2 / 6
第一章 英雄の娘
1
しおりを挟む
空は一面が蒼く、透明に透き通っていた。周囲は険しい山々が続き、その透明な蒼に黒々と厳かな姿を沈めている。いたる場所は緑で埋め尽くされ、綿雪のように可憐な花があちらこちらで揺れている。
「エオナねえちゃーん、飛竜がたくさん飛んでるよーっ」
弟のユクニが羊を追いながらそう叫んだ。言われるままに視線を動かせば、威厳のある山の稜線上に、空を飛ぶ生き物が複数見受けられる。
あれは飛竜。険しい岩山の中腹に巣を作り、群れで暮らす生き物だ。飛竜だけではなく、基本的に竜は群れを作って行動する。
人間が馬と同じように慣らして使うのは、飛竜と駆竜、水竜だけである。軍隊にも使われているという話だが、ほとんど山から出ないエオナにとっては、あまりぴんと来る話ではなかった。
「羊狙ってるのかなあ……」
羊たちを小屋に追い込んでから、ユクニは不安そうに呟く。遠くで鳴きかわす飛竜の声に耳を澄まし、エオナはちょっと笑って見せた。
「大丈夫。あの鳴き方は、家族が無事かを確認をしているだけ。狩りをするなら、もっと鋭く長く叫ぶよ」
「ほんと?」
「うん。そういうときは、またおすそ分けをしておけばいいだけだから」
小さな弟の頭をなでて、エオナは再び空を仰いだ。
このあたりの山々は、昔から飛竜が住み着いている。彼らは頭がいい。飢えると羊を捕っていってしまうのだが、羊を解体したときにいくらか肉や骨、内臓をわけておいてやれば、彼らも飼っている羊をむやみやたらに捕ったりはしない。
そのことも、竜の鳴き方も、教えてくれたのは母だ。母も、その母から聞いたという。ずっと昔から伝わる、飛竜とともにあるための教えだった。
見事な濃淡を帯びて続いていく空。優しい風に流されていく雲。ここは平和だ。便宜上その一部はイヴァノン国に属するらしいが、あまりにも山々が険しく人が少ないため、周辺の軍隊はまったくここを相手にしないという。
「エオナ、ユクニ、羊は迷子になってない?」
家の窓が開き、母が顔を出す。艶やかな光沢を含んだ蒼い髪は、幼い時分よりエオナの憧れだった。
「だいじょうぶだよ!」
ユクニが小さな胸を張り、得意げに鼻を鳴らす。それがどうにもおかしくて、エオナは思わず声を立てて笑った。
蒼い風が吹き抜け、エオナの蒼い長髪を梳いていく。後頭部でまとめ上げたそれは、嫌になるほど癖が強かった。唯一好きになれるのは、母と同じ蒼い髪だけだ。瞳の色は似ていない。エオナのそれは、母の部屋に飾られた湖の絵と同じ、碧を帯びた青色をしている。
ごう、と風がうなりをあげ、ゆったりしたふたりの服を身体に押し付けてくる。
「……風が強いね」
顔に流れてくる髪を軽く押さえ、エオナは呟く。
「姉ちゃん、俺、さらわれたりしないかな」
棒を振り回していた手を止めて、ユクニがまた心配そうに問いかけてくる。
「ユクニはいい子だから、連れていかれたりはしないよ」
エオナは笑って、もう一度弟の頭をなでてやる。こちらはまぶしい金色。瞳は母と同じ、淡い黄緑だった。不安げに揺らめくその中に、エオナが映っている。
「姉ちゃんが同じくらいだったときより、ユクニはずっといい子だもの。だから、大丈夫」
その言葉を聞き、ユクニはようやく安堵した風に抱きついてくるのだった。
弟はまだ八つになったばかり。かつて自分もそうだったように、これから少しずつ、母からいろいろなことを教わるだろう。ここは人里から離れているから、全部自分の力でやらなければならない。馬の乗り方や買い付けの方法、肉の捌き方、生きていくための知識や技術を学んでいく。
――甘やかさないようにしないといけないんだけど。
