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番外編
side 司
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先月、僕は人生で初めてセックスをした。
僕の名前は三条司。
三条家の三男として生まれて20年。
『彼女』が僕の心にいない日はなかった。
二十歳の誕生日まで性交渉の経験が無いことは我が家では珍しく父には驚かれたが、初めてのセックスの相手が彼女だったのだから、こんなに幸せなことはない。
兄二人は適度に後腐れなく遊べる女性を抱いて発散していたようだけど、僕は彼女以外に触れる気などない。考えただけで吐き気がする。
だけど兄弟の中で一番線が細く、女性的な顔立ちをしている僕はある種の嗜好を持った人間を惹きつけるのか。男からも女からも、絡みつくような視線を常に向けられていた。
(鬱陶しい)
彼女以外から押しつけられる好意など迷惑なだけなのに。
ただでさえハイエナが周囲をうろつく『三条』というブランドに、僕の顔は余計な付加価値をつけてしまっているらしい。
流石に三条の人間に無理矢理何かを仕掛けようなんて愚かな人間はいないけれど、興味が無い相手とは同じ空気を吸うことすら煩わしい。視界の中に入ってこないで欲しいと心底思う。
でも。
彼女が僕を見つめながら「司くんって本当に綺麗だよねぇ。その泣きぼくろも色っぽくて羨ましい」なんて真剣な表情で呟くから。
僕はこの顔に生んでくれた母と父に感謝しているんだ。
ねぇなっちゃん。
貴女が望むならこの顔も身体もいくらでもあげるから。なっちゃんは心を『僕達』にちょうだいよ。
先月、二十歳の誕生日になっちゃんを抱いたあの日。
泣いて抵抗する彼女を兄達と三人で抑え込んで。
まだ誰も触れたことの無い彼女の処女を散らせた。
もちろん、僕達が彼女を傷つけるなんて馬鹿な真似をするわけがない。
丁寧に、丁寧にほぐして舐めて陥落させて。媚薬も潤滑剤も惜しみ無く使った。
驚愕の涙を流す瞳が快楽に潤むまで時間はそんなにかからなくて。早く貫いて欲しいと腰を揺らして次兄にねだる姿は、脳みそが痺れるくらい妖艶で魅力的だった。
一度彼女を抱いてしまえば今までの自分が何だったのかと思うほど、僕の頭の中はセックスのことでいっぱいだ。
「司くん、にこにこしてどうしたの?」
「ん? なっちゃんが薦めてくれたこの店のランチ、美味しいなぁって」
「本当? 私も発見したばっかりなんだけどね、司くん達にも食べて欲しくて! 鷹ちゃんと詩音が来られなくて残念」
「平日がお休みのなっちゃんに合わせられるのは学生の特権かな」
ねぇなっちゃん。
そんな風に嬉しそうにパスタを口に運ぶ貴女を前に。
こんな真っ昼間のカフェの中で。
その唇に僕自身を咥えさせて。今すぐ激しく犯したいと妄想しているなんて。
そう告げたらなっちゃんはどんな顔をするのかな?
