転生したらBL学園ゲームのモブでチャラい会計に愛されることになった件

陌屋

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BL学園に転生した件

寮に俺の安置はないかもしれない

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「俺は花咲ナズナ!目指せ友達100人!よろしくな!」
教師の横で二カリと笑うと両手でピースを作って見せた。
教室内からパラパラと拍手が上がる。
今は編入生と言うことで自己紹介をさせられている最中だ。
花咲ナズナが教師に促され席に着く、周りからは好奇の目に晒されている。
あれ俺もするのか…やだなぁ…。
「次、古鬼田ー。」
「…うっす。」
古鬼田平子はかったるそうに席を立つと大人しく教師の横に立つ。
「…古鬼田平子…よろしく頼む。」
軽く目を伏せると用は済んだといった様子でさっさと席に着いてしまった。
周りはポカンとしている、無理もない。
如何にも不良という出で立ちの古鬼田平子の口から「よろしく頼む。」なんて出てくるとは誰も予想しなかっただろう。
俺も驚いてる【青薔薇学園物語】では確か古鬼田平子は入学式もホームルームにも現れない筈だったから。
彼の縄張りは屋上の筈だ…俺の知らない【青薔薇学園物語】になってしまっている…これでは本筋に触れない様に生活するという予防線が機能しないではないか。
それはまずい、ただでさえ護迎メイにおそらく認知されてしまっているのだ…これ以上メインキャラと接点を持つのは得策ではない。
「次、嶋崎ー。」
「はい。」
嶋崎御形、冷静に、冷静にだ。
気配を消して、そうだ俺はモブ。
「嶋崎御形です、三年間よろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げる。
大丈夫、緊張も戸惑いも感じさせない自然な挨拶だった筈だ。
「皆も知っているとは思うが、嶋崎は首席で入学している。皆も見習うように。」
余計な事を言うな!と言い睨みそうになるのをなんとか抑える。
ゆっくり頭を上げるとパラパラと拍手が上がる。
ぺこぺこと頭を下げながら席へ戻る。
俺の席は窓側の一番後ろ、花咲ナズナは廊下側の一番前、古鬼田平子は廊下側の一番後ろだ。
席が離れていて良かった…。
触らぬ神に祟りなし、だ。
暫く形式的な教師の言葉を聞いて、今日はお開きとなった。
俺はさっさと寮に向かおうとカバンを手に取り立ち上がった。
この後は寮で寮長からの説明がある。
ここの寮はA~C棟まであり、俺はC棟だ。
パンフレットを開き場所を確認する、学園を出て徒歩30分くらいだ。
デカい学園をぐるりと回って裏側にあるので仕方ない。
裏門は教師にしか使用を許可されていない。
教室後ろの扉へ目をやると、古鬼田平子が丁度扉を潜るところだった。
少し距離をあけ俺も扉を潜り長い廊下へ出る。
【青薔薇学園】は高等部だけでも1000人近くいるマンモス校だ、必然的に校舎もデカけりゃ廊下も長い。
移動教室の時は余裕をもって移動しなければ、そんな取り留めもない事を考えながら廊下を進む。
1年の教室は2階なので階段を下り、昇降口へ向かう。
ここまで誰にも声をかけられていない、流石モブ。
3年間友達が出来ないかもしれない不安はあるが、まぁ今考えても仕方がない。
下駄箱で靴を履き替え外に出る、朝は気付かなかったが桜並木が綺麗だ。
両側を彩る桜並木を越え門を潜り、左へ曲がる。
寮生活の不安と楽しみを抱えながら寮へと歩みを進めた。


寮へ着き初めに思ったのは
「ここもデケェ…」
300人以上が住むのだから当たり前か…しかしデカいしここも学生寮にしては豪奢だ。
…学費高いんだろうな。
両親に感謝しながらC棟へ入る。
下駄箱を探しスリッパへ履き替えれば、ロビーへ向かう。
ロビーも外見と違わず、高級ホテルの様相だ。
もう既に結構な人数が適当なソファーへ腰掛けている。
俺も人気が少ない場所を選びソファーへ座る、うわ…ふかふかだ。
そこへ俺より先に出た筈の古鬼田平子が現れた。
げっ…同じ寮か…何もありませんように…。
そう願っていると彼は俺に程近い壁へと凭れかかり目を瞑った。
…イケメンは何しても様になるな、感心してしまった。
そうして暫く経った頃、ロビー内がざわめいた。
「メイ様だ!」
ギョッとしてざわめきの先へ視線をやる。
護迎メイが向かって左の奥の扉から入って来るところだった。
「はァい~静かに~寮長の護迎メイです。よろしくねェ~。」
パンパンと手を叩きながらロビーの中央へ立ち辺りを見渡す。
俺は息をひそめてその様子を窺う。
「うん、静かになったね。じゃあ寮の説明をしようか。先ずはあの大きな二つの扉、向かって左が男子で右が女子になってまァす。行き来は基本罰則があるので気をつけてねェ。連れ込む時は細心の注意を心がけるように!」
ウインクしながら人差し指を口元へ持って行けば、ドッと周りから笑いが起こる。
「部屋は一人一部屋、余程の物じゃなきゃ持ち込みは自由。共同のお風呂場もあるけど、自室にもシャワールームはあるからそれも自由。ロビーの左の扉は共有スペース、右が食堂ね。外で食べるのもいいけど門限があるから、外出許可書をとってから行くのがいいよォ~。質問や問題があった時は俺に声かけて。以上かな?それじゃあ素敵な寮生活を送ってねェ~。」
彼が言い終えると周りは次々と奥の扉へ向かい始めた。
気付けば古鬼田平子も護迎メイもいなくなっていた、少し肩の力を抜く。
俺も早く着替えて食堂へ行こう、時計は正午を示している。


