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061 護衛二日目
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明くる朝、エリックに起こされた俺はマリーの出してくれた水で顔を洗い、夕べのうちに洗っておいたタオルで水気を拭う。軽工業が発展しているのか、こちらの世界のタオルもマイホームスキルで生成したタオルもわりと遜色ない。もっとも、俺のスキルで生成しているタオルが若干低品質なのかもしれないが。なにせちょっとゴワゴワしているのだ。使い古しみたいな感じだ。……柔軟剤とかそういうものがないのも理由の一つかもしれない。
パンはさすがに生成したものを提供するわけにもいかないのだが、そもそもこうした護衛の場合は依頼者が負担してくれる。スラッツさんの提供してくれた保存の利く黒パンをもそもそと飲み込み、ピンキッシュホースには飼葉をあげる。とげとげしいピンクというよりはベージュがかった柔らかい色合いなのがかわいらしく感じる。馬車用の馬って感じらしいので体力重視でそこまで脚は速くないとのことだが、そのうち乗馬もしてみたいな。移動速度が上がると移動範囲も広がるし、冒険って感じがする。名づけるならゲレゲレよりチロルがいいな。かわいいし。
「レックスさん、そろそろ出発ですよ」
マリーに声をかけられ、チロルもといスラッツさんのピンキッシュホースを一撫でして、馬車の荷車とつなげる。御者台のスラッツさんの一声で、ゆっくりと歩き出したピンキッシュホース。
昨日とは配置を変更して、御者台のそばから時計回りにセフィリア、エリック、俺、マリーの順番で周囲を護衛する。休憩地点になった広場を出て街道に合流する。
「マリーの両親はこうして行商とかしなかったのか?」
「うちの両親は行商中に出会ったそうですよ。父が母に、店を構えたら迎えに行くって言ったそうです」
マーカスさん、かっこいいな。実際に自分のお店を構えて迎えに行ったのだから。
「有言実行だな。俺たちも頑張って二人を自由にできるようお金を稼がないとな」
「そうですね。そしたら両親と一緒に最高の革鎧をレックスさんのために仕入れてみせます」
「それは楽しみだな。どんな素材の鎧になるんだろう」
やっぱりドラゴンかな。でもドラゴンだとウロコの方が強そうだよな。獣系かな。それともワニみたいな爬虫類っぽい感じか、蛇もいるか。めっちゃデカい蛇の魔物とかいたら皮がいっぱい採取できそうだ。
「てか、仕入れってことは買うためにはお金を別途用意しなくっちゃなのか」
「それはまぁ、そうなりますね。でもまぁ、一緒に商売してくれたら……あ、いや、なんでもないんです。というか、仕入れ、大事ですよね! 大きな魔物を一緒に討伐しに頑張って強くなりましょうね!!」
一緒に商売……マリーは一人娘だし、跡継ぎってなると……お、俺? いや、そんな、浮かれたこと考えている場合じゃないだろう。それに商人って柄じゃないよな、俺。そもそも別に冒険者って柄でもないだろうけど。学生を終えたらずっと無職だったわけだし。
この世界での基本的な知識もないけど、どこへでも旅できるだけのチート能力はもらった以上、頑張ってこの世界を生き抜くしかないよな。そのために働くなら冒険者が正直ベストだと思う。
「冒険者としてすげぇ魔物倒して、むっちゃ凄い装備揃えたいよな」
「急に子供っぽいこと言い出すんですから、もう」
そう言って笑うマリー、彼女がまた両親と一緒に笑いあえるよう、俺に出来ることを頑張らなくっちゃな。ニオレングに向かう道を歩きながら、そう決意を深めるのだった。
パンはさすがに生成したものを提供するわけにもいかないのだが、そもそもこうした護衛の場合は依頼者が負担してくれる。スラッツさんの提供してくれた保存の利く黒パンをもそもそと飲み込み、ピンキッシュホースには飼葉をあげる。とげとげしいピンクというよりはベージュがかった柔らかい色合いなのがかわいらしく感じる。馬車用の馬って感じらしいので体力重視でそこまで脚は速くないとのことだが、そのうち乗馬もしてみたいな。移動速度が上がると移動範囲も広がるし、冒険って感じがする。名づけるならゲレゲレよりチロルがいいな。かわいいし。
「レックスさん、そろそろ出発ですよ」
マリーに声をかけられ、チロルもといスラッツさんのピンキッシュホースを一撫でして、馬車の荷車とつなげる。御者台のスラッツさんの一声で、ゆっくりと歩き出したピンキッシュホース。
昨日とは配置を変更して、御者台のそばから時計回りにセフィリア、エリック、俺、マリーの順番で周囲を護衛する。休憩地点になった広場を出て街道に合流する。
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「有言実行だな。俺たちも頑張って二人を自由にできるようお金を稼がないとな」
「そうですね。そしたら両親と一緒に最高の革鎧をレックスさんのために仕入れてみせます」
「それは楽しみだな。どんな素材の鎧になるんだろう」
やっぱりドラゴンかな。でもドラゴンだとウロコの方が強そうだよな。獣系かな。それともワニみたいな爬虫類っぽい感じか、蛇もいるか。めっちゃデカい蛇の魔物とかいたら皮がいっぱい採取できそうだ。
「てか、仕入れってことは買うためにはお金を別途用意しなくっちゃなのか」
「それはまぁ、そうなりますね。でもまぁ、一緒に商売してくれたら……あ、いや、なんでもないんです。というか、仕入れ、大事ですよね! 大きな魔物を一緒に討伐しに頑張って強くなりましょうね!!」
一緒に商売……マリーは一人娘だし、跡継ぎってなると……お、俺? いや、そんな、浮かれたこと考えている場合じゃないだろう。それに商人って柄じゃないよな、俺。そもそも別に冒険者って柄でもないだろうけど。学生を終えたらずっと無職だったわけだし。
この世界での基本的な知識もないけど、どこへでも旅できるだけのチート能力はもらった以上、頑張ってこの世界を生き抜くしかないよな。そのために働くなら冒険者が正直ベストだと思う。
「冒険者としてすげぇ魔物倒して、むっちゃ凄い装備揃えたいよな」
「急に子供っぽいこと言い出すんですから、もう」
そう言って笑うマリー、彼女がまた両親と一緒に笑いあえるよう、俺に出来ることを頑張らなくっちゃな。ニオレングに向かう道を歩きながら、そう決意を深めるのだった。
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