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第二章 アルテア大陸
アルテアの勇者
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アルテアの村はガルディアの村と違って、小さく、そして木造の建物が多い。
これはアルテアの大陸が雨季が長いことによる特徴のようなもので、アルテアの村には雨季をうまくやり過ごす工夫がどこの村でも行われている。
それがこの家と家の間を行き交うように張り巡らされている用水路である。
この用水路のおかげで水没を防ぎ、尚且つ水はけがよい土壌を敷くことによって住みやすくされている。
そのおかげでこのあたりの作物は水害の被害をあまり受けず、多くの食べ物を育てることができたそうだ。
私たちは台車を引きながら村の中へ入っていく。
「止まれ!、随分大荷物じゃねぇかアンタら」
リーダー格だと思われる2mの熊の獣人が私たちに向かい歩いてくる。
その後ろには様々な武器を手に持った男の獣人達が品定めするような視線をこちらに向ける。
数はざっと10人程だ。
咄嗟にシェリアのフード付きのコートを深く被せる。
あらかじめ村に入る前にシェリアにはフードを被ってもらっていたが、念のためということだ。
「それ全部食い物だろ? 置いて行ってくれるんなら命だけは助けてやるよ」
リーダー格の男は湾曲したナイフを抜き、私たちに向かい構える。
「ったく、どこにもいるな、お前らみたいな連中は」
ため息を吐きながらマーキスさんが男に向かって一歩前に出た。
「見ねえ顔だな、よそ者か? 俺はどんな奴が相手だろうと容赦はしないぞ? 大人しく荷物をここに置いていけ」
マーキスさんは灰色のフード付きのコートに、動きやすそうな黒いズボン姿という見るからに軽装な姿で、武器も何も持っていない、あの姿で本当に大丈夫なのだろうか…
「ひとつ聞きたいことがあるんだが、お前らはここが初めて盗みをする場所か?」
「ああ!? んなわけねぇだろ! 王族軍があっさりと首都を渡したりなんかするから、仕事を失った俺らはこんなことしなきゃなんねぇんだぞ!!」
そうか、この人達も元々は首都に住む人達だったのか…
「そうか、残念だがこの荷物は今避難している人達の分でな、ここに置いていくわけにはいかないんだよ」
「フン、話し合いで解決できれば死なずにすんだものを… 今殺してやるからよぉおお!!!」
男は振りかぶりナイフを突き刺そうとマーキスさんに迫る。
マーキスさんはそれをステップで軽々と避けた。
「カイン、ちゃんと俺の動き見ておけよ、お前には才能があるんだからな!」
「命のやり取りをしてる時に何呑気な事言ってんだぁああ!!」
マーキスさんは自分の動きをカインに教えたいようだ。
なめられていると思って激怒した男は、怒涛に攻撃を繰り出していく。
だが、マーキスさんは独特なステップでそれを紙一重でよけ続けている。
男のほうは攻撃が当たらず、息も切れ切れなのに対し、マーキスさんは汗ひとつかかず、余裕に見えた。
「クソッ!! クソッ!! なんで当たらねぇ!」
男は苛立ちのあまりそんな声を漏らした。
「そろそろ一発当てるぞ? 痛ぇぞ、腹に力いれてろよな」
「あぁあ!? 何わけわかんねぇ事言って… オブォ!!…」
するりと攻撃を躱したマーキスさんは一歩踏み込み、腹に一発拳を振りぬいた。
その一撃だけで男は崩れるように地面に倒れ伏す。
「あちゃー、だから腹に力いれてろと言ったんだがなぁ」
マーキスさんはしまったなぁという顔をしていて手で頭をポリポリとかいている。
リーダー格の熊の獣人がやられ、青い顔をしている獣人達。
「お、お前ら、全員でかかればこんなやつすぐに終わるぞ!」
「「「「おお!!」」」」
男達は一斉にマーキスさんに向かい駆け出して行く。
「ちょっと魔法も使うとするか、スピーダー」
スピードを少し上げたマーキスさんは男たちの攻撃を難なく避け、全て一撃で沈めていく。
全員を地面に倒れさせるのに数分もかからなかった。
「まっ、こんなもんだろ」