エオナは内心苦笑する。この間の食器作りも、あんまりにナイフの扱いが危なっかしすぎて、つい手を貸してしまった。年が八つも離れているせいか、どうも弟をかわいがりすぎている。気をつけなければならない。
不意に強い風が体をたたく。白い花弁が舞い上がり、くるくると螺旋を描いて昇っていく。花弁をさらう風も後を追いかける風も、同じように空に吸い込まれていった。
「姉ちゃん、」
ユクニの緊張した声が聞こえたのは、それとほぼ同時だった。
「どうしたの、ユクニ」
密着した小さな肢体は、明らかに震えている。視点は固定されて動いていない。エオナも顔を上げ、弟の見ている方角にじっと目をこらす。
くっきりと描かれた稜線の際、先ほどと同じ飛竜の群れがいる。影は先ほどよりも大きい――こちらに近づいている。わき目も振らず、大勢の仲間を従えて、疾駆の構えを見せている。
彼らがどこを目指しているかを理解したときには、すでに群れはエオナの頭上に影を落とすまで迫っていた。逃げなければ。わかっているのに、身体が動かない。エオナはただ弟を抱きしめ、凍りついたように立ちすくむしかできなかった。
風が激しく巻き上げられ、草を散らしていく。倒れないように足を踏みしめる。角が陽光を照り返したのか、銀の光が目の奥を刺す。翼のふちがきらめき、何度も翻る。飛竜は中空で体勢を整え、体の大きさで威圧してから一気に襲い掛かる。母から何度も聞いていたことが、脳裏をよぎった。そこから逃げる術は――ない。
姉ちゃん、と腕の中でユクニがささやく。泣いているのか、洟をすする音がした。答える代わりに力いっぱいに抱きしめる。目の前で威嚇する竜を真正面からにらみ据え、必死で逃れる方法を探した。冷や汗があごを伝う。
そうして見詰め合うことしばし。
「ほう! 勇敢な娘だ。さすがは彼女の娘だな」
女性の愉快そうな声音が、エオナの耳に届いた。竜が草地に着地する。それを確認したように、上空で旋回していた竜たちも次々と降り立っていく。
たくましく伸びる竜の首、ちょうどその付け根と肩の中間から、人影が音もなく滑り落ちてくる。
女、だった。年はおそらく四十の半ば。柔らかな波を作る髪は夕暮れの色、瞳はちょうど今の草原と同じ緑だった。背筋はまっすぐに伸ばされ、しかも身長が高い。縁取りの装飾が施された、金属の鎧を身にまとっている。真っ白いマントを羽織り、金の装飾で留めていた。
軍人だ、と身を硬くした瞬間、エオナの意識は二箇所へと捕まえられる。腰につるされた剣の鞘にも、両脇が大きく開いたスカートの裾にも、同じような文様が描かれている
盾と矛を抱いて翼を広げる、白い飛竜。見たことがある。否、現にいつも見ているものだ。暖炉のそば、絵画の横に誇らしげに飾られている、あの。
「あの槍と、同じだ」
こぼれた独り言は、女にも聞こえたらしかった。得心したようにひとつうなずき、エオナの前へと歩み寄る。弟を抱いたまま後ろに下がれば、女はかすかに苦笑した。
「イヴァノン三竜騎士団が一、飛竜騎士団の長の名にかけて、そなたたちに危害を加える真似はしない」
言いながら、彼女は腰の剣をはずす。それから飛竜の背に放り投げ、もう一度エオナを振り返った。滑らかな曲線を描く彼女の腰に、もう剣はない。
三竜騎士団。その噂は、ふもとの村に下りるたびに聞いている。イヴァノン国の誇る三つの騎士団の総称だ。駆竜騎士団、水竜騎士団、飛竜騎士団、彼らがそろっている限り、イヴァノンの未来は約束されているとまで言われている。
栄えある三竜騎士団の、団長。どうしてそんな人が、ここに来るのだろう。警戒を解かぬまま、エオナは黙って女をにらむ。女は再び、整った顔立ちに苦笑をにじませた。
