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068 アイテムスナッチ
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「どうりゃあ!!」
盗賊の頭目、ガストンが切りかかってきた。他の手下まで鑑定している暇はない、俺がこいつを抑えている間に手下を二人ずつマリーとエリックに相手してもらわなとならない。セフィリアには魔法と弓で支援を任せる。
早速、ガストン相手に一の矢を放つもガントレットで弾かれる。俺はその隙をつくべく、顔面目掛けて水魔法を放つ。
「小細工が!」
剣の腹で水流を防ぐガストンの胴体めがけて剣を振るう。
「ぬうん!」
鎧越しの一撃とはいえ、多少は仰け反らせられるかと思ったが、どっしりとした構えはびくともしない。反撃を剣でなんとか受け止める。鑑定スキルがまだ未熟なせいか、武器の耐久値を知ることはできない。だが、この重い剣撃を何度も受け止めていたら、いつか折れてしまいそうだ。真正面で止めるのではなく、なんとか、受け流すように剣を合わせる。
「せやぁ!」
右手で剣を鍔迫り合いさせている最中、ガストンはナイフを抜いて俺の腹を狙う。盾で守るが体勢を崩され倒れそうになる。追撃を目論むガストンの目の前に矢が飛来する。
体勢を立て直す時間はもらえた。俺はナイフをセフィリアへ投げつけようとするガストめがけて盾を構えて体当たりした。
「なよっちぃくせに」
ようやく怯んだガストンに俺はすかさず剣をふるう。魔力を込めて剣技を放つ。
「はあ!!」
左下方からの切り上げは胴をかすめて相手の左腕を切り裂いた。振りぬいた衝撃でガストンがナイフを落とす。続けて上段から勢いよく剣を振り下ろす。狙いは右肩、兜を被っていないガストンの頭部に勢いよく剣を下ろせるほど、まだ異世界に染まりきっていないんだ、俺は。
「ぐおぉお」
俺の一撃を剣の腹で受け止めるガストン。今がチャンスだと思った俺は、対人戦で切り札として使えるんじゃないかと思っていたある考えを実行に移す。
俺はガストンが右手で握る剣の柄に左手で触れる。光のゲートのようなものが現れ、それが消えると……。
「何をす――消えた!?」
ガストンの手にあった長剣は、本当にそこにあったのか疑わしいほどにきれいさっぱり消えていた。マイホームに収納することができるものはなにか、ずっと検証してきた。
分かったことは、生物は入れられない、収納するためには触れる必要がある、の二点だ。
自分以外が触れている状況というは検証していなかったが、生物を弾いてくれるなら、結果はおのずとこうなるだろう。対人戦の切り札として構想してきたアイテムスナッチだ。
武器を失い狼狽えるガストンだったが、思いのほか立ち直りは速かった。右手にナイフを構えると、左手を俺に向かって突き出した。
「雷よ、迸れ!」
ガストンの掌から紫電が放たれる。電流が俺の身体を駆け抜け、刹那、息を吸うのが難しかった。そんな僅かな隙であっても、ガストンは見逃すことなくナイフで刺し貫こうと踏み込んでくる。
「――――エアロスタンプ!!」
風圧で叩きつけるセフィリアの魔法によって、ガストンの右腕があらぬ方向へ曲がる。ガストンの武器を収納してしまえば何とかなると思っていた自分を恥じながら、俺は左手に構えた盾で精一杯ガストンの顔面を殴りつけた。
「ぐぁ!!」
踏み込むために前傾姿勢になっていたこともあり、振りぬいた拳は見事にガストンの左頬を痛打した。そのまま倒れて泡を吹いたところまで確認し、俺はようやく後ろを見ることができた。セフィリアの援護は受けられたがマリーとエリックは無事だろうか。
「全員無事よ」
「やりましたね!!」
「こっちも片付いたところだ」
「ふぅ、お疲れ様」
