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二章
狙われた馬車その2
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「(こいつ、いつの間に・・・・・・っ)」
「て、てめ・・・・・・、あがっ」
そのまま掴んだ腕をへし折らんとばかりに、力を加え続けるアルド。
「・・・・・・爺さん、そんなに死に急ぎたいか?」
リーダー格の盗賊がアルドに再度ダガーを向ける。
「・・・・・・」
しかし、それでも放さずに真っ直ぐと賊の目を見るアルド。
「その手を放せ・・・・・・・・・・」
盗賊はそう言うと、更にダガーをアルドに近づけた。
「放せっつってんだろうがっ、くそジジイっ!」
なかなか放さないアルドに怒鳴りつけるリーダー格の盗賊。すると、その怒鳴り声を聞いた女性が馬車の中からアルドに向かい、指示を出した。
「構いません。アルド、手を離して下さい」
「ですが・・・・・・」
「アルド」
「・・・・・・畏まりました」
アルドは力を弱め、掴んでいた盗賊の腕を開放する。
「ってぇ・・・・・・。このジジイ、なんて力だ」
「(・・・・・・この爺さん、只者じゃねぇな)」
リーダー格の盗賊は掴まれていた仲間の腕に出来た痣を見て、警戒心を強めた。
「それで、この御方をどうするおつもりで?」
「安心しろよ。そんな怖い顔しなくても、このお嬢様には手は出さねぇからよ。折角でかい金になるってんのに傷物にでもしたら何もかもパーだからな。いいか? お前等も絶対にそいつ傷つけんじゃねぇぞ」
「ど、どういう事ですかい兄貴?」
「折角の上玉なのに・・・・・・」
二人が疑問を尋ねる。
「お前ら、こいつがただ可愛いだけの貴族とか思ってるんじゃねぇだろうなぁ?」
「えっ、ち、違うんですかい?」
そして盗賊はまたもニヤッと不適な笑みを浮かべ、
「こいつは〈エスタニア王国〉の第一王女様だよ」
「「――っ!?」」
「(・・・・・・もはや、手段は選んでいられませんかっ)」
アルドが魔銃を構えようとしたその刹那、
「――っ!?」
「おっと、爺さん。これ以上妙な真似はするんじゃねぇよ。王女さん、死なせたくねぇだろ?」
盗賊が〈火系統〉の魔法陣を馬車の真上に展開していた。
あの位置ではたとえ下級魔法でもまずいと思い、アルドは手に持っていた魔銃を地面に捨て、両手を挙げた。
「良い判断だ。さて爺さん、あんたには伝言役を頼みてぇんだが」
「伝言・・・・・・・・・・?」
そして盗賊はアルドを縄で足以外を縛り上げ、伝言を告げた。
「なぁに、簡単な事さ。王女さんを返して欲しかったら、明日の日暮れまでに十億エスカを用意しろってな。そして、あんた一人でここに持って来るんだ。その金と王女さんをその場で交換って訳だ。ちなみに、伏兵が居るとわかった瞬間、王女さんの首は胴から離れちまう事になるぜぇ?」
ポンポンと手で首を切る仕草をする。
「この下種が・・・・・・」
「おお怖い怖い。何だよ、そんな目出来るんじゃねぇか。無駄に気取ってるより、そっちのがお似合いだぜ?」
睨み続けるアルドに盗賊が「ふんっ」と鼻で笑ってやっていると。
「兄貴、準備出来ましたぜー。早くずらかりましょうよー」
仲間の一人が、すでに馬車の出発準備を整えていた。
「おう! 全く焦り過ぎだっつの。こんな山道、滅多に人なんて来ねぇだろうによ」
くっくっくっ、と笑いながら馬車に乗り込み、
「それじゃあな。爺さんも王女さんが心配なら急いで城に戻るこったな」
アルドにそう告げ、去って行こうとしたその時。
ドォオオオオオオオンッ!! という音と共に、何かが落ちてきた。
「な、何だっ!」
「・・・・・・・・・・っ!?」
その場に居た全員が何事かと言ったような感じで前方を見る。
