神社のゆかこさん

秋野 木星

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第二章 ゆかこさんの一年間

冬至

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 白い湯気が立ち昇る温泉にゆかこさんは肩まで浸かって入っていました。

「あ~いい気持ち。極楽ね。」

そうですね、ゆかこさん。身体の芯から温まりますね。

ゆかこさんは神社の煤払すすはらいをした後に山の温泉に来たのでした。


白く濁ったお湯の上に黄色い柚子の実がぷかぷか浮かんでいます。

ほんわかと柑橘系のいい匂いも漂っていました。

「歳の瀬の足音が聞こえてくるわ。2018年もそこまでやってきてるようね。」

ゆかこさんには聞こえるのでしょうか。


温泉からあがったゆかこさんは雪の模様のついたスキーウェアを着ると、スティックを右に左に操りながらスキー板に乗って山を滑り降ります。

「ひゃっほーーーっ!」

銀煙をあげながら風のように滑るゆかこさんを冬の妖精たちが凄いスピードで追いかけていきます。

青い氷の粒々でお化粧した山の木々がゆかこさん達を応援していますよ。


町までやって来たゆかこさんは、今度は街路樹にたくさんの明かりを灯して行きます。

群青色に暗さを増してきた町の空にクリスマスの明かりがキラキラと輝き始めました。

どこからか音楽と鈴の音が聞こえてきます。

シャンシャンシャンシャン


道を行き交う人たちが空を見上げると、トナカイにまたがったゆかこさんがサンタクロースのそりを引っ張って皆に向かって手を振っていましたよ。

「メリークリスマス!皆さん!良い新年を迎えて下さいな~。」

来年も楽しいことがいっぱいありますように。


細い三日月が「そうですね。」と夜空でゆらんと揺れました。
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