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【12】

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「花南が引いてくれないと他の女子が引けないからさ」

「そうなの?」

「そうなの。……順番通りに引かないと上手くできないんだよね」

 割り箸で作ったクジ引きって、何か難しいルール有ったっけ?

 疑問符で頭をいっぱいにしながら、樹莉の手の中から割り箸を引き抜く。
 そこには見覚えのある樹莉の字で『5』と書かれていた。

「オッケー、オッケー。花南は5ね。じゃあ理人、アンタは男子の分こっちから引いて。……わかってるわよね?」

「わかってるよ」

 あ、また、樹莉と九堂くんだけのアイコンタクト。
 その2人の間に流れる空気にズキリと胸が痛んだ。

「……コレだな」

 九堂くんの長くて形の良い人差し指が、束ねられた割り箸の上を彷徨い、決めた1本を引き抜く。その彼に選ばれる割り箸のことすら羨ましいと思うなんて。

 あぁ神様。本当は、こんなこと願っちゃいけないってわかってるけど。
 彼の運命の人は脇役じゃないってわかってるけど。

 ほんの一瞬だけ、希望を持つことを許してほしい。

 ゆっくりと、九堂くんと樹莉が先端に書かれた数字を確認する。
 それを見て、九堂くんはとろける様に目を細めた。



「俺も、5番だ。よろしくな来栖」



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