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072 引き渡し
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「あぁ、やっと着いたか。濃い二日間だった」
というか、今日だけで午前中にソルジャーマンティスの群れを討伐して、午後には盗賊を迎撃した。できれば今日こそ宿のベッドではなくマイホームのベッドで休みたいところだ。取り敢えず街へ入るための手続きがあるのだが、道中で盗賊を捕縛したこともあり、列を整理している冒険者にその旨を伝えることにした。
「なるほど、分かった。ギルドから責任者を連れてくる。待っていてくれ」
冒険者はそう言うと、すぐにギルドへ連絡をするため足早に去っていった。イメージとしてはこういう役割は騎士というか兵士のように、街の正規軍人が担っているものだと思っていたが。犯罪者の取り扱いにせよ、街への出入りにせよ、冒険者ギルドが管理しているのはどうしてだろうか。……ジュードとカルザスはこういうことにも詳しいのだろうか。
「なぁ、ジュード。こういう盗賊の捕縛をギルドに報告するけど、国で管理しているわけじゃないのか?」
「盗賊の捕縛に出入国者の監視、どちらも治安維持に係わることだろう? これらは国がギルドへ依頼している案件なんだ。ギルドの活動資金を援助したり、素材の流通を管理したり、そういったギルド側のメリットを享受するために、冒険者ギルドが労働力を供与しているわけさ」
なるほど。と、そんな話をしていると先ほどの冒険者が戻ってきたようだ。少し遅れて誰かがやってくる。やってきたのは30代くらいの真面目そうな女性だ。腰にレイピアと短杖を佩いていることから、魔法剣士のような戦い方をするのだろう。堅そうな見た目の割にゴテゴテとアクセサリーを付けているが、きっと何らかの魔法効果が付与されたものなのだろう。鑑定したい気持ちはやまやまだが、初対面の人を相手にやたらと使うものではないだろうからぐっと堪える。鑑定を察知するスキルとかアクセサリーに付与されていたら、話がこじれそうだし。
「ニオレングのギルドでサブマスターをしています、サーサリアといいます。あなた方が盗賊を捕らえたという冒険者ですね?」
「はい、俺はレックス。仲間のマリーとセフィリアとエリックです。依頼主はこちらのスランツさんです」
銀髪をポニーテールにくくったサーサリアさんは銀縁の眼鏡がよく似合う。荷台に繋がれた盗賊五人を確認した後、荷台の中も確認する。
「あら、ジュードさん、カルザスさん、あなた達ほどの冒険者が盗賊にやられるなんて」
「久しぶりってほどでもないか、サブマス。この怪我はそこの盗賊とは無関係さ」
「普通に魔物の群れに鉢合わせてしまったんです」
ニオレングの街での生活も長かったであろう二人は彼女とも顔見知りのようだ。サーサリアさんは俺たちの冒険者カードを確認する。
「はい、確認しました。ご協力感謝します」
「それにしてもサブマス級の人がやってくるなんて。いつもそうなんですか?」
「盗賊の捕縛は治安維持とギルドの資金確保につながる大切な案件です。しかも捕縛人数が五人と聞きましたから。それが組織の全員なのか、大規模な組織の中から捕まった五人なのか、それを確認するのは早いに越したことないと思った次第です。皆さんの冒険者カードならびに依頼主スランツ殿の商人ギルドのカードも確認できましたから、街の中に入って構いませんよ。ジュードさんとカルザスさんも早々に治癒魔法を受けるか、せめてベッドで休んだ方がいいでしょう」
「えっと、盗賊たちは?」
街へ入るのは入りたいが、盗賊たちはどうするのか。尋ねると、ここでもう引き渡していいらしい。荷台の後方に結んでいた縄をほどき、サーサリアさんを呼んできた冒険者が受け取る。……逃げ出さないのかな。少し心配になったが、盗賊たちはもうとっくに観念しているのか、とりわけ抗うでもなくおとなしく連れていかれた。
捕縛した報酬などは後日ギルドから受け取れるようだ。サーサリアさんにもらった書類は紛失厳禁なのでマイホームの収納に入れておくことにした。
「取り敢えず、俺らも町へ入るか」
