うん、異世界!

ダラックマ

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三章

白竜探し、始動

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 その後、シンからの伝言を受け取った俺達と、何故かしばらく行動を共にする事になった貧乳とソフィーちゃんとで、今後の事についての話し合いになったのだが・・・・・・。

「どうして、こんな、事に・・・・・・」

「まだ言ってんのかよ。もういい加減諦めたらどうだ?」

 貧乳がかれこれ十分程こんな状態な訳で、まともな話し合いどころか、これから俺とヴェルがしようとしている事についても説明が出来ていなかった。

 このままではキリがない、と思った俺は、

「はあ、てか、そんなに嫌なら今からでも帰ればいいじゃねぇか」

 その場でうな垂れる貧乳に対し、そう言った。すると貧乳は、

「・・・・・・れない」

「え? 何だって?」

 その声が小さ過ぎて上手く聞き取れなかったので、俺はそう聞き返すと、



「帰れないのよぉおおおおっ!!」



「・・・・・・・・・・」

 そう大声で俺に向かって叫び散らした。

 あー、耳いってぇ・・・・・・・・・・。

「帰りたくても帰れないのよ! 帰還用の空間移動魔法具もいつの間にか抜き取られてるし、念話魔法を使っても全然応えてくれないし!!」

 あーなるほどね。つまりはあれか、役目を果たすまでは帰って来るなっていうやつね。

 それはまた難儀なこって。

「あぁもうどうすれば良いのよーっ!!」

「諦めて俺達について来るってのは」

「それは絶対に嫌っ!!」

 ですよねぇー。

「はあ、全く手酷く嫌われたもんだな俺達。なあヴェ」

「竜神様だけならともかく、こんな最低クズロリコン野郎なんかと一緒に旅をするだなんて絶対に嫌ぁああっ!!」

 おやまあ、 嫌われてるのって俺だけだったのかー。ま、わかってはいたけどね。

 それにしても、凄い言われようだな俺。何も別にそこまで言わなくたって良いじゃないの、ねぇ?

「・・・・・・レイジ、お主一体あの少女に何をしたのだ?」

 哀れみと同情の眼を向けながら俺に問いかけるヴェル。それに対し、俺は、

「・・・・・・え、何も?」

 と真顔で一言。

「む、今の間は」

「え、何も?」

 ヴェルが少しだけしつこかったので、今度はニコニコの笑顔でそう言うと、

「むぅ・・・・・・、ならばそういう事にしておくとしよう」

「賢明な判断だ」

 駄菓子菓子、いつまでもこのままってのもなぁ。いい加減腹を括ってもらわないと、こっちの予定に支障が・・・・・・。

 最悪放って行くという手段もあるが、ソフィーちゃんが居る手前、そんな事は出来ない。

 はあ、どうすれば良いんだって叫びたいのはこっちだよ、全く。

 すると、そんな俺の前に一人の救世主が現れた。

「あ、あの、ミーナ、さん」

「・・・・・・何? ソフィー」

「あ、あのあの、実は、主様、が、ミーナさんにも、伝言を、と」

 ソフィーちゃんはそう言うと、貧乳の耳元で何かをごにょごにょと伝えた。

「・・・・・・っ!」

 そして、その伝言とやらを聞き終えた貧乳は、ゆらゆらと立ち上がると、



「さあっ、何をグズグズしているのあなた達! さっさとそのイレギュラーとやらを探しに行くわよ!!」



 声高らかに俺達に向かってそう雄叫びを上げた。

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 この時、俺達三人が何を思ったのかは言うまでもあるまい。

「・・・・・・あー、ソフィーちゃん? 一体あいつに何言ったの?」

 さあ、やるわよー! やら、気合よ気合ー! とか言いながら騒ぎ続ける貧乳を横目にソフィーちゃんにそう尋ねる俺。

「い、いえ、ただ、その・・・・・・、無事、任務を完了した、暁、には、主様、から直々に、ご褒美が、頂ける、と」

「うわぁ、現金な奴だなあいつ・・・・・・」

 まあでも、俺もあいつの事言えた義理じゃねぇけどさ。その気持ちは何となくわかるし。

「しかしこれで、やっと本題に入れ」

「ま、まあ、伝言が、ある、なんて、嘘、なんですけど、ね」

「・・・・・・はい?」

 ソフィーちゃんのその言葉に俺は一瞬耳を疑った。

「え、嘘って、あいつ宛のシンからの伝言自体が?」

「はい、ミーナさん、に、やる気を出させる、には、こういった方法、が、一番、効果的、なので」

「・・・・・・・・・・」



 ソフィーちゃんっ、何て恐ろしい子っ!!



