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064 VSソルジャーマンティス
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助けてを求めてきた冒険者に請われ彼の相棒を助けるために駆け出した俺たち。すぐに目的の相手を見つけることができた。
「おう、相棒が探してくれた救援か? 助かった……」
へしゃげた金属鎧を身につけた冒険者、兜から覗く顔は疲弊していた。大きめな岩に背を預け大剣を抱える彼、どうやらソルジャーマンティスの群れを退けることに成功したらしい。
「むちゃくちゃ大量のカマキリ野郎を斬ったぜ。ただ、相手が引いただけって感じだな。ひょっとしたら見てないだけで女王がいたのかもな」
念には念を、ということで俺たちは武器を構えて森の奥に視線を向ける。バラバラになったソルジャーマンティスの死体の奥に、生存している魔物が何体か見受けられる。どうやらダメージを負って撤退したものもいるようで、こちらへの反撃の機会を窺っているような印象も受ける。
「俺たちであの残っているソルジャーマンティスを叩く。ここを離れようと背を向けたら襲われそうだしな。こちらが合図を出したら、あんたの相棒や、俺たちが受注している護衛任務の依頼主がこっちに合流する。彼らの危険を減らすためにも、あいらを間引きしたい」
「おう、健闘を祈るぜ」
俺の説明に軽く首肯し、ソルジャーマンティスの方を睨み続ける冒険者。彼の武装と違って心は決してへこたれてはいないようだ。俺とマリーは目を合わせ、同時に頷きあってそれぞれの得物を構え直した。
「行くぞ!」
そう叫んで駆け出す俺たちを出迎えたのは、想定通りの歓迎だった。脚の節がガサガサと音を立てながら近づいて来る様は、虫嫌いには精神的に堪える。シティボーイなんて自覚は一切ないが、虫と触れ合って育ったわけでもないからな。正直、カブトムシの見た目だったブラウンホーンはまだいいが、カマキリは多少怖さもある。
「うおぉお!!」
真正面を避けて俺が左側に、マリーが右側に展開する。同時に斬りつけると、ソルジャーマンティスが身をよじる。二対一という状況を維持するのは難しい、他のソルジャーマンティスにも注意しつつ、剣戟を叩き込む。セフィリアの風魔術がソルジャーマンティスを切り裂く。
「キシャアアア!!」
悲鳴のような叫び声を上げて、ソルジャーマンティスの一体が息絶える。だが気を抜いている暇はない。体側に陣取っていたとしてもソルジャーマンティスがその四本の後ろ足で向きを転換する。こちらに向けて鎌を振り上げるソルジャーマンティスに水の塊を叩き込んで撃破する。各個撃破を徹底すれば一体ずつの戦力はそう高くない、囲まれたり弱点である背中を取られないよう陣形を組まれなければ、何とかなる。それにしたってあの重装備の彼がどれだけの間、一人で耐え忍んできたのかは正直想像もしたくないのだが。
「せやぁ!!」
マリーも危うげなく一体一体切り伏せていく。手負いのソルジャーマンティスを狙ってとどめをさしていく。全体的にシルエットが細く矢で射抜きづらいシルエットをしているソルジャーマンティスに、セフィリアは魔術主体で攻めていく。鎌を切り落として俺とマリーが戦いやすくなるよう立ち回ってくれる。
「キシャアアアア!!」
最後の一体を切り伏せたところで、ソルジャーマンティスたちの生き残りが森の奥に駆けて行った。どうやら完全に撤退してくれたらしい。俺は剣を地面に刺して大きく息を吐く。
「……助かったぜ」
俺たちのところに冒険者が歩み寄って礼を述べた。
「いいってことよ。間に合ってよかったぜ」
「あぁ、そういや名乗ってなかったな。俺はジュード。相棒のカルザスと故郷のサトン村に向けての道中だったんだ。カルザスは無事か?」
そう言えばあの軽装備の冒険者の名前を聞いていなかったな。カルザスというのか。
「私が応急処置をしたわ。生きているわよ。ただ、右腕の傷が治ってから、これまで通り得物を扱える保証まではないわね」
セフィリアの答えにジュードは首を少しだけ横に振り、気にするなと小さく口にした。
「マリー、そろそろ合流しても大丈夫だろ。」
マリーが火の魔術を空に向かって放つ。のろし代わりだ。馬車にいるスランツさんやエリックは気付いてくれただろうか。あちらに返信ののろしを上げる手段はないので、ひとまず休憩地点まで退避して彼らを待つことにする。まあ、やることは大量にあるしな。けっこうな数のソルジャーマンティスの死骸を収納しながらそう思った。
