ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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075 ニオレングの街(3)

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 木のお盆に乗せられた料理は黒パンが二つにコロッケも二つに揚げ物がもう一品、葉野菜とトマトっぽい野菜のサラダに澄んだスープだ。スープにほぼ具はないが、なんだかいい匂いがする。

「今日の揚げ物はブルカツだな。これは運がいい」

 カツがあるってことはパン粉と卵を使っているってことだよな。そういえば、店で卵を売っているのを見かけないな。

「そういえば卵ってどこで売っているんだ?」
「そりゃあ、教会に決まってるだろう。常識だろ?」

 何気なく聞いたつもりが、エリックに驚かれてしまった。思わずスランツさんの方を見ると、スランツさんが卵が教会の専売になっている理由を話してくれた。

「卵は生で食べるとすぐに腹を壊します。これを防ぐためには浄化の魔法をかける必要があるのですが」

 どうやらこちらの世界でもサルモネラ菌みたいなものがあって、卵は傷みやすいらしい。

「一口に浄化といっても火属性、水属性、光属性そして闇属性と四種類の属性に浄化の魔法があります」

 ……闇属性による浄化の魔法ってなんだか矛盾しているような気がするが、そのあたりはまた別途セフィリアに聞いてみよう。

「卵を浄化する時は光属性でなければ浄化できないのです。火では熱が入ってしまいますし、水では浄化しきれず、闇では卵が腐ってしまいます。そこで光属性の使い手を多数擁するハートロード教は、卵の専売を国から許されたのです。そのきっかけになったのは、その昔ある貴族が独自にマヨネーズの調合を行い、領民にふるまった結果、多数の領民が体調を崩し領主含めかなりの人数が命を落としたからです」
「世にシャンドラ子爵の悲劇と呼ばれる事件ですね。私も親から聞いたことあります」

 最後はマリーが話を締めくくったのだが、なるほど異世界とマヨネーズは定番の組み合わせだよな。やはり生卵の衛生管理を間違えると死者すら出るのか。にしてもここのコロッケやカツにかけるソースにしろ、前に話を聞いた穀醤にしろ、そしてマヨネーズにしろ、転生した日本人はどこまでも日本で食べていた味を求めてしまうんだな。
 なんだか俺もケチャップ味のナポリタンが食べたくなってきた。こう、洋食メニューというか喫茶店の定番って感じがいいんだよな。カレーとかハヤシライスとか。カツサンドもあればいいのに。

「にしても旨いな。これでいくらなんだ?」

 コロッケの最後の一切れを噛みしめながら食べおえた俺がジュードに聞くと、大銅貨1枚という答えが返ってきた。

「それは通いたくもなるわ。もう明日の揚げ物がなにか気になるくらいだし」

 ニオレング滞在一日目、よい夕食と出会えた。
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