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壱章
其の四
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第六階層、第二外殻のとある裏路地、ぽつりと灯りをともした屋台が一件。子どものように泣きじゃくる桑楡をひとしきり撫でたあと、終宵は桑楡をここに連れてきたのであった。
提灯に描かれた筆の花が、ちらちらと影を散らしている。
最近流行りの光る石が入った硝子の灯篭ではなくて、昔ながらの蝋燭を使っているんですよ。
店主は穏やかな口調でそう語りながら、提灯に火を入れてふたりを招き入れた。
「……悪かったな、急に」
「いいや。気にしなくてもよいさ」
鼻をすすって視線を落とす桑楡に、終宵は常と変わらぬ微笑みを返す。
「それより、もう泣かなくてもよいのか?」
「も、もういいって! ちょっといろいろあって疲れてただけだから」
からかわれるような笑み含みの言葉に、恥ずかしさが煽られて頬が熱くなる。頭に触れようとしてくる手を慌ててどけてから、桑楡は出された徳利を猪口に注いだ。それを終宵に押し付けて、自分もまた酒をあおる。
舌先に染みる甘味と痺れるほど濃い酒精が溶け、鼻から芳醇な香りとともに抜けていく。
「ほう、いい酒だ」
隣でつぶやいている終宵の整った輪郭を、淡い光が柔らかく照らす。視覚が失われているからこそ、強く味や香りを感じ取れるのだろう。
蕎麦とうどんの屋台かと思っていたが、店主が出してくれたのは意外にも、最近流行りの煮込んだ牛筋だった。甘辛く煮つけた大根と牛の脂が絡みあい、酒がすすむ。
「……子どもの頃は、こんないいもの、めったに食べられなかったのにな」
ぽつりと落ちた桑楡の独り言が耳に入ったのだろう。酒で唇を湿らせていた終宵が、ふと首を傾け問いかける。
「君、出身はどこなのかね?」
「ああ……ここよりもっと下だよ。第三階層の、第二外殻」
今いる場所よりもっと治安が悪い、いつも薄暗いようなところだった。殺しは第一階層よりも多くはなかったけれど、決して住みよい場所とは言えなかった。薄暗くて寒くて、それでも第一外殻に比べたらマシだと、母親はいつも口癖のように言っていたことを覚えている。
桑楡は、父の顔を知らずに育った。母は第二外殻の外側にある工場で働いていて、幼い桑楡を女手一つで育ててくれた。母がやっとの思いで入れてくれた教育機関では、さんざんいじめられていたことしか覚えていない。そうしていつのころからか、上の階層で成り上がることが桑楡の夢になっていた。
「母君は元気なのか?」
くたびれた母の横顔を思い出す。いつもよれた作業着を着て、疲れていて――それでもひび割れた指で自分の頭を撫でていた。
「さあな……大喧嘩して、飛び出してきちゃったから……今は何してるんだろ」
酒を一口。喉を滑り落ちる香りと味を、どこか遠くで感じ取る。
「死ぬ気で勉強したけど、結局は行きたかったところには行けなくてさ。入ったところで、周りからは馬鹿にされてばっかで」
悔しかったのだ。だから有名になりたくて、周りを見返してやりたくて、臨時でたまたま働いていた新聞会社へと就職した。
「新聞なら、いろんな人が読むだろ? 俺の記事を読んだ誰かが、俺によって感情を操作される。そんな記事を書こうと思ったんだ」
大衆に影響を与えるような記事を書ける。自分が大衆の操作者になれる。そうすることで、すべてを見返してやれると思っていた。
――そんな奇跡など、こんな汚泥と無機物と異形の生き物で作られた世界でなんて、存在しているわけないのに。
「ま、そうそううまくいかないよな。ははは」
目元を覆う。手のひらに閉じ込めた薄闇がにじんで揺れる。そっと背中に添えられる手だけが優しい。
「……君は、まっすぐで不器用だな。さぞや苦労したことだろう。……こんなところで使いつぶされてすり減るのも、惜しいものだ」
静かに言葉をこぼした彼の低い声に、また目頭が熱くなった。