「ここのランチはね、デザートもすごく美味しいんだよ!」
「それは楽しみだな」
「……あ、ごめんね。ケーキが来ちゃう前に、ちょっとお手洗い行ってくるね」
そう席を立った後ろ姿を見送りながら。
仕事中だというのに彼女に見とれていたウェイターに微笑みかける。
(なっちゃんに惚れるくらいなら、僕の顔でも見ていてね)
彼女を他の男の視線から遠ざけるためなら、この顔でも三条の名でもなんだって利用してやる。
あぁ。それにしても残念だ。
僕達との初めてのセックスで、彼女は妊娠しなかったらしい。
(せっかく、緊急避妊薬のことなんて思いつかなくなるくらい、兄さん達と抱き潰したのにな)
孕んでしまえば。子供さえ孕んでしまったら。
彼女は僕達兄弟の誰かとの結婚を承諾するしかなくなるだろう。
(まぁ良いか。今後のことはまた兄さん達と相談すれば)
目の前の男がそんなことを考えていると疑いもせずに。
可憐な蝶は無邪気に笑いながらデザートに目を輝かせた。
僕の名前は三条司。
三条家の三男として生まれて20年。
『彼女』が僕の心にいない日はなかった。
二十歳の誕生日まで性交渉の経験が無いことは我が家では珍しく父には驚かれたが、初めてのセックスの相手が彼女だったのだから、こんなに幸せなことはない。
兄二人は適度に後腐れなく遊べる女性を抱いて発散していたようだけど、僕は彼女以外に触れる気などない。考えただけで吐き気がする。
だけど兄弟の中で一番線が細く、女性的な顔立ちをしている僕はある種の嗜好を持った人間を惹きつけるのか。男からも女からも、絡みつくような視線を常に向けられていた。
(鬱陶しい)
彼女以外から押しつけられる好意など迷惑なだけなのに。
ただでさえハイエナが周囲をうろつく『三条』というブランドに、僕の顔は余計な付加価値をつけてしまっているらしい。
流石に三条の人間に無理矢理何かを仕掛けようなんて愚かな人間はいないけれど、興味が無い相手とは同じ空気を吸うことすら煩わしい。視界の中に入ってこないで欲しいと心底思う。
でも。
彼女が僕を見つめながら「司くんって本当に綺麗だよねぇ。その泣きぼくろも色っぽくて羨ましい」なんて真剣な表情で呟くから。
僕はこの顔に生んでくれた母と父に感謝しているんだ。
ねぇなっちゃん。
貴女が望むならこの顔も身体もいくらでもあげるから。なっちゃんは心を『僕達』にちょうだいよ。
先月、二十歳の誕生日になっちゃんを抱いたあの日。
泣いて抵抗する彼女を兄達と三人で抑え込んで。
まだ誰も触れたことの無い彼女の処女を散らせた。
もちろん、僕達が彼女を傷つけるなんて馬鹿な真似をするわけがない。
丁寧に、丁寧にほぐして舐めて陥落させて。媚薬も潤滑剤も惜しみ無く使った。
驚愕の涙を流す瞳が快楽に潤むまで時間はそんなにかからなくて。早く貫いて欲しいと腰を揺らして次兄にねだる姿は、脳みそが痺れるくらい妖艶で魅力的だった。
一度彼女を抱いてしまえば今までの自分が何だったのかと思うほど、僕の頭の中はセックスのことでいっぱいだ。
「司くん、にこにこしてどうしたの?」
「ん? なっちゃんが薦めてくれたこの店のランチ、美味しいなぁって」
「本当? 私も発見したばっかりなんだけどね、司くん達にも食べて欲しくて! 鷹ちゃんと詩音が来られなくて残念」
「平日がお休みのなっちゃんに合わせられるのは学生の特権かな」
ねぇなっちゃん。
そんな風に嬉しそうにパスタを口に運ぶ貴女を前に。
こんな真っ昼間のカフェの中で。
その唇に僕自身を咥えさせて。今すぐ激しく犯したいと妄想しているなんて。
そう告げたらなっちゃんはどんな顔をするのかな?
「ここのランチはね、デザートもすごく美味しいんだよ!」
「それは楽しみだな」
「……あ、ごめんね。ケーキが来ちゃう前に、ちょっとお手洗い行ってくるね」
そう席を立った後ろ姿を見送りながら。
仕事中だというのに彼女に見とれていたウェイターに微笑みかける。
(なっちゃんに惚れるくらいなら、僕の顔でも見ていてね)
彼女を他の男の視線から遠ざけるためなら、この顔でも三条の名でもなんだって利用してやる。
あぁ。それにしても残念だ。
僕達との初めてのセックスで、彼女は妊娠しなかったらしい。
(せっかく、緊急避妊薬のことなんて思いつかなくなるくらい、兄さん達と抱き潰したのにな)
孕んでしまえば。子供さえ孕んでしまったら。
彼女は僕達兄弟の誰かとの結婚を承諾するしかなくなるだろう。
(まぁ良いか。今後のことはまた兄さん達と相談すれば)
目の前の男がそんなことを考えていると疑いもせずに。
可憐な蝶は無邪気に笑いながらデザートに目を輝かせた。
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