80 / 84
080 再び塩を売ろう
しおりを挟む
ジュードとカルザスを連れてサトン村まで行くということは、やっぱりマイホームは使わないということになる。取り敢えず簡単な携行食糧や調理がしやすそうな野菜、そしてポーションの類を大通りの店で買いそろえたのだが、そこでふと俺は大事なことを思い出した。
「商人ギルドってこの通りであってるか?」
「あぁ、そうだが。レックス、お前さん商人ギルドにも登録してるのか?」
ジュードに問われて頷く。ニオレングの街はフレッサの街と同格の都市だ。ここで塩を売らずにどこで売ると言うんだ。俺は買っておいた小さい革袋に入れた塩を取り出し、ジュードとカルザスに見せてやる。
「この塩を商人ギルドで買ってもらおうと思ってな」
「ほう、ずいぶん白いな」
「これはけっこういい値がつくんじゃないか?」
二人からもお墨付きをもらった。そんな二人には、セフィリアと一緒に宿へ先に帰ってもらうことにした。俺はマリーと二人、商人ギルドの扉をくぐり、手近なカウンターで塩の売却を持ちかけた。
「ほう、塩ですか……拝見しますね。この白さ、それにさらさらとした粒……岩塩ではなく、海水を精製したものですか? 錬金では……ない、かな。ほんの少しでかまいません、味見しても?」
フレッサの商人ギルドでは受付の人ではなくギルマスを呼び出したが、どうやら今回は受付のお兄さんが対応してくれるようだ。お兄さんといっても、俺より少し年上だと思うが。そんな彼に、俺は味見は少しだけですよと言って許可を出した。
「……しょっぱい」
「当然でしょう。これは砂糖ではなく塩なのですから」
「えぇ、ですが、そうですね……邪魔になるような苦みやえぐみもなく、塩気が強く主張している。ただ……遅れて感じる美味さのようなものが、少し物足りない。いや、とはいえこれは品質的にかなり上物です。これで全量ですか?」
……もう少しなら出せる。ちらっとマリーにアイコンタクトを試みる。
「この量に対していくら提示してもらえるか、それを踏まえて検討させてください」
マリーのナイスなアシストに、受付のお兄さんは首を横に振った。
「いえ、むしろこの量がちょうどいいのです。もとよりニオレングの街は岩塩が流通していますし、ダンジョンからも塩が手に入ります。そちらは錬金術師が不純物を取り除かなければ使えないものですが。とはいえ、この塩は錬金術で生成されたものより、さらに不純物がない純粋な塩に思えます。小金貨1枚と大銀貨6枚でいかがでしょうか」
小金貨1枚と大銀貨6枚、フレッサでの買い取り価格より高い。ここは売却を――
「小金貨2枚にはなりませんか? ここはファース湖から採れる魚を塩焼きで食べるため需要は大きいはずです。それに穀醤を作るのにも塩を使うと聞いたことがありますが」
「だからこそ岩塩を安定して入手しているわけです。そうですね、大銀貨8枚なら……上司に叱られない範囲ですかね」
「分かりました」
マリーの目配せに、俺が首肯する。俺は塩の入った小袋を手渡し、代わりに小金貨1枚と大銀貨8枚を受け取る。グラムでいえば100g程度だというのに、安定して収入をもたらしてくれる塩……。本当に助かる。またマイホームポイントを消費して生成しておかねば。
「いい商売ができました。ありがとうございます」
ほくほく顔の俺たちは三人が待つ宿屋へ向かうのだった。
「商人ギルドってこの通りであってるか?」
「あぁ、そうだが。レックス、お前さん商人ギルドにも登録してるのか?」
ジュードに問われて頷く。ニオレングの街はフレッサの街と同格の都市だ。ここで塩を売らずにどこで売ると言うんだ。俺は買っておいた小さい革袋に入れた塩を取り出し、ジュードとカルザスに見せてやる。
「この塩を商人ギルドで買ってもらおうと思ってな」
「ほう、ずいぶん白いな」
「これはけっこういい値がつくんじゃないか?」
二人からもお墨付きをもらった。そんな二人には、セフィリアと一緒に宿へ先に帰ってもらうことにした。俺はマリーと二人、商人ギルドの扉をくぐり、手近なカウンターで塩の売却を持ちかけた。
「ほう、塩ですか……拝見しますね。この白さ、それにさらさらとした粒……岩塩ではなく、海水を精製したものですか? 錬金では……ない、かな。ほんの少しでかまいません、味見しても?」
フレッサの商人ギルドでは受付の人ではなくギルマスを呼び出したが、どうやら今回は受付のお兄さんが対応してくれるようだ。お兄さんといっても、俺より少し年上だと思うが。そんな彼に、俺は味見は少しだけですよと言って許可を出した。
「……しょっぱい」
「当然でしょう。これは砂糖ではなく塩なのですから」
「えぇ、ですが、そうですね……邪魔になるような苦みやえぐみもなく、塩気が強く主張している。ただ……遅れて感じる美味さのようなものが、少し物足りない。いや、とはいえこれは品質的にかなり上物です。これで全量ですか?」
……もう少しなら出せる。ちらっとマリーにアイコンタクトを試みる。
「この量に対していくら提示してもらえるか、それを踏まえて検討させてください」
マリーのナイスなアシストに、受付のお兄さんは首を横に振った。
「いえ、むしろこの量がちょうどいいのです。もとよりニオレングの街は岩塩が流通していますし、ダンジョンからも塩が手に入ります。そちらは錬金術師が不純物を取り除かなければ使えないものですが。とはいえ、この塩は錬金術で生成されたものより、さらに不純物がない純粋な塩に思えます。小金貨1枚と大銀貨6枚でいかがでしょうか」
小金貨1枚と大銀貨6枚、フレッサでの買い取り価格より高い。ここは売却を――
「小金貨2枚にはなりませんか? ここはファース湖から採れる魚を塩焼きで食べるため需要は大きいはずです。それに穀醤を作るのにも塩を使うと聞いたことがありますが」
「だからこそ岩塩を安定して入手しているわけです。そうですね、大銀貨8枚なら……上司に叱られない範囲ですかね」
「分かりました」
マリーの目配せに、俺が首肯する。俺は塩の入った小袋を手渡し、代わりに小金貨1枚と大銀貨8枚を受け取る。グラムでいえば100g程度だというのに、安定して収入をもたらしてくれる塩……。本当に助かる。またマイホームポイントを消費して生成しておかねば。
「いい商売ができました。ありがとうございます」
ほくほく顔の俺たちは三人が待つ宿屋へ向かうのだった。
92
お気に入りに追加
360
あなたにおすすめの小説

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。


異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる