ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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076 ニオレングの街(4)

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 薬草茶をちびちび飲みながらその後も話をしていたが、少しずつ店に客が入ってきたこともあり、解散となった。牛の歩み亭を出てスランツさんを見送り、俺たち冒険者組は宿へと移動した。こちらもジュードとカルザスのオススメで望湖荘というところだ。男どもの四人部屋と女性陣の二人部屋に分かれる。部屋代は今日のお礼にということで二人が負担してくれた。
 自分のステータスも確認したいしマイホームの状況も確認したいけど、取り合えず他の三人の目もあるしぐっと我慢する。

「けっこう広いな。宿代負担してもらってよかったのか? 装備の新調だってあるのに」
「はっはっは。四級冒険者の稼ぎを甘く見るなよ? ギルドへの貯金だってあるさ」

 どうやらギルドは冒険者の銀行業務も受け持ってくれているようだ。冒険者カードがキャッシュカードみたいな役割も担っているのだろう。まぁ、収納がある俺たちには関係ないか。

「ギルドでお前たちが素材を出している間に金を下ろして、装備を買いに行ってくるさ」
「分かった。んじゃあ、寝る前にちょっとトイレ行ってくるわ」

 そう言って俺は部屋を出て一階にあるトイレへ向かう。トイレの個室は二つ並んでいるが男女別とかではなく、空いている方に入る。この世界のトイレは地球にある洋式トイレにけっこう似ている。これもかつてこの世界に来た地球人が頑張って再現したのだろう。陶器でできた便器はあれど便座らしいものはなく、ただ縁に布が被せられている。不確かな記憶だが、日本を基準に考えた海外のトイレがこんな作りだったような気がする。ひとまず腰かけて用を足す。
 紙も錬金術による大量生産が可能なのか、品質そのものは地球のものと比べるまでもないが、トイレットペーパーらしい形状のものが置かれていた。
 これらをこの世界で再現したかつての転生者たちに感謝をしつつ、トイレの近くにあるレバーを操作する。手を洗う水が汲み置きであることを考えると、上水道まではきちんと整備されていないのだろう。トイレを流した後がどうなっているのかは気になるけれど、ひとまず手も洗ったことだし部屋に戻ろう。
 戻る途中の廊下にエリックがいた。

「なんだ、トイレか?」
「いや、少し眠れなくて」
「そうか、食堂でもいいか? 少しだけ喉が渇いて」

 頷いたエリックと二人、食堂に立ち寄る。それなりに遅い時間になってきたこともあり、酒を飲んでいる冒険者が少しいるくらいだ。
 幸い、グラス一杯の水は無料でサービスしてくれた。この辺りはファース湖に流れ込む地下水が豊富らしい。唇を濡らす程度に水を飲んだエリックが口を開いた。

「改めて、今回の依頼では色々とありがとう。本当に助かったよ」
「いや、いいさ。俺たちも依頼をこなすのが目的だったからな。初めての護衛任務にしては刺激的だったけどさ」

 そう返す俺にエリックは笑って頷いた。

「ああ、本当に。それでも得られた経験はかけがえのないものになったと思う」
「そう言ってもらえるとこっちも嬉しいな。なぁ……エリックは、どうして冒険者やってるんだ?」
「……ルーシゴルが出身地なんだけどよ、退屈な街なんだよ。学者とか職人が多くてな、それが嫌で飛び出してきちまった。ただ、幼馴染がいるんだ。錬金術師になるために勉強しているやつで、あいつのために珍しい素材とか持ち帰りたいんだ。だから、冒険者になったし、ダンジョンを目指している。ルーシゴルの近くにもダンジョンがあるんだが、そこで手に入る素材は鉱石に偏っててさ」

 ダンジョンと一口に言っても生息している魔物や入手できる素材はまちまち、エリックの幼馴染は錬金術の中でもポーションや錬金軟膏みたいな薬品を作る薬師系を志望しているらしい。そこでエリックは、草花・樹木・虫などの素材が手に入りやすいというテウスダンジョンを目指しているのだという。

「そうだったのか。応援するよ。俺たちも、強くなってダンジョンに行くからさ」
「ああ、楽しみにしてるぜ」

 互いにグラスを合わせて乾杯する。俺たちの旅の行く末に幸多からんことを願いつつ、水を飲み干した俺たちは部屋に戻ることにした。
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