「我々はヤーファと話をしにきたのだ。断じて争うつもりはない」
ヤーファ。母の名だ。ということは、母の知り合いなのだろうか。しかし、軍人の知り合いがいるという話は聞いたことがない。
エオナはどう反応すればよいのかわからず、うろたえて腕の中の弟を見た。ユクニはエオナにしがみつきながら、食い入るように女を見つめている。先ほどまでおびえていたとは思えない。
返す言葉に困り、エオナは黙って女に目を戻した。女もエオナに視線を置き、エオナの狼狽に気づいたのか、苦笑を微笑に昇華する。
「申し遅れた。私は三竜騎士団がひとつ、飛竜騎士団長ソフィア・バイゼル。ジークハルトの妹、と言えばすぐにわかる。取り次いではくれないか」
母には数年に一度、客人が訪ねてくることがある。きっとこの人も、母のそういった知り合いの妹なのだろう。それに、嘘を言っている風にも思えない、まっすぐな目をしている。悪い人ではないのかもしれない。
今度はエオナもうなずいた。ユクニの手を引き、家の中に入るよう促す。が、ユクニは頑として動きたがらなかった。ソフィアの乗っていた飛竜に興味がすべて奪われたようだ。
それに気が付いたのか、ソフィアは柔らかく笑ってうなずく。笑った顔は、どこか母が浮かべる優しい表情に似ていた。
「構わないよ。ディアドーラはおとなしいし、子供が何よりも大好きだからな。好きなだけ遊んでいるといい」
エオナが何かを言う前に、ソフィアは全部を把握していたらしい。ユクニはぱっと顔を輝かせ、
「ありがとう、おばちゃん!」
鞍と手綱をつけた飛竜の元へと駆けていった。竜もまた翼を広げ、歓迎するように首を子どもに擦り付ける。
「あの、ごめんなさい。弟が無茶言って……」
「なに、気にすることはない。私にも同じくらいの年頃の息子がいるのでね」
そう言うと、ソフィアはまぶしそうに目を細めるのだった。
「エオナねえちゃーん、飛竜がたくさん飛んでるよーっ」
弟のユクニが羊を追いながらそう叫んだ。言われるままに視線を動かせば、威厳のある山の稜線上に、空を飛ぶ生き物が複数見受けられる。
あれは飛竜。険しい岩山の中腹に巣を作り、群れで暮らす生き物だ。飛竜だけではなく、基本的に竜は群れを作って行動する。
人間が馬と同じように慣らして使うのは、飛竜と駆竜、水竜だけである。軍隊にも使われているという話だが、ほとんど山から出ないエオナにとっては、あまりぴんと来る話ではなかった。
「羊狙ってるのかなあ……」
羊たちを小屋に追い込んでから、ユクニは不安そうに呟く。遠くで鳴きかわす飛竜の声に耳を澄まし、エオナはちょっと笑って見せた。
「大丈夫。あの鳴き方は、家族が無事かを確認をしているだけ。狩りをするなら、もっと鋭く長く叫ぶよ」
「ほんと?」
「うん。そういうときは、またおすそ分けをしておけばいいだけだから」
小さな弟の頭をなでて、エオナは再び空を仰いだ。
このあたりの山々は、昔から飛竜が住み着いている。彼らは頭がいい。飢えると羊を捕っていってしまうのだが、羊を解体したときにいくらか肉や骨、内臓をわけておいてやれば、彼らも飼っている羊をむやみやたらに捕ったりはしない。
そのことも、竜の鳴き方も、教えてくれたのは母だ。母も、その母から聞いたという。ずっと昔から伝わる、飛竜とともにあるための教えだった。
見事な濃淡を帯びて続いていく空。優しい風に流されていく雲。ここは平和だ。便宜上その一部はイヴァノン国に属するらしいが、あまりにも山々が険しく人が少ないため、周辺の軍隊はまったくここを相手にしないという。
「エオナ、ユクニ、羊は迷子になってない?」
