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(九堂くんが竹刀を振るう姿、カッコイイんだろうなぁ……)

 私は九堂くんが剣道をする姿を見たことがない。
 それどころか、彼の私服姿を見ることすら今日が初めてだ。

 私と九堂くんは学校外でまで会うような仲じゃなかったし、前世でも彼の私服姿を見たことがなかった。
 原作マヨキミは立ち絵の種類を増やす予算が無かったのかなんなのか。ゲーム内での私たちは夜中に校舎に忍び込む時にも制服を着ていたからだ。

(やっぱ普通に考えたら肝試しにわざわざ制服着ないよね。うちの夏服、白のセーラーとシャツだから暗い場所で目立っちゃうし)

 前世の記憶を思い出してからも、こんな風に原作との違いを感じることがよくあった。きっと、私が転生している時点で原作と少し誤差があるのかもしれない。

(でも大丈夫よ樹莉……! 私、立派にオープニングアクトをこなして、樹莉の恋を叶えてみせるからね……!)

 美人で気配り上手で才色兼備な樹莉。
 そんな自慢の親友は、入学してから何度も愛の告白をされている。

 同級生に先輩後輩。更には他校の生徒まで。
 さすがは乙女ゲームのヒロインこの世界の主人公
 樹莉が告白される場面を私が見た回数は数え切れない。

(でも、樹莉は一度もOKしたことないんだよね……。きっとそれは――)

 樹莉が誰からの告白にも応えない理由。
 きっと。きっとそれは。

 私には聞こえない音量で。
 樹莉と九堂くんが何かを囁き合い、小突き合っている。
 戯れながら九堂くんに笑いかける樹莉の瞳。そこには親戚はとこに向ける以上の想いがあるようにしか見えなくて。

(きっとこの世界の樹莉は、肝試しオープニングイベントが始まる前から、九堂くんのことが好きなんだね)

 同じ色の髪と瞳を持つ、対のお人形みたいにお似合いな二人。
 この世界の主人公ヒロインとメインヒーロー。

 そこに、脇役の私が入る場所はどこにもなかった。

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