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077 エリックとの別れ
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翌朝、身支度を整えた俺たちはギルドへ向かった。俺たちは素材の売却のために列へ並び、ジュードとカルザスはお金を下ろすために別の列へと並んだ。
「ああ、昨日もいらっしゃいましたね。素材の買い取りでよろしかったですか?」
そう言って声をかけてきたのは昨日のギルド職員だった。案内された倉庫で素材を収納から取り出す。フロッゲコの皮やソルジャーマンティスの素材たち、そして盗賊たちから回収したアイテム袋の中にはいっていた素材も売却を依頼する。
「うーん、ソルジャーマンティスの素材が多いですね。こうも多いと多少、値が下がるかもしれませんが、それでもかまいませんか?」
「そうなのか……」
ギルド職員が数えてくれたのだが、ソルジャーマンティスを三十七体倒していたようだ。鎌は二つ採れるが、戦闘で欠損したものもあり、数としては六十八本ある。どうやら五十を超えると多少価格を抑えざるをえないらしい。そもそも、この時期はソルジャーマンティスの数が増える時期でもあるらしい。
どうしたものかと悩んでいると、ジュードとカルザスが金を引き出し終えたのか、こちらに合流してきた。自分たちで倒したモンスターの素材だけなら、収納に入れっぱなしにしておいて、時期とか場所をずらして売却することもできるけど、彼らにも分配することを考えると売ってしまいたいところだ。
「ソルジャーマンティスの鎌が多すぎちまうのか。だったら錬金術師のアトリエに持っていくのはどうだ? 三十もあれば短剣、五十もあれば長剣だって錬成してもらえるんじゃないか?」
「錬金術師の店に持っていくって、これを素材に武器を作ってもらうのか? 料金ってどうなんだ?」
「そりゃあ、多少はかかるだろうが、予備の武器を持っておくのも冒険者として大事なことだぞ」
予備の武器、かぁ。確かに俺が使う蒼石錬鉄の長剣とマリーに渡した犬狼の片手剣、どちらも折れてしまえば代わりになるのは……俺が最初に持っていたナイフくらいか。この前の戦闘でマリーがそれまで使っていた鉄の長剣も折れてしまったし、持っておくのは確かにいいな。
「だが、この中にはジュードが必死で戦ったやつの素材だってあるんだぞ」
「はっはっは。鎌くらいいいさ。討伐証明部位だからもともと買い取り価格は低めだし、頭や胴体の売却分から少し分けてもらえばいいさ」
そういうことならと、俺はギルド職員に鎌は持ち帰る旨を申し出た。幸い、ソルジャーマンティスの他の部位は問題なく買い取ってもらえるようで、フロッゲコやその他の素材の買い取り価格から解体手数料を引いてもらって、大銀貨2枚と小銀貨4枚を受け取った。このうち大銀貨1枚はジュードとカルザスに渡し、小銀貨4枚はエリックに渡した。
「俺の分、こんなにないんじゃないか?」
ソルジャーマンティスとの戦闘に参加していなかったエリックが申し訳なさそうにするが、一人でスランツさんを護ってもらった礼や、これからの餞別も込めてある。
「そのうち再会したら一杯奢ってくれ」
「おうよ」
売却益の分配も終わり、エリックはこのままポルテンスを目指すというので港へ見送りに行くことにした。どうやら武器屋や錬金術師のアトリエも港湾地区にあるそうなので、言ってしまえばもののついでだ。港へと行く道すがら、どんな店があるのか聞いてみた。武具屋やアトリエ以外にも、どうやら淡水魚を食べられるお店があるらしい。刺身は無理だろうが、揚げ物の文化がある世界だ。たぶんフィッシュフライとか食べられるだろう。
「ここが港か。湖だから当然だろうけど、波がぜんぜんないな」
「そうだな。間に島があって、取り敢えずそこに立ち寄る感じだな」
船代は一人当たり小銅貨で3枚だという。湖をいく船というと、なんとなく芦ノ湖の海賊船を思い出す。湖で海賊というツッコミどころはスルーして、とはいえあれほど大きな船ではないにせよ、そこそこ大きな木造船に人々が乗り込んでいる。帆船かガレー船か……でもこっちの世界じゃ魔法もあるしどうとでもなるのか。