それから、たくさん話をした。これまではしなかったような、もっと踏み込んだこと――家族のこと。趣味のこと。友人のこと、仕事のこと。仕事のこと。仕事のこと。そんな他愛もないことを、湧き出るままに語り続けた。
愚痴を言うたびに、彼はうなずいて優しく頭を撫でては「いい子だな」と子どものように言うものだから、どうにも心地よさと同時にむず痒く感じてしまって困ってしまう。
「……で? あんたは?」
「うん?」
自分ばかり話すのも気が引けて、桑楡は皿と杯を重ねながらふと尋ねてみる。
「あんたは、楽しい? 毎日」
白く透き通る象牙の肌に、ほのかに朱がのぼっている。どこも映さぬ盲いた眼は、より艶やかに紅く濡れ、どこかを眺めながらかすかに笑った。
「僕は今、僕の好きなように生きているからな。それを楽しいというのなら、確かに楽しいのやもしれぬ」
自分の、好きなように生きるということ。それはどんな心地なのだろう。誰にも縛られず、何者にも影響されずにいるということ。たとえば、誰かの価値観とか、感情とか、そんなしがらみから解き放たれたところにあるということ。
「好きなように、か……」
それを人は自由と呼ぶのだろう。ヒト、モノ、環境、過去。ありとあらゆるものに縛り付けられた桑楡にとって、それはひどく羨ましいものに思えた。
「……なあ、軍人だったんだろ? つらかったか? それとも、それもあんたにとっては好きなように生きている、ってことだったのか?」
「さて――どうだったか」
答える男は飄々と、猪口を唇へと運んでいる。
「つらい、と言う者も多くいたよ。逃げる者も後を絶たなかった。しかし、僕にとっては居心地がよかった。とてもね」
他国との戦闘だけでなく、時折起きる国内の暴動でも、武力を用いた鎮圧を目的として投下される者たちのこと。世俗より切り離され、確実に『終わらせる』ために研ぎ澄まされ、ただ『終わらせる』ためだけに存在している者たちを、畏怖と恐怖をもって軍人と呼ぶ。
軍の規律は厳しいが、同時にずいぶんと極端な実力主義だという噂がある。確実に言えることは、弱い者は決して生き残れない組織であり、逆を言えば強い者だけがとどまり続けられる、ということだ。
弱肉強食、まったく別の世界に生きていたこの男がそう言うのならば、このどこか浮世離れした雰囲気にも納得がいく。
「……やっぱり変わってるな、あんた」
「そうかな?」
「そうだよ」
自覚は、どうやらないらしい。終宵は軽く首を傾けて、そうか、と不思議そうにつぶやいた。
艶を含んだ髪が滑り落ちる。柔らかな光が影をにじませ、整った顔立ちを彩っている。絶世の美男子――とは言い難いが、どうもこの男には奇妙な色香がある。ヒトを惹きつけてやまぬ、そう、上層のお偉方が狂ったように集めたりする、さながら和刀のような研ぎ澄まされた美しさがある。
それも血孕みの風吹きすさぶ戦場を駆けていたがゆえのものか。それともまた別の要因があるからか。ぼんやりとその横顔を眺めていた桑楡に、男がふと笑みを向ける。
「ああ、そういえば……君の名を聞いていなかったな」
「俺?」
「そう、君だ。ここでこうして対面しているのは、僕と、君だけだろう?」
男は声をつなぎ合わせながら、ゆっくりと皮の手袋を外した。骨の浮いた手、上気した肌に浮かび上がる細かな傷は、彼が戦場にいたことを生々しく示している。
その仕草が妙に様になっていて、どうにも落ち着かない心地になる。桑楡は抱え込んでいた徳利から酒を注ぎ足し、
「桑楡、光喜。二十六歳。独身」
請われてもいないのに年齢その他を添えて、彼の言葉に答えを返した。
「ふふ、そうか。ずいぶんと若いな」
「そうかぁ?」
「ああ。僕からしたら、まだ子どもだよ」
微笑む男の目元には、薄らとしわが刻まれていた。遠目からだと若く見えたが、こうしてみると自分よりも一回り以上年上なのだとわかる。
「あんたは、いくつなんだ?」
「さあて、どうだったかな。三十の終わり、四十のはじめ、まあそれぐらいだったと思うが」
