5 / 11
【5】
しおりを挟む
「――――で、俺を買ったのにまだなにも命令しないんですかオジョーサマ」
オークションから数日。
パウゼヴァングの屋敷にライアスを連れて帰ったハイデマリーは、彼のことを執事見習いとして側に置いていた。
しかし、まずは闇の組織で充分に取れていなかった栄養状態を改善するのが重要だと考え、特にライアスに仕事を与えていない。
「今はあなたがパウゼヴァング家に馴染んでくれるのが一番の目標だから、命令したいことは何もないわ」
「何もない?」
ハイデマリーの返答に、ライアスのピクリと形の良い眉が痙攣する。
「自分で言うのもなんだけど、俺けっこう何でもできるんすよ。なのに、この俺に命じたいことが何もない?」
ライアスの言うとおり、うみチカでの彼は万能だった。おかげで学園の生徒たちはどれほど苦しめられたことか。
(でもだからこそすごい存在感のあるキャラクターで、王太子のレイモンドも人気だったけれど、ライアスには特に熱心なファンが多かった印象よね)
ゲームのハイデマリーは王太子に執心していたが、前世を思い出した今の自分にとってはライアスのほうが魅力的な気がする。
すらりとした長身に作りものめいた完璧な美貌で優秀。
そんなライアスは隠し攻略対象にも関わらず、常に人気投票ブッチ切りナンバーワンキャラクターだった。
しかしライアスが有能だからこそ、ハイデマリーにその能力を利用されてしまうのだ。
学園の女王として君臨し、思うがままに振る舞っていたハイデマリー。
学園最高学年に進級し、あとはレイモンドの婚約者として選ばれるのを待つだけの日々。
けれど、そのハイデマリーの思い描く未来を脅かす存在が現れる。
それが学園に転入してきたゲームヒロインのアイラだ。
アイラは18歳で白魔法の能力に突然目覚め、魔法学園に転入することになる。
転入初日からゲームはスタートし、可憐な容姿に慈愛に満ちた性格のアイラは、攻略対象たちの悩みを癒やし彼らとの絆を深めていく。
メインヒーローのレイモンドはもちろん、ライアスもアイラに心を救われた一人だ。
日に日にアイラに惹かれていくレイモンドの様子に、当然ハイデマリーは面白いはずがない。
――あんな平民の娘ごときが私の邪魔をするなんて許せない。
嫉妬に狂ったハイデマリーの強力な呪いがアイラを襲う。
その絶対絶命の危機に一番仲を深めていた攻略対象が駆けつけ、エンディングを迎えるのがゲームの流れだ。
ヒロインが誰かと恋愛EDを迎えられるほどの正しい道を歩んでいれば、誰のルートでもライアスがハイデマリーを告発し、ハイデマリーは断罪される。
彼はアイラに心を救われたことで彼女のために主のハイデマリーを裏切るのだ。
ある意味、盲信的とも言えるライアスのキャラクターはヤンデレ好きの乙女たちに刺さりまくっていたに違いない。
「……本当にこれからはライアスのしたいように、自由に生きていいのよ」
「今さら自由にって言われたって、そんな生き方わかんねーよ」
「なら私が、ライアスが自由にやりたいことを思いつけるように手助けするわ」
オークションから数日。
パウゼヴァングの屋敷にライアスを連れて帰ったハイデマリーは、彼のことを執事見習いとして側に置いていた。
しかし、まずは闇の組織で充分に取れていなかった栄養状態を改善するのが重要だと考え、特にライアスに仕事を与えていない。
「今はあなたがパウゼヴァング家に馴染んでくれるのが一番の目標だから、命令したいことは何もないわ」
「何もない?」
ハイデマリーの返答に、ライアスのピクリと形の良い眉が痙攣する。
「自分で言うのもなんだけど、俺けっこう何でもできるんすよ。なのに、この俺に命じたいことが何もない?」
ライアスの言うとおり、うみチカでの彼は万能だった。おかげで学園の生徒たちはどれほど苦しめられたことか。
(でもだからこそすごい存在感のあるキャラクターで、王太子のレイモンドも人気だったけれど、ライアスには特に熱心なファンが多かった印象よね)
ゲームのハイデマリーは王太子に執心していたが、前世を思い出した今の自分にとってはライアスのほうが魅力的な気がする。
すらりとした長身に作りものめいた完璧な美貌で優秀。
そんなライアスは隠し攻略対象にも関わらず、常に人気投票ブッチ切りナンバーワンキャラクターだった。
しかしライアスが有能だからこそ、ハイデマリーにその能力を利用されてしまうのだ。
学園の女王として君臨し、思うがままに振る舞っていたハイデマリー。
学園最高学年に進級し、あとはレイモンドの婚約者として選ばれるのを待つだけの日々。
けれど、そのハイデマリーの思い描く未来を脅かす存在が現れる。
それが学園に転入してきたゲームヒロインのアイラだ。
アイラは18歳で白魔法の能力に突然目覚め、魔法学園に転入することになる。
転入初日からゲームはスタートし、可憐な容姿に慈愛に満ちた性格のアイラは、攻略対象たちの悩みを癒やし彼らとの絆を深めていく。
メインヒーローのレイモンドはもちろん、ライアスもアイラに心を救われた一人だ。
日に日にアイラに惹かれていくレイモンドの様子に、当然ハイデマリーは面白いはずがない。
――あんな平民の娘ごときが私の邪魔をするなんて許せない。
嫉妬に狂ったハイデマリーの強力な呪いがアイラを襲う。
その絶対絶命の危機に一番仲を深めていた攻略対象が駆けつけ、エンディングを迎えるのがゲームの流れだ。
ヒロインが誰かと恋愛EDを迎えられるほどの正しい道を歩んでいれば、誰のルートでもライアスがハイデマリーを告発し、ハイデマリーは断罪される。
彼はアイラに心を救われたことで彼女のために主のハイデマリーを裏切るのだ。
ある意味、盲信的とも言えるライアスのキャラクターはヤンデレ好きの乙女たちに刺さりまくっていたに違いない。
「……本当にこれからはライアスのしたいように、自由に生きていいのよ」
「今さら自由にって言われたって、そんな生き方わかんねーよ」
「なら私が、ライアスが自由にやりたいことを思いつけるように手助けするわ」
122
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
悪役令嬢はオッサンフェチ。
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
侯爵令嬢であるクラリッサは、よく読んでいた小説で悪役令嬢であった前世を突然思い出す。
何故自分がクラリッサになったかどうかは今はどうでも良い。
ただ婚約者であるキース王子は、いわゆる細身の優男系美男子であり、万人受けするかも知れないが正直自分の好みではない。
ヒロイン的立場である伯爵令嬢アンナリリーが王子と結ばれるため、私がいじめて婚約破棄されるのは全く問題もないのだが、意地悪するのも気分が悪いし、家から追い出されるのは困るのだ。
だって私が好きなのは執事のヒューバートなのだから。
それならさっさと婚約破棄して貰おう、どうせ二人が結ばれるなら、揉め事もなく王子がバカを晒すこともなく、早い方が良いものね。私はヒューバートを落とすことに全力を尽くせるし。
……というところから始まるラブコメです。
悪役令嬢といいつつも小説の設定だけで、計算高いですが悪さもしませんしざまあもありません。単にオッサン好きな令嬢が、防御力高めなマッチョ系執事を落とすためにあれこれ頑張るというシンプルなお話です。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした
あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。
しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。
お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。
私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。
【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】
ーーーーー
小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。
内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。
ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が
作者の感想です|ω・`)
また場面で名前が変わるので気を付けてください
騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる