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082 VSタイガーウルフ
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ギルドで依頼を受けることになった俺たちだが、マリーとカルザスが選んできた依頼はタイガーウルフという魔物の討伐だった。
「タイガーウルフって……タイガーなのか? ウルフなのか?」
「タイガー柄のウルフってところだな」
ジュードにそう言われて俺は思わず秋田犬の姿を想像した。確か、虎毛と呼ばれる柄の毛並みの秋田犬がいたような気がする。ようは赤茶色と黒っぽい色で縞模様があるのだろう。これまで俺たちが戦ったウルフと言えば……そう、フォレストウルフだ。
「フォレストウルフとはどう違うんだ?」
さっきの質問に続けてジュードが答えてくれた。どうやらフォレストウルフよりも一回りほど大きく筋肉質だという。牙や爪よりも俊敏な動きから繰り出される体当たりが脅威だという。総じて強さで言えば五級の中でもほどほどの強さだという。
「どのみち、五級魔物の討伐もある程度やらないといけないからな。ついでに何か採取系があればよかったんだが、ちょうどいいものがなくてな」
カルザスが頬をかきながらそう話す。俺たちは装備に不備がないか確認してから、ニオレングの東門から草原へと出る。他にも何組か冒険者パーティがいることが見える。草原をしばらく歩くと、ジュードが手を挙げて進行を止めた。マリーもカルザスも武器を構えて戦闘態勢に入る。俺も蒼石錬鉄の長剣を構える。実戦での運用は初めてだ……。
「来るぞ、あれがタイガーウルフだ」
会敵したのは三体。依頼達成には十体倒す必要がある。まずはセフィリアが矢を放つ。三体いたうちの真ん中のタイガーウルフに命中し、三体とも牙を剥いて周囲を警戒する。どうやらこちらにはまだ気づいていないようだが……それも僅かな間であった。すぐにこちら目掛けて駆け出してくる。確かに早い、だがこちらも詠唱は済んでいる。
「リキッドボム!!」
「ファイアジャベリン!!」
水の塊を頭部に叩きつけ、炸裂させる。さらにマリーが放った火の槍がタイガーウルフの前足、肩あたりに突き刺さる。今回の討伐、ジュードとカルザスはあくまでサポートに徹する。だが、サポートしてくれる人がいるというだけで、けっこう安心して戦えるものだ。
「くらえ、アッパースラストォ!!」
振り上げる剣技を放つには少し剣が重い。だが顎下を狙った一撃は確実に命中し、タイガーウルフの一体を空中に投げ出す。
「疾風の刃、飛来せよ――ウィンドカッター!!」
そこに放たれたセフィリアの魔法によってタイガーウルフの上半身と下半身がお別れする。怯む二体のうち、右側を俺が、左側をマリーが受け持つ。右側のタイガーウルフが繰り出す爪を剣で受け止め、その腹部に突きを放つ。だが相手はマッシブなタイガーウルフ、深々と突き刺さることはなく、後退したタイガーウルフと距離を生まれる。後ろ足にぐっと力を込めて、こちらに突進してくるタイガーウルフを、盾でなんとか受け止める。左手が痺れるほどの突進に、よろめく俺にさらに爪で攻撃をしてくるタイガーウルフ。剣を合わせて受け止め、はじき返して体勢を整える。
「やっぱりフォレストウルフより強いな」
真正面を避けて右手側に回ろうとするものの、全身をバネのように胴体からこちらに体当たりをかましてくる。ならばその勢いを利用する! 剣を地面に突き立てて、タイガーウルフの突進が刃にぶつかるように踏ん張る。
「ギャイイン!」
ぐっと押し込まれるような感覚が手に伝わってくる。
「水よ、集いて弾丸となれ――ウォーターバレット!!」
至近距離で放たれた水の弾丸がタイガーウルフの傷口を穿つ。長剣に練り込まれた蒼石が淡いブルーに輝く。ふと閃いて俺は左手に水の球を作り剣の刃にまとわせる。
水属性と相性のいいこの剣なら……出来る!
