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第二章 ゆかこさんの一年間
秋祭り
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冷たい秋雨があがった日の朝、ゆかこさんは久しぶりに庭に出てみました。
山茶花のピンクの蕾が膨らんで、雨露を含みながら咲き始めています。
「あら、お日様がでてきたのがわかったのね。」
そうですね、ゆかこさん。
それでも様子が変ですよ。山茶花の葉っぱに黒い煤がたくさんついてます。
「まぁ、これは大変ね。病気になってるわ。」
ゆかこさんは山茶花の足元に生えていた繁ったシダを全部刈り取りました。
そうして威力のある水鉄砲でビュビュビュビュッと、山茶花の葉についたカビを取って行きます。
それから秋風を呼んで、葉っぱをカラリと乾かしました。
「この方法って何かに似てる・・・。」
トイレのウォシュレットですよ、ゆかこさん。
「ホントだわ~。」
ゆかこさんはおかしくなってケラケラ笑い出しました。どうにも笑いが止まりません。
するとゆかこさんの身体からオレンジ色をした音符がポンポンと飛び出してきました。
音符たちはあちこちにぶつかって、カランポロンと音を奏でていきます。
ケラケラケラ、カランポロンカラン♪
クククククッ、コロンコロンポンッ♬
「やあねぇ、ドングリたちもやって来たわ。」
松ぼっくりも来ましたよ。
それを追いかけてリスやキツネまで走って来ます。
ウサギや熊が来る頃にはお祭りのような賑わいになっていました。
「皆で秋祭りをしましょうか。」
そうですね、ススキでお神輿を作りましょう。
ワッショイワッショイ、ソレソレソレッ!
動物たちが担ぐ神輿が神社の庭を練り歩きます。
ゆかこさんは軒下に提灯をぶら下げました。
旗も必要ですね、ゆかこさん。
神社に旗が立つ頃には、大勢の人たちがお参りにやって来ました。
どこからか太鼓の音も聞こえてきます。
出店を出したお兄さんはねじり鉢巻きをしてイカを焼き始めました。
「あー、お醬油のいー匂い。」
ふらふらと山を降りて行ったゆかこさんは、小さな男の子にぶつかってしまいました。
「あら、ごめんなさい。」
男の子はキョトンとしています。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。僕もお神輿やりたいな。」
その子の言葉に、周りにいた大人も子供も参戦します。
ゆかこさんはクスリと笑って、もう一つススキのお神輿を作ってあげました。
人間たちと動物たちのお神輿、どっちが威勢が良かったかですって?
それは薄い秋の日差しだけが知ってるのかもしれませんね。
山茶花のピンクの蕾が膨らんで、雨露を含みながら咲き始めています。
「あら、お日様がでてきたのがわかったのね。」
そうですね、ゆかこさん。
それでも様子が変ですよ。山茶花の葉っぱに黒い煤がたくさんついてます。
「まぁ、これは大変ね。病気になってるわ。」
ゆかこさんは山茶花の足元に生えていた繁ったシダを全部刈り取りました。
そうして威力のある水鉄砲でビュビュビュビュッと、山茶花の葉についたカビを取って行きます。
それから秋風を呼んで、葉っぱをカラリと乾かしました。
「この方法って何かに似てる・・・。」
トイレのウォシュレットですよ、ゆかこさん。
「ホントだわ~。」
ゆかこさんはおかしくなってケラケラ笑い出しました。どうにも笑いが止まりません。
するとゆかこさんの身体からオレンジ色をした音符がポンポンと飛び出してきました。
音符たちはあちこちにぶつかって、カランポロンと音を奏でていきます。
ケラケラケラ、カランポロンカラン♪
クククククッ、コロンコロンポンッ♬
「やあねぇ、ドングリたちもやって来たわ。」
松ぼっくりも来ましたよ。
それを追いかけてリスやキツネまで走って来ます。
ウサギや熊が来る頃にはお祭りのような賑わいになっていました。
「皆で秋祭りをしましょうか。」
そうですね、ススキでお神輿を作りましょう。
ワッショイワッショイ、ソレソレソレッ!
動物たちが担ぐ神輿が神社の庭を練り歩きます。
ゆかこさんは軒下に提灯をぶら下げました。
旗も必要ですね、ゆかこさん。
神社に旗が立つ頃には、大勢の人たちがお参りにやって来ました。
どこからか太鼓の音も聞こえてきます。
出店を出したお兄さんはねじり鉢巻きをしてイカを焼き始めました。
「あー、お醬油のいー匂い。」
ふらふらと山を降りて行ったゆかこさんは、小さな男の子にぶつかってしまいました。
「あら、ごめんなさい。」
男の子はキョトンとしています。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。僕もお神輿やりたいな。」
その子の言葉に、周りにいた大人も子供も参戦します。
ゆかこさんはクスリと笑って、もう一つススキのお神輿を作ってあげました。
人間たちと動物たちのお神輿、どっちが威勢が良かったかですって?
それは薄い秋の日差しだけが知ってるのかもしれませんね。
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