 にこっと天使のような笑顔で結構悪魔的な事を言うソフィーちゃまに、俺は恐怖すら覚えた。

 ダークソフィーちゃん、マジパねす。

「ちょっとあなた達何やってるのよ? 早く・・・・・・、って何? この手は」

 何も知らない貧乳が俺とソフィーちゃんの下へと意気揚々とズンズン歩いて来たので、俺は彼女の肩にポンと手を置いてふるふると首を左右に振り、言った。

「・・・・・・・・・・頑張ろうな」

「え、ええ・・・・・・・・・・?」

不憫だ、不憫過ぎるぜ、貧乳・・・・・・っ。

そして、一筋の心の汗が、俺の頬を伝った・・・・・・。



「はい、ではこれより白竜捜索大作戦についての会議を始めまーす。いぇーい」

「どん、どん、ぱふ、ぱふー」

「「・・・・・・・・・・」」

 何者かに意図的に妨害をされているのかと思う程にここまで色々な事があり、話が全く進まなかったのだが、ようやく本題に入れた俺達であっ、

「意義ありっ!!」

 しかし、そんな事はお構い無しだといったように、空気を読まずに容赦無く話の腰を折ってくる貧乳。

「・・・・・・はあ、今度は何だよ。言っとくけど、ここまで話が長引いてる原因は八割方お前なんだからな」

「うぐ・・・・・・っ。で、でもっ、これだけは言わせてもらうわ! どうしてイレギュラー探しじゃなくて白竜探しになってるのよ!」

「うん、その事についても説明する暇を与えてくれなかったのはお前なんだがな」

「う、うぅ~~~っ、とにかくっ、どういう事か説明して! 今すぐ!」

「はいはい」

 俺は適当に相づちを打ち、何故白竜探しをするのかを説明した。

「かくかく、しかじか、かくぅー」

「ええ、ええ、なるほど、そういう事だったのね・・・・・・って、わかるか!!」

「・・・・・・・・・・」

「どうして、わかるだろ普通、みたいな顔で私を見てるのよ! 普通はわからないからね!?」

 ・・・・・・はあ、これだからゆとりは。

 だがまあ、そのノリツッコミに免じて今回は許してやろう。

 そして、俺はもう一度、今度は真剣に事情を貧乳に説明した。



「・・・・・・そう、この最低クズロリコン野郎じゃなくて、竜神様がその白竜を探してるって事だったのね」

 え、何? まさかお前の中でそれが俺の呼び方として定着してるの?

 仕返し? 仕返しのつもりなのかな?

「む、すまぬ。我の都合に付き合わせてしまう形になるが・・・・・・」

「い、いえ、とんでもないっ。私共が竜神様のお役に立てるのであれば、それは身に余る光栄。微力ではありますが、その白竜探しにこのミーナ、喜んで協力させて頂きます」

「む、かたじけない」

「よし、話はついたみたいだな。早速本題に入るぞ」

 そして、俺がまず最初に確認したのは、

「ヴェル、魔法での魔力感知の最大有効範囲は確か一キロくらいまでだったよな」

「む、うむ。どれ程魔力量を有していようとも我等の扱う魔力感知はその数字が最大であるな」

「そうか・・・・・・。はいっ、作戦会議終了!」

「「「・・・・・・・・・・え?」」」

 俺のその言葉に三人全員が目を点にして変な声を出した。

「むっ、どういう意味であるかレイジ!」

「そうよっ、ちゃんと説明しなさい!」

「あ、あのあの・・・・・・」

 からのこれである。

 まあ、こうなるのは仕方の無い事だろう。何せ、言い出しっぺの俺が唐突に作戦会議を打ち切ったのだから。

「どうどうどうどう、とりあえず落ち着けって」

「むっ、これが落ち着いてなどっ」

「なあ、お前等。俺が本当に何の考えも無しに作戦会議を打ち切ったと思ってるのか?」

「む・・・・・・、レイジの知力であるならば、あるいは」

「そうね・・・・・・、見るからに知力零時って顔してるものね」

 うーわ、絶望的なまでに信用ねぇ・・・・・・。

 あと知力零時って何だ。さり気に俺の名前をディスるんじゃねぇ。

「あ、あの、私は、そこまで思って、ません、から。扱いやすそう、だとか、そんな事は、決して思った事、ありません、からっ」

 うん、フォローありがとうソフィーちゃん。

 でも最後の方ちょっとダークソフィーちゃんが顔を出してたね。・・・・・・そうか、扱いやすそうなのか、俺。

「はあ、お前等の俺に対する認識はよくわかった。でもな、一つ忘れてないか? 俺がどんな力を持っているのかを」

「「「・・・・・・・・・・っ!」」」

 その瞬間三人の顔がはっ、と何かを思い出したような表情をする。

「そう、俺は諦めたから作戦会議を打ち切ったんじゃない。一つの可能性が見えたから打ち切ったんだ」

 俺がそう三人に告げると、いち早くその可能性について察したヴェルが口を開いた。

「む、もしやその可能性というのは魔力感知・・・・・・。だがレイジ、魔力感知の最大有効範囲は一キロ程度であるのだぞ。しかもそれは先程レイジ自身が確認をとった事であろう?」

「ああ、だがそれは『魔法の魔力感知』の話だろ。だったら俺の固有ユニークスキルで得た『魔力感知』でなら?」

「む・・・・・・っ!」

「試す価値はあると思うが?」

「む、確かに、レイジの固有ユニークスキルで習得した魔力感知であるならば、あるいは・・・・・・。いや、しかし」

「何、失敗したとしてもまた別の方法を考えれば良いんだ。物は試し、やらずに後悔するよりはやってから後悔しようぜ、ヴェル」

「む、そう、であるな。では頼むレイジ!」

「ああ! 任せろ!」

 最後に俺とヴェルはゴツンッ、と互いの拳と拳を合わせた。

 そして俺は、『魔力感知』を出来るだけ広範囲で発動するべく、『飛行能力』で空へと上がった。
 
「さて、と」

 ヴェル達が居る岩場を中心にこの森全体が見渡せる位置で止まり、一度深呼吸をした後に、



「さあ、俺達と白竜おまえの鬼ごっこを始めようぜ!!」



 その台詞と共に、手抜き無しの全力で『魔力感知』を発動させた。
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