「すごいですね、みんな一撃で、それに攻撃を避けるときの動きは見たことがないですよ」
シェリアは戻ってくるマーキスさんに驚きの声をあげる。
「そうか、やっぱりここではボクシングは知らねぇか、自分で言うのもあれなんだが、俺は前の世界でボクシングという競技で少し有名になってたんだよ、少しだけな」
「ボクシング?」
シェリアは首をこてんと不思議そうにまげる。
たしかにボクシングというものは聞いたことがないな…
「まあ、格闘技の一種だ、カインもちゃんと父ちゃんの動き見てたか?、ん?」
「うっさい、おっさん!」
「だから父ちゃんと呼べと」
「絶対呼ばない!!」
断固たる意志がそこにはあるような気がした。
アインも苦笑いでその様子を眺めている。
「あの、この人たちはどうするんですか?」
倒れたまま痛みに悶えている男達をここに縛り付けておくわけにはいかないだろう。
ここは戦場だ、盗賊とはいえ元々仕方なくこうならざるを得なかった人達だ。
「連れていくさ、なに、シェリアちゃん達には危害を加えさせない安心してくれ」
「俺らもいるしな」
「ええ、安心してください」
カインもアインも頷いている。
「ま、こいつらは多分すぐに大人しくなるさ、ちょっと見てろ」
そういってマーキスさんはリーダー格の男のそばに寄り、気絶したままの男を起こす。
「起きろ、おい」
「っつ… チッ… 殺せ、情けはいらん」
「そうじゃねえ、お前たちが手伝ってくれたら俺が今まで食べたことのない美味い飯を作ってやる、俺の飯は美味いぞ? どうだ?手伝うか?」
「なに!? 美味い飯だと!?」
「ああ、それも今まで食べたことのない美味いやつだ」
「おい!聞いたか皆! この人の手伝いをするぞ!! もうあんな飯はこりごりだ!!」
なんという掌返し…
次々と男たちは声を上げ、口々に「まずい飯はもう嫌だ」、「ようやくまともな飯を食えるのか」、「リーダーの作る飯は最高にまずいからな!」と言っていた。
「俺らはアンタ達に協力するぜ!」
「その言葉を待っていた!」
固い握手をお互いにかわし、笑いあう。
「まずは飯を作る俺の手伝いを3人、他はこの村にある食料を台車を見つけてきて乗せていってくれ」
「「「「「おう!」」」」」
そこからの動きは手早かった。
私達も荷物を置き、食料を探し出す事にした。
シェリアは料理がしてみたいということでマーキスさんについていった。
しばらく順調に荷造りも進んでいると、あたりにいい匂いが立ち込める。
どうやら料理のほうも完成したみたいだな。
「おーい! 一旦飯にするぞ!!」
男達の顔を見ると待ちきれなかったのか一目散に料理を作っている所に押し寄せる。
どうやら、広いテーブル付きの場所があったみたいで、そこに椅子をどんどん並べていく、シェリア達も料理を皿に盛り次々とテーブルに置いていく。
「んじゃ、食うか、これは俺の住んでいた所の郷土料理マフェっていうやつだ、おかわりもあるからな!」
シチューのような食材がたくさん入ったものらしく、ピーナッツの香ばしい匂いと香辛料の食欲を刺激する匂いが混ざり合いとても美味しそうだ。
皆、スプーンを手に取り、かきこむように食べるものが後をたたない。
口々に、「うめぇ!!」、「ほどよい辛さとうま味が最高だ!」、「俺はおかわりに行くぞ」と皆笑顔で食事をしている。
「俺達も食べるか」
「はい! 美味しくできましたよ」
まずはスープをすくって、口に流し込む、ほどよい甘みと香辛料のぴりっとした辛さ、それにトマトの酸味がうまく合わさっていて、喉を通ると、体が温まるようだった。
肉も野菜も煮込まれていて味が染み込んでおり、柔らかく、噛むと溶けて無くなるようだった。
「美味しいな」
久しぶりにこんなに美味しい料理を味わったのかおかわりをしに行くものが後を絶たない。
しかしそれだけこのマフェと言う料理は美味しいのだ。
「肉はさっきブロック状にしたチューンボーグの肉があったのでたくさん使うことができました」
シェリアが顔を綻ばせながら話す。
シェリアもこの料理が気に入ったのか耳をピコピコとせわしなく動かしている。
「道中もこの魔物がいたら積極的に狩ったほうがいいな」
