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二章
狙われた馬車その1
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〈馬車側視点(少し前)〉
「お疲れ様でした、お嬢様」
「えぇ、ありがとうアルド」
その馬車は、とある町での用事を済ませ、戻る最中だった。
「でも、今日は私用だったのだから、お疲れ様は少し違うのではないかしら」
フフッ、と笑いながらアルドに話しかける。
「ご謙遜を。お嬢様は、実にご立派な事を成されておられると思いますよ?」
「ありがとう。またお願いね? アルド」
「はい、畏まりました。ああそれと、お嬢様」
アルドが中に居る女性に話しかける。
「これより山道に入るので、お気を付け下さい」
「どうして山道を?」
馬車を引くアルドは、一枚の紙を見ながら答えた。
「先程、送られてきた情報によりますと、すぐ近くの草原で多数の、それも繁殖期ではない筈のグロス・ワームが気性を荒くしているのを目撃されておりますので、今現在、草原を行くのは危険かと思いまして」
「そうなのですか。それにしても、情報を得るのが早いのね。まさか、どなたか隠れてついて来ているのではないでしょうね?」
少し笑いながら探りを入れてくる女性。
「いえいえ、本日はお嬢様の私用という事でしたので、護衛の皆様が居られない分、何かあればすぐに知らせが来るよう、手配しておいたのですよ」
アルドがそう言い終えると同時に、馬車は山道に入った。
「結構揺れるのですね。少し面白いです」
「出来れば、どこかに掴まっておいて下さい。お怪我をされては大変ですから」
「はーい」
子供みたいな返事をし、座っている椅子に両手を置いた。
するとその時、小さな爆発音と共に、ヒィィィィィンッ! と叫びながら馬車を引いていた馬が急停止した。
「な、何事ですっ!?」
「出て来てはいけませんっ!!」
アルドは女性を馬車から出ない様指示し、戦闘態勢をとる。すると、
「ちょおっと待ちなぁ!」
男達が馬車を取り囲むように、茂みの影から現れた。
そして男の一人が馬車を引いていたアルドに一本のダガーを向け、こう言った。
「おい、死にたくなかったらこの馬車に乗っている積荷と持ち物、全部置いていけ」
「なるほど、賊ですか。で、これは一体どういうおつもりなのですか?」
アルドの言葉に盗賊達は笑みを溢した。
「へへっ、どういうつもりかー、だってよ」
「見てわかんねぇのか? これだからのほほんと贅沢に暮らしてる貴族様達は」
アルドは小声で後ろの女性に現状を伝えた。
「お嬢様、賊です。恐らく金品目当ての者等かと・・・・・・」
「そうですか」
それを聞いた女性は落ち着き払った態度でそうアルドに返答する。
「おいお前等、馬車の中を調べろ」
「――っ!」
「へいっ」「了~解~」
盗賊二人がそれぞれ馬車の両側に向かって歩き出す。
「動くんじゃねぇぞ爺さん。何、大人しくしててくれりゃあ命まではとらねぇからよ」
「・・・・・・・・・・」
すると、盗賊の一人がダガーを持つリーダー格の盗賊に向かって叫んだ。
「兄貴っ、中に女が居ますぜっ。しかも若いし結構な上玉だ!」
「何だと?」
「・・・・・・・・・・」
その盗賊が中を見ると、真っ直ぐに前を向いて座っている女性が居た。
「こいつぁ・・・・・・っ!?」
そして盗賊はその女性を見た途端、不適な笑みを浮かべた。
「ハハハ、こりゃあ確かに上玉だ・・・・・・。お前等この女も連れてくぞ」
「さっすが兄貴、後のお楽しみってやつですかいっ」
「ひゃっほう! 後でで良いんで俺にも回して下さいね!」
「バカ、ちげぇ」
リーダー格の盗賊が他の二人に笑いながら何かを言いかけたその時、
「――うおっ!」
先程まで馬車で手綱を握っていた筈のアルドが目にも止まらない速度で女性を見つけた盗賊の所へと移動し、
