・・・・・ヴェルの主、です」

「ピキ・・・・・・・・・・ッ」

  俺が正直にそう伝えた瞬間、殺気と猛毒の息がファフニールを覆い始めた。

「シネ、コロス、ワタシ、オマエ、メッサツ・・・・・・」

 何ともまあ物騒な事を言いながらどんどん猛毒の風の刃を生成するファフニールさん。そして、

「・・・・・・懺悔は、いらないわよね?」

 にっこにこと笑いながら俺にそう聞いてくる。それに対して俺は、

「・・・・・・・・・・ダッ!」

「――ニガサナイッ!!」

 嫉妬に荒れ狂うファフニールの容赦の無い猛攻から、俺は全力で逃げ出した。

 ・・・・・・・・・・やっぱりね!!


**************************************

 諸事情により更新が遅くなってしまい、すみませんでした。(TAT)

 これからも頑張っていきますので、「うん、異世界!」をどうぞ宜しくお願い致します!!
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