ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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084 依頼完了

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 ジュードとカルザスの助力もあって、タイガーウルフの討伐依頼を無事に達成した俺たちはニオレングの街のギルドに戻って来た。
 ギルドの入口をくぐると、賑やかな声や武具が擦れる音が耳を包む。掲示板の前には新たな依頼を探す冒険者たちが群れ、受付カウンターには討伐報告をしようとする列ができている。俺とジュードで列に並び、三人には手近なスペースで待っていてもらう。

「タイガーウルフの討伐が終わったので、報告に来ました」

 少し年配の女性職員に告げると、解体が済んでいるか問われるので、収納バッグに丸ごと入れている旨を伝える。

「では受付番号をお渡ししますので、奥の倉庫へどうぞ」

 討伐した魔物を解体するための倉庫に案内されるので、マリーたちも呼んで合流する。
 倉庫の雰囲気は大概どこのギルドも一緒だ。ちょっと血生臭いし、解体職員が慌ただしく動いている。空いている区画に行き、職員と挨拶を交わす。

「タイガーウルフの解体だね。数は……十体か」
「あぁ、よろしく頼むよ」

 そう言ってマジックバッグから取り出したように見えるよう、収納からタイガーウルフを十体取り出す。うち一体はセフィリアの風魔術で上半身と下半身がばっさり別れてしまっているが、まぁ、大丈夫だろう。

「あ、あの。一体分でいいので、解体しているところを見せてもらえませんか? フォレストウルフは解体したことあるのですが、タイガーウルフはなくて……」

 マリーがそう申し出ると、職員はあっさり承諾してくれた。

「プロの技を間近で見るのはいい勉強になるからな。俺らは先に戻るけど、セフィリアの姐さんはどうする?」
「私も戻ろうかしら。ここの臭いはちょっとね」

 三人が倉庫を後にする一方、職員さんはタイガーウルフの一体を作業台に載せた。大型犬よりもう一回り大きいであろうタイガーウルフをあっさり担いでしまうなんて、やっぱり力持ちでないと解体職員なんてできないんだろうか。

「じゃあ、始めるぞ」

 職員さんは手際よくタイガーウルフを台の上に固定し、解体用のナイフを取り出す。質の良さそうな鉄を使ったナイフだ。手入れも丹念にしているのだろう。

「まずは尻尾の切り離しからだ。討伐証明部位だからな。ここを間違えたらギルドに認められない」

 そう言いながら、尻尾を的確に切り離す。討伐証明部位は錬金術の素材として活用されることが多いそうだ。

「他に素材になるのは牙や毛皮だ。肉は固くて美味くないが、干し肉に加工すれば食えないこともない」

 説明を続けながらも手は止めず、あれよあれよとタイガーウルフが解体されていく。捨てる部位は内臓くらいだそうだ。骨も犬狼骨の剣の素材みたいに、錬金素材として重宝されるそうだ。

「すごい……無駄が一切ない……」

 マリーが目を輝かせながら作業を見つめている。職員さんがちらりと彼女に目を向け、口元にわずかな笑みを浮かべた。

「嬢ちゃん、興味があるなら覚えていけ。解体は知識と経験がものを言う仕事だ」
「はい! ぜひお願いします!」

 マリーが力強く頷くと、職員さんは二体目の作業を一つ一つの工程を丁寧に説明しながらマリーにさせた。

「ここが難しいんだ。筋肉と腱が絡みやすいから、力加減を間違えると素材が台無しになる」
「なるほど……!」

 マリーは真剣な表情で学びながら、自分のナイフをタイガーウルフに通していく。やはりフォレストウルフより毛皮が厚く、筋肉も発達しているらしい。

「なかなか上出来じゃないか。あとの解体はこちらに任せてくれ。終わったら鑑定に回すから、報酬は明日だな」
「はい、ありがとうございました」

 二体目の解体も終わったところで、俺たちも倉庫を後にする。

「いや、いい経験だったな。マリー」

 俺が声をかけると、彼女は満面の笑みを浮かべた。

「はい! 次は私がちゃんと解体できるように頑張ります!」

 そんな彼女の言葉に、俺たちは自然と笑みを交わした。今日の討伐は、戦いだけでなく新しい知識を得る機会でもあったようだ。
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感想 3

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みんなの感想(3件)

はっぴ
2024.08.28 はっぴ

ん?エッグベアの伝令はしないのですか?

解除
Conanlove
2023.05.11 Conanlove

コーンポタージュは美味しいですね~😄早くレベルアップして、いろいろグレードアップして下さいね~続き楽しみに待っています~頑張って下さいね~😄

解除
Conanlove
2023.05.02 Conanlove

面白いです。続き楽しみに待っていますね!頑張って下さいね~😄

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