言いながら、終宵は無造作に腕を伸ばして桑楡の頭に触れた。
「髪が固いな。くせ毛なんだろう。こんなに伸ばしっぱなしにしてはいかんぞ」
「言うなよ、気にしてるんだから」
それからするりと手は落ちて、頬に触れる。鼻、唇、顎のラインをたどって、再び顔を撫でていく。皮膚が固い。刀を握っていた名残だろうか。何度も何度も確かめるように触れられるのが、少しこそばゆくて変な気分になる。
まつ毛が意外と長いんだな、髪なんか絹糸みたいだ、なんて――そんなことをぼうと考えている視界の隅を、指が通り過ぎた。慌ててまぶたを閉ざせば、店主が何かを切り分ける音とともに、終宵の規則正しい呼吸が鼓膜を震わせるのがわかった。
「君、年齢よかいささか若く見られるのではないか?」
要するに童顔だと言っているらしい。眉間にわざと力を込めて、桑楡はしかめっ面をしてみせた。
「……それも言うなよ。学生記者かって舐められるんだ。こないだも学生風情が、ってお偉い先生に言われたばっかでさ」
そばかすがまだ残っていることは黙っていた。目が見えないからわからないだろう。きっと。
終宵はしばらくの間、桑楡の顔や身体を飽きもせずに触っていた。腕のつき方、首筋、肩。熱心に触れるたびに、終宵の髪が肩を滑り落ち、さやと音を立ててよい香りを散らす。
彼のいる夜は、こんなにも香るものなのか。そんな似合わぬことを考えてようやく、彼の手を引き剥がした。
「も、もういいだろ」
「ん。長々とすまなかったな。ありがとう」
終宵も満足したのだろう。店主に酒の追加を頼むと、また桑楡の頭を手探りで撫でる。その手は大きくて心地よい。
「君はまっすぐ前を見ている。未来を見つめて、必死であがいている。力の限りだ。君は生きている。僕は、君たちが生きようとあがく様が、とても美しく愛おしいと思うよ」
静かに語る終宵の声が、胸に、頭にしみ込んでくる。滑らかに紡がれる言葉は優しく、幼子へ向けるような慈愛がにじんでいた。
酔いに任せて、その手を取った。酒を飲んでいるにも関わらず、終宵の素肌はひやりと冷たい。頭がふわふわする。視界が揺らめいて水の中にいるようだ。そんな中でただひとり、終宵だけがくっきりとそこにいる。
「終宵やさしーなー……ずーっと俺のことほめててくんねーかなぁ……」
脳みそから溶け落ちてくる思考がそのまま口に出る。呂律もろくに回っていない。店主が水を差し出すが、いらないと首を振った。
「光喜くん、飲みすぎだ。気分はよかろうが、明日も仕事だろう」
仕事。仕事。仕事は嫌だ。誰も褒めてくれないし、これからもどうせネタを取られるにきまっている。
ああ、頭がぐるぐるする。ふわふわで、気持ちいい。隣にいる男にもたれかかって目を閉じた。いい香りがする。花のような、そうでないような。得も言われぬいい匂い。身体が熱くて、なのに隣の男はひんやりと冷たくて、なんだかずっとこうできたらいいなと思った。
*
空気が冷たい。襟から入り込んでくる夜の気配に身震いをし、桑楡は薄らと目を開けた。
「……ん、ぁー……?」
間抜けな音を吐き出して、緩く頭を振る。深く息を吸い込めば、冷たい夜気が肺に流れ込んだ。酒に浸っていた意識は少しだけはっきりしたものの、依然として目の前は陽炎のように揺らいでいる。
ここはどの辺だろう。遠くのほう、夜の色に溶けるかすかな灯りが見える。もともと大通りから外れた場所にあった屋台だから、そのまま裏路地を歩いているのかもしれない。
「ああ、光喜くん。目が覚めたかね?」
終宵の、笑みを含んだ声がする。低く滑らかで静謐な音が、夜に反響して硝子のように澄んでいる。
「ぇあ、よすがら……? あれ?」
だんだんと、酔っていた意識が覚醒していく。
闇に浸る無人の路地を、ふたりで並んで歩いていた。厳密に言えば、終宵の肩にすがりつきながら、足を引きずっていた、だが。
終宵もずいぶんと飲んでいたというのに、ほとんど酔った様子がない。いや、酔ってはいるが、足取りも体幹もしっかりしている。規則正しく刻まれる歩幅に、腰に差した刀の鍔が鳴いている。
