ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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067 盗賊

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 休息を終えて再び進みだした俺たちだったが、負傷者もいるということで足取りはゆっくりめだ。

「この辺りは盗賊が出るので駆け抜けてしまいたいのですが、仕方ありませんな」

 御者台のスラッツさんがそう呟いた。その言葉がまるでフラグだったかのように、ほどなくして道沿いの茂みから大男が五人、姿を現した。

「おいおい、随分ゆっくりじゃないか。いいもん積んでるんなら、さっさと下ろしな」

 肩にかついだ幅広の長剣、腰にはナイフ、盗賊の頭目の登場か。この世界にもガラス瓶があって、酒やポーションを入れる容器として定番だ。そしてそれら割れ物は得てして運ぶ馬車の進みがゆっくりになりがちだ。彼らはそれを理解して、我々に絡んだのだろう。

「積み荷は蕎麦です。怪我人を乗せているのでゆっくりなだけです。どうか、一袋でご容赦を」

 盗賊に囲まれていてもスランツさんは冷静だ。盗賊とて、商人をかたっぱしから襲って皆殺しにしていては食い扶持もなくなるし、国や冒険者から徹底的に報復される。だからこそ、積み荷の一部をおいてそれで通してもらうのだ。だが、今回ばかりは状況が違った。

「蕎麦はいらねえ。食うとかゆくなるからな。だったら、そこの女二人に少しばかりお相手願おうか」
「か、彼女たちは護衛の冒険者ですぞ。そんな無理が通りますか」

 アレルギーでもあるのか盗賊は蕎麦には眼もくれず、マリーとセフィリアに無粋な視線を送る。

「いざとなったら俺たちをおいていけ」

 荷台の幌越しに、ジュードがそう告げる。盗賊たちはだらりとぶら下げていた各々の武器を構えて少し距離を詰めてきた。

「やるしかないか」

 俺たちも武器を構えて展開する。矢をつがえるセフィリアから、問いが投げかけられる。簡潔に、命を奪うか否か、だ。

「できれば生け捕り、エリックもいいな?」
「応よ」
「俺たち相手に生け捕りたぁ、舐められたもんだな」

 切っ先をこちらに向け不快感をあらわにする頭目。俺は冷静に鑑定を行う。


名前:ガストン
年齢:35
種族:人間・男性
職業:盗賊
レベル:40
HP:1698/1720
MP:150/153
攻撃力:145(+63)
防御力:120(+52)
素早さ:68
魔法力:50
精神力:72
器用さ:70
アクティブスキル:片手剣技(中) 短剣技(小) 水魔法(小) 風魔法(小) 雷魔法(微)
パッシブスキル:身体強化(中) 剛腕(中) 統率(中) 片手剣適正(中) 建築(小) 混乱耐性(微) 
称号:殺人犯 盗賊の頭
装備:蒼石錬鉄の長剣、斬蟲の短剣、大角牛の革鎧、軽甲のガントレット、ヴェオ樫の下駄


 レベルで言えば倍以上の強敵だし、こちらを殺すことも厭わないだろう。
 それに特筆すべきは所持している武器だ。攻撃力35の長剣は俺の持っている剣の二倍以上の強さだし、適正も相まって攻撃力の上昇値はかなりのものだ。剣に練りこまれている蒼石とは魔法の触媒で水、氷、風、雷の威力を高めるものらしい。間合いを詰めれば短剣を抜かれる可能性だってある。
 剣技も恐ろしいが魔法も何を使ってくるか分からない。MPや魔法力がそう高くはないが、ここぞという時に使ってくることを警戒しなくてはならない。

「いくぞ!!」

 不慣れな対人戦に震える心身を気合で抑え込み、俺は覚悟を決めた。
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