「その下種な会話を止めて、早急にお引取り願えますかな?」
その盗賊の腕を強く掴んで、そう言った。
「お疲れ様でした、お嬢様」
「えぇ、ありがとうアルド」
その馬車は、とある町での用事を済ませ、戻る最中だった。
「でも、今日は私用だったのだから、お疲れ様は少し違うのではないかしら」
フフッ、と笑いながらアルドに話しかける。
「ご謙遜を。お嬢様は、実にご立派な事を成されておられると思いますよ?」
「ありがとう。またお願いね? アルド」
「はい、畏まりました。ああそれと、お嬢様」
アルドが中に居る女性に話しかける。
「これより山道に入るので、お気を付け下さい」
「どうして山道を?」
馬車を引くアルドは、一枚の紙を見ながら答えた。
「先程、送られてきた情報によりますと、すぐ近くの草原で多数の、それも繁殖期ではない筈のグロス・ワームが気性を荒くしているのを目撃されておりますので、今現在、草原を行くのは危険かと思いまして」
「そうなのですか。それにしても、情報を得るのが早いのね。まさか、どなたか隠れてついて来ているのではないでしょうね?」
少し笑いながら探りを入れてくる女性。
「いえいえ、本日はお嬢様の私用という事でしたので、護衛の皆様が居られない分、何かあればすぐに知らせが来るよう、手配しておいたのですよ」
アルドがそう言い終えると同時に、馬車は山道に入った。
「結構揺れるのですね。少し面白いです」
「出来れば、どこかに掴まっておいて下さい。お怪我をされては大変ですから」
「はーい」
子供みたいな返事をし、座っている椅子に両手を置いた。
するとその時、小さな爆発音と共に、ヒィィィィィンッ! と叫びながら馬車を引いていた馬が急停止した。
「な、何事ですっ!?」
「出て来てはいけませんっ!!」
アルドは女性を馬車から出ない様指示し、戦闘態勢をとる。すると、
「ちょおっと待ちなぁ!」
男達が馬車を取り囲むように、茂みの影から現れた。
そして男の一人が馬車を引いていたアルドに一本のダガーを向け、こう言った。
「おい、死にたくなかったらこの馬車に乗っている積荷と持ち物、全部置いていけ」
「なるほど、賊ですか。で、これは一体どういうおつもりなのですか?」
アルドの言葉に盗賊達は笑みを溢した。
「へへっ、どういうつもりかー、だってよ」
「見てわかんねぇのか? これだからのほほんと贅沢に暮らしてる貴族様達は」
アルドは小声で後ろの女性に現状を伝えた。
「お嬢様、賊です。恐らく金品目当ての者等かと・・・・・・」
「そうですか」
それを聞いた女性は落ち着き払った態度でそうアルドに返答する。
「おいお前等、馬車の中を調べろ」
「――っ!」
「へいっ」「了~解~」
盗賊二人がそれぞれ馬車の両側に向かって歩き出す。
「動くんじゃねぇぞ爺さん。何、大人しくしててくれりゃあ命まではとらねぇからよ」
「・・・・・・・・・・」
すると、盗賊の一人がダガーを持つリーダー格の盗賊に向かって叫んだ。
「兄貴っ、中に女が居ますぜっ。しかも若いし結構な上玉だ!」
「何だと?」
「・・・・・・・・・・」
その盗賊が中を見ると、真っ直ぐに前を向いて座っている女性が居た。
「こいつぁ・・・・・・っ!?」
そして盗賊はその女性を見た途端、不適な笑みを浮かべた。
「ハハハ、こりゃあ確かに上玉だ・・・・・・。お前等この女も連れてくぞ」
「さっすが兄貴、後のお楽しみってやつですかいっ」
「ひゃっほう! 後でで良いんで俺にも回して下さいね!」
「バカ、ちげぇ」
リーダー格の盗賊が他の二人に笑いながら何かを言いかけたその時、
「――うおっ!」
先程まで馬車で手綱を握っていた筈のアルドが目にも止まらない速度で女性を見つけた盗賊の所へと移動し、
「その下種な会話を止めて、早急にお引取り願えますかな?」
その盗賊の腕を強く掴んで、そう言った。
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