65 / 84
065 合流待ち
しおりを挟む
「あんた収納持ちか。倒すだけ倒してその後のことなんて全然考えてなかったから、こりゃあ助かるぜ。換金できたら治療費以外はあんたにやるよ。まぁ、治療費にいくらかかるか分かったもんじゃないがな」
ボロボロの体を木に預けながら、それでも声は溌剌としているジュードはそう言って笑った。既にひしゃげた鎧は脱いでいるが、防ぎきれなかった衝撃が打撲痕として色濃く残っている。打ち身用の薬草を採取して取り合えず張り付けているが、どれほど効果があるものか。
「こちらも助かってます、マンティスの解体は初めてで不慣れですから。コツを教えてもらってありがとうございます」
素材となる部位は当然ながら鎌だ。だが他の素材、胴体や頭なんかもそれなりの素材になるという。魔物を分類して素材として活用できる錬金術の存在は大きい。スキルとして習得できるならばぜひとも手に入れたいものだ。
「ソルジャーマンティスは凶暴だからな、素材の価値というよりも単純に討伐報酬が大きいだろう。にしても、またニオレングに戻る羽目になるとはな。旅はままならないぜ」
「なあ、ジュードとカルザスは何級の冒険者なんだ?」
「四級だ。もう三人仲間がいてな、ダンジョンでけっこう稼いでいたんだが、リーダー格だったやつのご両親が亡くなられてな、知らなかったんだけどそいつの両親がどうにも男爵様らしくってよ、いや、びっくりしちまったぜ。貴族の嫡男だなんて、初めて聞かされたからな」
四級冒険者なら女王のいないソルジャーマンティスの群れ相手に孤軍奮闘で生き延びられるものなのか。単純にジュードのタフさに脱帽だ。にしても、五人でダンジョンに潜っていて、そのリーダーが貴族の嫡男だなんて知らされたら、それはもう驚くだろうな。
「挙句にパーティの紅一点を嫁に迎えるつってよ、あいつが貴族だって分かった途端にほいほいついていく彼女も大概だがよぉ、まあ円満っちゃあ円満にパーティが解散して……円満だよな? まぁ、そんでっもって俺とカルザスは同郷だったから一緒に帰るぞってなったわけだ」
楽し気に、懐かし気に、少し寂し気に、ジュードはそう口にすると、少し眠ると言って目を閉じた。
「おう、ゆっくり休んでくれ」
周囲を警戒するセフィリアをひとしきり労った後、今度はソルジャーマンティスの解体を続けてくれているマリーに声をかける。
「水、飲んでおきな」
木のカップに注いだ水を手渡す。
「ありがとうございます」
マリーは水を受け取ると一気に呷った。よほど集中していたのか、額には汗が浮いていた。
ソルジャーマンティスの解体は大詰めで、残りは俺も教わりながら手伝う。討伐証明部位は頭だという。首の関節から丁寧に頭を切り外す。そうこうしているうちに馬車を率いてエリックたちが合流してきた。
ボロボロの体を木に預けながら、それでも声は溌剌としているジュードはそう言って笑った。既にひしゃげた鎧は脱いでいるが、防ぎきれなかった衝撃が打撲痕として色濃く残っている。打ち身用の薬草を採取して取り合えず張り付けているが、どれほど効果があるものか。
「こちらも助かってます、マンティスの解体は初めてで不慣れですから。コツを教えてもらってありがとうございます」
素材となる部位は当然ながら鎌だ。だが他の素材、胴体や頭なんかもそれなりの素材になるという。魔物を分類して素材として活用できる錬金術の存在は大きい。スキルとして習得できるならばぜひとも手に入れたいものだ。
「ソルジャーマンティスは凶暴だからな、素材の価値というよりも単純に討伐報酬が大きいだろう。にしても、またニオレングに戻る羽目になるとはな。旅はままならないぜ」
「なあ、ジュードとカルザスは何級の冒険者なんだ?」
「四級だ。もう三人仲間がいてな、ダンジョンでけっこう稼いでいたんだが、リーダー格だったやつのご両親が亡くなられてな、知らなかったんだけどそいつの両親がどうにも男爵様らしくってよ、いや、びっくりしちまったぜ。貴族の嫡男だなんて、初めて聞かされたからな」
四級冒険者なら女王のいないソルジャーマンティスの群れ相手に孤軍奮闘で生き延びられるものなのか。単純にジュードのタフさに脱帽だ。にしても、五人でダンジョンに潜っていて、そのリーダーが貴族の嫡男だなんて知らされたら、それはもう驚くだろうな。
「挙句にパーティの紅一点を嫁に迎えるつってよ、あいつが貴族だって分かった途端にほいほいついていく彼女も大概だがよぉ、まあ円満っちゃあ円満にパーティが解散して……円満だよな? まぁ、そんでっもって俺とカルザスは同郷だったから一緒に帰るぞってなったわけだ」
楽し気に、懐かし気に、少し寂し気に、ジュードはそう口にすると、少し眠ると言って目を閉じた。
「おう、ゆっくり休んでくれ」
周囲を警戒するセフィリアをひとしきり労った後、今度はソルジャーマンティスの解体を続けてくれているマリーに声をかける。
「水、飲んでおきな」
木のカップに注いだ水を手渡す。
「ありがとうございます」
マリーは水を受け取ると一気に呷った。よほど集中していたのか、額には汗が浮いていた。
ソルジャーマンティスの解体は大詰めで、残りは俺も教わりながら手伝う。討伐証明部位は頭だという。首の関節から丁寧に頭を切り外す。そうこうしているうちに馬車を率いてエリックたちが合流してきた。
58
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~
星天
ファンタジー
幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!
創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。
『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく
はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる