うん、異世界!

ダラックマ

文字の大きさ
上 下
28 / 77
三章

さあ、行こうか

しおりを挟む
 発動した『魔力感知』は、百、二百、三百と順調に範囲を拡大していく。

 そして魔法側の魔力感知では最大範囲とされた一キロという数字を、俺の固有ユニークスキル〈異能力無限付加〉で付加した『魔力感知』は、ほんの数秒で超してしまった。

「・・・・・よしっ」

 そのまま拡大させつつ、『魔力感知』の網に掛かる魔力一つ一つに意識を集中し、あの『愛』という魔力の形を探す。

 さあ、どこに居る・・・・・・・・・・っ!

 その時、『魔力感知』の範囲が五キロと少し拡大したところで、今まで網にかかったどの奴等よりも一際でかい魔力を捉えた。

 もしや、と思った俺はその大きい魔力にのみ意識を集中させる。すると、



「・・・・・・・・・・ビンゴ」



 それは紛れも無い、『愛』という魔力の形だった。

 目標を発見した俺は察知されないよう『魔力感知』を解き、吉報を知らせるべく、ヴェル達の居る所へ戻った。

「・・・・・・よっ、と」

「むっ、どうであった、レイジ!」

 結果を早く知りたい、と言ったような感じで食い気味に聞いてくるヴェル。

「「・・・・・・・・・・」」

そのヴェルの後ろでは貧乳とソフィーちゃんが黙って俺の報告を待っていた。

 そんな三人に対し、俺はニッと笑い、言った。

「ミッションクリアだ」

「むっ、・・・・・・礼を言うレイジ。流石は我の主人であるな」

「良くやったわ最低クズロリコン野郎。で、白竜の魔力を捉えたのはどの辺りなの?」

 褒めてるのか貶してるのかどっちなんだよそれ。

「ここからあっちの方角へ五キロちょっと行った所で反応があったよ」

 そう言い俺は自分の真後ろの方角を指差した。

「む、その方角には確か・・・・・・」

「ゲ、イム、という、町があったはず、です、ね」

 はい? ゲーム?

「ゲイム・・・・・、なるほど、確かにあそこなら隠れるのにはもってこいの場所ね」

「それはどういう意味なんだ?」

「む、昔は活気溢れる良い町であったのだが、三十年前に起きた天変地異により現在は別名亡者の町と呼ばれ、誰も寄り付かぬようになったのだ。故に、隠れ家にするのであれば最適という訳なのだ」

 ・・・・・・・・・・亡者の町? 何だろう、すっげぇ行くの嫌になってきたんですけど。

「出来るのであれば、我もあの地だけは避けたかったのだが・・・・・・・・・・」

 えぇっ!? 竜神やら言われてるあのヴェルまでもが行くのを躊躇うレベルの場所なの!?

「な、なあ、そこまで言うんだったら別に無理して行かなくても良いんじゃないかと思うんだが・・・・・・。ほら、白竜がそこから移動するのを待ってからでも遅くは、・・・・・・って、お前等は何か普通だな」

 ヴェルが顔を青くして嫌がっているのに対し、何故か貧乳とソフィーちゃんは涼しい顔をしていた。
 
「えっ? いやほら、だって、ねぇ?」

「あ、あのあの、私達、にとっては、そこまで危険、という、場所でも、ない、ので」

「・・・・・・・・・・」

 そんな二人に異様な不自然さを感じた俺は、
 
「おい、何を隠してる?」

「な、何も隠してなんていないわよ?」

「――コクコクコクっ」

 その必死な感じが逆に怪しいんだが。

「そ、それよりも、そこに居るっていうのがわかっているのならすぐに行くべきよ! 私達は例のイレギュラーも見つけないといけないんだから、そんな悠長な事はしてられないわ!」

「――コクコクコクコクコクコクっ」

 その件について貧乳が必死なのはわかるんだが、どうしてソフィーちゃんまでもがそんなに必死に?

「む、そう、であるな。我の厄介事に私情でこれ以上時間を掛ける訳にもいかぬだろうしな。よし、早急に向かうとするとしよう」

「・・・・・・すげぇ嫌な予感しかしねぇけど、まあ白竜が移動するっていう確証もねぇし、仕方ねぇか」

「あら、案外素直じゃない。もっとごねるかと思ってたわ」

「少し前にぴーぴー喚いてた誰かさんとは違うんでな」

「なっ、あれは・・・・・・っ」

 すると、ソフィーちゃんがそんな俺と貧乳の袖を同時にクイクイっ、と引っ張り、

「あ、あの、時間、あまり、ありません、ので」

「ああ、そうだな、日が落ちる前にさっさと終わらせるか」

「む、では少女等は我の背に乗ると良い」

 そう言いヴェルが俺達から少し離れ、人型から元に戻ろうとしたが、

「あ、それには及びません。私達はこれでも天界アルカディア聖騎士の一員です。飛行魔法の心得くらいはありますので、ご心配なく」

「む、そうか。それは差し出がましい事をしてしまった」

「いえ、その寛大な・・・・・・、って何よ?」

 じ~っと冷たい視線を送っていた俺とソフィーちゃんに気付いたのか、貧乳はああん? といったような感じで俺達にその視線の意味を問いかける。

「いや、猫被んのは良いけどさ、早くしてくんねぇ?」

「べ、別に被ってないわよ! 失礼ね!」

「え、それ今更否定すんの? もう手遅れだから諦めろって」

「む、もう止めぬか・・・・・・・・・・。そろそろ行くぞ二人共」

 ギャースカ言い争いをする俺達にヴェルは呆れ顔でそう言うと、背中から羽だけを出した。

「く・・・・・・っ、今日のところはこれくらいにしておいてあげるわ! 竜神様に感謝しなさいよね!」

「はいはい。んじゃヴェル、その亡者の町って所まで案内してくれ」

「む、了解した」

 そうして、俺達四人はゲイムという別名亡者の町へと向かうべく、上空へと一斉に飛び立った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい

みおな
恋愛
 何度生まれ変わっても、私の未来には死しかない。  死んで異世界転生したら、旦那に虐げられる侯爵夫人だった。  死んだ後、再び転生を果たしたら、今度は親に虐げられる伯爵令嬢だった。  三度目は、婚約者に婚約破棄された挙句に国外追放され夜盗に殺される公爵令嬢。  四度目は、聖女だと偽ったと冤罪をかけられ処刑される平民。  さすがにもう許せないと神様に猛抗議しました。  こんな結末しかない転生なら、もう転生しなくていいとまで言いました。  こんな転生なら、いっそ亀の方が何倍もいいくらいです。  私の怒りに、神様は言いました。 次こそは誰にも虐げられない未来を、とー

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...