「魔法剣・水之初伝!!」
胴を斬り裂いた一撃でタイガーウルフが沈む。魔力消費が激しいのが、ぐっと疲れに襲われる。ふとマリーのいる方を向くと、体当たりや牙を回避して剣による反撃を繰り返す。マリーも確実にダメージを与え続けている。次第にタイガーウルフの動きも緩慢になり、マリーは剣をタイガーウルフの上あごに突き刺した。引き抜くと血をまき散らしながらタイガーウルフは沈黙した。
「三体くらいなら問題ないみたいだな。さっさと処理しないと血の臭いで他の魔物も来ちまう。処置を――」
「取り敢えず、収納しておくよ」
解体はマリーにやってもらうか、ギルドに丸投げするか、全部倒した後の体調と相談しよう。
「タイガーウルフって……タイガーなのか? ウルフなのか?」
「タイガー柄のウルフってところだな」
ジュードにそう言われて俺は思わず秋田犬の姿を想像した。確か、虎毛と呼ばれる柄の毛並みの秋田犬がいたような気がする。ようは赤茶色と黒っぽい色で縞模様があるのだろう。これまで俺たちが戦ったウルフと言えば……そう、フォレストウルフだ。
「フォレストウルフとはどう違うんだ?」
さっきの質問に続けてジュードが答えてくれた。どうやらフォレストウルフよりも一回りほど大きく筋肉質だという。牙や爪よりも俊敏な動きから繰り出される体当たりが脅威だという。総じて強さで言えば五級の中でもほどほどの強さだという。
「どのみち、五級魔物の討伐もある程度やらないといけないからな。ついでに何か採取系があればよかったんだが、ちょうどいいものがなくてな」
カルザスが頬をかきながらそう話す。俺たちは装備に不備がないか確認してから、ニオレングの東門から草原へと出る。他にも何組か冒険者パーティがいることが見える。草原をしばらく歩くと、ジュードが手を挙げて進行を止めた。マリーもカルザスも武器を構えて戦闘態勢に入る。俺も蒼石錬鉄の長剣を構える。実戦での運用は初めてだ……。
「来るぞ、あれがタイガーウルフだ」
会敵したのは三体。依頼達成には十体倒す必要がある。まずはセフィリアが矢を放つ。三体いたうちの真ん中のタイガーウルフに命中し、三体とも牙を剥いて周囲を警戒する。どうやらこちらにはまだ気づいていないようだが……それも僅かな間であった。すぐにこちら目掛けて駆け出してくる。確かに早い、だがこちらも詠唱は済んでいる。
「リキッドボム!!」
「ファイアジャベリン!!」
水の塊を頭部に叩きつけ、炸裂させる。さらにマリーが放った火の槍がタイガーウルフの前足、肩あたりに突き刺さる。今回の討伐、ジュードとカルザスはあくまでサポートに徹する。だが、サポートしてくれる人がいるというだけで、けっこう安心して戦えるものだ。
「くらえ、アッパースラストォ!!」
振り上げる剣技を放つには少し剣が重い。だが顎下を狙った一撃は確実に命中し、タイガーウルフの一体を空中に投げ出す。
「疾風の刃、飛来せよ――ウィンドカッター!!」
そこに放たれたセフィリアの魔法によってタイガーウルフの上半身と下半身がお別れする。怯む二体のうち、右側を俺が、左側をマリーが受け持つ。右側のタイガーウルフが繰り出す爪を剣で受け止め、その腹部に突きを放つ。だが相手はマッシブなタイガーウルフ、深々と突き刺さることはなく、後退したタイガーウルフと距離を生まれる。後ろ足にぐっと力を込めて、こちらに突進してくるタイガーウルフを、盾でなんとか受け止める。左手が痺れるほどの突進に、よろめく俺にさらに爪で攻撃をしてくるタイガーウルフ。剣を合わせて受け止め、はじき返して体勢を整える。
「やっぱりフォレストウルフより強いな」
真正面を避けて右手側に回ろうとするものの、全身をバネのように胴体からこちらに体当たりをかましてくる。ならばその勢いを利用する! 剣を地面に突き立てて、タイガーウルフの突進が刃にぶつかるように踏ん張る。
「ギャイイン!」
ぐっと押し込まれるような感覚が手に伝わってくる。
「水よ、集いて弾丸となれ――ウォーターバレット!!」
至近距離で放たれた水の弾丸がタイガーウルフの傷口を穿つ。長剣に練り込まれた蒼石が淡いブルーに輝く。ふと閃いて俺は左手に水の球を作り剣の刃にまとわせる。
水属性と相性のいいこの剣なら……出来る!
「魔法剣・水之初伝!!」
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「三体くらいなら問題ないみたいだな。さっさと処理しないと血の臭いで他の魔物も来ちまう。処置を――」
「取り敢えず、収納しておくよ」
解体はマリーにやってもらうか、ギルドに丸投げするか、全部倒した後の体調と相談しよう。
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