ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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074 ニオレングの街(2)

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 料理を待つ間、俺たちは油のパチパチと跳ねる音をBGMにこれからについて話すことにした。

「レックスたちって六級になってから何件依頼を達成したんだ?」

 エリックからの問いに思わず顎に手をあて考える。フレッサで冒険者登録をしてこつこつと依頼を達成して六級になった。それから遠出をしてみようと思い至って、道中こなしたのは……あれ、依頼として達成したのはファンギーソルとクイックリザードの二件だけか。ビッグホーンブルやビッグホーンディアは遭遇しただけだしな。

「今回の護衛を含めて三件、そうだよな、二人とも」
「そうですね。間違いないです」
「ええ、ファンギーソルとクイックリザードの討伐と今回の護衛依頼だわ」」

 二人からも同じ答えが返ってきた。そんな俺らにエリックはうーんと唸ってから口を開いた。

「そうか、六級から五級への昇級条件は六級か五級の依頼を十件こなすこと。加えて、討伐、護衛、採取それぞれ少なくとも一件ずつこなすこと。ていうことは、採取系を含めつつ七件達成か……。正直、俺はお前たちとダンジョンに行ってみたいんだよ」
「エリック……」

 正直、その申し出は嬉しいところでもある。エリックは俺たちパーティに必要な打撃武器を使えて、魔法の属性も土と今いる面々の誰とも重複しない。

「なぁ、エリックはどこのダンジョンを目指しているんだ?」
「テウスダンジョンです。ここから船でまずはポルテンスを目指します」

 俺たちは既に聞いているけど、ジュードとカルザスは知らないから、エリックが出身地含めてこれまでの旅とこれからの旅のルートを話す。
 ここニオレングはファース湖の東岸にある。エリックはここから船で西岸のポルテンスを経由し、テウスダンジョンを目指している。テウスダンジョンへは、俺たちが拠点にしているフレッサから北上すれば迎えるが、森林地帯の山を登らねばならない道のりを行くしかない。
 料理の前に出してもらった薬草茶をすすりながら、自分たちのこれからを考える。……薬草茶、その名の通り身体によさそうな味がする。苦い。

「俺たちはフレッサを拠点にしている。来たように帰るか、ポルテンスから南へ帰るか、だよな。マリーはどうしたい? というか、どっちが早い?」
「わ、私はその……確かに、エリック君の誘いは嬉しいです。ダンジョンに挑むなら、三人より四人の方がいいと思います。ただ、フレッサには私の家族がいるんです。だから、できれば一旦フレッサに帰りたい。そもそもダンジョンに挑むにはまだ級が足りませんから」

 俺はマリーの言葉に頷いた。どのみち、ダンジョンを目指すつもりではあるが、それまでにまた依頼を複数こなさねばならない。その拠点は間違いなくフレッサだ。ひとまずは依頼を受注して、道中でこなしながらフレッサへ帰るのが妥当だと思う。

「そうか。なら、ここでお別れだな」
「てことは、逆に俺たちとの縁は続くかもしれないな」
「え、カルザス、当分出直せないんだろう? すぐにまたサトン村を目指すつもりか?」

 鑑定したところ、まだHPは全快ではない。食事をして一晩寝たらいいのかもしれないが、装備も破損している状況で再びサトン村まで行くのは大変だろう。ニオレングからナランハまで二日、そこからもう二日はかかる。

「まぁ、多少の時間はかかるだろうが、それと同じくらい、あの盗賊たちに他にも仲間がいないかとか、あれだけ討伐したソルジャーマンティスの素材の買い取りに、時間がかかるだろうってことだ」
「そうか、じゃあ身体を休めて装備を整えてって感じだな」
「おうよ、とにかく今はよく食べてよく寝るこったな」

 ジュードがそう話を締めると、ちょうど店のおばちゃんが料理を持ってきてくれたのだった。
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