ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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079 装備更新

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「……で、カルザス。あの子とはどういう関係なんだ?」

 武具の店であれこれ矯めつ眇めつしながらも、俺はカルザスにアトリエのマスター、シフォンとの関係を尋ねた。

「あの店のマスターが先代だった頃からの付き合いさ。三年前からマスターをあの子がやっているが、俺が通うようになった頃は、マスターはあの子の祖母だった。あの子は両親を早くに亡くして、祖母を師匠にずっと錬金術師の訓練をしていた」
「ジュードもよく行くのか?」

 俺が別のコーナーにいたジュードに尋ねると、首を横に振られた。

「はは、ジュードは金属武器が好きだもんな。俺はダンジョンで手に入れた武器が錬金装備だったのがきっかけでアトリエに出入りするようになったんだ。ダンジョンから手に入る武器の中にはさ、特殊な効果を持つものもあるんだ。錬金術師は道具の効果を調べる審美眼ってスキルを持っている人が多い。それで試しに行ってみたらさ、なんの効果もなくってよ……でもあの頃のマスターが特殊効果をエンチャントしてくれたんだ」

 そのときのことを思い出しているんだろう、カルザスが遠くを見つめるような表情を浮かべている。口ぶりからしてその時のマスターはもう亡くなられているのかもしれない。

「あの時の武器も戦闘中で折れちまったけどよ、あれをまた金属に戻してもらって装備を作ってもらう……そんなことを何度か繰り返して、今のこいつがあるんだ」

 そう言って腰に吊るしていたワスプダガーを撫でるカルザス。それまで使っていた短剣から錬成したインゴットと、討伐したウォーワスプの素材で錬成したものだという。

「この前、ソルジャーマンティスから逃げる道中に一振り落としちまったんだけど、これだけは死守したってわけよ。いやぁでもあれだよな、落とし物をするってことは、拾うものもあるってことだよなぁ」

 そう言ってアイテム袋から取り出した短剣は斬蟲の短剣……。

「おいおい、ガストンが持っていた短剣じゃないか」

 長剣は俺が持っていたけど、短剣はどうしたかなと思っていたら……まぁ、いいけど。
 そういえばカルザスの装備はあまり破損していなかったが、何を買うんだ? そんな疑問が浮かんでくるが、カルザスは帽子と胸当てと持って会計へと向かった。
 交代でジュードが俺たちのところに戻ってきた。背に立派な剣を背負って。

「いい剣はあったか?」
「あぁ、これまでと同じ剣が手に入った。折れたものも下取りしてもらえたから助かった。手甲もせっかくだからスチールを選んだよ」

 手の甲を守ると同時に、剣の間合いより内側に来た敵を殴りつけるガントレットが鈍く光っている。

「せっかくだし、俺たちも何か買ってくか。マリー、なにがいい?」
「え? そ、そうですね……じゃあ、防具を新しくしたいです」
「そうだよな。……これとかどうだ?」

 俺がマリーにと勧めたのはスケイルプロテクターだ。うろこを張り付けた軽い鎧で、マリーの素早い動きにもついてこれる。
 マリーは快く受け取って試着室で着替えてきた。うん、いい感じだ。お値段も大銅貨8枚と手頃だ。ついでに籠手も新調してしまおう。大角牛革の籠手が売られている。そちらも大銅貨で6枚と割安だ。

「動きやすいか?」
「はい、馴染みます」
「私にはなにも聞かないの?」

 セフィリアに脇腹をつつかれる。マリーの装備がわりと貧弱なこともあり、ついついマリーにばかりかまけてしまったが、セフィリアには……。

「お、おう。矢は足りてるか?」
「今のところ、ね。弓も問題ないし、短杖も問題ない。ふふ、買うものないわね」

 自分から聞いておいて、そりゃないぜ……。何はともあれ、ジュードもカルザスも俺たちも、会計を済ませたので店を出ることにした。
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