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ティエラ星人・レオンバルト
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レオンバルトは紳士だった。
あまり表情筋が動かないタイプらしく真顔の美貌は凄みが有ったけれど、レオンバルトは紳士だった。
関係者以外は人払いがされたラウンジに、ティエラ星の正装だという黒い軍服で現れたレオンバルト。
そして迎える私も魔法少女ハニームーンの華ロリ姿。
高級ホテルの一場面としてはなかなかのシュールな光景。でもまぁ洋画俳優みたいなレオンバルトの美形効果で映画の撮影現場に見えなくもなかった。
「はじめまして、ハニームーンです」
身長155センチの私より30センチは高い位置に有るレオンバルトの顔。じっと見下ろしてくる瞳は、よく見ると左が青で右が緑のオッドアイ。
「レオンバルトです。お会いできて光栄です」
「日本語お上手ですね」
「貴女とお話ししたくて勉強しました」
「まぁ」
ウフフと穏やかに済んだ自己紹介。
その後のフランス料理のお店へのエスコートも、食事中のマナーもレオンバルトは完璧だった紳士だった。
……私の酒癖が炸裂するまでは。
『──あ、このワイン飲みやすい』
『女性に人気の銘柄らしいですね』
『すみません、もう一杯頼んでも良いですか? こんなに美味しいワイン初めてで』
『俺は構いませんよ』
やめとけ。
『うにゃー、世界がグルグル回るよ~』
『酔いが醒めるまで俺の泊まってる部屋で休みますか?』
『ほぇっ! 良いんですかぁ? スイートルーム見てみたーい!』
やめとけ私。
『すごーい! ひろーい! ホテルの部屋の中なのにキッチンスペースとバーカウンターがあるー!』
『バスルームとベッドルームも広いですよ』
『見たーーい!』
『良いですよ、どちらから先に見ます?』
『えーとぉ……』
やめとけって言ってるだろこの酔っぱらいバカ女ぁぁぁぁぁ!(※私)
目の前にいる異星人、紳士なんかじゃなくちゃっかり据え膳食うタイプのムッツリ無表情スケベ野郎の異星人だぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!
おまえ、その後その野郎に────っ
「──きゃっ?!」
レオンバルトとの初対面の記憶のフラッシュバックに気を取られたのが悪かったのか。
ショートブーツの踵が思い切りステージの床に滑って体のバランスが崩れる。
「危ない」
転びかけた私の身体を、瞬時に移動してきたレオンバルトの腕が支えた。
「ちょっと! 憎きあんたがなんで私を助けるのよ!」
「だって転んだらハニーが怪我しちゃうし。俺は憎くないし。むしろ愛し──」
「変なとこで略さないでっていつも言ってるでしょ! 私はハニームーンですっ!」
「長い……」
「長くないわよ!」
「日本語難しい……」
「だったら自分の星へ帰れっつーの!!」
優男な外見のくせに馬鹿力で絡んで離れない腕をなんとか腰から引き剥がそうと力を込める。──が全然ビクともしない!
「って言うか! 今日の魔法少女の仕事はハロウィンイベントの警備なの! あんたに構ってる暇は無いの! なんで毎回毎回、ハニームーンの仕事現場に現れるのよ! しかも軍服で! 悪目立ちするでしょうがっ!」
「ハニーに会いたいって言うと課長さんが教えてくれる……」
糸目の上司ぉぉぉぉぉっ?!
「あと、やっぱり好きな子に会いに来るなら正装かな、って」
「余計な気遣いだわよ! おかげで最近、あんたと私、セットのパフォーマーみたいに勘違いされてんだからねっ?」
「ハニーとセット……嬉しい……」
ポッ。と無表情のままレオンバルトが器用に頬を染める。
顔の筋肉が死んでるのでは? と疑いたくなるほど表情が動かない割には感情表現が豊かだ。
その頬の色に何か感じてはいけないものを感じそうになった時、存在を忘れかけていた観客の声が私の耳に届いた。
「……え、なになに、魔法少女と敵のバトルショーじゃなくて、ラブストリーなの?」
「これ、私たち完全に痴話喧嘩見せられてるよね……?」
「チャイナっ娘、ツンデレー?!」
「お兄さん、頑張れー!」
イイ感じにアルコールが回り始めたご機嫌な歓声。
キース!キース!と囃し立てる様は最早ただの合コンのノリだ。
「ハニー……」
何を思ったのか私の腰を支えるレオンバルトの腕に力が入り奴が長身を屈ませた。
「嫌だからね! 人前でなんて! 絶対に! 嫌! したら許さないから!」
「……君が望むなら」
珍しく目元をゆるませたレオンバルトが自身の腕時計を操作すると私たちの周りの空気が歪み始める。
──ティエラ星の技術で作られた腕時計型転移装置。それが作動した証拠の浮遊感。
課長ー! ごめんなさーい! 後のことは上手く誤魔化しておいてくださーいっ!