「まったく、背負って歩いていたというに、途中で降りると言い出して。そのくせふらふらで危なっかしくて、転ぶ前にと肩を貸せばそのまま寝てしまうものだから」
「えぇ? あー、その、ご、ごめん……」
恥ずかしい。酒とは別の要因で顔が急速に火照って熱い。桑楡が恥じ入る様子を感じ取ったのか、終宵は愉快そうに笑って首を振った。
「ふふふ、別にいいさ。気にするな」
暗がりに慣れぬ視界は未だ揺れている。響く足音は周囲への反響なのか、それとも酔いどれの頭の中だけなのかもわからない。ただ、終宵の肩に回した腕は、しっかりとその着物を握りしめていた。
盲目の彼に支えてもらうなんて。桑楡は慌てて終宵の着物から指を外し、頭を振って足を踏みしめる。
「無理はいかんぞ。歩けるかね?」
「ん……大、丈夫、だ」
足はどうにか言うことを聞いてくれた。このやりとりの間で少し酔いも冷めたようだ。だが、終宵のしなやかな身体が、温度が離れたとき、桑楡はそれをどうしてだか惜しいと思った。
どうにか歩みを再開する。蒼い闇を泳ぐように進む終宵の長い髪が、その背でしなやかに躍っている。羽織った外套に刻まれた、翡翠の色が鮮やかだ。
あたりには誰もいない。静まり返った路地は、夜に沈みこんで深い眠りについている。人々と同じように、ただ静寂だけが横たわっている。
そういえば、いったいどこに向かっているのだろう。しなやかに伸びた綺麗な背中を、ぼうっと眺める桑楡の、数歩先を歩く終宵がふと肩越しに振り返る。
「光喜くん」
つと、腕が伸ばされる。夜にもなお鮮やかな、宝石のような赤い瞳。熱を孕んだその眼差しに、体が不意に動かなくなる。
鼓動が早まる。桑楡の唇に、指が触れた。皮手袋に包まれた固い指先が、頬を撫で、顎の輪郭を伝い、喉もとをゆっくりと伝っていく。ふ、と湿った吐息が落ち、夜風に乱れた髪が一筋頬へかかる。絹糸のようなその一筋を、桑楡はわずかに震える指で払ってやった。
終宵が笑う。その、艶やかな緋色の眼差しで。人ならざる者を思わせる鮮やかな紅に、桑楡は目を奪われる。
その、狭まった視界の端で、銀が舞った。
翻る。奔る。閃く。飛沫く赤。ほとばしる紅。赫。緋。あかいろが咲く。咲いて乱れて彼を彩る。象牙の肌を滴り汚し、滑らかな鋼を染めて汚す。
「あぁ――ぁはは、ふふ、ふ、あは、ははは」
熱の溶けてにじむため息。艶と微笑む薄い唇。こぼれるのは、初めて耳にする、恍惚とした笑い声だった。すがめられた瞳もまた目の覚めるような鮮やかな紅。たたえる笑みも彼岸の朱。
熱い。熱い。熱い。焼けつくような痛みと熱。紅い花。全身の血が引いていく。否。流れ出ていっている。どこから? 俺から。俺からだ。
俺の頸から飛沫をあげて。飛沫。汚す。笑み。ひらめく。散る。散る。散る。花弁だ。華だ。咲いて散らす。散る。散る。散らされる。散っていく。逃れられない。逃れることすらかなわない。走馬灯は見えない。見えるのはただ艶やかな夜の魔性だけ。
「なあ、光喜くん」
ひう。
桑楡は切り裂かれた喉から一声鳴いた。意識が力が血とともに流れてゆると広がる彼の腕へと折れて倒れた。濁る視界の一面に花。花。花が咲く。花の色は赤。赫。緋い色。彼のすべてが快楽に濡れていく。
「君が生きようとあがいてもがく、鮮やかで美しいその瞬間を」
「どうか僕に、魅せてはくれぬか」
穏やかな音に艶と熱。俺の知らない彼の声。彼の顔。蕩けるような甘い笑み。あまりにも嬉しそうで。あまりにも艶めかしい。扇情的で蠱惑的な笑み。人を斬り血に染まる魔性のなんとおぞましく美しいことか。
懐を探る。書き留めておきたい。この姿を。彼が腕を伸ばす。優しく優しく抱きしめられる。あやされる。背中を撫でる手。片手に刀。銀と朱を滴らせ。愛おし気に俺を撫でる。しなやかな身体を寄せられる。熱。冷たい彼が熱を帯びていた。噴き出している。喉から。染まっていく。真紅に。彼の瞳。潤んだその色。ぞっとするほどに鮮やかな色。
