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第二章 ゆかこさんの一年間
虫の音
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日も落ちて、夜風が涼しくなってきた時のことです。
草むらからリーンリーンと鳴く虫の声が聞こえてきました。
「暑い暑いと思っていたけど、もう秋なのね。」
そうですね、ゆかこさん。秋が静かに忍び寄ってきてますね。
夕立のあった神社の山では、命拾いをしたように木々が水気を吸い込んでいます。
ゆかこさんはお風呂上がりのさっぱりした身体で、トントンと石段を下りて散歩に出かけました。
「あら、萩が新芽を伸ばしてるわ。」
萩の葉っぱが雨を纏って風に揺れています。
コスモスの背丈も大きくなりました。もう少ししたら花芽がつくかもしれませんね。
「あー、終わらない。自由研究は何にしようっ!」
どこかの家で子どもが叫んでいます。
「まぁ、見てごらんなさい。面白いわ。」
ゆかこさんが一軒の家を覗いて見ると、家族が揃って夏休みの宿題をしていました。
八月最後の土・日だからなのでしょう、お父さんも子ども達の助っ人にかりだされているようです。
眉をへの字にして、絵日記を睨んでいる子もいます。
毎日一行日記という宿題を出されたのにまとめて書こうとしているようです。
「しょうがないわね。今度だけよっ。」
ゆかこさんがその子の側の窓をつつくと、スクリーンのように家族の夏休みの思い出が映し出されました。
プール、キャンプ、夏祭り、お盆には田舎へ帰ったのね。
七夕飾りに、夏の宵、星がキラキラ光ってます。
アイスにスイカに流しそうめん。お腹いっぱいに食べたのね。
夏のはじめの頃とは違って、女の子の顔も逞しくなって来ています。
真っ黒に日焼けした顔でにっこりと笑って、その子は日記を書き始めました。
「ふふっ、思い出したのね。たくさんの夏を。」
そうですね、ゆかこさん。
子ども達は夏を身体いっぱいに吸い込んで、九月から始まる学校へ元気に走って行くんですね。
町のそちこちで鈴虫たちがみんなの頑張りをリーンリーンと応援していましたよ。
草むらからリーンリーンと鳴く虫の声が聞こえてきました。
「暑い暑いと思っていたけど、もう秋なのね。」
そうですね、ゆかこさん。秋が静かに忍び寄ってきてますね。
夕立のあった神社の山では、命拾いをしたように木々が水気を吸い込んでいます。
ゆかこさんはお風呂上がりのさっぱりした身体で、トントンと石段を下りて散歩に出かけました。
「あら、萩が新芽を伸ばしてるわ。」
萩の葉っぱが雨を纏って風に揺れています。
コスモスの背丈も大きくなりました。もう少ししたら花芽がつくかもしれませんね。
「あー、終わらない。自由研究は何にしようっ!」
どこかの家で子どもが叫んでいます。
「まぁ、見てごらんなさい。面白いわ。」
ゆかこさんが一軒の家を覗いて見ると、家族が揃って夏休みの宿題をしていました。
八月最後の土・日だからなのでしょう、お父さんも子ども達の助っ人にかりだされているようです。
眉をへの字にして、絵日記を睨んでいる子もいます。
毎日一行日記という宿題を出されたのにまとめて書こうとしているようです。
「しょうがないわね。今度だけよっ。」
ゆかこさんがその子の側の窓をつつくと、スクリーンのように家族の夏休みの思い出が映し出されました。
プール、キャンプ、夏祭り、お盆には田舎へ帰ったのね。
七夕飾りに、夏の宵、星がキラキラ光ってます。
アイスにスイカに流しそうめん。お腹いっぱいに食べたのね。
夏のはじめの頃とは違って、女の子の顔も逞しくなって来ています。
真っ黒に日焼けした顔でにっこりと笑って、その子は日記を書き始めました。
「ふふっ、思い出したのね。たくさんの夏を。」
そうですね、ゆかこさん。
子ども達は夏を身体いっぱいに吸い込んで、九月から始まる学校へ元気に走って行くんですね。
町のそちこちで鈴虫たちがみんなの頑張りをリーンリーンと応援していましたよ。
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