29 / 29
第二章 ゆかこさんの一年間
鳩の祭り
しおりを挟む
五月晴れの気持ちのいい朝に、トラクターの音が聞こえてきました。
いつものおじいさんとお婿さんが、田んぼを耕しに来ているようです。
「もうすぐ田植えが始まるのね。」
そうですね、ゆかこさん。
昨日は町の人たちが総出で川掃除をしていました。
また稲の一年が始まるんですね。
「もったいないなぁ。でも美味しくなくなったから、仕方がないですね。」
お婿さんがそう言いながら、三年前の残ったお米を田んぼに返しています。
「トラクターですき込んだら、また次の稲の栄養になるさ。」
どうやら古いお米を、お婿さんが田んぼにばら撒いているようです。
ダダダダダとトラクターの唸る音がして、おじいさんが田んぼの土をうがしていきます。
古いお米も土に混じって田んぼの中に入って行きました。
しかし二人が帰った後の田んぼには、鳩やスズメが大盤振る舞いのご馳走をいただきにやってきました。
「まぁ、あんなにたくさんの鳥たちがやって来たわ。」
鳩たちは一つ所に腰を据えて、夢中でお米を食べています。
「フフッ、どうやらほとんどが鳩のお腹に入りそう。」
おじいさんの目論見は外れそうですね、ゆかこさん。
「そうね。今からじゃどうしようもないわ。後の祭りね…いえ、鳩の祭りね。ククッ。」
ゆかこさんは楽しくなって、蒼い蒼い空に舞い上がりました。
新緑が眩しい山々、豊かな水を抱いた大川の流れ、ゆかこさんが愛している町並みが眼下に広がっています。
ゴールデンウィークが終わって学校が始まったのか、休みのチャイムの合図とともに子ども達が校庭に走り出てきました。
「あっ! ゆかこさんだ!」
「「ゆかこさぁ~ん!!」」
みんなが空を飛んでいるゆかこさんに手を振ってくれます。
「はぁーい!」
ゆかこさんも元気に手を振り返しましたよ。
町の上空を飛んでいると、田んぼのお婿さんのお嫁さんが、大きなお腹をして道を歩いていました。
「あら、おめでたのようね。」
ゆかこさんは降り注ぐ初夏の日差しをギュッと掴んで、お嫁さんのお腹にキラキラと投げかけます。
お嫁さんはびっくりして、空を見上げました。
「これでグングン成長するわよ。」
「ありがとう!」
ゆかこさんは笑って頷いて、まだまだ飛んで行きました。
海まで飛んできたゆかこさんは、船のマストのてっぺんで一休みします。
海風が汗ばんだゆかこさんの身体を撫でてゆきます。
「ふうー、い~気持ち。海がチカチカ瞬いて、私を呼んでるわ。」
ゆかこさんには、わかるんでしょうか?
「ちょっと、旅に出て来るわね!」
おやおや、ゆかこさんはしばらくこの町を離れることに決めたようですよ。
いってらっしゃい、ゆかこさん。
また帰って来たら、この町に立ち寄ってくださいね。
ボ~という汽笛の音と共に、ゆかこさんは旅立ちました。
いつかあなたの住む町にもゆかこさんはやって来るかもしれませんね。
いつものおじいさんとお婿さんが、田んぼを耕しに来ているようです。
「もうすぐ田植えが始まるのね。」
そうですね、ゆかこさん。
昨日は町の人たちが総出で川掃除をしていました。
また稲の一年が始まるんですね。
「もったいないなぁ。でも美味しくなくなったから、仕方がないですね。」
お婿さんがそう言いながら、三年前の残ったお米を田んぼに返しています。
「トラクターですき込んだら、また次の稲の栄養になるさ。」
どうやら古いお米を、お婿さんが田んぼにばら撒いているようです。
ダダダダダとトラクターの唸る音がして、おじいさんが田んぼの土をうがしていきます。
古いお米も土に混じって田んぼの中に入って行きました。
しかし二人が帰った後の田んぼには、鳩やスズメが大盤振る舞いのご馳走をいただきにやってきました。
「まぁ、あんなにたくさんの鳥たちがやって来たわ。」
鳩たちは一つ所に腰を据えて、夢中でお米を食べています。
「フフッ、どうやらほとんどが鳩のお腹に入りそう。」
おじいさんの目論見は外れそうですね、ゆかこさん。
「そうね。今からじゃどうしようもないわ。後の祭りね…いえ、鳩の祭りね。ククッ。」
ゆかこさんは楽しくなって、蒼い蒼い空に舞い上がりました。
新緑が眩しい山々、豊かな水を抱いた大川の流れ、ゆかこさんが愛している町並みが眼下に広がっています。
ゴールデンウィークが終わって学校が始まったのか、休みのチャイムの合図とともに子ども達が校庭に走り出てきました。
「あっ! ゆかこさんだ!」
「「ゆかこさぁ~ん!!」」
みんなが空を飛んでいるゆかこさんに手を振ってくれます。
「はぁーい!」
ゆかこさんも元気に手を振り返しましたよ。
町の上空を飛んでいると、田んぼのお婿さんのお嫁さんが、大きなお腹をして道を歩いていました。
「あら、おめでたのようね。」
ゆかこさんは降り注ぐ初夏の日差しをギュッと掴んで、お嫁さんのお腹にキラキラと投げかけます。
お嫁さんはびっくりして、空を見上げました。
「これでグングン成長するわよ。」
「ありがとう!」
ゆかこさんは笑って頷いて、まだまだ飛んで行きました。
海まで飛んできたゆかこさんは、船のマストのてっぺんで一休みします。
海風が汗ばんだゆかこさんの身体を撫でてゆきます。
「ふうー、い~気持ち。海がチカチカ瞬いて、私を呼んでるわ。」
ゆかこさんには、わかるんでしょうか?