俺たちを襲った盗賊たちが全員伸びていることを確認して、ようやく俺はホッと一息つけたのだった。
盗賊の頭目、ガストンが切りかかってきた。他の手下まで鑑定している暇はない、俺がこいつを抑えている間に手下を二人ずつマリーとエリックに相手してもらわなとならない。セフィリアには魔法と弓で支援を任せる。
早速、ガストン相手に一の矢を放つもガントレットで弾かれる。俺はその隙をつくべく、顔面目掛けて水魔法を放つ。
「小細工が!」
剣の腹で水流を防ぐガストンの胴体めがけて剣を振るう。
「ぬうん!」
鎧越しの一撃とはいえ、多少は仰け反らせられるかと思ったが、どっしりとした構えはびくともしない。反撃を剣でなんとか受け止める。鑑定スキルがまだ未熟なせいか、武器の耐久値を知ることはできない。だが、この重い剣撃を何度も受け止めていたら、いつか折れてしまいそうだ。真正面で止めるのではなく、なんとか、受け流すように剣を合わせる。
「せやぁ!」
右手で剣を鍔迫り合いさせている最中、ガストンはナイフを抜いて俺の腹を狙う。盾で守るが体勢を崩され倒れそうになる。追撃を目論むガストンの目の前に矢が飛来する。
体勢を立て直す時間はもらえた。俺はナイフをセフィリアへ投げつけようとするガストめがけて盾を構えて体当たりした。
「なよっちぃくせに」
ようやく怯んだガストンに俺はすかさず剣をふるう。魔力を込めて剣技を放つ。
「はあ!!」
左下方からの切り上げは胴をかすめて相手の左腕を切り裂いた。振りぬいた衝撃でガストンがナイフを落とす。続けて上段から勢いよく剣を振り下ろす。狙いは右肩、兜を被っていないガストンの頭部に勢いよく剣を下ろせるほど、まだ異世界に染まりきっていないんだ、俺は。
「ぐおぉお」
俺の一撃を剣の腹で受け止めるガストン。今がチャンスだと思った俺は、対人戦で切り札として使えるんじゃないかと思っていたある考えを実行に移す。
俺はガストンが右手で握る剣の柄に左手で触れる。光のゲートのようなものが現れ、それが消えると……。
「何をす――消えた!?」
ガストンの手にあった長剣は、本当にそこにあったのか疑わしいほどにきれいさっぱり消えていた。マイホームに収納することができるものはなにか、ずっと検証してきた。
分かったことは、生物は入れられない、収納するためには触れる必要がある、の二点だ。
自分以外が触れている状況というは検証していなかったが、生物を弾いてくれるなら、結果はおのずとこうなるだろう。対人戦の切り札として構想してきたアイテムスナッチだ。
武器を失い狼狽えるガストンだったが、思いのほか立ち直りは速かった。右手にナイフを構えると、左手を俺に向かって突き出した。
「雷よ、迸れ!」
ガストンの掌から紫電が放たれる。電流が俺の身体を駆け抜け、刹那、息を吸うのが難しかった。そんな僅かな隙であっても、ガストンは見逃すことなくナイフで刺し貫こうと踏み込んでくる。
「――――エアロスタンプ!!」
風圧で叩きつけるセフィリアの魔法によって、ガストンの右腕があらぬ方向へ曲がる。ガストンの武器を収納してしまえば何とかなると思っていた自分を恥じながら、俺は左手に構えた盾で精一杯ガストンの顔面を殴りつけた。
「ぐぁ!!」
踏み込むために前傾姿勢になっていたこともあり、振りぬいた拳は見事にガストンの左頬を痛打した。そのまま倒れて泡を吹いたところまで確認し、俺はようやく後ろを見ることができた。セフィリアの援護は受けられたがマリーとエリックは無事だろうか。
「全員無事よ」
「やりましたね!!」
「こっちも片付いたところだ」
「ふぅ、お疲れ様」
俺たちを襲った盗賊たちが全員伸びていることを確認して、ようやく俺はホッと一息つけたのだった。
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