手から紙束が散って落ちる。頬を撫でる手。恍惚とした笑み。それから濡れた銀。綺麗だ。とても。うつくしい。この世ならざるものの。美。そしてひらめき引き裂く銀。意識は千切られ引き裂かれ、真っ黒に塗りつぶされて紅く途切れた。
提灯に描かれた筆の花が、ちらちらと影を散らしている。
最近流行りの光る石が入った硝子の灯篭ではなくて、昔ながらの蝋燭を使っているんですよ。
店主は穏やかな口調でそう語りながら、提灯に火を入れてふたりを招き入れた。
「……悪かったな、急に」
「いいや。気にしなくてもよいさ」
鼻をすすって視線を落とす桑楡に、終宵は常と変わらぬ微笑みを返す。
「それより、もう泣かなくてもよいのか?」
「も、もういいって! ちょっといろいろあって疲れてただけだから」
からかわれるような笑み含みの言葉に、恥ずかしさが煽られて頬が熱くなる。頭に触れようとしてくる手を慌ててどけてから、桑楡は出された徳利を猪口に注いだ。それを終宵に押し付けて、自分もまた酒をあおる。
舌先に染みる甘味と痺れるほど濃い酒精が溶け、鼻から芳醇な香りとともに抜けていく。
「ほう、いい酒だ」
隣でつぶやいている終宵の整った輪郭を、淡い光が柔らかく照らす。視覚が失われているからこそ、強く味や香りを感じ取れるのだろう。
蕎麦とうどんの屋台かと思っていたが、店主が出してくれたのは意外にも、最近流行りの煮込んだ牛筋だった。甘辛く煮つけた大根と牛の脂が絡みあい、酒がすすむ。
「……子どもの頃は、こんないいもの、めったに食べられなかったのにな」
ぽつりと落ちた桑楡の独り言が耳に入ったのだろう。酒で唇を湿らせていた終宵が、ふと首を傾け問いかける。
「君、出身はどこなのかね?」
「ああ……ここよりもっと下だよ。第三階層の、第二外殻」
今いる場所よりもっと治安が悪い、いつも薄暗いようなところだった。殺しは第一階層よりも多くはなかったけれど、決して住みよい場所とは言えなかった。薄暗くて寒くて、それでも第一外殻に比べたらマシだと、母親はいつも口癖のように言っていたことを覚えている。
桑楡は、父の顔を知らずに育った。母は第二外殻の外側にある工場で働いていて、幼い桑楡を女手一つで育ててくれた。母がやっとの思いで入れてくれた教育機関では、さんざんいじめられていたことしか覚えていない。そうしていつのころからか、上の階層で成り上がることが桑楡の夢になっていた。
「母君は元気なのか?」
くたびれた母の横顔を思い出す。いつもよれた作業着を着て、疲れていて――それでもひび割れた指で自分の頭を撫でていた。
「さあな……大喧嘩して、飛び出してきちゃったから……今は何してるんだろ」
酒を一口。喉を滑り落ちる香りと味を、どこか遠くで感じ取る。
「死ぬ気で勉強したけど、結局は行きたかったところには行けなくてさ。入ったところで、周りからは馬鹿にされてばっかで」
悔しかったのだ。だから有名になりたくて、周りを見返してやりたくて、臨時でたまたま働いていた新聞会社へと就職した。
「新聞なら、いろんな人が読むだろ? 俺の記事を読んだ誰かが、俺によって感情を操作される。そんな記事を書こうと思ったんだ」
大衆に影響を与えるような記事を書ける。自分が大衆の操作者になれる。そうすることで、すべてを見返してやれると思っていた。
――そんな奇跡など、こんな汚泥と無機物と異形の生き物で作られた世界でなんて、存在しているわけないのに。
「ま、そうそううまくいかないよな。ははは」
目元を覆う。手のひらに閉じ込めた薄闇がにじんで揺れる。そっと背中に添えられる手だけが優しい。
「……君は、まっすぐで不器用だな。さぞや苦労したことだろう。……こんなところで使いつぶされてすり減るのも、惜しいものだ」
静かに言葉をこぼした彼の低い声に、また目頭が熱くなった。
それから、たくさん話をした。これまではしなかったような、もっと踏み込んだこと――家族のこと。趣味のこと。友人のこと、仕事のこと。仕事のこと。仕事のこと。そんな他愛もないことを、湧き出るままに語り続けた。
