うん、異世界!

ダラックマ

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三章

魔力についてのお勉強

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「む、では話がついたところで、これからどのように動くかを考えねばなるまいな」

「そうだな」

 しかし、カッコつけて俺の持てる力の全てを――、なんて言ってしまったが、これと言って何の策も思いつかない訳で・・・・・・。

「・・・・・・ちなみに、その白竜とやらを探すのに、他に手掛かりとかは無いのか?」

「む、先日この辺りで目撃情報があったという事以外、手掛かりと言える物は何も無いのだ」

「なら、まだこの近くに居るかもしれないって事か」

「む、いや、あやつの魔力を我が感知出来ないという事は、少なくとも我等が居るこの位置から一キロ以上は離れているという事になる。故にそれは無かろうな」

 ダメじゃんその情報、全然役に立ってねぇ・・・・・・。

 これはかなり手こずりそうだな・・・・・・、と思っていると、

「あやつの魔力を感知出来る所まで行ければ、後は簡単なのだが・・・・・・」

 突然、黒竜がそんな事を言い出した。

「ん? それはどういう事だ?」

「む? ・・・・・・まさか少年、魔力についても無知と言うのではあるまいな?」

 そう言い、げんなりとした顔で俺の方を見る。

「そのまさかですが、何か?」

 その回答に黒竜は「はあ・・・・・・」と短く溜め息をつくと、

「むぅ・・・・・・。良いか? 魔力というのはだな」

 赤点常連生徒に補習授業をするかの如く、魔力についての説明を始めた。

「まず個々が持つ魔力にはそれぞれ異なる点が大きく分けて三つ、量、純度、快楽、この三つに分けられるのだ」

 ほうほう。・・・・・・ん?

「まず魔法を扱う際、単純に量と純度の二つが多く、濃い程、より強力で精密な魔法を扱えるようになるのだ。逆に薄く少なかったり、どちらかに偏っていたりすると精密さも威力も半減してしまう」

 まあ何となくだが、魔法と魔力という物が存在すると知った時点でそれは予想がついていた。魔力の問題で魔法が使えないというのは漫画やゲームでは良くある設定だからな。

 だが・・・・・・。

「あー、それについては良くわかった。・・・・・・で、最後の快楽ってのは?」

「む、そのままの意味だ。快楽とは各々によって何が快楽になるのかは異なるが、その者が心地良いと感じれば感じるほど魔法の威力が増し、量と純度に偏りがあったとしてもそれでカバーが出来る。故に快楽とは、魔法を扱う者には無くてはならないもの、という事なのだ」

「・・・・・・・・・・」

 ――何ぞそれっ!? 

 普通威力を上げる時には気力だとか強い意思とかっていう熱い気持ちじゃないの!? 

 快楽を糧に魔法の威力を上げるとか初めて聞いたんですけど!?

「・・・・・・えぇと、後学の為に聞いておきたいんだが、ちなみにお前の快楽って?」

「む、我のか? 我は・・・・・・」

 まあ、あれだけ軍の連中相手に塵にしてやる、とか言ってたんだからこいつの快楽は何となく予想はつく――



「こうして一輪の花を愛でる事が、我にとっての快楽なのだ・・・・・・」



「・・・・・・。超乙女っっ!!」(※黒竜は♂です)

 え、何? 何で? どうしてっ!? 

 あんだけ殺気振り撒いてた戦闘狂な奴の快楽が、花っ!?
 
「ありえねぇ・・・・・・」

「む、ありえぬとは失礼な。誰にでも意外な一面はあるものだ。故に、我がこういった一面を持ち合わせていたとしても不思議では無かろうて」

 驚愕の事態に思わず漏らしてしまった俺の心の声に対し、そう返答をする黒竜。

「いや、意外すぎるわ! 俺のお前に対するイメージがたった今音を立てて崩れちまったよ!!」

「む、だが案ずるな少年。花をいくら愛でようとも、我等に敵対する者等へは一切容赦はせんでな。・・・・・・特に」

 そう言った瞬間、黒竜の周りの空気が一変し、黒い炎をまたも纏いながらドスの効いた声で黒竜は加えて言った。

「健気に咲き誇る花を踏み躙るような輩は、その魂すらも全て燃やし尽くしてくれるわ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 うわぁ、こいつの花に対する気持ちやっべぇ・・・・・・。

 常軌を逸してるといっても過言じゃないレベルだわ。

 こりゃ、そこら辺にある花を踏んだだけでも暴れ狂いそう・・・・・・あ。

 そんな事を考えていると、俺はある出来事を思い出した。


 ・・・・・・もし、シンの所で花畑の一画を塵にしてしまったって事がこいつに知られたら、俺やばくね?


 サーっと血の気が引いてくる俺。

「む、どうかしたか少年。何やら顔が真っ青だが」 

「えっ? い、いや、何でも無い何でも無い!」

 確実に屠られると思った俺は、隠し通す事を選択した。だってまだ死にたくねぇもん。

 そして半ば無理矢理に話を戻した。

「ま、まあ魔力については何となくだが理解は出来たよ。でも今聞いた限りだと、どうやってその白竜の魔力を見分けてるんだ? いくら量や純度? が個々で違うって言っても流石に似たような感じの奴はごろごろ居るだろ? それをどう白竜だと特定するんだ?」

 俺のその疑問に黒竜はただ一言、こう答えた。

「魔力の形」

「魔力の、形?」

 この世界の魔力には形があるのか・・・・・・。

「あれか? 単純にドラゴンだったらドラゴンの形をしてる、とか?」

「む、それだと他の『竜種』と見分けが付かぬであろう? この形というのも個々によって異なるのだ。そうだな、例えば」

 黒竜はそう言うと自身のご立派な角をズイッ、と前に出した。

「少年は魔力感知を習得しておるか?」

「魔力感知・・・・・・、ああっ」

 黒竜のその言葉に、無駄な戦いを未然に避ける為に必須な感知系という便利能力をまだ付加して無かった、という事を思い出し、

 ――付加、『魔力感知』。

 即行で付加をした。そして、

「よし、今使えるようにした」

 と、黒竜に報告。

「むっ!? 今習得したというのか!? あの一瞬でか!?」

「そうだが?」

「むぅ・・・・・・、あの一瞬で魔力感知を習得するとは、少年はどこか化け物じみておるな」

 失礼な、それにてめぇに化け物扱いされる謂れはねぇよ、このフラワーモンスターが。

 などと声に出そうになったが、それを何とか我慢し、話を進める。

「で、例えば、何だよ?」

「む、ああ。魔力感知を使用し、我の魔力の形を見てみると良い。おそらくこればかりは実際に目にした方が早かろうて」

「わかったよ」

 そして言われるがまま、俺は『魔力感知』を発動した。

「見えておるか? 少年」


「・・・・・・・・・・いや、魔力の流れっぽいのは確認出来るんだが、形を持った魔力なんてどこに」

 黒竜の頭、胴体、羽、尻尾、足、そのどこを探しても見当たらない。

 この感覚は、小学生の頃に少し流行ったミ○ケをしているような、そんな気分だった。

 すると、中々見つけられないそんな俺を見かねてか、

「む、少年、角だ。角に意識を集中してみると良い」

 そう俺に助言を出してきた。

「角・・・・・・?」

 俺は助言通り、角に意識を集中させると、

「あっ、○ッケ・・・・・・」

 ついに形を持つ魔力を見つけた、は良いのだが、




 んんっ、フラワアアアアアアアッッッ!!




 そう、黒竜の魔力が成すその形とは、またも一輪の花だった。
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