ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

文字の大きさ
上 下
68 / 84

068 アイテムスナッチ

しおりを挟む
「どうりゃあ!!」

 盗賊の頭目、ガストンが切りかかってきた。他の手下まで鑑定している暇はない、俺がこいつを抑えている間に手下を二人ずつマリーとエリックに相手してもらわなとならない。セフィリアには魔法と弓で支援を任せる。
 早速、ガストン相手に一の矢を放つもガントレットで弾かれる。俺はその隙をつくべく、顔面目掛けて水魔法を放つ。

「小細工が!」

 剣の腹で水流を防ぐガストンの胴体めがけて剣を振るう。

「ぬうん!」

 鎧越しの一撃とはいえ、多少は仰け反らせられるかと思ったが、どっしりとした構えはびくともしない。反撃を剣でなんとか受け止める。鑑定スキルがまだ未熟なせいか、武器の耐久値を知ることはできない。だが、この重い剣撃を何度も受け止めていたら、いつか折れてしまいそうだ。真正面で止めるのではなく、なんとか、受け流すように剣を合わせる。

「せやぁ!」

 右手で剣を鍔迫り合いさせている最中、ガストンはナイフを抜いて俺の腹を狙う。盾で守るが体勢を崩され倒れそうになる。追撃を目論むガストンの目の前に矢が飛来する。
 体勢を立て直す時間はもらえた。俺はナイフをセフィリアへ投げつけようとするガストめがけて盾を構えて体当たりした。

「なよっちぃくせに」

 ようやく怯んだガストンに俺はすかさず剣をふるう。魔力を込めて剣技を放つ。

「はあ!!」

 左下方からの切り上げは胴をかすめて相手の左腕を切り裂いた。振りぬいた衝撃でガストンがナイフを落とす。続けて上段から勢いよく剣を振り下ろす。狙いは右肩、兜を被っていないガストンの頭部に勢いよく剣を下ろせるほど、まだ異世界に染まりきっていないんだ、俺は。

「ぐおぉお」

 俺の一撃を剣の腹で受け止めるガストン。今がチャンスだと思った俺は、対人戦で切り札として使えるんじゃないかと思っていたある考えを実行に移す。
 俺はガストンが右手で握る剣の柄に左手で触れる。光のゲートのようなものが現れ、それが消えると……。

「何をす――消えた!?」

 ガストンの手にあった長剣は、本当にそこにあったのか疑わしいほどにきれいさっぱり消えていた。マイホームに収納することができるものはなにか、ずっと検証してきた。
 分かったことは、生物は入れられない、収納するためには触れる必要がある、の二点だ。
 自分以外が触れている状況というは検証していなかったが、生物を弾いてくれるなら、結果はおのずとこうなるだろう。対人戦の切り札として構想してきたアイテムスナッチだ。
 武器を失い狼狽えるガストンだったが、思いのほか立ち直りは速かった。右手にナイフを構えると、左手を俺に向かって突き出した。

「雷よ、迸れ!」

 ガストンの掌から紫電が放たれる。電流が俺の身体を駆け抜け、刹那、息を吸うのが難しかった。そんな僅かな隙であっても、ガストンは見逃すことなくナイフで刺し貫こうと踏み込んでくる。

「――――エアロスタンプ!!」

 風圧で叩きつけるセフィリアの魔法によって、ガストンの右腕があらぬ方向へ曲がる。ガストンの武器を収納してしまえば何とかなると思っていた自分を恥じながら、俺は左手に構えた盾で精一杯ガストンの顔面を殴りつけた。

「ぐぁ!!」

 踏み込むために前傾姿勢になっていたこともあり、振りぬいた拳は見事にガストンの左頬を痛打した。そのまま倒れて泡を吹いたところまで確認し、俺はようやく後ろを見ることができた。セフィリアの援護は受けられたがマリーとエリックは無事だろうか。

「全員無事よ」
「やりましたね!!」
「こっちも片付いたところだ」
「ふぅ、お疲れ様」

 俺たちを襲った盗賊たちが全員伸びていることを確認して、ようやく俺はホッと一息つけたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...