愚痴を言うたびに、彼はうなずいて優しく頭を撫でては「いい子だな」と子どものように言うものだから、どうにも心地よさと同時にむず痒く感じてしまって困ってしまう。
「……で? あんたは?」
「うん?」
自分ばかり話すのも気が引けて、桑楡は皿と杯を重ねながらふと尋ねてみる。
「あんたは、楽しい? 毎日」
白く透き通る象牙の肌に、ほのかに朱がのぼっている。どこも映さぬ盲いた眼は、より艶やかに紅く濡れ、どこかを眺めながらかすかに笑った。
「僕は今、僕の好きなように生きているからな。それを楽しいというのなら、確かに楽しいのやもしれぬ」
自分の、好きなように生きるということ。それはどんな心地なのだろう。誰にも縛られず、何者にも影響されずにいるということ。たとえば、誰かの価値観とか、感情とか、そんなしがらみから解き放たれたところにあるということ。
「好きなように、か……」
それを人は自由と呼ぶのだろう。ヒト、モノ、環境、過去。ありとあらゆるものに縛り付けられた桑楡にとって、それはひどく羨ましいものに思えた。
「……なあ、軍人だったんだろ? つらかったか? それとも、それもあんたにとっては好きなように生きている、ってことだったのか?」
「さて――どうだったか」
答える男は飄々と、猪口を唇へと運んでいる。
「つらい、と言う者も多くいたよ。逃げる者も後を絶たなかった。しかし、僕にとっては居心地がよかった。とてもね」
他国との戦闘だけでなく、時折起きる国内の暴動でも、武力を用いた鎮圧を目的として投下される者たちのこと。世俗より切り離され、確実に『終わらせる』ために研ぎ澄まされ、ただ『終わらせる』ためだけに存在している者たちを、畏怖と恐怖をもって軍人と呼ぶ。
軍の規律は厳しいが、同時にずいぶんと極端な実力主義だという噂がある。確実に言えることは、弱い者は決して生き残れない組織であり、逆を言えば強い者だけがとどまり続けられる、ということだ。
弱肉強食、まったく別の世界に生きていたこの男がそう言うのならば、このどこか浮世離れした雰囲気にも納得がいく。
「……やっぱり変わってるな、あんた」
「そうかな?」
「そうだよ」
自覚は、どうやらないらしい。終宵は軽く首を傾けて、そうか、と不思議そうにつぶやいた。
艶を含んだ髪が滑り落ちる。柔らかな光が影をにじませ、整った顔立ちを彩っている。絶世の美男子――とは言い難いが、どうもこの男には奇妙な色香がある。ヒトを惹きつけてやまぬ、そう、上層のお偉方が狂ったように集めたりする、さながら和刀のような研ぎ澄まされた美しさがある。
それも血孕みの風吹きすさぶ戦場を駆けていたがゆえのものか。それともまた別の要因があるからか。ぼんやりとその横顔を眺めていた桑楡に、男がふと笑みを向ける。
「ああ、そういえば……君の名を聞いていなかったな」
「俺?」
「そう、君だ。ここでこうして対面しているのは、僕と、君だけだろう?」
男は声をつなぎ合わせながら、ゆっくりと皮の手袋を外した。骨の浮いた手、上気した肌に浮かび上がる細かな傷は、彼が戦場にいたことを生々しく示している。
その仕草が妙に様になっていて、どうにも落ち着かない心地になる。桑楡は抱え込んでいた徳利から酒を注ぎ足し、
「桑楡、光喜。二十六歳。独身」
請われてもいないのに年齢その他を添えて、彼の言葉に答えを返した。
「ふふ、そうか。ずいぶんと若いな」
「そうかぁ?」
「ああ。僕からしたら、まだ子どもだよ」
微笑む男の目元には、薄らとしわが刻まれていた。遠目からだと若く見えたが、こうしてみると自分よりも一回り以上年上なのだとわかる。
「あんたは、いくつなんだ?」
「さあて、どうだったかな。三十の終わり、四十のはじめ、まあそれぐらいだったと思うが」
言いながら、終宵は無造作に腕を伸ばして桑楡の頭に触れた。
「髪が固いな。くせ毛なんだろう。こんなに伸ばしっぱなしにしてはいかんぞ」
「言うなよ、気にしてるんだから」
それからするりと手は落ちて、頬に触れる。鼻、唇、顎のラインをたどって、再び顔を撫でていく。皮膚が固い。刀を握っていた名残だろうか。何度も何度も確かめるように触れられるのが、少しこそばゆくて変な気分になる。
