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065 合流待ち
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「あんた収納持ちか。倒すだけ倒してその後のことなんて全然考えてなかったから、こりゃあ助かるぜ。換金できたら治療費以外はあんたにやるよ。まぁ、治療費にいくらかかるか分かったもんじゃないがな」
ボロボロの体を木に預けながら、それでも声は溌剌としているジュードはそう言って笑った。既にひしゃげた鎧は脱いでいるが、防ぎきれなかった衝撃が打撲痕として色濃く残っている。打ち身用の薬草を採取して取り合えず張り付けているが、どれほど効果があるものか。
「こちらも助かってます、マンティスの解体は初めてで不慣れですから。コツを教えてもらってありがとうございます」
素材となる部位は当然ながら鎌だ。だが他の素材、胴体や頭なんかもそれなりの素材になるという。魔物を分類して素材として活用できる錬金術の存在は大きい。スキルとして習得できるならばぜひとも手に入れたいものだ。
「ソルジャーマンティスは凶暴だからな、素材の価値というよりも単純に討伐報酬が大きいだろう。にしても、またニオレングに戻る羽目になるとはな。旅はままならないぜ」
「なあ、ジュードとカルザスは何級の冒険者なんだ?」
「四級だ。もう三人仲間がいてな、ダンジョンでけっこう稼いでいたんだが、リーダー格だったやつのご両親が亡くなられてな、知らなかったんだけどそいつの両親がどうにも男爵様らしくってよ、いや、びっくりしちまったぜ。貴族の嫡男だなんて、初めて聞かされたからな」
四級冒険者なら女王のいないソルジャーマンティスの群れ相手に孤軍奮闘で生き延びられるものなのか。単純にジュードのタフさに脱帽だ。にしても、五人でダンジョンに潜っていて、そのリーダーが貴族の嫡男だなんて知らされたら、それはもう驚くだろうな。
「挙句にパーティの紅一点を嫁に迎えるつってよ、あいつが貴族だって分かった途端にほいほいついていく彼女も大概だがよぉ、まあ円満っちゃあ円満にパーティが解散して……円満だよな? まぁ、そんでっもって俺とカルザスは同郷だったから一緒に帰るぞってなったわけだ」
楽し気に、懐かし気に、少し寂し気に、ジュードはそう口にすると、少し眠ると言って目を閉じた。
「おう、ゆっくり休んでくれ」
周囲を警戒するセフィリアをひとしきり労った後、今度はソルジャーマンティスの解体を続けてくれているマリーに声をかける。
「水、飲んでおきな」
木のカップに注いだ水を手渡す。
「ありがとうございます」
マリーは水を受け取ると一気に呷った。よほど集中していたのか、額には汗が浮いていた。
ソルジャーマンティスの解体は大詰めで、残りは俺も教わりながら手伝う。討伐証明部位は頭だという。首の関節から丁寧に頭を切り外す。そうこうしているうちに馬車を率いてエリックたちが合流してきた。
ボロボロの体を木に預けながら、それでも声は溌剌としているジュードはそう言って笑った。既にひしゃげた鎧は脱いでいるが、防ぎきれなかった衝撃が打撲痕として色濃く残っている。打ち身用の薬草を採取して取り合えず張り付けているが、どれほど効果があるものか。
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「ソルジャーマンティスは凶暴だからな、素材の価値というよりも単純に討伐報酬が大きいだろう。にしても、またニオレングに戻る羽目になるとはな。旅はままならないぜ」
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四級冒険者なら女王のいないソルジャーマンティスの群れ相手に孤軍奮闘で生き延びられるものなのか。単純にジュードのタフさに脱帽だ。にしても、五人でダンジョンに潜っていて、そのリーダーが貴族の嫡男だなんて知らされたら、それはもう驚くだろうな。
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楽し気に、懐かし気に、少し寂し気に、ジュードはそう口にすると、少し眠ると言って目を閉じた。
「おう、ゆっくり休んでくれ」
周囲を警戒するセフィリアをひとしきり労った後、今度はソルジャーマンティスの解体を続けてくれているマリーに声をかける。
「水、飲んでおきな」
木のカップに注いだ水を手渡す。
「ありがとうございます」
マリーは水を受け取ると一気に呷った。よほど集中していたのか、額には汗が浮いていた。
ソルジャーマンティスの解体は大詰めで、残りは俺も教わりながら手伝う。討伐証明部位は頭だという。首の関節から丁寧に頭を切り外す。そうこうしているうちに馬車を率いてエリックたちが合流してきた。
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