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080 再び塩を売ろう
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ジュードとカルザスを連れてサトン村まで行くということは、やっぱりマイホームは使わないということになる。取り敢えず簡単な携行食糧や調理がしやすそうな野菜、そしてポーションの類を大通りの店で買いそろえたのだが、そこでふと俺は大事なことを思い出した。
「商人ギルドってこの通りであってるか?」
「あぁ、そうだが。レックス、お前さん商人ギルドにも登録してるのか?」
ジュードに問われて頷く。ニオレングの街はフレッサの街と同格の都市だ。ここで塩を売らずにどこで売ると言うんだ。俺は買っておいた小さい革袋に入れた塩を取り出し、ジュードとカルザスに見せてやる。
「この塩を商人ギルドで買ってもらおうと思ってな」
「ほう、ずいぶん白いな」
「これはけっこういい値がつくんじゃないか?」
二人からもお墨付きをもらった。そんな二人には、セフィリアと一緒に宿へ先に帰ってもらうことにした。俺はマリーと二人、商人ギルドの扉をくぐり、手近なカウンターで塩の売却を持ちかけた。
「ほう、塩ですか……拝見しますね。この白さ、それにさらさらとした粒……岩塩ではなく、海水を精製したものですか? 錬金では……ない、かな。ほんの少しでかまいません、味見しても?」
フレッサの商人ギルドでは受付の人ではなくギルマスを呼び出したが、どうやら今回は受付のお兄さんが対応してくれるようだ。お兄さんといっても、俺より少し年上だと思うが。そんな彼に、俺は味見は少しだけですよと言って許可を出した。
「……しょっぱい」
「当然でしょう。これは砂糖ではなく塩なのですから」
「えぇ、ですが、そうですね……邪魔になるような苦みやえぐみもなく、塩気が強く主張している。ただ……遅れて感じる美味さのようなものが、少し物足りない。いや、とはいえこれは品質的にかなり上物です。これで全量ですか?」
……もう少しなら出せる。ちらっとマリーにアイコンタクトを試みる。
「この量に対していくら提示してもらえるか、それを踏まえて検討させてください」
マリーのナイスなアシストに、受付のお兄さんは首を横に振った。
「いえ、むしろこの量がちょうどいいのです。もとよりニオレングの街は岩塩が流通していますし、ダンジョンからも塩が手に入ります。そちらは錬金術師が不純物を取り除かなければ使えないものですが。とはいえ、この塩は錬金術で生成されたものより、さらに不純物がない純粋な塩に思えます。小金貨1枚と大銀貨6枚でいかがでしょうか」
小金貨1枚と大銀貨6枚、フレッサでの買い取り価格より高い。ここは売却を――
「小金貨2枚にはなりませんか? ここはファース湖から採れる魚を塩焼きで食べるため需要は大きいはずです。それに穀醤を作るのにも塩を使うと聞いたことがありますが」
「だからこそ岩塩を安定して入手しているわけです。そうですね、大銀貨8枚なら……上司に叱られない範囲ですかね」
「分かりました」
マリーの目配せに、俺が首肯する。俺は塩の入った小袋を手渡し、代わりに小金貨1枚と大銀貨8枚を受け取る。グラムでいえば100g程度だというのに、安定して収入をもたらしてくれる塩……。本当に助かる。またマイホームポイントを消費して生成しておかねば。
「いい商売ができました。ありがとうございます」
ほくほく顔の俺たちは三人が待つ宿屋へ向かうのだった。
「商人ギルドってこの通りであってるか?」
「あぁ、そうだが。レックス、お前さん商人ギルドにも登録してるのか?」
ジュードに問われて頷く。ニオレングの街はフレッサの街と同格の都市だ。ここで塩を売らずにどこで売ると言うんだ。俺は買っておいた小さい革袋に入れた塩を取り出し、ジュードとカルザスに見せてやる。
「この塩を商人ギルドで買ってもらおうと思ってな」
「ほう、ずいぶん白いな」
「これはけっこういい値がつくんじゃないか?」
二人からもお墨付きをもらった。そんな二人には、セフィリアと一緒に宿へ先に帰ってもらうことにした。俺はマリーと二人、商人ギルドの扉をくぐり、手近なカウンターで塩の売却を持ちかけた。
「ほう、塩ですか……拝見しますね。この白さ、それにさらさらとした粒……岩塩ではなく、海水を精製したものですか? 錬金では……ない、かな。ほんの少しでかまいません、味見しても?」
フレッサの商人ギルドでは受付の人ではなくギルマスを呼び出したが、どうやら今回は受付のお兄さんが対応してくれるようだ。お兄さんといっても、俺より少し年上だと思うが。そんな彼に、俺は味見は少しだけですよと言って許可を出した。
「……しょっぱい」
「当然でしょう。これは砂糖ではなく塩なのですから」
「えぇ、ですが、そうですね……邪魔になるような苦みやえぐみもなく、塩気が強く主張している。ただ……遅れて感じる美味さのようなものが、少し物足りない。いや、とはいえこれは品質的にかなり上物です。これで全量ですか?」
……もう少しなら出せる。ちらっとマリーにアイコンタクトを試みる。
「この量に対していくら提示してもらえるか、それを踏まえて検討させてください」
マリーのナイスなアシストに、受付のお兄さんは首を横に振った。
「いえ、むしろこの量がちょうどいいのです。もとよりニオレングの街は岩塩が流通していますし、ダンジョンからも塩が手に入ります。そちらは錬金術師が不純物を取り除かなければ使えないものですが。とはいえ、この塩は錬金術で生成されたものより、さらに不純物がない純粋な塩に思えます。小金貨1枚と大銀貨6枚でいかがでしょうか」
小金貨1枚と大銀貨6枚、フレッサでの買い取り価格より高い。ここは売却を――
「小金貨2枚にはなりませんか? ここはファース湖から採れる魚を塩焼きで食べるため需要は大きいはずです。それに穀醤を作るのにも塩を使うと聞いたことがありますが」
「だからこそ岩塩を安定して入手しているわけです。そうですね、大銀貨8枚なら……上司に叱られない範囲ですかね」
「分かりました」
マリーの目配せに、俺が首肯する。俺は塩の入った小袋を手渡し、代わりに小金貨1枚と大銀貨8枚を受け取る。グラムでいえば100g程度だというのに、安定して収入をもたらしてくれる塩……。本当に助かる。またマイホームポイントを消費して生成しておかねば。
「いい商売ができました。ありがとうございます」
ほくほく顔の俺たちは三人が待つ宿屋へ向かうのだった。
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