うん、異世界!

ダラックマ

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三章

契約その1

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「どうであった少年、我の魔力の形は。美しかろう?」

「いや、まあうん。綺麗、ではあったな・・・・・・」 

 もはやツッコム気力すら無くなった俺は、そう尋ねてくる黒竜に対して普通に感想を返した。

「そうであろう? いやはや、我の魔力の美しさが理解出来るとは、少年は大したものだな」

 あーもう、何でも良いです、はい。



「で、肝心の白竜の魔力はどんな形をしてるんだ?」

 俺がそう質問すると、

「・・・・・・むぅ、あやつのは我でも良くわからぬ程、複雑な形をしておってな。口では上手く説明出来ぬのだ。すまぬ」

 黒竜は申し訳無さそうに答えた。

 説明出来ない程複雑って、変な形じゃ無いだろうな・・・・・・。

 すっげぇ嫌な予感しかしないし、それにこの世界ならそれも十分有り得る。

「なら俺が魔力感知で探すのは無理そうって事だな。他の方法を考えねぇと・・・・・・」

 何か手っ取り早い方法は無いか、と俺が自身の中の異能力系引き出しをフルオープンしていると、

「む・・・・・・、方法は無い事も、無い」

 黒竜は俺に向かって、真剣な面持ちでそう言った。

「何か思いついたのか?」

 俺がそう返すと、「むぅ、それは・・・・・・」と黒竜は一瞬口ごもり、

「少年と我との間に主従契約を結ぶ、という方法だ」

 何とも素敵な言葉を口にしたのだった。



 『契っ約っっ!!』



 そう、それはオタクにとっては心が震える言葉(※これは個人の感想です)の一つであり、俺がこの世界でやってみたかった事の一つでもあるのだ!

 よっしゃあ! 来たぜ契約イベントっ! くぅっ、やっぱ異世界はこうでなくっちゃなっ!!

 故に、俺がこのように舞い上がるのは必然と言えよう。



「その話、く、わ、し、く!」



「む、あ、ああ・・・・・・」

 俺のテンションの高さに若干引き気味の黒竜。

「む、だがこれは賭けのようなものでな。もしかすると、少年の命に関わってくる可能性も有り得るのだ」

「命に? どうしてだ?」

「主従契約は契約する際、従となる者のほぼ全ての魔力を、主となる者に流し込む。それと同時に、主となる者もまた、従となる者に同じ分の魔力を流し込むのだ。それで主従契約は完了するのだが、しかし主となる者の魔力量が従となる者よりも劣っていれば、主となる者はその身体が魔力量に耐え切れなくなり、死に至る」

 まあ要するに、死にたくなければ大人しく自分の魔力量に見合った奴と契約しとけって話か。

 ・・・・・・あれ、使い魔契約って、こんな殺伐としたイベントだったっけか?

「それに我は『竜種』の中でも特に濃く、魔力量が多い。その為、今までに我と主従契約をしようとした者は誰一人として居らぬのだ」

 そう言い、少し暗い表情をする黒竜。

 強過ぎるが故の孤独。その表情からでもそれは痛い程に伝わってきた。
 
 おそらく今までにパートナーと呼べる存在はこいつには居なかったのだろう。

 そうか、だからこいつは・・・・・・。

「む、少年よ、故に我はこの方法を無理強いはせぬ。今からでも別の方法を模索したとしても、遅くはあるまい」

 黒竜は俺の身を案じてか、そう言った。

「はっ、おいおい、そんなつれねぇ事言うんじゃねぇよ」

 だが、俺はその言葉を一刀両断する。そして、

「良いぜ、受けよう、その契約」

 多分ギリギリセーフラインの言い方で、契約をするという事を黒竜に伝えた。

「なっ!? いや、我の話を聞いていたのかっ!? もしや死ぬ気ではないだろうなっ!?」

「いや、ちゃんと聞いてたし、それに死ぬつもりも予定も無い」

「なら、何故・・・・・・っ」

「確信があるからに決まってるだろ。勿論、成功する確信がな」

 嘘は言っていない。

 何故ならば、契約時に必要となる物が魔力のみというのなら、『無限の魔力』を付加している俺からしたら何も問題は無いのだから。

「さあ、後はお前次第だ。俺と契約するか否か、まあお前がびびってるって言うんだったら止めても構わないがな。・・・・・・どうする?」

 わざと黒竜を焚き付ける。

 俺を心配して慎重になっていてくれていた事がわかっている分、このやり方は心苦しいが、こうでもしないと話がいつまで経っても前に進まない。だから、許せ、サ○ケ・・・・・・。

「・・・・・・む、少年は今この我が、臆病、と申したか?」

「ああ、だってそうだろ? 俺は全てを聞いた上でお前と契約するって言ってるんだ。なのにお前ときたら、あれやこれと渋ってばかりじゃねぇか。これをびびってる以外に何て言えば良いんだよ」

 俺のその言葉に黒竜は、

「フ、フフ・・・・・・、ハッハッハッ! 確かに、少年の言うとおりだな! フフフ、良かろう、では望みどおり、契約を始めようではないか!」 

「決まりだな。で、まずどうすれば良いんだ?」

「我の角を、どちらでも良いから掴むのだ」

 そう言って、角が掴みやすい位置まで頭を下げた。

「む、そうだ、手袋はとってくれ。素手の方が流しやすいのでな」

「そうなのか?」

 そう言い、俺は手袋を外す。

「では、掴め」

「じゃあ、失礼して・・・・・・、はぅあっ!!」

「ど、どうした、少年っ!」

「・・・・・・・・・・」

 な、何だ、この感触は・・・・・・。

 もっと、ゴツゴツしてるのかと思ったら・・・・・・。

 一体何なんだっ、このすべすべ、つるつるはっ!!

 けしからんっ、あぁ・・・・・・、実に、けしからんっ!!

「どうだぁ・・・・・・・・・・、んん? ここかぁ? ここがええのんかぁ・・・・・・・・・・?」

「何故、そのような気持ちの悪い手つきで、触っておるのだ・・・・・・? 普通に掴むだけで良いのだぞ・・・・・・?」

 あぁああっ・・・・・・、きもてぃいいいいいっっ!!
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