まつ毛が意外と長いんだな、髪なんか絹糸みたいだ、なんて――そんなことをぼうと考えている視界の隅を、指が通り過ぎた。慌ててまぶたを閉ざせば、店主が何かを切り分ける音とともに、終宵の規則正しい呼吸が鼓膜を震わせるのがわかった。
「君、年齢よかいささか若く見られるのではないか?」
要するに童顔だと言っているらしい。眉間にわざと力を込めて、桑楡はしかめっ面をしてみせた。
「……それも言うなよ。学生記者かって舐められるんだ。こないだも学生風情が、ってお偉い先生に言われたばっかでさ」
そばかすがまだ残っていることは黙っていた。目が見えないからわからないだろう。きっと。
終宵はしばらくの間、桑楡の顔や身体を飽きもせずに触っていた。腕のつき方、首筋、肩。熱心に触れるたびに、終宵の髪が肩を滑り落ち、さやと音を立ててよい香りを散らす。
彼のいる夜は、こんなにも香るものなのか。そんな似合わぬことを考えてようやく、彼の手を引き剥がした。
「も、もういいだろ」
「ん。長々とすまなかったな。ありがとう」
終宵も満足したのだろう。店主に酒の追加を頼むと、また桑楡の頭を手探りで撫でる。その手は大きくて心地よい。
「君はまっすぐ前を見ている。未来を見つめて、必死であがいている。力の限りだ。君は生きている。僕は、君たちが生きようとあがく様が、とても美しく愛おしいと思うよ」
静かに語る終宵の声が、胸に、頭にしみ込んでくる。滑らかに紡がれる言葉は優しく、幼子へ向けるような慈愛がにじんでいた。
酔いに任せて、その手を取った。酒を飲んでいるにも関わらず、終宵の素肌はひやりと冷たい。頭がふわふわする。視界が揺らめいて水の中にいるようだ。そんな中でただひとり、終宵だけがくっきりとそこにいる。
「終宵やさしーなー……ずーっと俺のことほめててくんねーかなぁ……」
脳みそから溶け落ちてくる思考がそのまま口に出る。呂律もろくに回っていない。店主が水を差し出すが、いらないと首を振った。
「光喜くん、飲みすぎだ。気分はよかろうが、明日も仕事だろう」
仕事。仕事。仕事は嫌だ。誰も褒めてくれないし、これからもどうせネタを取られるにきまっている。
ああ、頭がぐるぐるする。ふわふわで、気持ちいい。隣にいる男にもたれかかって目を閉じた。いい香りがする。花のような、そうでないような。得も言われぬいい匂い。身体が熱くて、なのに隣の男はひんやりと冷たくて、なんだかずっとこうできたらいいなと思った。
*
空気が冷たい。襟から入り込んでくる夜の気配に身震いをし、桑楡は薄らと目を開けた。
「……ん、ぁー……?」
間抜けな音を吐き出して、緩く頭を振る。深く息を吸い込めば、冷たい夜気が肺に流れ込んだ。酒に浸っていた意識は少しだけはっきりしたものの、依然として目の前は陽炎のように揺らいでいる。
ここはどの辺だろう。遠くのほう、夜の色に溶けるかすかな灯りが見える。もともと大通りから外れた場所にあった屋台だから、そのまま裏路地を歩いているのかもしれない。
「ああ、光喜くん。目が覚めたかね?」
終宵の、笑みを含んだ声がする。低く滑らかで静謐な音が、夜に反響して硝子のように澄んでいる。
「ぇあ、よすがら……? あれ?」
だんだんと、酔っていた意識が覚醒していく。
闇に浸る無人の路地を、ふたりで並んで歩いていた。厳密に言えば、終宵の肩にすがりつきながら、足を引きずっていた、だが。
終宵もずいぶんと飲んでいたというのに、ほとんど酔った様子がない。いや、酔ってはいるが、足取りも体幹もしっかりしている。規則正しく刻まれる歩幅に、腰に差した刀の鍔が鳴いている。
「まったく、背負って歩いていたというに、途中で降りると言い出して。そのくせふらふらで危なっかしくて、転ぶ前にと肩を貸せばそのまま寝てしまうものだから」
「えぇ? あー、その、ご、ごめん……」