「そうですね、こんなに美味しくできるならもっととらないと」
シェリアはやる気に満ち溢れているようだ。
そうやってしばらく楽しく皆で食事をして過ごしていた。
これはアルテアの大陸が雨季が長いことによる特徴のようなもので、アルテアの村には雨季をうまくやり過ごす工夫がどこの村でも行われている。
それがこの家と家の間を行き交うように張り巡らされている用水路である。
この用水路のおかげで水没を防ぎ、尚且つ水はけがよい土壌を敷くことによって住みやすくされている。
そのおかげでこのあたりの作物は水害の被害をあまり受けず、多くの食べ物を育てることができたそうだ。
私たちは台車を引きながら村の中へ入っていく。
「止まれ!、随分大荷物じゃねぇかアンタら」
リーダー格だと思われる2mの熊の獣人が私たちに向かい歩いてくる。
その後ろには様々な武器を手に持った男の獣人達が品定めするような視線をこちらに向ける。
数はざっと10人程だ。
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あらかじめ村に入る前にシェリアにはフードを被ってもらっていたが、念のためということだ。
「それ全部食い物だろ? 置いて行ってくれるんなら命だけは助けてやるよ」
リーダー格の男は湾曲したナイフを抜き、私たちに向かい構える。
「ったく、どこにもいるな、お前らみたいな連中は」
ため息を吐きながらマーキスさんが男に向かって一歩前に出た。
「見ねえ顔だな、よそ者か? 俺はどんな奴が相手だろうと容赦はしないぞ? 大人しく荷物をここに置いていけ」
マーキスさんは灰色のフード付きのコートに、動きやすそうな黒いズボン姿という見るからに軽装な姿で、武器も何も持っていない、あの姿で本当に大丈夫なのだろうか…
「ひとつ聞きたいことがあるんだが、お前らはここが初めて盗みをする場所か?」
「ああ!? んなわけねぇだろ! 王族軍があっさりと首都を渡したりなんかするから、仕事を失った俺らはこんなことしなきゃなんねぇんだぞ!!」
そうか、この人達も元々は首都に住む人達だったのか…
「そうか、残念だがこの荷物は今避難している人達の分でな、ここに置いていくわけにはいかないんだよ」
「フン、話し合いで解決できれば死なずにすんだものを… 今殺してやるからよぉおお!!!」
男は振りかぶりナイフを突き刺そうとマーキスさんに迫る。
マーキスさんはそれをステップで軽々と避けた。
「カイン、ちゃんと俺の動き見ておけよ、お前には才能があるんだからな!」
「命のやり取りをしてる時に何呑気な事言ってんだぁああ!!」
マーキスさんは自分の動きをカインに教えたいようだ。
なめられていると思って激怒した男は、怒涛に攻撃を繰り出していく。
だが、マーキスさんは独特なステップでそれを紙一重でよけ続けている。
男のほうは攻撃が当たらず、息も切れ切れなのに対し、マーキスさんは汗ひとつかかず、余裕に見えた。
「クソッ!! クソッ!! なんで当たらねぇ!」
男は苛立ちのあまりそんな声を漏らした。
「そろそろ一発当てるぞ? 痛ぇぞ、腹に力いれてろよな」
「あぁあ!? 何わけわかんねぇ事言って… オブォ!!…」
するりと攻撃を躱したマーキスさんは一歩踏み込み、腹に一発拳を振りぬいた。
その一撃だけで男は崩れるように地面に倒れ伏す。
「あちゃー、だから腹に力いれてろと言ったんだがなぁ」
マーキスさんはしまったなぁという顔をしていて手で頭をポリポリとかいている。
リーダー格の熊の獣人がやられ、青い顔をしている獣人達。
「お、お前ら、全員でかかればこんなやつすぐに終わるぞ!」
「「「「おお!!」」」」
男達は一斉にマーキスさんに向かい駆け出して行く。
「ちょっと魔法も使うとするか、スピーダー」
スピードを少し上げたマーキスさんは男たちの攻撃を難なく避け、全て一撃で沈めていく。
全員を地面に倒れさせるのに数分もかからなかった。
「まっ、こんなもんだろ」
「すごいですね、みんな一撃で、それに攻撃を避けるときの動きは見たことがないですよ」
シェリアは戻ってくるマーキスさんに驚きの声をあげる。
