神社のゆかこさん

秋野 木星

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第二章 ゆかこさんの一年間

花火

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 お腹に響くような音がして、夜空に満開の花火が散りました。

バリバリと空気を震わせて火の粉が地上に降り注いでいきます。

うぁーーーーーーっ。
群衆のどよめきが河原を埋め尽くしています。


「これは迫力満点ね。」

そうですね、ゆかこさん。夏の夜空の饗宴きょうえんですね。

神社の大岩に座ってゆかこさんはビールを飲んでいます。おつまみは枝豆とたこ焼きです。

「このたこ焼き美味しいわ。焼きトウモロコシも買ってこようかしら。」

綿菓子もいいかもしれませんよ。かき氷もいいですね。

「花より団子だわね。わたしたち。」


ゆかこさんは、ぐぐっとビールを飲み干すと右に左にふわふわ揺れながら河原に降りて行きました。

屋台の並ぶ雑踏の中をゆかこさんはゆっくりと歩きます。

「いー匂い。いろんな匂いが混じってるわね。」

ほらあそこにヨーヨー釣りがありますよ。

「ふーむ。ちょっとやってみようかしら。」


「おじさん、一回お願いね。」
「よしきた姉ちゃん、ほいっこれで釣ってみな。」

おじさんのくれた釣り針で、ゆかこさんは虹色に光るヨーヨーを釣り上げました。

「やったっ!釣れたわっ!」

ゆかこさんはトンッと地面を蹴って空中でくるくるくるっと三回転しました。

「「「おおおーーーーっ。」」」

周りで見ていた人が拍手をしてくれます。


ゆかこさんは嬉しくなって、ポンポンポポォーンとヨーヨーをつきました。

すると虹色の光がキラキラと屋台の周りに溢れます。


ドォーーーンドンドドンッ

ゆかこさんに応えるように夜空に花火が上がりました。


「ふふふ、なんて楽しいの夏祭りっ。」

ヒューーーードンッパラパラパラ

暑い8月の夏の宵を、ゆかこさんと一緒にたくさんの人たちが楽しんでいました。
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