※R18※【急募】脱出ホラー系乙女ゲームでヒーローを撲殺（未遂）しなきゃいけないのに凶器がスイカしかない時の対処法

【8】

　振り返れば、そこには生徒会長の九堂くん――数時間後に私が襲いかかるであろうメインヒーローの九堂理人くどうりひとくんが立っていた。
　夕陽が逆光になってその表情はよく見えないけれど、樹莉は「言ってないから！」と必死に何かを九堂くんに言い訳している。

（樹莉は表情がよく見えなくても九堂くんのこと解ってるんだなぁ。って、そりゃそうだよね。ヒロインとメインヒーローだもん。それでなくても、二人は親戚だし……）

　私たち生徒会メンバーを統べる生徒会長、九堂理人くどうりひとくん。
　樹莉によく似た色素の薄い髪を持つ彼は、樹莉とはとこ・・・同士だという。

　普段はシルバーフレームのスクエア型の眼鏡に隔たれているから気づきにくいけれど、榛色の瞳を細めて笑うクセは樹莉とそっくりだ。

　同い年とは思えないほど理知的で大人っぽい雰囲気の彼は、勉強だけでなくスポーツも得意で。剣道の腕前は相当なものらしい。武芸をやっている人特有の所作で、180cmを超える長身なのに気配を感じさせない時があった。

　いつもの制服とは違う黒のカットソー。その上からでも、彼のしっかりとした胸筋と二の腕がわかる。

（制服の時の九堂くんはスラッとしたイメージだったから意外。着痩せするタイプなんだな）

　鍛えすぎていない、しなやかな筋肉。バランスのとれた肢体はまるでモデルさんみたいだ。