「じゃあ、達者でな」
「おう、またな」
男同士の別れなんてこれくらいさっぱりでいい。エリックが乗り込んだ船が港を離れるまで、俺たちは手を振るのだった。
「ああ、昨日もいらっしゃいましたね。素材の買い取りでよろしかったですか?」
そう言って声をかけてきたのは昨日のギルド職員だった。案内された倉庫で素材を収納から取り出す。フロッゲコの皮やソルジャーマンティスの素材たち、そして盗賊たちから回収したアイテム袋の中にはいっていた素材も売却を依頼する。
「うーん、ソルジャーマンティスの素材が多いですね。こうも多いと多少、値が下がるかもしれませんが、それでもかまいませんか?」
「そうなのか……」
ギルド職員が数えてくれたのだが、ソルジャーマンティスを三十七体倒していたようだ。鎌は二つ採れるが、戦闘で欠損したものもあり、数としては六十八本ある。どうやら五十を超えると多少価格を抑えざるをえないらしい。そもそも、この時期はソルジャーマンティスの数が増える時期でもあるらしい。
どうしたものかと悩んでいると、ジュードとカルザスが金を引き出し終えたのか、こちらに合流してきた。自分たちで倒したモンスターの素材だけなら、収納に入れっぱなしにしておいて、時期とか場所をずらして売却することもできるけど、彼らにも分配することを考えると売ってしまいたいところだ。
「ソルジャーマンティスの鎌が多すぎちまうのか。だったら錬金術師のアトリエに持っていくのはどうだ? 三十もあれば短剣、五十もあれば長剣だって錬成してもらえるんじゃないか?」
「錬金術師の店に持っていくって、これを素材に武器を作ってもらうのか? 料金ってどうなんだ?」
「そりゃあ、多少はかかるだろうが、予備の武器を持っておくのも冒険者として大事なことだぞ」
予備の武器、かぁ。確かに俺が使う蒼石錬鉄の長剣とマリーに渡した犬狼の片手剣、どちらも折れてしまえば代わりになるのは……俺が最初に持っていたナイフくらいか。この前の戦闘でマリーがそれまで使っていた鉄の長剣も折れてしまったし、持っておくのは確かにいいな。
「だが、この中にはジュードが必死で戦ったやつの素材だってあるんだぞ」
「はっはっは。鎌くらいいいさ。討伐証明部位だからもともと買い取り価格は低めだし、頭や胴体の売却分から少し分けてもらえばいいさ」
そういうことならと、俺はギルド職員に鎌は持ち帰る旨を申し出た。幸い、ソルジャーマンティスの他の部位は問題なく買い取ってもらえるようで、フロッゲコやその他の素材の買い取り価格から解体手数料を引いてもらって、大銀貨2枚と小銀貨4枚を受け取った。このうち大銀貨1枚はジュードとカルザスに渡し、小銀貨4枚はエリックに渡した。
「俺の分、こんなにないんじゃないか?」
ソルジャーマンティスとの戦闘に参加していなかったエリックが申し訳なさそうにするが、一人でスランツさんを護ってもらった礼や、これからの餞別も込めてある。
「そのうち再会したら一杯奢ってくれ」
「おうよ」
売却益の分配も終わり、エリックはこのままポルテンスを目指すというので港へ見送りに行くことにした。どうやら武器屋や錬金術師のアトリエも港湾地区にあるそうなので、言ってしまえばもののついでだ。港へと行く道すがら、どんな店があるのか聞いてみた。武具屋やアトリエ以外にも、どうやら淡水魚を食べられるお店があるらしい。刺身は無理だろうが、揚げ物の文化がある世界だ。たぶんフィッシュフライとか食べられるだろう。
「ここが港か。湖だから当然だろうけど、波がぜんぜんないな」
「そうだな。間に島があって、取り敢えずそこに立ち寄る感じだな」
船代は一人当たり小銅貨で3枚だという。湖をいく船というと、なんとなく芦ノ湖の海賊船を思い出す。湖で海賊というツッコミどころはスルーして、とはいえあれほど大きな船ではないにせよ、そこそこ大きな木造船に人々が乗り込んでいる。帆船かガレー船か……でもこっちの世界じゃ魔法もあるしどうとでもなるのか。
「じゃあ、達者でな」
「おう、またな」
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