79 / 84
079 装備更新
しおりを挟む
「……で、カルザス。あの子とはどういう関係なんだ?」
武具の店であれこれ矯めつ眇めつしながらも、俺はカルザスにアトリエのマスター、シフォンとの関係を尋ねた。
「あの店のマスターが先代だった頃からの付き合いさ。三年前からマスターをあの子がやっているが、俺が通うようになった頃は、マスターはあの子の祖母だった。あの子は両親を早くに亡くして、祖母を師匠にずっと錬金術師の訓練をしていた」
「ジュードもよく行くのか?」
俺が別のコーナーにいたジュードに尋ねると、首を横に振られた。
「はは、ジュードは金属武器が好きだもんな。俺はダンジョンで手に入れた武器が錬金装備だったのがきっかけでアトリエに出入りするようになったんだ。ダンジョンから手に入る武器の中にはさ、特殊な効果を持つものもあるんだ。錬金術師は道具の効果を調べる審美眼ってスキルを持っている人が多い。それで試しに行ってみたらさ、なんの効果もなくってよ……でもあの頃のマスターが特殊効果をエンチャントしてくれたんだ」
そのときのことを思い出しているんだろう、カルザスが遠くを見つめるような表情を浮かべている。口ぶりからしてその時のマスターはもう亡くなられているのかもしれない。
「あの時の武器も戦闘中で折れちまったけどよ、あれをまた金属に戻してもらって装備を作ってもらう……そんなことを何度か繰り返して、今のこいつがあるんだ」
そう言って腰に吊るしていたワスプダガーを撫でるカルザス。それまで使っていた短剣から錬成したインゴットと、討伐したウォーワスプの素材で錬成したものだという。
「この前、ソルジャーマンティスから逃げる道中に一振り落としちまったんだけど、これだけは死守したってわけよ。いやぁでもあれだよな、落とし物をするってことは、拾うものもあるってことだよなぁ」
そう言ってアイテム袋から取り出した短剣は斬蟲の短剣……。
「おいおい、ガストンが持っていた短剣じゃないか」
長剣は俺が持っていたけど、短剣はどうしたかなと思っていたら……まぁ、いいけど。
そういえばカルザスの装備はあまり破損していなかったが、何を買うんだ? そんな疑問が浮かんでくるが、カルザスは帽子と胸当てと持って会計へと向かった。
交代でジュードが俺たちのところに戻ってきた。背に立派な剣を背負って。
「いい剣はあったか?」
「あぁ、これまでと同じ剣が手に入った。折れたものも下取りしてもらえたから助かった。手甲もせっかくだからスチールを選んだよ」
手の甲を守ると同時に、剣の間合いより内側に来た敵を殴りつけるガントレットが鈍く光っている。
「せっかくだし、俺たちも何か買ってくか。マリー、なにがいい?」
「え? そ、そうですね……じゃあ、防具を新しくしたいです」
「そうだよな。……これとかどうだ?」
俺がマリーにと勧めたのはスケイルプロテクターだ。うろこを張り付けた軽い鎧で、マリーの素早い動きにもついてこれる。
マリーは快く受け取って試着室で着替えてきた。うん、いい感じだ。お値段も大銅貨8枚と手頃だ。ついでに籠手も新調してしまおう。大角牛革の籠手が売られている。そちらも大銅貨で6枚と割安だ。
「動きやすいか?」
「はい、馴染みます」
「私にはなにも聞かないの?」
セフィリアに脇腹をつつかれる。マリーの装備がわりと貧弱なこともあり、ついついマリーにばかりかまけてしまったが、セフィリアには……。
「お、おう。矢は足りてるか?」
「今のところ、ね。弓も問題ないし、短杖も問題ない。ふふ、買うものないわね」
自分から聞いておいて、そりゃないぜ……。何はともあれ、ジュードもカルザスも俺たちも、会計を済ませたので店を出ることにした。
武具の店であれこれ矯めつ眇めつしながらも、俺はカルザスにアトリエのマスター、シフォンとの関係を尋ねた。
「あの店のマスターが先代だった頃からの付き合いさ。三年前からマスターをあの子がやっているが、俺が通うようになった頃は、マスターはあの子の祖母だった。あの子は両親を早くに亡くして、祖母を師匠にずっと錬金術師の訓練をしていた」
「ジュードもよく行くのか?」
俺が別のコーナーにいたジュードに尋ねると、首を横に振られた。
「はは、ジュードは金属武器が好きだもんな。俺はダンジョンで手に入れた武器が錬金装備だったのがきっかけでアトリエに出入りするようになったんだ。ダンジョンから手に入る武器の中にはさ、特殊な効果を持つものもあるんだ。錬金術師は道具の効果を調べる審美眼ってスキルを持っている人が多い。それで試しに行ってみたらさ、なんの効果もなくってよ……でもあの頃のマスターが特殊効果をエンチャントしてくれたんだ」
そのときのことを思い出しているんだろう、カルザスが遠くを見つめるような表情を浮かべている。口ぶりからしてその時のマスターはもう亡くなられているのかもしれない。
「あの時の武器も戦闘中で折れちまったけどよ、あれをまた金属に戻してもらって装備を作ってもらう……そんなことを何度か繰り返して、今のこいつがあるんだ」
そう言って腰に吊るしていたワスプダガーを撫でるカルザス。それまで使っていた短剣から錬成したインゴットと、討伐したウォーワスプの素材で錬成したものだという。
「この前、ソルジャーマンティスから逃げる道中に一振り落としちまったんだけど、これだけは死守したってわけよ。いやぁでもあれだよな、落とし物をするってことは、拾うものもあるってことだよなぁ」
そう言ってアイテム袋から取り出した短剣は斬蟲の短剣……。
「おいおい、ガストンが持っていた短剣じゃないか」
長剣は俺が持っていたけど、短剣はどうしたかなと思っていたら……まぁ、いいけど。
そういえばカルザスの装備はあまり破損していなかったが、何を買うんだ? そんな疑問が浮かんでくるが、カルザスは帽子と胸当てと持って会計へと向かった。
交代でジュードが俺たちのところに戻ってきた。背に立派な剣を背負って。
「いい剣はあったか?」
「あぁ、これまでと同じ剣が手に入った。折れたものも下取りしてもらえたから助かった。手甲もせっかくだからスチールを選んだよ」
手の甲を守ると同時に、剣の間合いより内側に来た敵を殴りつけるガントレットが鈍く光っている。
「せっかくだし、俺たちも何か買ってくか。マリー、なにがいい?」
「え? そ、そうですね……じゃあ、防具を新しくしたいです」
「そうだよな。……これとかどうだ?」
俺がマリーにと勧めたのはスケイルプロテクターだ。うろこを張り付けた軽い鎧で、マリーの素早い動きにもついてこれる。
マリーは快く受け取って試着室で着替えてきた。うん、いい感じだ。お値段も大銅貨8枚と手頃だ。ついでに籠手も新調してしまおう。大角牛革の籠手が売られている。そちらも大銅貨で6枚と割安だ。
「動きやすいか?」
「はい、馴染みます」
「私にはなにも聞かないの?」
セフィリアに脇腹をつつかれる。マリーの装備がわりと貧弱なこともあり、ついついマリーにばかりかまけてしまったが、セフィリアには……。
「お、おう。矢は足りてるか?」
「今のところ、ね。弓も問題ないし、短杖も問題ない。ふふ、買うものないわね」
自分から聞いておいて、そりゃないぜ……。何はともあれ、ジュードもカルザスも俺たちも、会計を済ませたので店を出ることにした。
81
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!


称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる