10 / 29
第二章 ゆかこさんの一年間
暑中
しおりを挟む
チュピチュピチュピ、鳥が誰かを呼んでいます。
お日様に温められてムワッと膨らんだ空気が、色濃くなってきた緑の木々を包みます。
「なんて暑くなったんでしょう。」
そうですね、ゆかこさん。ここ二、三日 蒸しますねぇ。
あちこちの家からクーラーの室外機の回る音が聞こえてきます。
道を行く人たちも帽子を被って、ふぅーふぅーいって汗をぬぐっています。
「頭がジンジン痺れてるわ。帽子でも作りましょうか。」
ゆかこさんはそう言って、ぴゅーと伸びてきているしなやかな徒長枝を切って来ました。そうして社務所のひんやりしている石の上に座って、ガサゴソと帽子を編み始めました。
「出来たっ!」
ゆかこさんの作った帽子は森の帽子でした。ゆかこさんが被ると涼やかな小さな森が頭の上に乗っかっているようです。
ガンガン照り付けていたお日様も「こりゃあ、まいった。」と笑いましたよ。
緩やかに吹いていた風も、どんなものが出来たのか「どれどれ。」と見に来ました。
喜んだのは小鳥です。
チュピチュピチュピとやって来て、ゆかこさんの帽子の中に潜り込みました。
この鳥は妊婦さんだったみたいです。
薄水色の可愛い卵をポポンポンと三個も生み落としましたよ。
「あらあら、頭の上が保育園になっちゃったわ。」
雛たちがピーピーチュクチュクと餌をねだります。
親鳥は田んぼの上を飛んで、羽虫を捉えて戻ってきました。
「いっぱい食べて、大きくなりなさい。」
そうですね、ゆかこさん。豊かな自然が応援しています。
「夏が皆を育ててるわ。」
ゆかこさんはそう言って、樫の木陰でお昼寝をしました。
神社の森の木々たちも、うんうんと風と一緒に頷いていましたよ。
お日様に温められてムワッと膨らんだ空気が、色濃くなってきた緑の木々を包みます。
「なんて暑くなったんでしょう。」
そうですね、ゆかこさん。ここ二、三日 蒸しますねぇ。
あちこちの家からクーラーの室外機の回る音が聞こえてきます。
道を行く人たちも帽子を被って、ふぅーふぅーいって汗をぬぐっています。
「頭がジンジン痺れてるわ。帽子でも作りましょうか。」
ゆかこさんはそう言って、ぴゅーと伸びてきているしなやかな徒長枝を切って来ました。そうして社務所のひんやりしている石の上に座って、ガサゴソと帽子を編み始めました。
「出来たっ!」
ゆかこさんの作った帽子は森の帽子でした。ゆかこさんが被ると涼やかな小さな森が頭の上に乗っかっているようです。
ガンガン照り付けていたお日様も「こりゃあ、まいった。」と笑いましたよ。
緩やかに吹いていた風も、どんなものが出来たのか「どれどれ。」と見に来ました。
喜んだのは小鳥です。
チュピチュピチュピとやって来て、ゆかこさんの帽子の中に潜り込みました。
この鳥は妊婦さんだったみたいです。
薄水色の可愛い卵をポポンポンと三個も生み落としましたよ。
「あらあら、頭の上が保育園になっちゃったわ。」
雛たちがピーピーチュクチュクと餌をねだります。
親鳥は田んぼの上を飛んで、羽虫を捉えて戻ってきました。
「いっぱい食べて、大きくなりなさい。」
そうですね、ゆかこさん。豊かな自然が応援しています。
「夏が皆を育ててるわ。」
ゆかこさんはそう言って、樫の木陰でお昼寝をしました。
神社の森の木々たちも、うんうんと風と一緒に頷いていましたよ。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
小さな王子さまのお話
佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』……
**あらすじ**
昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。
珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。
王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。
なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。
「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。
ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…?
『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』――
亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。
全年齢の童話風ファンタジーになります。
瑠璃の姫君と鉄黒の騎士
石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。
そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。
突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。
大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。
記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる