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063 救援要請

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 草原を進んでいると御者台の近くを歩くセフィリアが片手を上げて、止まるよう俺たちを制した。どうしたのかと思えば、前方から人が一人こちらに駆け寄ってきた。

「た、助けてくれ。相棒が魔物に襲われてるんだ!」

 よく見れば右腕から血を流している。エリックが彼をなだめながら詳しい情報を聞き出す。どうやら彼は冒険者で、軽装備の彼と重装備の相棒で旅をしていて、休憩地点から少し森に入って食料を調達しようとしていたところを、ソルジャーマンティスという魔物に襲われたという。数体倒したものの数が多く、逃げようとしても重装備の相棒は振り切ることができず、身軽な彼がとにかく助けを求めて駆け出したようだ。ひとまず鑑定をするが悪人がもっていそうなスキルはない。HPの減り方も生々しいし、演技や狂言の類ではなさそうだ。

「そいつらの群れに女王はいたか?」
「いや、いなかった……はずだ」

 返答は弱々しいものだった。エリックの説明によると、ソルジャーマンティスの脅威度は群れに女王がいれば四級、いなければ五級相当とのこと。女王さえいなければ、十分に俺たちだけで対処できる。本当に女王がいなければ、の話にはなるが。

「セフィリア、応急手当を頼む。スラッツさん、いかがいたしましょうか」

 助けてやりたい気持ちは山々だが俺たちは今、護衛任務の真っ最中だ。簡単に持ち場を離れるわけにはいかない。こういう時には依頼人の意向に従う。

「構いません。助けてあげてください。どなたか一人には残っていただきたいのですが」
「うーん、エリック、ここを任せてもいいか?」
「そうなるよな。いいぜ、頼まれた」

 場合によってはマイホームスキルで何か取り出さねばならないかもしれない。あるいは危険が迫ってマイホームに逃げ込まなくてはならなくなるかもしれない。そのとき、エリックがいると躊躇してしまうかもしれない。もし女王がいたら危険度が跳ね上がる。本当はマリーを残していきたいが、ここにいてもそれはそれで危険もある。護衛が減った状態で魔物や悪人に襲われる可能性だってある。それを考えれば、手の届く範囲に居てもらった方がいいのかもしれない。
 もともとの三人組で動くことをあっさり受け入れてくれたエリックは、ありがたいことにソルジャーマンティスの気をつけねばならないところと、弱点まで教えてくれた。

「ソルジャーマンティスの鎌攻撃は恐ろしいが正面に振り下ろすくらいしかできない。体側か背後に回って叩けばいい。火にも弱い。万が一女王がいたら諦めて撤退しろよ。女王が単体で強い上に陣形を組んでくる場合もある」

 俺がエリックから注意事項を聞き終えると、冒険者に止血を施して、彼を荷台に横たわらせたセフィリアが戻ってきた。

「いけるか?」

 マリーとセフィリアはしっかりと頷いた。

「魔物に襲われたのは街道を道沿いに進んでいって少し西にある休憩地点の奥だそうよ」

 セフィリアに敏捷の強化魔法をかけてもらい、俺たちは冒険者が襲われている場所に向かって走り出した。
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