「おう、相棒が探してくれた救援か? 助かった……」
へしゃげた金属鎧を身につけた冒険者、兜から覗く顔は疲弊していた。大きめな岩に背を預け大剣を抱える彼、どうやらソルジャーマンティスの群れを退けることに成功したらしい。
「むちゃくちゃ大量のカマキリ野郎を斬ったぜ。ただ、相手が引いただけって感じだな。ひょっとしたら見てないだけで女王がいたのかもな」
念には念を、ということで俺たちは武器を構えて森の奥に視線を向ける。バラバラになったソルジャーマンティスの死体の奥に、生存している魔物が何体か見受けられる。どうやらダメージを負って撤退したものもいるようで、こちらへの反撃の機会を窺っているような印象も受ける。
「俺たちであの残っているソルジャーマンティスを叩く。ここを離れようと背を向けたら襲われそうだしな。こちらが合図を出したら、あんたの相棒や、俺たちが受注している護衛任務の依頼主がこっちに合流する。彼らの危険を減らすためにも、あいらを間引きしたい」
「おう、健闘を祈るぜ」
俺の説明に軽く首肯し、ソルジャーマンティスの方を睨み続ける冒険者。彼の武装と違って心は決してへこたれてはいないようだ。俺とマリーは目を合わせ、同時に頷きあってそれぞれの得物を構え直した。
「行くぞ!」
そう叫んで駆け出す俺たちを出迎えたのは、想定通りの歓迎だった。脚の節がガサガサと音を立てながら近づいて来る様は、虫嫌いには精神的に堪える。シティボーイなんて自覚は一切ないが、虫と触れ合って育ったわけでもないからな。正直、カブトムシの見た目だったブラウンホーンはまだいいが、カマキリは多少怖さもある。
「うおぉお!!」
真正面を避けて俺が左側に、マリーが右側に展開する。同時に斬りつけると、ソルジャーマンティスが身をよじる。二対一という状況を維持するのは難しい、他のソルジャーマンティスにも注意しつつ、剣戟を叩き込む。セフィリアの風魔術がソルジャーマンティスを切り裂く。
「キシャアアア!!」
悲鳴のような叫び声を上げて、ソルジャーマンティスの一体が息絶える。だが気を抜いている暇はない。体側に陣取っていたとしてもソルジャーマンティスがその四本の後ろ足で向きを転換する。こちらに向けて鎌を振り上げるソルジャーマンティスに水の塊を叩き込んで撃破する。各個撃破を徹底すれば一体ずつの戦力はそう高くない、囲まれたり弱点である背中を取られないよう陣形を組まれなければ、何とかなる。それにしたってあの重装備の彼がどれだけの間、一人で耐え忍んできたのかは正直想像もしたくないのだが。
「せやぁ!!」
マリーも危うげなく一体一体切り伏せていく。手負いのソルジャーマンティスを狙ってとどめをさしていく。全体的にシルエットが細く矢で射抜きづらいシルエットをしているソルジャーマンティスに、セフィリアは魔術主体で攻めていく。鎌を切り落として俺とマリーが戦いやすくなるよう立ち回ってくれる。
「キシャアアアア!!」
最後の一体を切り伏せたところで、ソルジャーマンティスたちの生き残りが森の奥に駆けて行った。どうやら完全に撤退してくれたらしい。俺は剣を地面に刺して大きく息を吐く。
「……助かったぜ」
俺たちのところに冒険者が歩み寄って礼を述べた。
「いいってことよ。間に合ってよかったぜ」
「あぁ、そういや名乗ってなかったな。俺はジュード。相棒のカルザスと故郷のサトン村に向けての道中だったんだ。カルザスは無事か?」
そう言えばあの軽装備の冒険者の名前を聞いていなかったな。カルザスというのか。
「私が応急処置をしたわ。生きているわよ。ただ、右腕の傷が治ってから、これまで通り得物を扱える保証まではないわね」
セフィリアの答えにジュードは首を少しだけ横に振り、気にするなと小さく口にした。
「マリー、そろそろ合流しても大丈夫だろ。」
マリーが火の魔術を空に向かって放つ。のろし代わりだ。馬車にいるスランツさんやエリックは気付いてくれただろうか。あちらに返信ののろしを上げる手段はないので、ひとまず休憩地点まで退避して彼らを待つことにする。まあ、やることは大量にあるしな。けっこうな数のソルジャーマンティスの死骸を収納しながらそう思った。
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