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そう。今まさに、目の前で人身売買のオークションにかけられている少年は『うみチカ』の重要攻略キャラクター、ライアスだ。
ゲームの中ではパウゼヴァング家が彼を競り落としたことで、ハイデマリーとライアスが出会う。
気が強く世界の全てを自分の思う通りにしないと気がすまないハイデマリーは、ライアスをまともな人間として扱わず、様々なことを彼に命令し実行させるのだ。
そして月日が流れ、うみチカの舞台である魔法学園に入学してからも、ハイデマリーは自身が持つ黒魔法の力とライアスの『特殊能力』を使い学園の女王として君臨する。
しかし、ゲームヒロインに救われ改心したライアスによって今までの悪事を全て暴露され、最終的に破滅を招くというシナリオだ。
断罪イベントの様子を思い出し、心臓がドクドクと嫌な音を立てる。
怖い。そんな未来など、来てほしくない。
なんとしてでも回避しなくては。
「……お父様は、彼を買うおつもりなの……?」
できることなら、このままライアスとは出会わずに会場を出てしまいたい。
そうすれば、自分が悪役令嬢として破滅する可能性が減るのではないか。
震える声で尋ねると、父は鷹揚に顎を擦った。
「うーん、買っても良いが、熱心に値を釣り上げている客が何人もいるからなぁ」
父はライアスのことを絶対に買いたいわけではないらしい。
その答えにホッと胸を撫で下ろす。
(私がねだらなければ、ライアスがパウゼヴァング家に来ることはないのね)
前世の記憶を思い出してしまったからには、少しでも断罪される未来のフラグを折りたい。
しかし。
白熱した様子でライアスに法外な値段をつけ続ける大人たちは、明らかに汚れた欲望の対象としてライアスを見ている。
彼らに買われてしまったら、ゲームのハイデマリーがしたこと以上に酷い仕打ちをライアスがされるかもしれない。
(そんなの、絶対にダメ……っ)
自分の保身のために少年が酷い目にあうのを見過ごすなど、ハイデマリーにはどうしてもできなかった。
「お父様、一生のお願い! あの子を買って……!」
愛娘の懇願に、パウゼヴァング公爵はすぐさまオークション史上最高額でライアスを競り落とした。
ゲームの中ではパウゼヴァング家が彼を競り落としたことで、ハイデマリーとライアスが出会う。
気が強く世界の全てを自分の思う通りにしないと気がすまないハイデマリーは、ライアスをまともな人間として扱わず、様々なことを彼に命令し実行させるのだ。
そして月日が流れ、うみチカの舞台である魔法学園に入学してからも、ハイデマリーは自身が持つ黒魔法の力とライアスの『特殊能力』を使い学園の女王として君臨する。
しかし、ゲームヒロインに救われ改心したライアスによって今までの悪事を全て暴露され、最終的に破滅を招くというシナリオだ。
断罪イベントの様子を思い出し、心臓がドクドクと嫌な音を立てる。
怖い。そんな未来など、来てほしくない。
なんとしてでも回避しなくては。
「……お父様は、彼を買うおつもりなの……?」
できることなら、このままライアスとは出会わずに会場を出てしまいたい。
そうすれば、自分が悪役令嬢として破滅する可能性が減るのではないか。
震える声で尋ねると、父は鷹揚に顎を擦った。
「うーん、買っても良いが、熱心に値を釣り上げている客が何人もいるからなぁ」
父はライアスのことを絶対に買いたいわけではないらしい。
その答えにホッと胸を撫で下ろす。
(私がねだらなければ、ライアスがパウゼヴァング家に来ることはないのね)
前世の記憶を思い出してしまったからには、少しでも断罪される未来のフラグを折りたい。
しかし。
白熱した様子でライアスに法外な値段をつけ続ける大人たちは、明らかに汚れた欲望の対象としてライアスを見ている。
彼らに買われてしまったら、ゲームのハイデマリーがしたこと以上に酷い仕打ちをライアスがされるかもしれない。
(そんなの、絶対にダメ……っ)
自分の保身のために少年が酷い目にあうのを見過ごすなど、ハイデマリーにはどうしてもできなかった。
「お父様、一生のお願い! あの子を買って……!」
愛娘の懇願に、パウゼヴァング公爵はすぐさまオークション史上最高額でライアスを競り落とした。
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