果たして部屋も豪奢であった。
気後れしながらも部屋へ入り、カバンを備え付けの学習机に置く。
学習机の棚には教科書が既に並んでいた。
積まれた箱の中から服を探していると、メッセージの通知音。
ブレザーの内ポケットからスマホを取り出し確認すると、通知が二件。
片方は母さんから無事着いたのかという連絡で、慌てて返す。
「遅れてごめん、入学式も終えて今は寮だよ…っと。」
すると、直ぐに既読がつき安心のスタンプが返って来た。
それにありがとうのスタンプを返すと、もう一件のメッセージを開いた。
メッセージの相手の欄には『護迎メイ』の文字、メッセージの内容は『編入おめでとう、よかったらご飯行かない?』だった。
逡巡して『ありがとうございます、何で俺と?』と返した。
直ぐ既読がつく、と同時にドアをノックされた。
俺に用がある人物に心当たりがないままドアへ向かい鍵を開けると、扉が開き視界に入った顔に口を開きかけるも相手の掌で覆われ声は出せなかった。
そのまま押し込まれる様に部屋の中へ戻り、ドアを閉めると漸く口を解放された。
「…護迎メイ。」
「ごめんね、来ちゃった。」
俺が少し警戒しながら相手の真意を探ろうとしていると、彼は肩を竦め。
「そんなに警戒しないでよ、とって食ったりしないからさァ~。てか、さっきのメッセージなんで敬語?」
「一応…先輩ですから。」
「だからいらないって敬語~前みたいにフランクに喋ってよ、ね?」
言いながら片手を取られ、ビクリと肩が跳ねる。
「…俺、怖い?」
ゆるりと首を傾げると肩で綺麗な銀髪が揺れる。
「…いや、別に…今のは反射で。」
思わず言い訳が口をついて出る。
俺が取り繕う必要はないのに。
「よかったァ…じゃあご飯は?」
「いや…だから何で俺と?」
「好きだから、じゃ駄目?」
目線は外さないまま取られた左手の手の甲に口付けられた。
「んなッ!?」
慌てて手を取り返す、掴まれていた手は簡単に離された。
「なっ何すんだ!」
「俺の好意を伝えたつもりなんだけど、嫌だった…?」
へらへらとした笑顔を真剣な顔に変えてじっと顔を見つめられる。
かぁっと顔に血が集まった、熱い、熱すぎる…。
嫌…?なんだろう…不思議と嫌悪感は無かった。
「い、嫌…ではなかった…。」
口に出してからハッとする、いや待て俺そこは嫌だって言わなきゃだろ!
内心慌てていると、再び手を取られて引き寄せられたたらを踏む。
「…よかったァ。」
気付けば相手の腕の中に囚われていた。
抱き締められてる!?
「ちょっ、離し…」
「好き。」
「うぁッ!?」
耳元に吹き込まれる様に呟かれた。
ゾワリと背筋が震える。
だから、耳元はやめろって!
「…やっぱり耳弱いんだ…可愛い…。」
ふぅと耳に息を吹き込まれて、カクリと膝が折れて床に膝をつきそうになるところを腰に回された腕で抱き留められる。
「おっとォ…大丈夫?」
「…大丈夫、じゃない。」
力の入らない膝を叱咤するも一人で立てる気がしない…よわよわすぎじゃないか俺…。
「ごめんねェ?」
よしよしと頭を撫でられる。
「…お前、誰にでもこんなことしてんのかよ?」
ふと疑問に思ってることを口に出してしまう…うわ、なんか嫉妬してるみたいな口ぶりになってしまった。
「まさか!」
ばっと身体を離されて頬を片手で包まれる。
「君だけだよ…一目惚れなんだ…。」
「俺に一目惚れ…?」
モブの俺に…?
「…編入試験の日、君を見てからずっと君が来るのを待ってた。」
「あの日が初めてじゃなかったのか?」
「うん…だからあの日は運命だと思った。だから、お願い…俺の【薔薇のパル】に、恋人になって?」
すりっと優しく頬を撫でられた。
【薔薇のパル】…?恋人…?
「えっ?…えぇっ!?」


父さん、母さん、俺入学初日からピンチです。

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