ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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073 ニオレングの街(1)

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 ニオレングの街はフレッサより活気があるように感じた。複数のダンジョン都市への中継点になっているようだ。ひとまず俺たちは冒険者ギルドへ行き、スランツさんから護衛依頼達成のためのサインをもらうことにした。
 初めての護衛依頼としては本当に波乱万丈だったけれど、なんとか大きな被害なく達成することができてよかった。

「こちら、達成報酬の小銀貨4枚でございます。道中で討伐した魔物の素材はありますか?」

 受付の女性から報酬を受け取り、エリックに1枚渡す。素材の売却もお願いしたいけど、この後はスランツさんも含めて食事をする予定だ。エリックがジュードと食べに行く店の相談をしているから、俺はカルザスにソルジャーマンティスの素材を明日鑑定に出していいか尋ねる。

「おう、こっちも当分は旅に出直せそうにないからな。急がないさ」
「素材の売却は明日お願いします。じゃあ、これで」

 俺たちはギルドを出てジュードの案内で店を目指す。大通り沿いから一本横道に入ったそこに、『牛の歩み亭』という食堂がある。

「ここのコロッケは最高だぞ」

 今、ジュードはコロッケって言った。……え、こっちの世界にコロッケがあるのか?

「コロッケって潰した芋に他の材料を加えて油で揚げたものであってるか?」
「あぁそうだ。牛の歩み亭では潰した北芋にビッグホーンブルの肉を粗めに挽いて混ぜ込んでいるんだ」

 店はまだ夕食には少し早いこともありお客はいなかった。どこか懐かしさを感じさせる店内は、冒険者がよく使うお店だからか、テーブルも大き目のものが置かれている。俺たちは十人は座れそうな席に通された。
 にしても、北芋なんて初めて聞く名前の芋だ。他に南芋とかあるのかな。植物のことだからとセフィリアに北芋について尋ねる。

「その名の通り大陸北方で主に栽培されている丸っこいのが特徴の茶色い芋ね。北方だけでなく山間の痩せた土地でもよく育つし、様々な料理に使われているわ。春に植えて夏収穫、夏に植えて秋収穫と、一年の半分は収穫できる上に保存も利くから、主食にしている村もあるわね。ちなみに、南芋は赤みがかった皮と細長い形状が特徴で、お酒の原料にもなるそうよ。西と東は聞いたことないわ」

 ……完璧な解説というか、俺の思考ってそんなに簡単に読めるのかな。というか、説明を聞いた感じ、北がジャガイモ、南がサツマイモって感じだな。サトイモとか他の芋はないのだろうか。

「今日の定食、人数分頼むよ。飲み物は薬草茶で」

 メニュー表はない。というか、メニューが一種類しかないようだ。まぁ、冷蔵庫のない―-いや、ひょっとしたら似たような魔法の道具があるかもしれないが―-異世界で食材を新鮮に保つのは困難なのだろう。料理のレパートリーを広げるのも大変そうだし、それに多数ラインナップしたところで識字率の問題がありそうだ。写真なんて技術があるか分からないけど、メニューブック一冊作るのも大変であろう世界で、いざ作ってみたら読めないなんて悲しすぎる。きっと今日の定食に全てを注いでいるのだろう、期待して待つのみだ。
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