家の窓が開き、母が顔を出す。艶やかな光沢を含んだ蒼い髪は、幼い時分よりエオナの憧れだった。
「だいじょうぶだよ!」
ユクニが小さな胸を張り、得意げに鼻を鳴らす。それがどうにもおかしくて、エオナは思わず声を立てて笑った。
蒼い風が吹き抜け、エオナの蒼い長髪を梳いていく。後頭部でまとめ上げたそれは、嫌になるほど癖が強かった。唯一好きになれるのは、母と同じ蒼い髪だけだ。瞳の色は似ていない。エオナのそれは、母の部屋に飾られた湖の絵と同じ、碧を帯びた青色をしている。
ごう、と風がうなりをあげ、ゆったりしたふたりの服を身体に押し付けてくる。
「……風が強いね」
顔に流れてくる髪を軽く押さえ、エオナは呟く。
「姉ちゃん、俺、さらわれたりしないかな」
棒を振り回していた手を止めて、ユクニがまた心配そうに問いかけてくる。
「ユクニはいい子だから、連れていかれたりはしないよ」
エオナは笑って、もう一度弟の頭をなでてやる。こちらはまぶしい金色。瞳は母と同じ、淡い黄緑だった。不安げに揺らめくその中に、エオナが映っている。
「姉ちゃんが同じくらいだったときより、ユクニはずっといい子だもの。だから、大丈夫」
その言葉を聞き、ユクニはようやく安堵した風に抱きついてくるのだった。
弟はまだ八つになったばかり。かつて自分もそうだったように、これから少しずつ、母からいろいろなことを教わるだろう。ここは人里から離れているから、全部自分の力でやらなければならない。馬の乗り方や買い付けの方法、肉の捌き方、生きていくための知識や技術を学んでいく。
――甘やかさないようにしないといけないんだけど。
エオナは内心苦笑する。この間の食器作りも、あんまりにナイフの扱いが危なっかしすぎて、つい手を貸してしまった。年が八つも離れているせいか、どうも弟をかわいがりすぎている。気をつけなければならない。
不意に強い風が体をたたく。白い花弁が舞い上がり、くるくると螺旋を描いて昇っていく。花弁をさらう風も後を追いかける風も、同じように空に吸い込まれていった。
「姉ちゃん、」
ユクニの緊張した声が聞こえたのは、それとほぼ同時だった。
「どうしたの、ユクニ」
密着した小さな肢体は、明らかに震えている。視点は固定されて動いていない。エオナも顔を上げ、弟の見ている方角にじっと目をこらす。
くっきりと描かれた稜線の際、先ほどと同じ飛竜の群れがいる。影は先ほどよりも大きい――こちらに近づいている。わき目も振らず、大勢の仲間を従えて、疾駆の構えを見せている。
彼らがどこを目指しているかを理解したときには、すでに群れはエオナの頭上に影を落とすまで迫っていた。逃げなければ。わかっているのに、身体が動かない。エオナはただ弟を抱きしめ、凍りついたように立ちすくむしかできなかった。
風が激しく巻き上げられ、草を散らしていく。倒れないように足を踏みしめる。角が陽光を照り返したのか、銀の光が目の奥を刺す。翼のふちがきらめき、何度も翻る。飛竜は中空で体勢を整え、体の大きさで威圧してから一気に襲い掛かる。母から何度も聞いていたことが、脳裏をよぎった。そこから逃げる術は――ない。
姉ちゃん、と腕の中でユクニがささやく。泣いているのか、洟をすする音がした。答える代わりに力いっぱいに抱きしめる。目の前で威嚇する竜を真正面からにらみ据え、必死で逃れる方法を探した。冷や汗があごを伝う。
そうして見詰め合うことしばし。
「ほう! 勇敢な娘だ。さすがは彼女の娘だな」
女性の愉快そうな声音が、エオナの耳に届いた。竜が草地に着地する。それを確認したように、上空で旋回していた竜たちも次々と降り立っていく。