そしてゆっくりと砂煙が晴れて行くと、そこにはフードを被った全身黒ずくめの男が立っていた。
「て、てめ・・・・・・、あがっ」
そのまま掴んだ腕をへし折らんとばかりに、力を加え続けるアルド。
「・・・・・・爺さん、そんなに死に急ぎたいか?」
リーダー格の盗賊がアルドに再度ダガーを向ける。
「・・・・・・」
しかし、それでも放さずに真っ直ぐと賊の目を見るアルド。
「その手を放せ・・・・・・・・・・」
盗賊はそう言うと、更にダガーをアルドに近づけた。
「放せっつってんだろうがっ、くそジジイっ!」
なかなか放さないアルドに怒鳴りつけるリーダー格の盗賊。すると、その怒鳴り声を聞いた女性が馬車の中からアルドに向かい、指示を出した。
「構いません。アルド、手を離して下さい」
「ですが・・・・・・」
「アルド」
「・・・・・・畏まりました」
アルドは力を弱め、掴んでいた盗賊の腕を開放する。
「ってぇ・・・・・・。このジジイ、なんて力だ」
「(・・・・・・この爺さん、只者じゃねぇな)」
リーダー格の盗賊は掴まれていた仲間の腕に出来た痣を見て、警戒心を強めた。
「それで、この御方をどうするおつもりで?」
「安心しろよ。そんな怖い顔しなくても、このお嬢様には手は出さねぇからよ。折角でかい金になるってんのに傷物にでもしたら何もかもパーだからな。いいか? お前等も絶対にそいつ傷つけんじゃねぇぞ」
「ど、どういう事ですかい兄貴?」
「折角の上玉なのに・・・・・・」
二人が疑問を尋ねる。
「お前ら、こいつがただ可愛いだけの貴族とか思ってるんじゃねぇだろうなぁ?」
「えっ、ち、違うんですかい?」
そして盗賊はまたもニヤッと不適な笑みを浮かべ、
「こいつは〈エスタニア王国〉の第一王女様だよ」
「「――っ!?」」
「(・・・・・・もはや、手段は選んでいられませんかっ)」
アルドが魔銃を構えようとしたその刹那、
「――っ!?」
「おっと、爺さん。これ以上妙な真似はするんじゃねぇよ。王女さん、死なせたくねぇだろ?」
盗賊が〈火系統〉の魔法陣を馬車の真上に展開していた。
あの位置ではたとえ下級魔法でもまずいと思い、アルドは手に持っていた魔銃を地面に捨て、両手を挙げた。
「良い判断だ。さて爺さん、あんたには伝言役を頼みてぇんだが」
「伝言・・・・・・・・・・?」
そして盗賊はアルドを縄で足以外を縛り上げ、伝言を告げた。
「なぁに、簡単な事さ。王女さんを返して欲しかったら、明日の日暮れまでに十億エスカを用意しろってな。そして、あんた一人でここに持って来るんだ。その金と王女さんをその場で交換って訳だ。ちなみに、伏兵が居るとわかった瞬間、王女さんの首は胴から離れちまう事になるぜぇ?」
ポンポンと手で首を切る仕草をする。
「この下種が・・・・・・」
「おお怖い怖い。何だよ、そんな目出来るんじゃねぇか。無駄に気取ってるより、そっちのがお似合いだぜ?」
睨み続けるアルドに盗賊が「ふんっ」と鼻で笑ってやっていると。
「兄貴、準備出来ましたぜー。早くずらかりましょうよー」
仲間の一人が、すでに馬車の出発準備を整えていた。
「おう! 全く焦り過ぎだっつの。こんな山道、滅多に人なんて来ねぇだろうによ」
くっくっくっ、と笑いながら馬車に乗り込み、
「それじゃあな。爺さんも王女さんが心配なら急いで城に戻るこったな」
アルドにそう告げ、去って行こうとしたその時。
ドォオオオオオオオンッ!! という音と共に、何かが落ちてきた。
「な、何だっ!」
「・・・・・・・・・・っ!?」
その場に居た全員が何事かと言ったような感じで前方を見る。
そしてゆっくりと砂煙が晴れて行くと、そこにはフードを被った全身黒ずくめの男が立っていた。
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