そう願いながら、浮き上がる感覚に身を任せる。
「──って、だからってなんで、億ションのデカいベッドの上に転移するのよ?!」
あまり表情筋が動かないタイプらしく真顔の美貌は凄みが有ったけれど、レオンバルトは紳士だった。
関係者以外は人払いがされたラウンジに、ティエラ星の正装だという黒い軍服で現れたレオンバルト。
そして迎える私も魔法少女ハニームーンの華ロリ姿。
高級ホテルの一場面としてはなかなかのシュールな光景。でもまぁ洋画俳優みたいなレオンバルトの美形効果で映画の撮影現場に見えなくもなかった。
「はじめまして、ハニームーンです」
身長155センチの私より30センチは高い位置に有るレオンバルトの顔。じっと見下ろしてくる瞳は、よく見ると左が青で右が緑のオッドアイ。
「レオンバルトです。お会いできて光栄です」
「日本語お上手ですね」
「貴女とお話ししたくて勉強しました」
「まぁ」
ウフフと穏やかに済んだ自己紹介。
その後のフランス料理のお店へのエスコートも、食事中のマナーもレオンバルトは完璧だった紳士だった。
……私の酒癖が炸裂するまでは。
『──あ、このワイン飲みやすい』
『女性に人気の銘柄らしいですね』
『すみません、もう一杯頼んでも良いですか? こんなに美味しいワイン初めてで』
『俺は構いませんよ』
やめとけ。
『うにゃー、世界がグルグル回るよ~』
『酔いが醒めるまで俺の泊まってる部屋で休みますか?』
『ほぇっ! 良いんですかぁ? スイートルーム見てみたーい!』
やめとけ私。
『すごーい! ひろーい! ホテルの部屋の中なのにキッチンスペースとバーカウンターがあるー!』
『バスルームとベッドルームも広いですよ』
『見たーーい!』
『良いですよ、どちらから先に見ます?』
『えーとぉ……』
やめとけって言ってるだろこの酔っぱらいバカ女ぁぁぁぁぁ!(※私)
目の前にいる異星人、紳士なんかじゃなくちゃっかり据え膳食うタイプのムッツリ無表情スケベ野郎の異星人だぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!
おまえ、その後その野郎に────っ
「──きゃっ?!」
レオンバルトとの初対面の記憶のフラッシュバックに気を取られたのが悪かったのか。
ショートブーツの踵が思い切りステージの床に滑って体のバランスが崩れる。
「危ない」
転びかけた私の身体を、瞬時に移動してきたレオンバルトの腕が支えた。
「ちょっと! 憎きあんたがなんで私を助けるのよ!」
「だって転んだらハニーが怪我しちゃうし。俺は憎くないし。むしろ愛し──」
「変なとこで略さないでっていつも言ってるでしょ! 私はハニームーンですっ!」
「長い……」
「長くないわよ!」
「日本語難しい……」
「だったら自分の星へ帰れっつーの!!」
優男な外見のくせに馬鹿力で絡んで離れない腕をなんとか腰から引き剥がそうと力を込める。──が全然ビクともしない!
「って言うか! 今日の魔法少女の仕事はハロウィンイベントの警備なの! あんたに構ってる暇は無いの! なんで毎回毎回、ハニームーンの仕事現場に現れるのよ! しかも軍服で! 悪目立ちするでしょうがっ!」
「ハニーに会いたいって言うと課長さんが教えてくれる……」
糸目の上司ぉぉぉぉぉっ?!
「あと、やっぱり好きな子に会いに来るなら正装かな、って」
「余計な気遣いだわよ! おかげで最近、あんたと私、セットのパフォーマーみたいに勘違いされてんだからねっ?」
「ハニーとセット……嬉しい……」
ポッ。と無表情のままレオンバルトが器用に頬を染める。
顔の筋肉が死んでるのでは? と疑いたくなるほど表情が動かない割には感情表現が豊かだ。
その頬の色に何か感じてはいけないものを感じそうになった時、存在を忘れかけていた観客の声が私の耳に届いた。
「……え、なになに、魔法少女と敵のバトルショーじゃなくて、ラブストリーなの?」
「これ、私たち完全に痴話喧嘩見せられてるよね……?」
「チャイナっ娘、ツンデレー?!」
「お兄さん、頑張れー!」
イイ感じにアルコールが回り始めたご機嫌な歓声。
キース!キース!と囃し立てる様は最早ただの合コンのノリだ。
「ハニー……」
何を思ったのか私の腰を支えるレオンバルトの腕に力が入り奴が長身を屈ませた。
「嫌だからね! 人前でなんて! 絶対に! 嫌! したら許さないから!」
「……君が望むなら」
珍しく目元をゆるませたレオンバルトが自身の腕時計を操作すると私たちの周りの空気が歪み始める。
──ティエラ星の技術で作られた腕時計型転移装置。それが作動した証拠の浮遊感。
課長ー! ごめんなさーい! 後のことは上手く誤魔化しておいてくださーいっ!
そう願いながら、浮き上がる感覚に身を任せる。
「──って、だからってなんで、億ションのデカいベッドの上に転移するのよ?!」
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