たくましく伸びる竜の首、ちょうどその付け根と肩の中間から、人影が音もなく滑り落ちてくる。
女、だった。年はおそらく四十の半ば。柔らかな波を作る髪は夕暮れの色、瞳はちょうど今の草原と同じ緑だった。背筋はまっすぐに伸ばされ、しかも身長が高い。縁取りの装飾が施された、金属の鎧を身にまとっている。真っ白いマントを羽織り、金の装飾で留めていた。
軍人だ、と身を硬くした瞬間、エオナの意識は二箇所へと捕まえられる。腰につるされた剣の鞘にも、両脇が大きく開いたスカートの裾にも、同じような文様が描かれている
盾と矛を抱いて翼を広げる、白い飛竜。見たことがある。否、現にいつも見ているものだ。暖炉のそば、絵画の横に誇らしげに飾られている、あの。
「あの槍と、同じだ」
こぼれた独り言は、女にも聞こえたらしかった。得心したようにひとつうなずき、エオナの前へと歩み寄る。弟を抱いたまま後ろに下がれば、女はかすかに苦笑した。
「イヴァノン三竜騎士団が一、飛竜騎士団の長の名にかけて、そなたたちに危害を加える真似はしない」
言いながら、彼女は腰の剣をはずす。それから飛竜の背に放り投げ、もう一度エオナを振り返った。滑らかな曲線を描く彼女の腰に、もう剣はない。
三竜騎士団。その噂は、ふもとの村に下りるたびに聞いている。イヴァノン国の誇る三つの騎士団の総称だ。駆竜騎士団、水竜騎士団、飛竜騎士団、彼らがそろっている限り、イヴァノンの未来は約束されているとまで言われている。
栄えある三竜騎士団の、団長。どうしてそんな人が、ここに来るのだろう。警戒を解かぬまま、エオナは黙って女をにらむ。女は再び、整った顔立ちに苦笑をにじませた。
「我々はヤーファと話をしにきたのだ。断じて争うつもりはない」
ヤーファ。母の名だ。ということは、母の知り合いなのだろうか。しかし、軍人の知り合いがいるという話は聞いたことがない。
エオナはどう反応すればよいのかわからず、うろたえて腕の中の弟を見た。ユクニはエオナにしがみつきながら、食い入るように女を見つめている。先ほどまでおびえていたとは思えない。
返す言葉に困り、エオナは黙って女に目を戻した。女もエオナに視線を置き、エオナの狼狽に気づいたのか、苦笑を微笑に昇華する。
「申し遅れた。私は三竜騎士団がひとつ、飛竜騎士団長ソフィア・バイゼル。ジークハルトの妹、と言えばすぐにわかる。取り次いではくれないか」
母には数年に一度、客人が訪ねてくることがある。きっとこの人も、母のそういった知り合いの妹なのだろう。それに、嘘を言っている風にも思えない、まっすぐな目をしている。悪い人ではないのかもしれない。
今度はエオナもうなずいた。ユクニの手を引き、家の中に入るよう促す。が、ユクニは頑として動きたがらなかった。ソフィアの乗っていた飛竜に興味がすべて奪われたようだ。
それに気が付いたのか、ソフィアは柔らかく笑ってうなずく。笑った顔は、どこか母が浮かべる優しい表情に似ていた。
「構わないよ。ディアドーラはおとなしいし、子供が何よりも大好きだからな。好きなだけ遊んでいるといい」
エオナが何かを言う前に、ソフィアは全部を把握していたらしい。ユクニはぱっと顔を輝かせ、
「ありがとう、おばちゃん!」
鞍と手綱をつけた飛竜の元へと駆けていった。竜もまた翼を広げ、歓迎するように首を子どもに擦り付ける。
「あの、ごめんなさい。弟が無茶言って……」
「なに、気にすることはない。私にも同じくらいの年頃の息子がいるのでね」
そう言うと、ソフィアはまぶしそうに目を細めるのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる