ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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070 冒険者の覚悟

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 五人の盗賊を撃退した俺たちだったが、正直この後をどうしたらいいのかというのが分からない。とにかく再び目を覚ます前に手足を拘束しなくてはと思っていたところを、ジュードとカルザスが助け舟を出してくれた。

「伸びている連中を縛るくらいは今の俺らにだってできるさ。荷主殿、縄の余りはないだろうか」
「荷物の固定用なら、それなりには」

 そう言ってスランツさんがジュードとカルザスに縄を手渡す。カルザスはまず頭目であるガストンの腕を掴んで後ろ手に組ませる。手首を手際よく縛ると、そのまま縄をぐるっと首に回して、戻ってきた縄を手首の縄と結ぶ。それらを五人分、ジュードとカルザスは協力してあっという間に済ませてしまった。こうすることで、誰かが逃げ出そうとした際に、首がしまって逃げ出せなくなるようになるらしい。

「すごい手際ですね」

 マリーが二人を褒めると、ジュードが真剣な面持ちで口を開いた。

「嬢ちゃん、さっきの戦いで臆したよな。まぁ、気持ちは分かる。対人戦は経験してなかったんだろう? そういや、あんたら何級なんだ?」
「エリックだけ五級、俺らは六級だ」
「そうか。戦えなかった俺が言ってもおかしな話だが、レックス、お前さんの強さは四級にも引けを取らないだろう。ハーフエルフの姉さんもな、人を射抜くことに躊躇がない」
「まったくないわけじゃないのだけれど。純血種の老人らと違って、私はエルフと人族は対等だと思っているもの」

 肩をすくめるセフィリアに苦笑するジュードが、表情を引き締めて再びマリーに向き直る。

「冒険者ってのは、ただ魔物を倒せればいいってもんじゃない。こうして護衛を受ければ盗賊に襲われることもあるし、ダンジョンでは人同士が争うことだってある、傭兵紛いの仕事をすることもあれば、犯罪者を捕縛あるいは討伐せよなんて依頼もある」
「だ、ダンジョンで人同士が争う……?」

 この先、マリーの両親を買い戻すために稼ごうとする俺たちは五級冒険者を目指し、ダンジョンに入る可能性は大いにある。だが、まだ俺たちはダンジョンについて知らないことばかりだ。

「五級になれば確かにダンジョンには入れる。ただ、稼ごうと思えばある程度ダンジョンを進めるだけの実力が求められる。そういう連中は四級や三級 ダンジョンってのは不思議な場所で、魔物を倒せば死体が残らず、素材がドロップする。これと同じように、人間だってダンジョンで仮に命を落としたとしても何も証拠が残らない。だからダンジョンには人を狙う堕ちた冒険者もいる。あるいは最初から人を狙うとんでもない奴らが潜んでいるかもしれない。時間をかけたっていい、人に刃を向ける覚悟はしておくことだな」
「そ、そんな……。うぅ、わかり……」

 そう易々とは分かりましたなんて言えないだろう。俯くマリーの背中をそっと撫でる。

「俺だって人に剣を向けるのは怖い。相手も強そうだったし。でも、守りたいと思えば怖さも少しはマシになる」
「……はい」

 声は小さかったけど、マリーの返事が聞けて俺も少し安心した。
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