恥ずかしい。酒とは別の要因で顔が急速に火照って熱い。桑楡が恥じ入る様子を感じ取ったのか、終宵は愉快そうに笑って首を振った。
「ふふふ、別にいいさ。気にするな」
暗がりに慣れぬ視界は未だ揺れている。響く足音は周囲への反響なのか、それとも酔いどれの頭の中だけなのかもわからない。ただ、終宵の肩に回した腕は、しっかりとその着物を握りしめていた。
盲目の彼に支えてもらうなんて。桑楡は慌てて終宵の着物から指を外し、頭を振って足を踏みしめる。
「無理はいかんぞ。歩けるかね?」
「ん……大、丈夫、だ」
足はどうにか言うことを聞いてくれた。このやりとりの間で少し酔いも冷めたようだ。だが、終宵のしなやかな身体が、温度が離れたとき、桑楡はそれをどうしてだか惜しいと思った。
どうにか歩みを再開する。蒼い闇を泳ぐように進む終宵の長い髪が、その背でしなやかに躍っている。羽織った外套に刻まれた、翡翠の色が鮮やかだ。
あたりには誰もいない。静まり返った路地は、夜に沈みこんで深い眠りについている。人々と同じように、ただ静寂だけが横たわっている。
そういえば、いったいどこに向かっているのだろう。しなやかに伸びた綺麗な背中を、ぼうっと眺める桑楡の、数歩先を歩く終宵がふと肩越しに振り返る。
「光喜くん」
つと、腕が伸ばされる。夜にもなお鮮やかな、宝石のような赤い瞳。熱を孕んだその眼差しに、体が不意に動かなくなる。
鼓動が早まる。桑楡の唇に、指が触れた。皮手袋に包まれた固い指先が、頬を撫で、顎の輪郭を伝い、喉もとをゆっくりと伝っていく。ふ、と湿った吐息が落ち、夜風に乱れた髪が一筋頬へかかる。絹糸のようなその一筋を、桑楡はわずかに震える指で払ってやった。
終宵が笑う。その、艶やかな緋色の眼差しで。人ならざる者を思わせる鮮やかな紅に、桑楡は目を奪われる。
その、狭まった視界の端で、銀が舞った。
翻る。奔る。閃く。飛沫く赤。ほとばしる紅。赫。緋。あかいろが咲く。咲いて乱れて彼を彩る。象牙の肌を滴り汚し、滑らかな鋼を染めて汚す。
「あぁ――ぁはは、ふふ、ふ、あは、ははは」
熱の溶けてにじむため息。艶と微笑む薄い唇。こぼれるのは、初めて耳にする、恍惚とした笑い声だった。すがめられた瞳もまた目の覚めるような鮮やかな紅。たたえる笑みも彼岸の朱。
熱い。熱い。熱い。焼けつくような痛みと熱。紅い花。全身の血が引いていく。否。流れ出ていっている。どこから? 俺から。俺からだ。
俺の頸から飛沫をあげて。飛沫。汚す。笑み。ひらめく。散る。散る。散る。花弁だ。華だ。咲いて散らす。散る。散る。散らされる。散っていく。逃れられない。逃れることすらかなわない。走馬灯は見えない。見えるのはただ艶やかな夜の魔性だけ。
「なあ、光喜くん」
ひう。
桑楡は切り裂かれた喉から一声鳴いた。意識が力が血とともに流れてゆると広がる彼の腕へと折れて倒れた。濁る視界の一面に花。花。花が咲く。花の色は赤。赫。緋い色。彼のすべてが快楽に濡れていく。
「君が生きようとあがいてもがく、鮮やかで美しいその瞬間を」
「どうか僕に、魅せてはくれぬか」
穏やかな音に艶と熱。俺の知らない彼の声。彼の顔。蕩けるような甘い笑み。あまりにも嬉しそうで。あまりにも艶めかしい。扇情的で蠱惑的な笑み。人を斬り血に染まる魔性のなんとおぞましく美しいことか。
懐を探る。書き留めておきたい。この姿を。彼が腕を伸ばす。優しく優しく抱きしめられる。あやされる。背中を撫でる手。片手に刀。銀と朱を滴らせ。愛おし気に俺を撫でる。しなやかな身体を寄せられる。熱。冷たい彼が熱を帯びていた。噴き出している。喉から。染まっていく。真紅に。彼の瞳。潤んだその色。ぞっとするほどに鮮やかな色。
手から紙束が散って落ちる。頬を撫でる手。恍惚とした笑み。それから濡れた銀。綺麗だ。とても。うつくしい。この世ならざるものの。美。そしてひらめき引き裂く銀。意識は千切られ引き裂かれ、真っ黒に塗りつぶされて紅く途切れた。
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