まだ何人か街へ入る手続きに並んでいるが、一足先に街へと入ることができた俺たちだった。
というか、今日だけで午前中にソルジャーマンティスの群れを討伐して、午後には盗賊を迎撃した。できれば今日こそ宿のベッドではなくマイホームのベッドで休みたいところだ。取り敢えず街へ入るための手続きがあるのだが、道中で盗賊を捕縛したこともあり、列を整理している冒険者にその旨を伝えることにした。
「なるほど、分かった。ギルドから責任者を連れてくる。待っていてくれ」
冒険者はそう言うと、すぐにギルドへ連絡をするため足早に去っていった。イメージとしてはこういう役割は騎士というか兵士のように、街の正規軍人が担っているものだと思っていたが。犯罪者の取り扱いにせよ、街への出入りにせよ、冒険者ギルドが管理しているのはどうしてだろうか。……ジュードとカルザスはこういうことにも詳しいのだろうか。
「なぁ、ジュード。こういう盗賊の捕縛をギルドに報告するけど、国で管理しているわけじゃないのか?」
「盗賊の捕縛に出入国者の監視、どちらも治安維持に係わることだろう? これらは国がギルドへ依頼している案件なんだ。ギルドの活動資金を援助したり、素材の流通を管理したり、そういったギルド側のメリットを享受するために、冒険者ギルドが労働力を供与しているわけさ」
なるほど。と、そんな話をしていると先ほどの冒険者が戻ってきたようだ。少し遅れて誰かがやってくる。やってきたのは30代くらいの真面目そうな女性だ。腰にレイピアと短杖を佩いていることから、魔法剣士のような戦い方をするのだろう。堅そうな見た目の割にゴテゴテとアクセサリーを付けているが、きっと何らかの魔法効果が付与されたものなのだろう。鑑定したい気持ちはやまやまだが、初対面の人を相手にやたらと使うものではないだろうからぐっと堪える。鑑定を察知するスキルとかアクセサリーに付与されていたら、話がこじれそうだし。
「ニオレングのギルドでサブマスターをしています、サーサリアといいます。あなた方が盗賊を捕らえたという冒険者ですね?」
「はい、俺はレックス。仲間のマリーとセフィリアとエリックです。依頼主はこちらのスランツさんです」
銀髪をポニーテールにくくったサーサリアさんは銀縁の眼鏡がよく似合う。荷台に繋がれた盗賊五人を確認した後、荷台の中も確認する。
「あら、ジュードさん、カルザスさん、あなた達ほどの冒険者が盗賊にやられるなんて」
「久しぶりってほどでもないか、サブマス。この怪我はそこの盗賊とは無関係さ」
「普通に魔物の群れに鉢合わせてしまったんです」
ニオレングの街での生活も長かったであろう二人は彼女とも顔見知りのようだ。サーサリアさんは俺たちの冒険者カードを確認する。
「はい、確認しました。ご協力感謝します」
「それにしてもサブマス級の人がやってくるなんて。いつもそうなんですか?」
「盗賊の捕縛は治安維持とギルドの資金確保につながる大切な案件です。しかも捕縛人数が五人と聞きましたから。それが組織の全員なのか、大規模な組織の中から捕まった五人なのか、それを確認するのは早いに越したことないと思った次第です。皆さんの冒険者カードならびに依頼主スランツ殿の商人ギルドのカードも確認できましたから、街の中に入って構いませんよ。ジュードさんとカルザスさんも早々に治癒魔法を受けるか、せめてベッドで休んだ方がいいでしょう」
「えっと、盗賊たちは?」
街へ入るのは入りたいが、盗賊たちはどうするのか。尋ねると、ここでもう引き渡していいらしい。荷台の後方に結んでいた縄をほどき、サーサリアさんを呼んできた冒険者が受け取る。……逃げ出さないのかな。少し心配になったが、盗賊たちはもうとっくに観念しているのか、とりわけ抗うでもなくおとなしく連れていかれた。
捕縛した報酬などは後日ギルドから受け取れるようだ。サーサリアさんにもらった書類は紛失厳禁なのでマイホームの収納に入れておくことにした。
「取り敢えず、俺らも町へ入るか」
まだ何人か街へ入る手続きに並んでいるが、一足先に街へと入ることができた俺たちだった。
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