「そうか、やっぱりここではボクシングは知らねぇか、自分で言うのもあれなんだが、俺は前の世界でボクシングという競技で少し有名になってたんだよ、少しだけな」
「ボクシング?」
シェリアは首をこてんと不思議そうにまげる。
たしかにボクシングというものは聞いたことがないな…
「まあ、格闘技の一種だ、カインもちゃんと父ちゃんの動き見てたか?、ん?」
「うっさい、おっさん!」
「だから父ちゃんと呼べと」
「絶対呼ばない!!」
断固たる意志がそこにはあるような気がした。
アインも苦笑いでその様子を眺めている。
「あの、この人たちはどうするんですか?」
倒れたまま痛みに悶えている男達をここに縛り付けておくわけにはいかないだろう。
ここは戦場だ、盗賊とはいえ元々仕方なくこうならざるを得なかった人達だ。
「連れていくさ、なに、シェリアちゃん達には危害を加えさせない安心してくれ」
「俺らもいるしな」
「ええ、安心してください」
カインもアインも頷いている。
「ま、こいつらは多分すぐに大人しくなるさ、ちょっと見てろ」
そういってマーキスさんはリーダー格の男のそばに寄り、気絶したままの男を起こす。
「起きろ、おい」
「っつ… チッ… 殺せ、情けはいらん」
「そうじゃねえ、お前たちが手伝ってくれたら俺が今まで食べたことのない美味い飯を作ってやる、俺の飯は美味いぞ? どうだ?手伝うか?」
「なに!? 美味い飯だと!?」
「ああ、それも今まで食べたことのない美味いやつだ」
「おい!聞いたか皆! この人の手伝いをするぞ!! もうあんな飯はこりごりだ!!」
なんという掌返し…
次々と男たちは声を上げ、口々に「まずい飯はもう嫌だ」、「ようやくまともな飯を食えるのか」、「リーダーの作る飯は最高にまずいからな!」と言っていた。
「俺らはアンタ達に協力するぜ!」
「その言葉を待っていた!」
固い握手をお互いにかわし、笑いあう。
「まずは飯を作る俺の手伝いを3人、他はこの村にある食料を台車を見つけてきて乗せていってくれ」
「「「「「おう!」」」」」
そこからの動きは手早かった。
私達も荷物を置き、食料を探し出す事にした。
シェリアは料理がしてみたいということでマーキスさんについていった。
しばらく順調に荷造りも進んでいると、あたりにいい匂いが立ち込める。
どうやら料理のほうも完成したみたいだな。
「おーい! 一旦飯にするぞ!!」
男達の顔を見ると待ちきれなかったのか一目散に料理を作っている所に押し寄せる。
どうやら、広いテーブル付きの場所があったみたいで、そこに椅子をどんどん並べていく、シェリア達も料理を皿に盛り次々とテーブルに置いていく。
「んじゃ、食うか、これは俺の住んでいた所の郷土料理マフェっていうやつだ、おかわりもあるからな!」
シチューのような食材がたくさん入ったものらしく、ピーナッツの香ばしい匂いと香辛料の食欲を刺激する匂いが混ざり合いとても美味しそうだ。
皆、スプーンを手に取り、かきこむように食べるものが後をたたない。
口々に、「うめぇ!!」、「ほどよい辛さとうま味が最高だ!」、「俺はおかわりに行くぞ」と皆笑顔で食事をしている。
「俺達も食べるか」
「はい! 美味しくできましたよ」
まずはスープをすくって、口に流し込む、ほどよい甘みと香辛料のぴりっとした辛さ、それにトマトの酸味がうまく合わさっていて、喉を通ると、体が温まるようだった。
肉も野菜も煮込まれていて味が染み込んでおり、柔らかく、噛むと溶けて無くなるようだった。
「美味しいな」
久しぶりにこんなに美味しい料理を味わったのかおかわりをしに行くものが後を絶たない。
しかしそれだけこのマフェと言う料理は美味しいのだ。
「肉はさっきブロック状にしたチューンボーグの肉があったのでたくさん使うことができました」
シェリアが顔を綻ばせながら話す。
シェリアもこの料理が気に入ったのか耳をピコピコとせわしなく動かしている。
「道中もこの魔物がいたら積極的に狩ったほうがいいな」
「そうですね、こんなに美味しくできるならもっととらないと」
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