ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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083 魔法剣

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「にしても、さっきの剣技は変わってたな。魔法剣っていうのか?」

 タイガーウルフを収納した俺にカルザスが声をかけてきた。俺も出来るという確信があって放ったはいいが、実際に魔法剣というスキルを体得したのか、ステータス画面を見て確認したいのはやまやまだがカルザスとジュードに見られては説明が手間なので見れない。

「どうなんだろうな、今のは即席で思いついただけだから、正直自信はないよ」

 俺は苦笑いを浮かべながら、カルザスの問いを煙に巻く。魔法剣――水之初伝と名付けた一撃が、たまたま上手くいったのか、それとも本当にスキルとして成り立つものなのか……。自分でもはっきり分かっていない。

「でも、剣に水の魔法をまとわせるなんて俺は初めて見たぜ。ああいうの、もっと練習して極めたら戦力になるんじゃないか?」

 カルザスが楽しそうに言う。彼は戦闘中は冷静な分析役に徹しているが、戦いが終わるとこうしてどこかおちゃらけた一面を見せる。

「なかなかイカしてたよな。マリーちゃんもそう思うだろう?」
「あ、はい! レックスさんカッコよかったです」

 マリーにそう言われるとなんだか面映ゆい。

「タイガーウルフ相手にも十分通用する威力だったな。もし次にもっと強い敵とやり合うことになったとき、こういう技が切り札になるかもしれないぞ」

 ジュードも同調するように頷く。俺の一撃を見て、少しは期待してくれたようだ。

「まあ、研究する余裕があればな。とりあえず、今は依頼を片付けることに集中しよう」

 俺がそう返すと、ジュードとカルザスも軽く肩をすくめて、俺たちは再び草原の奥へと進むことにした。

 草原を歩きながら、ふとさっきの戦闘を振り返る。剣に魔力を込めたとき、長剣に練り込まれた蒼石が独特の光を放ったのを思い出す。あの瞬間、剣そのものが水の魔法に呼応したような感覚があった。まるでこの剣が俺に「やってみろ」と語りかけてくるような……そんな不思議な感覚だ。

「エルフには多少なりとも剣士がいるわ」

 ふと周囲を警戒しつつもセフィリアが声をかけてきた。エルフと言えば森の民で、セフィリアみたいに弓を使うイメージがあるが、一方でエルフとは明言されていないけど耳の尖ったゲーム主人公のイメージとして剣を使うのも分かる。

「ひょっとして、風の魔法剣を使うエルフがいるのか?」
「翠石を媒介にすれば可能だと思うわ。レックスがさっき使った剣技も蒼石を媒介にしているだろうし」

 水魔法を覚えようと思ったのはマイホームにいなくても、水が自由に使えたら便利だろうなという思いつきだったけれど、こうして運よく水属性を強化する剣を手に入れ、魔法剣が使えるようになった。思わず右手をぎゅっと握り込む。数値で見てきた以上に、成長を実感できて嬉しい。

「あまり乱発して魔力切れを起こさないようにね」

 マリーたちが遠目にタイガーウルフの群れを発見したようで、俺は剣を抜いて戦闘態勢に移行する。どうやら五頭が集まっているらしく、今度はジュードとカルザスも戦闘に加わってくれるようで、二人も臨戦態勢だ。

「まぁ、俺たちのリハビリも兼ねさせてもらおうか」
「応とも」

 カルザスが素早い動きと、短剣による斬と突のコンビネーションで攪乱し、ジュードが大剣の一撃でタイガーウルフを確実に仕留める。連携の巧さもさることながら、ジュードの大剣捌きは剣に振り回されていない感じがしてすごい。大きな剣をコンパクトに振っている感じだ。

「学ぶ点は多そうだな」

 俺とマリーとセフィリアで三体のタイガーウルフを討伐するより、よっぽど早く五人で五体のタイガーウルフを討伐できた。

「残り二体か。油断せずいこう」

 再び収納に納め、街へ戻るルートでタイガーウルフを探すことにした。
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