「ちょっと、旅に出て来るわね!」
おやおや、ゆかこさんはしばらくこの町を離れることに決めたようですよ。
いってらっしゃい、ゆかこさん。
また帰って来たら、この町に立ち寄ってくださいね。
ボ~という汽笛の音と共に、ゆかこさんは旅立ちました。
いつかあなたの住む町にもゆかこさんはやって来るかもしれませんね。
0
お気に入りに追加
24
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
小さな王子さまのお話
佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』……
**あらすじ**
昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。
珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。
王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。
なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。
「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。
ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…?
『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』――
亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。
全年齢の童話風ファンタジーになります。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
占い探偵 ユーコちゃん!
サツキユキオ
児童書・童話
ヒナゲシ学園中等部にはとある噂がある。生徒会室横の第2資料室に探偵がいるというのだ。その噂を頼りにやって来た中等部2年B組のリョウ、彼女が部屋で見たものとは──。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
【完結】だからウサギは恋をした
東 里胡
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞応募作品】鈴城学園中等部生徒会書記となった一年生の卯依(うい)は、元気印のツインテールが特徴の通称「うさぎちゃん」
入学式の日、生徒会長・相原 愁(あいはら しゅう)に恋をしてから毎日のように「好きです」とアタックしている彼女は「会長大好きうさぎちゃん」として全校生徒に認識されていた。
困惑し塩対応をする会長だったが、うさぎの悲しい過去を知る。
自分の過去と向き合うことになったうさぎを会長が後押ししてくれるが、こんがらがった恋模様が二人を遠ざけて――。
※これは純度100パーセントなラブコメであり、決してふざけてはおりません!(多分)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
何度もすみません。
アルファさんはお送りした自分の感想や他の方の感想は送ってしまうと読めないようになっているのですよね。
先ほどの感想で、イラストの作者さまのおなまえのイニシャルを間違えてしまいました。
Sさまではなく、Hさまですよね。すみませんでした。
なろうさんの活動報告にその旨を書いたのですが、こちらで書いた方が良いかと考え直し、なろうさんのほうの活動報告のコメントは下げさせていただきましたm(__)m
雪乃さん
ごめんなさい。自分の返信は削除できるようですが、感想は一旦公開にしたら削除できないみたいです。
ご希望に添えなくて申し訳ない。
Sさん⇒スター⇒「星」影さんなんですね。^^ありがとう。理解しました。
ちなみに長岡更紗さんは、「夏時」の表紙を書いてくださっています。
なろうでの活動報告のことは、了解しました。
ゆかこさん、
優しい雰囲気のお話ですね。
せっかく登録したので、ゆかこさんはこちらで読ませていただこうかなと思います。
あのSさまの可愛いイラストが目に浮かびます。
そうそう、実は検索しようと思って『秋野木星』さんと入力しましたら0件でした(*_*)
それで、もしやと思って『秋野 木星』さんと野と木の間にスペースを入れたら検索できました。
スペースの有る無しだけで、検索できないのが驚きでした。ご参考まで。
雪乃さん
ゆかこさんを読んでくださってありがとうございます。
四季の移り変わりをゆかこさんと一緒に楽しんでいただけたら幸いです。
星影さんは、絵が上手いよねー。
このゆかこさんも構図を変えて二種類考えて下さったんですよ。
頭が下がります。
私も昨日、「秋月忍」さんを入れたら出てこなくて「秋月 忍」さんでした。(笑)
すみません、お手数かけて。
名前と苗字を離した方がわかりやすいかなぁと最初に書いちゃったんです。(^_^;)
ちなみに銘尾さんも間が空いています。^^